どうも。皆さんお気に入りや評価、感想ありがとうございます。励みになります。
本編の前に、皆さんに報告することがあります。
主人公の苗字ですが、今まで『西里(せいり)』としていましたが、これだと『生理』と言葉が被ると言われました。
深夜に突発的にこの小説と名前を考えたこともあり、今まで全然気づきませんでした。これを指摘され読み直すと、『西里(せいり)』が凄くノイズになり集中出来なくなったため、読み方だけ変更いたします。
これからは、本作の主人公を『西里 玲空(せり れく)』としますので、ご理解の程よろしくお願いいたします。
雄英高校、グラウンド。
入学式もオリエンテーションもすっ飛ばし、俺たちは相澤先生の号令でいきなり『個性把握テスト』を行うことになった。
しかも、最下位の者は見込み無しとして除籍処分になるという、とんでもないルール付きだ。
「
「す、すみません! ホムラの服は彼女の体と同じエネルギーで構成されてて、別の服にすると俺への出力がガタ落ちしちゃうんです!」
相澤先生の鋭い視線に俺が冷や汗をかきながら説明すると、先生は「……合理的じゃないな」とだけ呟いて手元のタブレットに視線を戻した。
しかし、陽光の下で堂々と露出度の高い赤い衣装で立つホムラの姿に、男子生徒数名から刺殺されそうなほどの視線が飛んできているのは間違いない。
テストが始まると、俺とホムラの制約が明確になった。
50メートル走や反復横跳びなど、俺たちは常に光の帯が切れない距離──つまり、ぴったりと寄り添いながら動かなければならないのだ。
「いきますよ玲空! せーのっ!」
「おうっ!」
ホムラから流れ込む強大なエーテルを身体強化に回し、二人並んで地を蹴る。記録は5秒台前半と悪くない数字だったが、小回りが利かない分、単独で動ける身体強化系と比べると少しタイムロスが生じてしまう。
「西里くん、すごいすごい! 息ぴったりだね!」
「葉隠ちゃんも、結構いい記録出てるじゃんか」
「えへへ、でしょー! ……でも、ずっとホムラさんと密着してるのは、ちょっとズルいと思うな」
「そうしないと、記録出せないんだよ」
姿は見えないが、絶対に頬を膨らませているであろう葉隠ちゃんに俺は苦笑いするしかなかった。
やがて、テストはソフトボール投げへと移った。
「西里」
ざわつくクラスメイトたちを他所に、相澤先生に急に名前を呼ばれた。
「お前、実技テストの成績トップだったな。中学の時、ソフトボール投げは何メートルだった?」
「えっと……60メートルくらいです」
「じゃあ、今回は『個性』を使って投げてみろ。円から出なきゃ何してもいい」
ボールを渡され、俺は投擲サークルの中に立つ。
相澤先生の言葉で、クラス全員の視線が俺──と、一緒にサークル内に入ってきたホムラに集中した。
「西里くんの個性、どこまで身体強化されるんだろう……」と緑谷が食い入るように見つめ、爆豪は舌打ちをして腕を組んでいる。峰田と上鳴に至っては「その子から離れろリア充!」とまだ呪詛を吐いていた。
「行くぞ、ホムラ。これ、頼む」
そう言って、俺は虚空から出現させた聖杯の剣を、ホムラに手渡す。すると、周りの奴らは「なんだアレ! 大剣か!?」とザワザワする。
「はい、玲空。いつでもいけますよ」
俺はボールをしっかりと握りしめる。
そして、ホムラが上にジャンプすると同時に、ボールを天高く、全力で放り投げた。
「ホムラッ!!」
「はいっ!!」
俺の投擲と完全にシンクロしたタイミングで、ホムラが剣を地面に叩きつける。
「『プロミネンスリボルト』!!」
大剣から放たれた爆炎が、俺が投げたボールの真下で炸裂し、強烈な上昇気流を発生させる。
「うおおおっ!?」
「ほ、炎!?」
「あつっ! 何だあの火力!?」
グラウンドに熱風が吹き荒れる。炎の柱に乗ったソフトボールは、まるでロケットのような速度で大空の彼方へと消えていった。
「……」
その凄まじい熱波を、クラスの最後尾から静かに見つめる者がいた。
右半分が白、左半分が赤の髪を持つ少年──轟焦凍だ。
吹き荒れる熱風に前髪を揺らしながら、轟のオッドアイは、玲空とホムラが放った規格外の『炎』から一時も離れなかった。
(……あの火力。まるで、あのクソ親父の……)
轟は無言のまま、自身の左半身――決して使わないと固く誓っている『炎の個性』が宿る左手を、ジャージのポケットの中でギュッと強く握りしめた。
その後。相澤先生が、ピッと音を鳴らして手元の計測器をクラス全員に向けた。
そこに表示されていた数字は──。
『850.3m』
「は、はっぴゃくぅ!?」
「マジかよ、大砲じゃんか……!」
どよめくクラスメイトたち。
俺とホムラはハイタッチを交わし、手応えを感じていた。
だが、相澤先生の目は少しも笑っていなかった。
彼は気怠そうに首の捕縛布を弄りながら、じろりと俺たちの間を繋ぐ青色の帯を睨みつけた。
「……確かに圧倒的な火力だが。お前、その女との間に繋がっている光の帯……それが切れたり、距離が離れたりしたら、お前自身はどう戦うつもりだ?」
「それは……」
「どんなに強い剣でも、振るう者が弱ければただの鉄屑だ。分断された時の対策がないなら、お前のその力は、実戦ではただのデカい的でしかないぞ」
的確すぎる指摘に、俺は息を呑んだ。
圧倒的な力に浮かれていた俺の足元を、相澤先生は容赦なく掬い上げてきたのだった。
その後。ボール投げは続き、俺の気を最も引いたのは、入試の時に声をかけてきた緑髪の男子──緑谷出久の投擲だった。
彼はそれまでの種目で個性を一切使っておらず、記録も振るっていなかった。悲痛な顔でサークルに立った緑谷は、腕を振りかぶった瞬間に相澤先生に個性を『抹消』され、「お前はヒーローになれない」と厳しい宣告を受けてしまう。
(確かに……強い力でも、反動で自分がボロボロになるなら、結局誰かに助けられることになる……)
俺も無個性時代に自分を鍛えていなければ、ホムラの力に耐えきれず自壊していたはずだ。相澤先生の言葉は、痛いほど理解できた。
だが──。
再びボールを構えた緑谷は、たった一本の指だけに全エネルギーを集中させ、ボールを空の彼方へと弾き飛ばしたのだ。
『705.3m』
「先生……! まだ、動けます……!」
右手の指を赤黒く腫れ上がらせながら、痛みに耐えて笑う緑谷。
その凄まじい執念と工夫に、俺は息を呑んだ。
「すげえ……。あいつ、自分の力をコントロールして……」
「玲空。あの方、とても綺麗な心の輝きを持っていますね」
ホムラも感心したように胸の前で手を組んでいる。
だが、その感動を切り裂くような怒号がグラウンドに響き渡った。
「おい……!! どういうことだコラァ!!」
全身から爆発の火花を散らしながら、鬼のような形相で緑谷に向かって突進していくツンツン頭の不良──爆豪勝己。
「デクてめェ!! ワケを言えや!!」
「うわあああっ!? かっちゃん!!」
爆豪が緑谷に飛びかかろうとした瞬間、彼の身体は相澤先生の放った『捕縛布』によって瞬時に雁字搦めにされた。
「……あの爆豪ってやつ。幼馴染って言ってたけど、どう見ても普通の友達のリアクションじゃないな」
「なんだか、とても複雑な感情が絡み合っているみたいですね……」
緑谷出久と爆豪勝己。
この雄英には、俺たちの想像を超える事情や、とんでもない執念を持った奴らがゴロゴロいる。俺は改めて、ここが日本最高のヒーロー育成機関なのだと思い知らされた。
そして、俺たちの個性把握テストは終わった。
結果は、ホムラと共に全ての項目で好成績を出した俺が1位。
2位に、適したアイテムを『創造』して好成績を記録した八百万百。
3位に、『氷』の個性を上手く使い成績を残した轟焦凍──といった具合に続いていった。
その後。相澤先生の「除籍処分は合理的な虚偽」という言葉により、最下位だった緑谷を含め全員が首の皮一枚繋がることになり、波乱の個性把握テストは幕を閉じた。
***
放課後。
初めての授業を終え、俺とホムラがカバンを持って教室を出ようとした時のことだった。
「おい、西里ィ……」
「ちょっとツラ貸せや、リア充野郎……」
教室の出入り口を塞ぐように、二つの影が立ち塞がった。
ブドウ頭の峰田実と、金髪の上鳴電気だ。二人の背後には、まるで地獄の底から這い上がってきた亡者のような、どす黒いオーラが渦巻いていた。
「えっと……峰田と、上鳴、だったよな? 何か用か?」
俺が後ずさると、二人は血走った目で俺を、いや、俺の背後にいるホムラをガン見しながらジリジリと距離を詰めてきた。
「用か、じゃねえよ……! お前、今日一日見てたけど、なんだその最高すぎる個性は!! 意志を持つだけじゃなくて、そんな爆乳美女が常に寄り添ってくれるなんて……そんなの、男の夢そのものじゃねーか!!」
「そうだぜ! しかもなんだよあの服! 目のやり場に困りすぎて、俺今日一日授業の内容一ミリも頭に入ってこなかったぞ!!」
峰田が血涙を流し、上鳴が頭を抱えて叫ぶ。
「ええと……」
「玲空、この方たちは……?」
ホムラが不思議そうに小首を傾げ、俺の背中からひょっこりと顔を出した。その動きに合わせて、豊かな胸元がぷるんと揺れる。
「「「ぐはぁっ!!」」」
その破壊力に、峰田と上鳴(ついでに見物していた瀬呂たち数名)が、胸を押さえて崩れ落ちた。
「おい西里! 吐け! 常に顕現してるってことは、まさか風呂も一緒に入ってんのか!? 夜寝る時も同じベッドなのかァ!?」
「答えろ! 答えによっては、俺の百万ボルトでお前を黒焦げにしてやる!!」
完全に理性を失っている男子たち。
俺は冷や汗をダラダラ流しながら、両手を振って否定しようとした。
「ち、違うって! 確かに常に一緒だけど、お風呂とか寝る時はちゃんと──」
「はい。私と玲空は、一心同体ですから。痛いのも、気持ちいいのも、全部二人で半分こなんですよ?」
「……は?」
ホムラが、悪気ゼロの満面の笑みで、とんでもない誤解を生む爆弾発言を投下した。
ダメージの共有や、感覚の共有のことを言っているだけなのだが、言葉のチョイスが致命的に悪かった。
「き、気持ちいいのも半分こぉぉぉぉ!?」
「上鳴! やれ! こいつはヒーロー科男子の
「うおおおおっ! ウェイ!(帯電)」
「ホムラ──ッ!! お前自分が何言ってるか分かってないだろ!? 誤解だ! 命だけはお助けをぉぉっ!!」
俺の悲痛な叫び声と、上鳴の放つ電撃の音が、夕暮れの雄英高校の廊下に虚しく響き渡った。