カテドラル潜入! そして…
カテドラルへと続く銀座地下道。十数年封印されていたという事であちこちがボロボロではあったが、普通に通行する分には問題はなかった。ただ、やけに上り階段が多い。やはり、それだけ高い場所にカテドラルは建造されているのだろう。
そして、もう数えるのも億劫になってきた上り階段の先に合った扉を開けると、唐突に周囲の雰囲気がガラッと変わる。右も左も豪奢な壁づくり…どうやら遂にカテドラルに潜入出来た様だ。
しかし、ここである問題が発生する。広い! とにかく建物が広すぎるのだ! 中道の使う機械にはオートマッピングという機能があるが、これを使ってもなお気を抜くと迷ってしまいそうなほどに広大な建物だったのだ。
「あーもうイライラするーっ! ただでさえ広いのに、なんであちこちに上り階段や下り階段があるのーっ!? 階段の先によっては何故か同じ場所をぐるぐる回るだけの行くだけ無駄な構成になってるしさーっ!!」
「そもそも正規の場所からの入場じゃないからな。そりゃ、迷路にして侵入者を幻惑するくらいの仕掛けはあると考えるべきだな…」
「人…どころか、悪魔すら見かけないわね…。本当に対侵入者用の迷路の様ね…」
「匂いすら全くないから、匂いを頼りに進む事も出来ん…」
お怒りのミカ、機械の画面と周囲を見比べる中道、不気味そうに周囲を見遣る愛子、残念そうにうなだれるパスカルという四者四様の言葉を発しながら、オートマッピングを頼りにじっくりと歩みを進めていく一行。
そうして、もう何時間歩いたか分からなくなった頃に、遂に一行の前に人影が現れたのだ!
「おお、こんなところで何を!? ガイアの者がこのカテドラルをうろついている! 早くこち…ら……に…」
その法衣に身を包んだ明らかにメシア教徒らしき男性は、一行を見つけるなり誘導しようとするが、その視線がミカを捕らえた瞬間、言葉がしりすぼみになっていくと共に表情も一気に変わった。
「き…貴様は…聖園ミカ! 何故貴様がここにいる!? どうやって侵入した!?」
「へ!? ど、どうやってって…。ギンザの地下から…」
先ほどとは一転、敵意をむき出しにしてくるメシア教徒の問いに、ミカも驚き困惑気に答える。
「おのれ…。よもやこんな近くにまでカオスの者の近接を許してしまうとは…! だが、ここから先は神のしもべたるロウの者達の拠点! 絶対に通さんぞ!」
遂には、ミカに向かって銃を構えるメシア教徒。どうやらミカ達の話を聞く気は一切ない様だ。
「ミカ。ここは一旦引こう。訳も分からず騒ぎを起こすのは、あまり得策とは言えん」
中道の進言に、ミカも「うん…」と少し悲し気に頷く。そうして、メシア教徒を刺激しないように元来た道に戻る一行。
「残念だけど、あのシナガワでのミカの立ち位置はこのカテドラルでも変わらないようね」
「天使を手にかけたから悪魔か…。単純な事だ…」
少し落ち込み気味になってしまうミカを気遣う愛子とパスカル。ともあれ、ロウの拠点にはそう簡単に入り込む事は出来なさそうだ。
そうして、再び迷路のまだ探索できていない道を進み始める一行だったが、程なくして「失礼」と呼び掛けられる。みると、見覚えのある男が一人…。
「あ! 貴方は確か…処刑なんたらの人…」
「はい、処刑ライダー第2分隊の隊長を任されていた者です。流石に、この様な道の幅が狭く入り組んだ建物内でバイクは乗れないので、今は別の肩書を頂いていますが…」
ハッと思い出すミカに、男…隊長も頷いて答える。
「ところで、皆さんは何故ここに…いえ、それ以前にどうやってここに? エキドナ様の背には皆さんはいなかったと記憶していますが…」
「…話していいかな?」
訝しむ隊長にミカは中道達に許可を取った後、ウエノ以降からここに至るまでの経緯を隊長に説明する。
「―――なんと…。まさかエキドナ様にも、あのハニエルの奴めの力も借りずに、自力でこのカテドラルの地に踏み込んできたと…。やはり皆さんは何やら特別な力を持っている様ですね…」
「そのエキドナをミカは倒しちまったんだけど、かたき討ちとかはしないのか?」
ミカの語る経緯に何やら感心している様子の隊長。その隊長に、今度は中道が訝し気に問う。
「必要ないでしょう。どれだけ高貴で偉大な存在だったとしても、負けたのならそれまでです。そして、エキドナ様すら葬れる力の持ち主に、俺如きがかなう筈も無し。ただ、力持つ者に従うだけです」
対して、ハッキリと言いきって見せる隊長。物腰が丁寧なので勘違いしやすいが、何においてもまず力という思考はやはりカオスだ。
「それにしても…。天使なのにロウの拠点に行けないというのは本当に面白い人だ。いいでしょう、この先にカオスの者達の拠点がある。そこにご案内いたします」
そう言って、歩き出す隊長。一行としても、他に行く場所は無いので、隊長について行くことにした。
隊長の案内の下、カオスの拠点に足を踏み入れる一行。そこは、悪魔と人間が神を打倒するという目的の為に共存しているまさに混沌極まる場所だ。無論、そんな場所に天使であるミカが足を踏み入れたとなると問題が起こりそうだったが、その誰もが相手が”あの”聖園ミカだと分かると黙り込んでしまう。
そしてこの場所で一行は現在のカテドラル内の状況を隊長から教えて貰う。カテドラルは地下8階、地上8階の広大な建物であり、地下1階の中心部からこれらの最上層、または最下層に連結しているそうだ。
そして、地下8階にはカオスの総大将アスラ王が数多の強力な悪魔を従えカテドラルの転覆を耽々と狙い、地上8階にはロウの総大将ミカエルが四大天使と共に降臨し神を迎える準備を進めているとの事だ。
「ミカエル…。いろんな人が私をその人と間違えてた…。総大将って事はやっぱり偉いんだね…」
その説明の途中で出てきたミカエルと言う単語にミカは反応する。人はもとよりこの世界の天使にまで間違われうんざりしていた相手だ。やはりいろいろ思う所があるのだろう。
話を戻して、地上と地下をつなぐカテドラル中心部だが、当然双方にとって重要な場所となるのでこれまで何度も戦闘が発生したそうだが、決着をつけるには至っていないそうだ。
そして、この膠着状態を打破すべく、力也はりえを伴って隠密に行動しているそうだ。
「―――リキヤが動いているって事は、ホウジも動いてるのかな?」
「まあ、何らかの対策は練っている最中だろうな。会えないんじゃ確認のしようもないが…」
説明が一通り終わった後、ふとミカが疑問を口にする。それに中道が答えるが、確かに会えないのでは推察の域は出ない。
「とにかくその中心部という所に行ってみない? もしかしたら何かわかる………っ!!?」
そして、愛子が提案を口にしたその時だ。突然轟音が建物全体を揺るがしたのだ! さらに続いて激しい揺れが一行を襲う! その凄まじさは最早立っていられない程だ!
「ぐっ…! な、何!? 何が起きたの!?」
一行に限らず、拠点の誰もが足を取られ思うように動けない中、唯一振動に耐え抜いたミカが慌てて周囲を見回す。そして、異変は外だと勘づき急いで拠点から外に飛び出す。
そんなミカの目に飛び込んできた光景。それは、ただただ見渡す限り一面の海のみだった…。