「―――これがメシア教の実態だ! このメシア教と敵対している天使様が助けてくれなければ、俺達は一生こいつらの奴隷だった!」
「見てわかる通り、メシア教の天使は俺達を捨て駒にしようとしやがった! だが、このメシア教と敵対している天使様は、俺達の身代わりになってくれたんだ! 別に無視したところで痛くもかゆくもないだろうに…だ!」
「これで分かったろう!? 俺達が付いて行くのはメシアでもガイアでもねえ! この天使様だ!!」
「メシアの天使が残した資料によると、この方の名は聖園ミカというそうだ! この方こそ真の救世主だ!」
いつの間に撮ったのか、ミカとカズフェルの戦闘場面を映した後、複数の男がカメラの前で大きな熱意と共に訴え続けている。
「もしかして…戦闘中にカズフェルの奴が焦ったように見えたのは、このビデオを撮っていたからか…? 本来なら聖なる弾丸でミカを倒すシーンを納める筈だったのに、上手くいかずに焦っていたと…」
「ミカの事を魔女とか言ってたし、聖なる弾丸なんていってたから当然悪魔特攻の処理はしてたんでしょうね。でも、ミカの心はともかく性質は間違いなく聖なる者だから、聖なる弾丸なんて効く筈ないし、アテが外れて焦っていた…ってところかしら…」
「いや二人ともそんな悠長な事言ってる場合じゃないよ!! こんな放送私も迷惑だし、なによりメシア教に目を付けられてこの人達が危ない! 早く戻って注意しておかないと!!」
ビデオの出所を推察する中道と愛子に、ミカがツッコミを入れると共に慌てて戻ろうとする。それに愛子は「そ、そうね!」と追従しようとするが、
「いや、逆だ。急いでTDLに…エキドナに会いに行こう」
何故か中道は二人と真逆の提案をする。なにやら顔が青ざめているが…。
「なんで!? 早く行かないとこの人達が危ないよ!?」
「そう、危ない筈なんだ。だが、カズフェルを倒してから今日で三日過ぎているにも拘らず、この人達は無事に放送を続けられている。メシア教の武力を持てば即座に制圧できる筈なのに…だ。何故だと思う?」
大声で問うミカに唐突に投げ掛けられる中道からの問題。しかし、答えは分からない様でミカも愛子も揃って首をひねっている。
「簡単だ。近いうちに東京タワーを…いや。東京中を再び何らかの方法で吹き飛ばすつもりなんだろう。だから、こんなメシア教にとって害しかない放送も放置されてるって訳だ。今更こんな物を流しても遅い…とでも思われてるんだろう」
そして、苦悶の表情から繰り出された中道の答えに、ミカ、愛子、のみならず横で話を聞いていた教祖までもが顔を青くし始めた。とはいえ、数多の犠牲を出した大破壊に類する何かが再び起こる…などという絶望の予言をされてしまっては、この三人ならずとも顔色が変わるだろう
「な、なんだと…。ぐっ、し、しかし…確かに奴らならそれくらいやりかねん…と、とにかく我がガイア教団員だけでも何とか退避させなくては…」
「ね、ねえお願い! できればこの人達も一緒に…」
いち早く中道の衝撃の答えのショックから立ち直った教祖が慌てて動き始める。そして、次に復活したミカが放送を指差しながら教祖に懇願するが、
「断る!!」
と、ハッキリと断られてしまったのだ。
「どうして!?」
「見ろ!! この自分勝手な行動を!! この放送のせいで、自分達のみならずお前やその後ろの付き人にまで迷惑が掛かっているのだぞ! 誰かに保護してもらわなければ生きていけぬくせに、こんな勝手な行動する奴らを助けてやる義理などない!!」
「力を信条としている割には情けないのね…」
「あくまで自力救済の為の力だからな。己の力のみで理不尽に立ち向かうというのなら、幼子や老人にも力を貸そう。が、この様な荒れ果てた無法の地にて未だに他者に依存する様な弱者に貸す力などない! 黙ってメシア教に従い一生奴隷として暮らすか、さもなくばとっとと死ね! 今を懸命に生きようとする者の邪魔だ!」
ミカと愛子の非難の声にも怒鳴る様に言い返し、そのまま教祖はいそいそと部屋を出て行ってしまった。
「む……むっかーーーっ!! 弱い人達だって懸命に生きてるんだよ!? シンジュクでもシブヤでもみんなみんな懸命に…っ! それを死ねだなんて…っ!!」
「まあ正論ではあるんだけど…あれは自分勝手を正論でごまかしてるだけね…。仮に理不尽に立ち向かう弱者がいたとして、あの体たらくじゃ本当に力を貸してくれるとも思えないし…。メシア教に一歩及ばない理由が分かったわ…」
その後姿に、ミカと愛子が思い思いの非難の言葉をぶつけるのだった。
「そ、その…。少し宜しいですか?」
怒り心頭のままウエノをあとにしてTDLに向かおうとした一向に不意にかかる声。見ると、一人の老人が控えめな様子で立っていた。
「貴女…聖園ミカ…様ですか? 今放送されている…」
「え…うん…。そうだけど…」
おずおずと尋ねてくる老人に、ミカはおもむろに頷く。
「実はお願いがありまして…。この近くに怪獣が住み着いていおりまして、この地の住人ではこの怪獣に歯が立たず、故に貴女様に討伐して頂きたく…」
そうして、深々と頭を下げてお願いされるミカ。
「怪獣って…。ガイアの人達はなにしてるの? この辺りはあの人達の管轄なんだし、この近くって事はあの人達も迷惑してるんじゃ…」
「奴らは我らの困りごとなど取り合ってはくれません…。挙句に、物資という物資を好きなだけ奪っていく始末。俺達がここにいる限り他の集団に襲われることはない…などと言いますが、そもそも奴らが勝手にこの地に総本山を築き上げただけ。我らはそんな事を頼んだ記憶はありません」
「あーもう! やってる事があのシンジュクにいたオザワって人と一緒じゃん! いや、管轄の管理もまともに出来てないんだからオザワ以下だね!!」
恨めしそうに語る老人に、ミカも苛立たし気に足を踏み鳴らしながら溜まっている物を言葉として吐き捨てる。そして、チラリと後ろにいる中道と愛子に視線を送る。時間がないのは分かっているが、それでもやはり困っている人は助けたいという懇願だ。
「…急いで退治しよう。あまり時間はかけられない」
「ええ、私達も微力ながら全力で援護するわ。それで少しでも時間短縮になる筈」
対して、中道も愛子もしっかりと頷いて答えてみせる。それをうけて、ここまでずっと怒り顔だったミカも微笑を浮かべる。
「ああ…。ありがとうございます…。やはり貴女様は救世主様だ…。出来るだけのお礼は致しますので、どうかよろしくお願いいたします…」
更には老人も笑顔で深々と頭を下げる。ただ、この救世主という呼び名は慣れないのかミカの顔が微笑から苦笑に変わってしまったが、そうしながらも怪獣の居場所を老人から教えて貰い、一行は怪獣退治に赴く事となった。