「へ…? ………あ………………は…?」
前を見ても右を見ても左を見ても、只一面に広がる海、海、海。その殺風景に、ミカは固まってしまう。呆けた声を出すのが精いっぱいのようだ。
「ミカ! 何があった………っ!?」
少し間を置いてから、やっと中道達一行と更にカオスの拠点にいた者達が駆けつけてくるが、その誰もがミカの視線の先を視認した瞬間息を呑む。
「うそ………でしょ……」「バカな……」
口に手を当て愕然とした表情で口を開く愛子。パスカルも、声色はほぼ愛子と一緒だ。のみならず、
「と、東京が………沈んだ…?」「さっきの轟音は…まさか、津波…か?」「そ、底が見えん…」「底が見えないって…」「どんな高さの津波が押し寄せたんだよ…」「これが…神の裁き…」「三十年前の大破壊と言い…」「本当に気に入らない奴らを消す為なら、何でもしやがるな…」
一行の後ろにいるカオスの面々も、思い思いの事を口にしている。その色々な言葉から様々な感情が読み取れるが、恐怖という感情だけは全ての言葉から感じる事が出来る。
「………っ!! ねえっ! 船か何かない!? 小さなボートでもいいから、何かないの!?」
と、ここで我に返ったミカが中道達を含む後ろにいた全員に大声で声を掛ける。これを受け、中道達も我に返り、カオスの者達の何人かが慌てて拠点の中に戻っていく。恐らく、ミカの指示通りになにか海を渡る道具を探しに行ったのだろう。
「あ!! おい、アレ!!」
更に、他のカオスの者が何かに気づいた様にカテドラルの上層部に向かって指をさす。その差された方向に全員が視線を向けると、水没した東京を高所から見下ろす、真っ白い法衣に身を包んだ人影が…。
「―――まさか…」
その真っ白の法衣に見覚えがあったミカ。姿勢を低くし踏ん張ったかと思えば、4~5階分は上層にいたであろう真っ白な法衣の人影のいる場所まで一気にジャンプで跳び上がったのだ!
「やっぱり…ホウジ!」
真っ白な法衣の人影の隣に立ち顔を確認するミカ。そして、その人影が法二である事を確認する。
「―――お久しぶりですね…ミカ様…」
そんなミカに、ゆっくりと振り返って挨拶をする法二。ただ、焦点の合っていない視線を見るに、どことなく様子がおかしい。
「ホウジ、何なのこれ!? トウキョウが…トウキョウが…っ!!」
「何を慌てているのです? 神の思し召しの通り、邪悪な地、東京は滅びました。それだけの事です」
水没した東京を指差し懸命に訴えるミカに、しかし法二は機械が如く冷酷に言い切って見せる。
「………ホウジ?」
「しかし、残念ですミカ様。まだ、あのような悪しき力に魅入られた者どもとご一緒しているのですか…。今からでも遅くありません。我らと共に歩みませんか? 貴女の光の力は、その為にあるのです」
明らかに様子のおかしい法二に、ミカは怪訝そうに顔をしかめる。対して、法二は眼下にいるカオスの者達に侮蔑の視線を向けた後、ミカに向かって右手を差し出して勧誘しようとする。
「悪いがそうはいかねえ! くらえ、法二っ!!」
が、ここで不意の大声が二人に届く。声の方を見ると、なんと力也が空中から刀を法二目掛けて振り下ろしてきていたのだ!
「リキヤっ!?」
唐突な力也の登場に驚きの声を上げるミカ。一方、法二は力也に向かって右手を掲げる。すると、その右手から魔力的な障壁が発生し、力也の刀をはじき返したのだ。
「相変わらず、粗野で乱暴ですね。力也君。まるで、悪魔だ」
「そういうてめえも、相変わらず清廉潔白なこった。神にでもなったつもりかよ」
一撃を交えた後、お互いに軽く言い合う二人。そして一呼吸置いてから、まずは法二が口を開いた。
「神が定めし法と秩序の下、慎ましく日々を過ごす…。それが人間にとって最大の幸福なのです。力也君、君も今からでも遅くはない。その悪魔の力は、今こそ君に快楽を与えているが、いずれ身を滅ぼす事となる。その力を捨て、神に忠誠を誓うのです」
「けっ! 刺激も何もねえ退屈な日々で、一生神の奴隷になってろってか!? 冗談じゃねえ! そんな灰のような人生はまっぴら御免だぜ! そういうてめえこそ、そのままじゃ一生神の野郎にいいようにこき使われて、捨てられるだけだぞ! 目を覚ましやがれ!!」
法二の説得に、しかし力也は真っ向から反論する。そして、この会話で二人ともこのままでは交渉は平行線だと判断したのだろう。同時に視線をミカに向けた。
お前はどっちだ!? 貴女はどちらです? という二人の視線を突如向けられ、答えに詰まるミカ。が、その視線は唐突に現れた巨体に遮られてしまう。
「やめろ。お前らがどんな思想を持とうが咎める気は無いが、それをミカに押し付けるな」
その巨体…パスカルの上に乗っていた中道が、パスカルから降りながら法二と力也を制止する言葉を吐く。どうやら、パスカルの力を借りてここまで一気に跳躍してきたようだ。
そうして、中道、力也、法二の間に緊張が走る時間が続いたが、不意に法二が視線を外す。そして、二つ三つ頷いた後、
「僕はもう行かなければなりません。そして、次会う時が改心の最後のチャンスです。中道君も力也君も、そしてミカ様も。よく考える事ですね」
とだけ言うと、足早にカテドラルの内部に戻っていった。
「待て!」
と、その後姿を追いかけようとした力也だが、その背後に唐突にりえが現れ、間髪入れずに力也になにやら耳打ちをする。
「本当か!? そうか……ついにデビルリングが…」
何やら歓喜の声を上げる力也。そして、不意に中道とミカの方を向く。
「中道! ミカ! 俺ももう行かなければならん。今の法二と同じことを言うのは少し癪だが…次が最後だ。それまでに、俺かアイツのどちらに付くか決めとけよ!」
それだけ告げると、力也も意気揚々とカテドラルの中に入っていった。そして、以前と同じく中道に一礼をしてから力也の後を追うりえ。
「た、助けてくれてありがと、ナカミチ…」
法二と力也が去った後、おずおず…といった様子で中道に礼を言うミカ。これに、中道も軽く手を上げて反応する。
「でも…。もう、二人ともすっかり変わっちゃったね。リキヤはもう止まりそうにないし、ホウジも何だか別人みたいになってる…」
そうして、カテドラルの中に消えてしまった力也と法二に思いを馳せるミカ。確かに、力也は初対面の頃から危うさはあったが、今はもう果ての果てまで暴走を止める気は無い…と言った様子だ。
一方、法二も初対面の頃から法と秩序を重んじる傾向はあったが、今はもうあまりにもこの二つに固執し過ぎている感じがする。最早、別人だと言われても信じてしまう程だ。
「おーい! 聖園ミカさーん!!」
そんな中、階下からミカを呼ぶ声が聞こえる。見ると、隊長が手を振ってミカを呼んでいるではないか。
すぐに跳び下り、隊長に駆け寄るミカ。中道もすぐさまパスカルに飛び乗り、下に降りる。降りてきた二人と一匹に愛子が「大丈夫だった?」と声を掛けてくるが、三者とも頷いて隊長の前に移動する。
「残念ながら船は見つからなかったようです。ですが、こちらを…」
そう言って、ある方向を指差す隊長。そちらに視線を向けると、馬鹿でかい檻の中に捕らわれた、これまた馬鹿でかい亀がいたのだ。
「うおー。助けてくれー。何でも、何でもするからー」
「うわっ! 亀が喋った!? こ、この子も悪魔なの?」
そして、その人語を喋る亀にミカは驚きの声を上げる。中道も愛子もパスカルも目を見開いている辺り、かなり驚いている様だ。
「良く分かりませんが、どうやら食料として捕らわれていたようです。ですが、今海を渡れるのはこいつしかいない…と言う事で、連れてこられました」
対して、簡潔に説明してくれる隊長。正体不明なのは変わらないが、確かに今、海を渡るにはこの亀の力を借りるしかなさそうだ。幸い、その大きさゆえに人が三人四人乗ってもまだ余裕がある。
「分かった。助けてあげる。でも、代わりに暫く私達の船の代わりになって欲しいの」
「なるなるー。なるから助けてー」
ミカのお願いに、何処か軽い調子で同意する亀だった。
私は原作はニュートラルルートばかりやっていたので、実を言うとロウとカオスのルートのカテドラル以降のイベントはほとんどしらないんですよね…。特にロウは全くと言っていいほど知らない。
そう思って調べてみたら、ロウルートのロウヒーローもカオスルートのデビルリングを使ったカオスヒーローみたいにエンゼルリングを使って絶命するのかと思いきや、ロウルートのロウヒーローはカオスヒーローに直接殺されるらしくって、ちょっと「えっ?」ってなってます。ちょっと一回、ロウルートで…それも、どうせやるなら極ロウでやってみようかなぁ…。