「くそ…一度ならず二度までも…」「ぐあ…何だあのガキ…」「う…ぐ…つ、強え…」「に、人間じゃねえ…悪魔だ…奴は悪魔になったんだ…」
再びオザワの事務所を襲撃した力也、ミカ、中道、法二の四人。とはいえ、先頭で戦っているのは力也一人で、他の三人はその後をついて行っているだけど言うのが実情だ。
勿論、事務所側も今度は完全武装で対抗してくる。二度も襲撃を許しては面子に関わる故当然の事だが、悪魔の力を得た力也の前には成す術がない。私設警察など名乗ったところで、実態は碌な訓練も受けていないチンピラ同然の連中の様だったらしく、今の力也の敵ではなかった。
「よおオザワ。待たせたな、今度こそ決着つけてやるぜ」
「…貴様、さっきの小僧か? その姿を見る限り少しはやるようになったようだが、このお方には勝てんよ。タケミナカタ様、奴らを生け捕りにしてください。洗脳して、一生私の奴隷にしてやる」
事務所の奥にて、再びオザワ…及びタケミナカタと相まみえる四人。が、中道と法二は戦闘について行けないのは既に証明されているので、実際に対峙しているのは力也とミカの二人だ。
そして、再びタケミナカタを召喚するオザワ。ただ、発言こそ強気だがその声色にはどうも覇気が無い。まるで、勝ち目がない事を悟っている様な…。
だが、オザワの心境を量る間もなく戦闘は開始される。すぐさま以前の戦いで中道達を半壊させた衝撃波を放とうとするタケミナカタだが、
「させない!」
即座にミカに数発撃ちぬかれる。その銃撃に体勢を崩されたところに、
「おらぁ!」
今度は力也が持っていた剣で胴体に切りつける。不思議な事にその剣は炎を纏っており、その炎が切り付けられたタケミナカタの胴体に絡みつき燃やしていくではないか! 恐らくは、悪魔合体により身体能力向上以外にも魔法的な力を操れるようになったのだろう。
この連続攻撃に、さしものタケミナカタもその巨体をぐらつかせる。が、ここで倒れるのはこの悪魔のプライドが許さなかったのだろう。
全身を燃やされながらも剣を強く握りしめ、あの衝撃波を放ってきたのだ!
「っ! ふふんっ、こんな程度じゃ私は倒せないよ!」
その一撃を、やはりミカは腕でガードしてやり過ごす。ダメージもほぼなさそうだ。
「ぐあっ! くっ、ぐくっ……お、俺は…強くなった…こんな程度じゃ、もう倒れねえぜ…!」
一方、力也もミカに対抗するかのようにガードでやり過ごそうとする。しかし、片腕で余裕をもって弾き飛ばしていたミカと違い、両腕でしっかりガードしてもそれなりのダメージを負った様だ。残念ながら、ミカの域には未だ達してはいない様子。
「これで終わり!」
「デクのボウが! とっとと倒れやがれ!」
そして、再びのミカと力也の連続攻撃。この攻勢に、遂にタケミナカタは倒れる事となる。
「これで残るは貴方だけ! さあ、どうするの!?」
流れるような動作でオザワに銃を突きつけるミカ。一方、力也は床に膝をつき自分の腕を押さえている。先ほど、タケミナカタの衝撃波をガードした箇所だ。やはり無理をして受け止めていた様だ。
そしてオザワだが…少しの間を置いて、何とミカの前で膝を折り、両手を合わせたのだ!
「どういう理由で人間の様な変名を名乗っているのかは存じませんが、これまで犯した罪は懺悔致します。なので、どうかご慈悲を頂けないでしょうか………ミカエル様」
「ミカエル…!? ミカエルだって…!?」
そうして、すがるようにミカに慈悲を求めるオザワ。その時に出たミカエルという名に、これまで遠巻きに戦闘を見ていた法二が頓狂な声を上げる。
「間違いあるまい。神以外で天使の方々の長を名乗るのを許され、そして先程の神々しいまでの強さ、勇猛さ。ミカエル様、どうかご慈悲を…」
法二の声にゆっくりと頷き、尚も慈悲を求めるオザワ。
「ミ、ミカ…エル…? 誰の事を言ってるの? 前も言ったけど私の名前は聖園ミカ。あと、首長だったのも少し前までの事。今は何の肩書もないただのトリニティ生だよ」
しかし、突然謎の名前で呼ばれたミカは困惑するしかない。確かに名前の響きは少し似ているかもしれないが、間違いなく別人だと言い切れる。
「何をご冗談を…。誰と言われても貴女の事ですとしか…」
対して、諭すように言い聞かせようとするオザワだったが、その言葉は途中で止まってしまう。そして、ミカの姿を改めて確認した後、震える声で口を開いた。
「今は首長ではない…? ま、まさか…
「ミカエル様が…堕天なされた…!? まさか…そんな、そんな事が…! もし…もしそれが本当なら、もうこの世は終わりだ…」
驚愕の表情を見せるオザワ。更に、法二に至っては驚愕に絶望の色まで濃く表れている。
「ねえ! 何をブツブツ言ってるのか知らないけど、慈悲が欲しいって事は、反省してるって事? これまでの事を反省して、これからは真面目に過ごすって言うのなら、危害を加えるつもりはないよ」
そんなオザワや法二の思考をぶった切るように、少し荒い声で呼びかけた後、銃を下ろして問い質すミカ。ミカエルだのなんだのは、ミカにとっては知った事ではないのだ。
「あ、は、はい! これまでの事は懺悔し反省し、悔い改めて慎ましく謙虚に生きていきます。なので、どうかご慈悲を…」
「分かった。そこまでいうのなら今回はここまでにしてあげる。でも、次はないよ。もしまた悪いことをしたら」
「ふざけるなぁ!!」
震えて頭を下げるオザワにミカは頷く。が、次の瞬間、いつの間にかオザワの背後に回っていた力也が、怒声と共に背中からオザワを切り捨ててしまったのだ!
「な、なにをっ…!? ね、ねえ、ちょっと大丈夫!? だ………う……し、死んで…る…?」
慌ててオザワを抱えて呼びかけるミカだが、深々と切り付けられた背中の傷からは血がどくどくと吹き出し、だらんと下がった両腕には既に生気はない。
「堕天だか何だか知らねぇが、やっぱり天使ってのは甘い連中ばかりだな! オザワが…このクソ野郎が反省だの改心だのする訳ねえだろ!」
「―――そ、そんなの…そんなのやってみないとわからないじゃん! 時間が経てばきっと…」
「三十年だぞ! 三十年前からこいつは何一つ変わっちゃいねーんだ! それが、ちょっと脅された程度で改心なんかするか! このクソ野郎は死ぬまで…いや! たとえ死んでも改心なんかしねーよ!!」
そんなミカを責め立てる力也。死という概念を目の当たりにし、顔面蒼白になりながらもなんとか言い返すミカだが、それを更なる怒声で押し返す。
「ミカ! それと中道に法二! 悪いがここからは俺は一人でやらせてもらうぜ。お前らみたいな甘ちゃんといっしょにいたら、俺まで毒され腐っちまいそうだからな」
その流れで、突然の凶行に茫然としている中道と法二に向き直り宣言する力也。そして、誰も止める間もなく、力也はその場を後にするのだった。
因みにこのオザワ。続編の真・女神転生Ⅱにも死後の霊体として出てくるのですが、平和に街を治めていたのに悪のアクマ使いがやってきて私は滅ぼされた…とか平気で嘘をついてくるので、力也君には死んでも治らないと言わせています。