新たな力を手に入れた一行。しかし、同時にある問題点も浮かび上がっていた。
中道が離れている間、休んでいて欲しいと言われていたミカと付き添いを頼まれていた愛子だったが、やはりじっとしているのはそわそわして落ち着かないという事で、東京タワー内部の人々に色々聞き込みをしていたそうなのだが、この時にこの問題点が判明した。
なんと…悪魔合体が出来なくなっていたのだ! 人々の中には邪教の館の主もいたのだが、彼曰く専用の施設がないと合体は出来ないと言われたのだ。
合体が出来ないとなると、中道のアクマ使いとしての成長が極端に鈍るし、お目当ての真のひのかぐつちも作成する事が出来ない。東京タワー意外の避難地は都庁とスガモプリズンだが、そのどちらも大津波という大災害を受けた今の状況では、施設が無事だとは思えない。
もし今も使える合体施設があるとするとカテドラルだが、攻め落とす! と決めた場所にその準備の為に訪れるなど行為としても危険だし、行動としても何だか間抜けだ。
どうしたものか…。と、悩む一行。とはいえ、いつまでも悩んでも居られない。中道達にはあまり時間が残されていないのだ。
というのも、かつて問題となったミカのスマホの充電の問題。これが再び重くのしかかってきているのだ。前回と違い、今回はスティーヴンはもういないし、彼以外の技術屋はいるがそもそも充電器作成分の資材がもうないのだ。全て大津波にさらわれてしまった。
なので、今ミカのスマホは電源を切ってある。これでどれくらい持つかは分からないが、急いだほうがいいのは間違いない。ミカと愛子が我慢できずにそわそわしていたのも勿論これが理由だ。逆に、中道はこのリスクを負ってでもミカには少し休息が必要だと判断したとも言える。
ともかく、いつまでも悩んでいても時間の無駄だと判断した一行は、少しでも情報を得る為に残った避難施設…この中で、都庁は幸いにもターミナルが繋がっていたのでこちらはすぐにいけると判断し、まずはターミナルが繋がっていない…直に向かうしかないスガモプリズンに向かう事に決めた。
そして、スガモプリズン内。残念ながら雰囲気は東京タワーとほぼ変わらない。意気消沈しているのも、ミカを見て俄かに色めき立つのもほぼ一緒だ。
ただ、そんな中で有力な情報が手に入る。かつて聞いた、スガモプリズンの最上階に捕らわれている人物。なんとその人物が合体に詳しいというのだ。
「―――なんじゃ? お前らは…」
急いで最上階を目指す一行。はたして、そこには一人の老人が牢屋の中に捕らわれていた。
「アンタが合体について詳しいと聞いてきた。地上は大津波に見舞われ、合体施設も全て喪失してしまった。なんとか合体をする事は出来ないか?」
「…そうか。ついにエンゼルリングを作る時が来たか…」
中道の質問に、何やら感慨深そうに…そして何故かミカを見ながら呟く老人。
「エンゼルリング…!? 貴方あのマンセマットの知り合いか何か!? 答えて! 今あの人は何処にいるの!?」
だが、この老人のこぼしたエンゼルリングという言葉にミカが激しく反応する。同じく、エンゼルリングと言う言葉を聞いた瞬間、中道も愛子も…そしてこの三人の雰囲気を察したパスカルも警戒顔になる。
「マ、マンセ……? 知らんぞそんな奴。そもそも、エンゼルリングはワシを除けば最上位の天使しか存在を知らん筈じゃ」
対して、ミカの剣幕に気圧されながらも首を傾げる老人。その様子からして本当にマンセマットの事は知らない様だ。
「そもそもあのエンゼルリングって言うのは何なの?」
「エンゼルリングは神の直属の四大天使に認められた者のみが身に着けられる神具。ウリエル、ラファエル、ガブリエルの三体を合体する事で作れる強大な力を秘めた装身具なのじゃ…が、おぬしらのその口ぶりからすると、もしや…もうエンゼルリングは顕現しておるのか…?」
訝し気な愛子の質問に、老人もなにやら考えながらも教えてくれる。と、同時に老人からの問い。これに一行は一斉に頷く。それを見て、
「―――何やら様子がおかしいのう…」
と、老人も不可解そうに首を傾げている。
「あんた…何者だ?」
そんな老人に、警戒心を滲ませながら改めて聞く中道。マンセマットと直接関係は無かったとしても、ここまでエンゼルリングに詳しいとなると、ロウにかかわりのある人物である可能性が非常に高い故の警戒心だろう。
「合体マスターと呼ばれていた…とだけ言っておこう。あまり詮索せんでくれ…」
その問いに、何やら暗い声で答える老人…合体マスター。どうやら、彼は彼で色々ある様だ。まあ、スガモプリズンの最上階…イメージ的には牢獄の一番奥に捕まってた人物だ。善人か悪人かの判断はつかないが、少なくとも何らかの重要人物だったのは間違いない。
「ワシからも質問させてくれ。エンゼルリングが目的でないなら、お前らは一体何しに来たんじゃ? ミカエルの奴が来たから、てっきりエンゼルリングが欲しいのかと…」
「私をそいつと同一視するのは止めて。私、そいつ大嫌いなの。私には聖園ミカっていう名前があるの」
そうして今度は合体マスターから質問が来たのだが、ミカを見ながらミカエルと口にした合体マスターに、ミカは魂をも凍えさせる程の冷酷な声で釘をさす。以前からミカエルの事を嫌ってはいたが、事ここに居たりその嫌いは極限まで振り切ってしまっている様だ。
「う…わ、分かった…。別人…ということじゃな? まあ、やつにしては威厳も何もない可愛らしい姿で顕現しておるなとは思ったが…」
その無数の針で突き刺されるようなとげとげしい威圧感に、合体マスターは完全に気後れしてしまう。のみならず、ミカの横にいた中道達ですら後ずさり冷や汗をかくほどだ。
「俺達は悪魔合体がしたい。だが、地上の合体施設は大津波によって全て失われてしまった。そこに、合体に詳しい人物がいると聞いてここに来たんだ。何とかならないか?」
「う、うむ…そういう事か…。なら、いつでも来い。ワシが合体を請け負ってやる。どうも、エンゼルリングだけ作って身を引く…と言う事は許されん状況の様じゃしな…」
一呼吸置いてから、改めて問い質す中道。対して、合体マスターはこれまでの少し気後れしている様子から一転、自信満々に言い切って見せた。
「請け負う…。施設もないのにできるのか?」
「伊達で合体マスターなど名乗っておらんよ。論より証拠、お前達…何やら強大な悪魔を封印した物を持っておるな? それをワシに貸せ」
怪しむパスカルに、しかし合体マスターは一切臆することなく催促してくる。物が物だけに少々渋る一行だったが、ここまで自信満々なら…とベリアルの封印された壺を合体マスターに差し出す。
「………やはり、この魔力はベリアルか! あの化け物を封印するとは、お前達もその若さでなかなかの使い手の様だな! では、この壺にこの錬気の剣を合体させれば…」
感心した様子ながらも、壺を右手に、懐から取り出した謎の剣を左手に構え、瞑想する合体マスター。すると、壺と剣が徐々に光に包まれ、中身が見えない程に光に覆われた後、今度は二つの光が一気に交じり合い、その混ざり合った光の中から一振りの剣が姿を現した!
「よし、出来た! ベリアルの力を宿した剣! 奴の強大な魔力と全てを焼き尽くす魔界の炎の二重撃で全てを薙ぎ払う強力凶悪な剣じゃ! これで切られれば天使や悪魔の最上位の奴らとて無事ではすまんじゃろう!!」
あのベリアルが放っていた赤黒い炎を纏う剣を高々と掲げながら剣の説明をする合体マスター。確かに、それくらい凄そうな風格が剣からは漂っている。
「確かに強そう…。あ、ね、ねえ! もしかして、この剣も合体できる!?」
受け取った剣を眺めながら呟くミカだが、ここで思い出したかのようにひのかぐつちを合体マスターに差し出した。
「なんと! これはひのかぐつちか!? じゃが、あの神聖な炎が出ておらんと言う事は、まだ真の力を取り戻してはおらんと言う事か…。無論できる! ただ、素材となる精霊は流石にワシも持っておらんから、素材だけは何とかしてくれ」
そのミカの要請に自信満々に答える合体マスター。おお~っ、と言った感動の面持ちでそんな合体マスターを見ていたミカだったが、
「お、おい! ミカさん、ここにいるか!?」
唐突に男が慌てた様子で場に乱入してくる。何事かと振り返るその場全員に、男は一息ついてから、口を開いた。
「今、東京タワーの方から入電があったんだ! 都庁にロウとカオスの悪魔どもが攻め入ってきた! 至急助けを送って欲しいってな!!」