酒場の隅にて、ミカの持っていたスマホを確認するスティーヴン。勿論、自分のスマホを何も知らない他人に見せるなどミカ的には基本的に完全NGではあるのだが、さすがに状況が状況なので我儘は言っていられない。
「―――成程、確かにこれでは悪魔召喚プログラムは動かない訳だ。型が古すぎる」
「この超小型PC、そんなに古いのか? 見た感じなかなか先鋭的だと思うが…」
一通りスマホを確認した後、ゆっくりと首を横に振り、溜め息を一つ吐きながら独り言のように呟くスティーヴン。それを受け、中道が不思議そうに尋ねる。
「逆だよ中道君。この超小型PCに対して、悪魔召喚プログラムが古すぎるんだ。信じられるか? こんなに小型なのにRAMが32
「GBだと!?
淡々と説明するスティーヴンに中道も驚愕の声を上げる。そして、よく聞くとスティーヴンの声もほんの微かながら震えている事に気づく。どうやら、スティーヴンも表にこそ出さなくも驚き困惑している様だ。
「おい! お前らだけで話してねえで俺らにも分かるように説明しろ!」
ここで、力也がイライラした様子で二人の間に割って入る。法二とミカも、視線で説明を要求している。力也と法二については機械など全く分からなそうだし、ミカにしてもGBはスマホの記録容量である…程度の認識しかないので、詳しい事は分からないのだ。
「おっと、すまない。そうだね…。分かりやすく言えば、この超小型PCのCPU…頭脳は、悪魔召喚プログラムを”古すぎて使い方が分からない”と言っているんだ。あえて極端な例を出すけど、君は銃を使っていると思うけど、戦国時代の火縄銃を撃てるかい? 撃ち方なんて知らないだろう? そういう事だ」
謝罪とともに力也たちに向き直り解説するスティーヴン。だが、力也も法二も、イマイチ納得いってなさそうに首を傾げる。銃の説明の下りは理解できるが、何でそれがパソコンに適用されるんだ? プログラムなら何でも一緒なんじゃないのか? と言った感じか。
しかし、ミカとしてはこんな説明で引き下がるわけにはいかない。現状、元の世界へ帰る手掛かりはこの悪魔召喚プログラムしかないのだ。
「どうしても無理なの? 何とかして起動できないの?」
「正直、今のままでは無理だ。デビルアナライズが動いているのも、このPCの圧倒的マシンパワーとデビルアナライズはほぼ辞書みたいなもので、悪魔召喚プログラムにあまり依存していないというのも大きい。本格的に悪魔召喚プログラムを起動するなら、プログラムをこのPCに最適化させなければ無理…なのだが…」
「なのだが、何? できないの?」
「出来なくはない。だが、時間と…何よりこんなモンスターマシンに最適化させるにはそれなりの研究施設が欲しい。だが、以前の私の研究施設は大破壊で失われてしまった。他の研究施設になりえそうな所も一か所だけ心当たりがあるのだが…」
「おい! スティーヴン!!」
詰め寄るミカに説明するスティーヴンだったが、ここで謎の怒声が響く。全員が声の方を振り向くと、この町でよく見かける私設警察の服に身を包んだ、粗暴そうな男が立っていた。
「オザワ様がお呼びだ! 直ぐに事務所に向かえ!」
「…と、いう事で、新宿…というよりオザワに縛られて外に出る事が出来ないのだ。すまないが、席を外すよ」
そう言って、辛そうな表情と共に場を離れようとするスティーヴン。
「待て! アンタはオザワの野郎と知り合いなのか!?」
「いや、大破壊前に直接の面識は無かった。だが、オザワはゴトウという男を通じて、私の名前と顔を知った様だ。そうして大破壊後にあっけなく捕まり、彼専用の悪魔召喚プログラムの整備をさせられる毎日という訳さ」
「スティーヴン! なにをしている!? さっさと行け!!」
「分かっている。そう怒鳴らないでくれたまえ…」
怒気をはらむ力也の質問に力なく答えるスティーヴン。そうして、急かす私設警察を尻目にその場から移動してしまった。
「おい、貴様ら」
そのもの悲しい背中を見送っていた一行に掛かる声。先ほどの私設警察が今度は一行に話しかけてきたのだ。
「どうやら新参者のようだが…。ふん、いっぱしに悪魔を連れたアクマ使いもいる様だが、それでもオザワ様に逆らうのは止めといたほうがいいぜ。なにせ、オザワ様の従える悪魔は超
「な!? 悪魔って私の事!? だから私は悪魔なんかじゃないって何度言えば…!」
中道、力也、法二、そしてミカの四人を舐めまわす様にじろじろと見た後、嘲笑と共に口を開く私設警察。特にミカへの態度が辛辣だ。当然激怒するミカだが、中道と法二の二人が必死にミカを止める。
「おい、金魚のフン。帰ってオザワに伝えろ。須藤力也が必ずてめえをぶっ殺すってな!!」
「くっ…ぎゃははははっ! 随分と勇ましいガキだな! いいぜ、伝えといてやるよ。ま、返り討ちにあって、その金魚のフンに奴隷のようにこき使われるところまで堕ちる未来がみえてるがな」
怒りに燃える力也の宣言に、しかし私設警察は見下したように笑いながらその場を後にする。
「ゴトウか…。確か彼は三十年前のガイア教の
ミカを止めながらも、当時を思い出す様に口を開く法二。その途中の問いに、中道も首を縦に振る。
「何を感傷に
「そうだよ! そのオザワとか言うのを倒せば、あのスティーヴンっていう人も自由になるし、何よりここの町の人たちも救われるんでしょ!? なら、早く行こう!!」
大声を上げながら、私設警察の後を追う力也。そして、中道と法二の制止を振り切り、力也の後について行くミカ。
「ま、待ってください! 戦闘になるのは間違いない! せめて、最低限の準備を…っ!!」
そんな二人を慌てて止めようとする法二だが、残念ながら聞く耳を持ってくれなさそうだ。仕方なく二人の後を追う中道と法二だった。