真・女神転生 聖園ミカの終末世界紀行   作:塞翁が馬

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カテドラルへ!

「我が名はビシャモンテン…。東京の地を守護する四天王が長なり…」

 

 視線以外は石像だった時の構えのまま名を名乗るビシャモンテン。その口調は、厳かで気高い雰囲気が漂う物だ。

 

「汝らは我ら四天王の力を借りる腹積もりか。そこの天狗から聞いたであろうが、本来なら我らと戦を交え、我らが認めた者のみが力を得る事が出来るのだ。だが…」

 

 粛々と語るビシャモンテンだったが、ここで初めてその声に感情がともる。

 

「今、その様な悠長な事をしている時間は無い。異邦の神の意志を持った人の兵器による大破壊から数十年…。この兵器により我らの守護の力も薄まり、遂には異邦の神の力の介入を許そうとしておる。誠に…誠に無念だ…」

 

 表情こそ変わらなかったが、その語り口からは明らかに悔しさが溢れている。そんな様子のビシャモンテンを見て、ミカも俯いてしまった。恐らくは、シナガワの事を思い出し、このビシャモンテンの無念と重ね合わせてしまったのだろう。

 

「故に、今我が見るはただ一つ。異境の天使よ。武器を構えよ」

 

 そして、ここで初めて姿勢を変え、己が剣に手を添えるビシャモンテン。これを受け、呼ばれたミカと、後ろにいた中道と愛子も身構えるが、

 

「ビシャモンテン様が見るは、あくまでその太刀筋。なので、異境の天使殿。銃ではなくお持ちの剣にて、全霊の一太刀をお放ち下さい。後ろのお二方は手出し無用でお願いします」

 

 横から入る天狗の解説に、ミカは咄嗟に出してしまった銃をしまい、言われたとおりに剣…ヒノカグツチを抜き構える。

 

 そうして退治するミカとビシャモンテン。少しの間、緊張の停滞が続いたが、

 

「やあああああっ!!」

 

 先に動いたのはミカだ。瞬時に間合いを詰めると共に、気合の掛け声と共に大上段に構えたヒノカグツチをビシャモンテンに向かって一気に振り下ろす!

 

「ふっ! ぬ、ぬううううっ!!」

 

 それを、溜めの呼吸と共に剣で受け止めるビシャモンテン。だが、ミカの全力が僅かに勝っているのか、剣は徐々にビシャモンテン側に押し込まれていく。それに対抗するようにビシャモンテンもくぐもった怒声を張り上げるが、押し込みは止まらない。

 

「はあっ!!」

 

 遂には、ミカは迫真の声と共にヒノカグツチを振り切り、ビシャモンテンの剣は叩き折られ、ビシャモンテン自身も膝を地に付けてしまった。

 

「―――お見事…。誠にお見事です。あのビシャモンテン様に力で押し勝つとは…。本当にあの異境の天使殿の力は計り知れませんね…」

 

 パチパチ…と手を叩きながら称賛の言葉を漏らす天狗。この天狗もここまで感情らしい感情は出していなかったのだが、今だけは明らかな畏敬の念が滲み出ている。帽子から垂れている膜で顔が隠れているにも拘らず、畏敬の視線を向けているように見える程に、その畏敬の念は大きい様だ。

 

「―――よかろう。貴様の全霊の一太刀、確かに受け取った。しもんのぎょくを我の前へ…」

 

 そして、どうやらビシャモンテンにも認めて貰えたようだ。その言葉通りに、ミカはしもんのぎょくをビシャモンテンの前に掲げる。

 

 しもんのぎょくに指を添えるビシャモンテン。すると、その指が触れた個所が赤く染まり、その赤はしもんのぎょくの四分の一ほどに広まっていった。

 

「我が力をぎょくに与えた。急ぎ他の四天王の館を巡り、そこを守護する四天王からぎょくに力を与えて貰うのだ。そして、そのぎょくを身に宿し、異邦の神による封印を破るのだ」

 

「身に宿す…? それは、もしかして悪魔化するという事か?」

 

 ゆっくりと立ち上がりながらしもんのぎょくの使い方を説明するビシャモンテンだが、その内容に引っ掛かりを覚えたらしい中道が表情を険しくして尋ねる。

 

「そうだな…。我ら四天王の力を身に宿すという事は、少なくとももう人間ではいられまい」

 

 対して、おもむろに頷くビシャモンテン。明言こそ避けているので細かく言えば多少の違いはあるのかもしれないが、おおむね中道の推察通りと言っていいのだろう。

 

「悪魔化か…。流石にそれはちょっと困ってしまうわ…」

 

「その小僧の装備している召喚具。それは悪魔を呼ぶものであろう? そこから力を求める念を感じる。何者かは知らぬが、その者に我らの力を捧げればよいのではないか?」

 

 困惑気に首を傾げる愛子だったが、これに即座にビシャモンテンから指摘が入る。

 

「力を求める念…? ………………まさか…パスカル……?」

 

 その指摘を受け、中道はボソッと呟く。

 

「我からも最後に一つ、異境の天使に聞きたい。貴様は法と力、どちらに赴きを置くつもりだ?」

 

 そんな中道を他所に、今度はビシャモンテンからミカに質問が入る。それを受け、両目をつむり手を口に当てじっくりと考えた後、ミカは口を開いた。

 

「―――わからない。力だけでは駄目だとは思う、そもそも私がそれで一回失敗して、周りのみんなに大きな迷惑をかけたから。だから、やっぱり法…ルールの方が…。でも、ルールは力の上に成り立つ物。強制力の無いルールなんて悪い奴は誰も守らないからね。かといって、あまりにルールを強くし過ぎると、それは実質力で押さえつけている様な物。だから……うーん……やっぱり、どっちもほどほどに必要…なのかなぁ…」

 

「法と力、その二つを天秤に乗せ、調和を取りながら進む道…と言う事か? しかし、その道は頼る者、縋る者のいない過酷極まる茨の道だぞ。貴様の力をもってして尚、踏破は難しい程の…な」

 

 思案顔のまま、自身の考えをつらつらと語るミカに、ビシャモンテンは厳めしい顔を更に厳しい物にして忠告を発する。対して、ミカも険しい表情ながらもゆっくりと頷くのだった。

 

 

 

 

 

 ビシャモンテンの下を発った後、足早に残った四天王の館を訪問し、手早く残った力をしもんのぎょくに注いてもらった一行。ビシャモンテンから既に許可が出ていたのか、他の三柱達は着くやいなやすぐさま力を注いでくれたのだ。

 

 そうして、再びギンザの例の物々しい扉の前に戻ってきた一行。そこで、中道はパスカルを召喚し、ここまでの経緯の説明と、ビシャモンテンの力を求めているという指摘の是非を問い質す。

 

「―――俺は、中道を主とし生涯中道と共に歩むつもりだった。町に異変が起き、このままではそれは叶わぬと思い悪魔と合体もした。だが、前のエキドナとの闘いで示されたように、今の俺のままでは足手まといだ。だから、その四天王とやらの力が封入されたしもんのぎょくを、俺に授けてくれないか?」

 

 ぽつりぽつりと心境を吐露していくパスカル。そして、その最後に出た懇願に、しかし中道は難しい顔をする。

 

「これを使えば、いよいよ普通に戻る事は出来なくなるぞ。それでも良いのか?」

 

「ふん、何をいまさらな事を。覚悟はあの時悪魔と合体した時からできている」

 

 渋る中道に、しかしパスカルの意思は固い様だ。仕方がない…と言った様子で、しもんのぎょくをパスカルの前に掲げる中道。すると、しもんのぎょくはパスカルの体に吸い込まれていった。

 

「ぐっ……うっ、ぐっおおおっ…!」

 

 苦悶の声を上げるパスカル。それと連動するようにパスカルの体が大きく筋肉質になっていき、それを覆う全身の毛量も爆発的に増えていく。

 

 元から中道の腰くらいまではあった体躯が、最終的には中道の身長と同じくらいにまでなり、顔つきもあのビシャモンテンを思い出す厳めしいものとなる。

 

「がああああっ!!」

 

 そうして、間髪入れずに封印の扉を咆哮と共に爪で切り裂くパスカル。この一撃に、何やら電撃が弾けるような音と共に扉は壊された。

 

「おお! やったね!!」

 

「すごい…っ!!」

 

「うむ、見事じゃ!」

 

 その光景を後ろで見ていたミカ、愛子、そしてこの扉に案内してくれたあの老人も快哉を上げる。

 

「パスカル、大丈夫か!?」

 

「ああ、大丈夫だ。力が…力が溢れてくるぞ! これで俺は中道を守れる! 中道と共に往ける! もう二度と、中道に危険を近づけたりはせん!!」

 

 急激な身体の変化を心配したらしい中道の声に、しかしパスカルは奮い立つ心をそのまま中道にぶつけてくる。声質も以前より更に低くなっていたが、その忠誠心だけは全く変わっていない様だ。

 

「よーし! これでやっとカテドラルとかいう所に乗り込めるんだね!? 早く行こう!!」

 

「うむ…。恐らく、これがお前達の最後の戦いになるだろう。くれぐれも、気を付けるようにな」

 

 気合を入れる掛け声と共に先頭を行くミカとそれについて行く中道、愛子、パスカル。その後ろから、老人も激励を送るのだった。

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