ホロ  オリ   作:raian sinra

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**【第38話】 悪魔の憂鬱と、波形に隠された震え(シークレット・シグナル)**

### Scene 1:午前2時00分・保健室の悪魔と、冷めない微熱

都内某所、癒月ちょこの自宅マンション。

防音設備が完璧に整えられた彼女の配信部屋(通称:保健室)は、間接照明の妖艶な光に包まれていた。

机の上には、数百万円は下らない最高級のバイノーラルマイク『KU100(ダミーヘッドマイク)』が鎮座している。先ほどまで行われていたASMR配信の余韻が、部屋の空気に微かに残っていた。

「……はぁ」

ちょこは、ピンク色のネグリジェ姿のまま、深く、長い溜息を吐き出した。

手元にあるスマートフォンを開くと、ホロライブのグループチャットが未だに賑わっている。

『ちょこ先生がチーフと親戚だったなんて、未だに信じられないッス!』

『でも、あのチーフに昔から世話焼いてもらってたなんて、ちょっと羨ましいにぇ』

『船長も戸籍いじって親戚になりたいワ……』

数日前、ReGLOSSの音乃瀬奏がコントロールルームに襲来し、チーフ・■■春樹を「パパ」と呼んで抱きついたあの事件。

その余波で、ちょこが春樹の『父方の親戚』であり、彼を「春樹にぃ」と呼ぶ間柄であることが、ホロメンたちに完全にバレてしまった。

当初ちょこは、自分の『魅惑のサキュバス』という大人のキャラクターが、「ただの親戚の妹(ちょこちゃん)」という属性によって崩壊してしまうのではないかと危惧していた。

しかし、蓋を開けてみれば、マリンやスバルたちは「チーフと昔からの縁がある」という事実を純粋に羨ましがり、ちょこのキャラクター自体が揺らぐことはなかった。

だから、ちょこの憂鬱の原因は、そこにはない。

「……奏ちゃん、か」

ちょこは、ベッドの上にゴロンと仰向けになり、天井を見つめた。

あの時、春樹は奏のタックルを極めて自然に受け止め、優しくその頭を撫でていた。

『俺がオムツを替えて、自転車の乗り方を教えて、初めてのシンセサイザーを買ってやった本物の身内だ』

その言葉を聞いた瞬間、ちょこの胸の奥で、黒くて重い、ドロドロとした感情が燻り始めたのだ。

(ちょこだって……春樹にぃに、オムツ替えてもらったし。自転車の乗り方も教わったし。……初めてのPCだって、組んでもらったのに)

幼い頃、泥んこになって転んで泣いていたちょこを、いつも無愛想な顔で、でも絶対に手を引いて助けてくれたのは春樹だった。

ホロライブに入り、サキュバスとしてのキャラクターを確立してからも、裏でずっと彼女のASMRの音響を完璧に調整し、守り続けてくれたのは春樹だった。

けれど。

ちょこは今、春樹に対して、奏のように無邪気に「春樹にぃ!」と抱きつくことができない。

(私には『大人のサキュバス』っていうプライドがある。……それに)

ちょこは、自分の胸元をギュッと握りしめた。

本当の理由は、そんなキャラクター設定の問題ではない。

ちょこは、春樹のことが『一人の男性』として、どうしようもなく好きなのだ。

だからこそ、彼から「ただの手のかかる親戚の妹」として扱われることが、我慢できないほど切なかった。

奏のように「家族(娘)」として無邪気に甘えることすらできず、かといってマリンたちのように「タレントとして色仕掛けで迫る」というビジネスのノリも、親戚という関係性が邪魔をして本気にされない。

「大人と、妹の境界線……。私、春樹にぃにとって、中途半端な場所にしかいられないじゃない……」

ちょこの瞳から、ポロリと一筋の涙がこぼれ、シーツに吸い込まれた。

胸を燻るこの焦燥感と嫉妬心をどうにかしなければ、いつかASMRの配信中にも声が震えてしまう。

ちょこはベッドから跳ね起き、クローゼットから私服のコートを引っ張り出した。

「……こんなところでウジウジ悩んでるなんて、私らしくないわね」

手作りの夜食を詰めたタッパーを紙袋に入れ、ちょこは深夜の東京へと車を走らせた。

向かう先は、天才エンジニアが棲む、地下の要塞。

### Scene 2:要塞への潜入と、無邪気なノイズ

午前3時15分。

カバー株式会社、地下第1テクニカル・コントロールルーム。

ちょこは、自分のIDカードで電子ロックを解除し、音を立てずに防音扉を開けた。

「……春樹にぃ」

声をかけようとしたちょこの足が、ピタリと止まる。

部屋の奥、メインコンソールに向かっている春樹は、ちょこの入室に気づいていないようだった。

彼はヘッドホンを片耳だけ外し、手元のスマートフォンから流れる『音声メッセージ』を聞きながら、ターミナルのパラメーターを調整していた。

『パパー! 今日のボイトレ、先生にすっごく褒められたよ! パパが作ってくれたイヤーモニターのおかげで、自分の声がめっちゃ聴きやすかったの! えへへ、今度ご褒美にケーキ買ってね!』

スマートフォンのスピーカーから漏れ聞こえてきたのは、音乃瀬奏の、屈託のない無邪気な声だった。

春樹は、その音声を聞き終えると、フッと――信じられないほど柔らかく、穏やかな笑みをこぼしたのだ。

「……まったく。あいつの耳の良さは天才的だが、その分モニター環境への依存度が高い。少しでも高音域が刺さるとピッチがズレるからな。……ディエッサーの閾値を、あと0.5dB深くしておくか」

春樹は独り言を呟きながら、奏のボーカルプロファイルを極めて丁寧に、まるで宝物を磨くような手つきで調整していく。

その光景を扉の隙間から見ていたちょこの胸に、ズキリと、鋭い痛みが走った。

(あんな顔……私のASMRの調整をしてる時には、絶対にしてくれないのに……)

春樹は、ちょこのASMRの波形を見る時、いつも「低音が膨張してる」「ノイズゲートの処理が重い」と、エンジニアとしての眉間にシワを寄せた険しい顔しかしない。

奏に向けるような「保護者としての純粋な愛情」がこもった笑顔は、親戚であるはずのちょこには、もう何年も向けられていなかった。

「……っ」

ちょこは、紙袋の持ち手をギュッと握りしめ、あえて足音を立てて部屋に踏み込んだ。

「あら〜、春樹にぃ。深夜の密室で、新人ちゃんの声を聞いてニヤニヤしてるなんて、チーフとしての威厳が台無しよぉ?」

いつもの、甘く、少し挑発的なサキュバスのトーン。

春樹は驚く様子もなく、椅子を回転させてちょこを見た。

「……癒月か。お前、また香水を変えたな。イランイランの香りが強すぎる。サーバーの吸気口から離れろ」

挨拶もそこそこに、飛んでくるのは無機質なクレーム。

「もー、相変わらずロマンがないわね! 夜更かししてる春樹にぃのために、特製のローストビーフ丼を作ってきてあげたのに、没収しちゃうわよ?」

ちょこは、ぷんぷんと怒ったふりをしながら、春樹のデスクに紙袋を置いた。

「いや、助かる。ちょうど小腹が空いていたところだ」

春樹は、ローストビーフ丼のタッパーを開け、一切の躊躇なく割り箸を割って肉を口に運んだ。

「……相変わらず、お前の作る肉料理は火の通し方が絶妙だな。美味い」

その、飾らない素直な感想。

昔から、春樹はちょこの料理だけは手放しで褒めてくれる。

(……そういうところなのよ、春樹にぃのズルいところは)

ちょこは、パイプ椅子に座り、春樹が食べる横顔をじっと見つめた。

そして、自分の中で燻っているドロドロとした感情を、強引に『大人の色気』というオブラートに包んで吐き出す決意をした。

### Scene 3:大人の色気と、見透かされる震え

「ねぇ、春樹にぃ」

ちょこは、パイプ椅子から立ち上がり、春樹の座るゲーミングチェアの背もたれに、後ろから両腕を回した。

彼女の豊満な胸元が、春樹の背中に微かに触れる。

「……おい、癒月。静電気が起きるといつも言ってるだろ」

「いいじゃない、少しぐらい。……それより、さっき奏ちゃんの声、すっごく優しい顔で聞いてたわね」

ちょこは、春樹の耳元に顔を近づけ、ASMRの時のようなウィスパーボイスで囁いた。

「奏ちゃんは、確かに可愛い『娘』だもんねぇ。……でも、春樹にぃは、いつまで私のことを『手のかかる親戚の妹』扱いするつもりなの?」

ちょこの指先が、春樹のシャツの襟元をそっとなぞる。

「私、もう立派な大人よ? 奏ちゃんみたいに無邪気に『パパ』なんて呼んで甘えられないけど……大人の女として、春樹にぃを『癒やして』あげることくらい、できるんだから」

それは、彼女がホロライブで培ってきた、何百万人ものリスナーを骨抜きにしてきた『魅惑のサキュバス』としての、渾身の誘惑だった。

これなら。親戚の妹としてではなく、一人の女性として、春樹の心を少しでも揺さぶることができるはずだ。

しかし。

春樹のタイピングの手が、ピタリと止まった。

彼は、ゆっくりと椅子を回転させ、ちょこの腕の中から抜け出した。

そして、極めて冷静な、エンジニア特有の鋭い眼差しで、ちょこの顔を真っ直ぐに見据えた。

「……癒月」

「な、なに……?」

「お前の今の声。フォルマント(共鳴周波数)のピークが、普段のASMR配信の時よりも、およそ150Hz(約半音)高くなっている。さらに、息継ぎ(ブレス)のインターバルが極端に短い。……交感神経が優位になり、心拍数が上がっている証拠だ」

春樹は、デスクの上のモニターを指差した。

「お前は、無理をして『大人の余裕』を作ろうとしているが、声帯の筋肉の緊張が波形に如実に表れている。……何か、深刻な悩みがあるな?」

「えっ……」

ちょこの目が見開かれる。

「ホロライブのリスナーなら誤魔化せるかもしれないが、俺の耳は誤魔化せない。お前の声の波形は、デビュー当時から毎日モニタリングしてるんだ。……お前の『震え(ノイズ)』くらい、コンマ1秒で気付く」

完璧な、データに基づく解析。

色仕掛けなど全く通用していない。それどころか、彼女が必死に隠そうとしていた「余裕のなさ」と「不安」を、音響工学という刃で完全に解体されてしまったのだ。

「……っ」

ちょこは、顔を真っ赤にして後ずさり、ギュッと自分の両腕を抱きしめた。

「な、なによそれ……っ! データとか、波形とか、そんなんばっかり……っ!」

ちょこの中から、「大人のサキュバス」の仮面が剥がれ落ちていく。

「春樹にぃのバカ!! いつもいつも、そうやって機械みたいに理詰めで返してきて……っ! 私がどんな気持ちで、こんな夜中に会いに来てるか、全然分かってないくせに!!」

ついに、ちょこの目から大粒の涙が溢れ出した。

「奏ちゃんには……っ、あんなに優しく頭撫でて、パパの顔するのに……っ! 私のことは、波形がどうのとか、静電気がどうのって、文句ばっかりじゃない……っ!!」

それは、何百万人を魅了するサキュバスの言葉ではない。

ただの、春樹のことが好きで好きでたまらない、不器用で寂しがり屋な「親戚の妹(ちょこ)」の、本音の叫びだった。

### Scene 4:ビッグダディの調律(サイレント・チューニング)

「私だって……っ、本当は奏ちゃんみたいに、素直に『春樹にぃ!』って抱きつきたいわよ……っ。でも、私にはキャラがあるし、もう大人だし……そんな恥ずかしいこと、できないじゃない……っ!」

ちょこは、泣きながらその場にしゃがみ込み、顔を覆った。

「私がいくら背伸びしても、春樹にぃにとっては、いつまでたっても『手のかかる親戚のガキ』なんでしょ……っ。奏ちゃんみたいに、可愛く甘えられない私なんて……可愛くないんでしょ……っ!」

コントロールルームに、ちょこの嗚咽だけが響く。

関係がバレたことへの不安ではない。一人の女性として見てもらえないことへの、深い絶望と自己嫌悪。

春樹は、静かに立ち上がり、泣きじゃくるちょこの前に歩み寄った。

「……おい、癒月。顔を上げろ」

「やだ……っ。どうせまた、理詰めで説教するんでしょ……っ」

「しない。いいから立て」

春樹は、ちょこの腕を掴み、少し強引に立ち上がらせた。

そして。

春樹は、泣き腫らしたちょこの顔を両手で挟み込み、親指でその涙を乱暴に、しかし確実に拭い取った。

「は、春樹にぃ……?」

驚いて目を丸くするちょこ。

「……お前は、本当にバカだな」

春樹は、至近距離でちょこの瞳を見つめ返し、深くため息をついた。

「俺がお前の波形を見て、文句ばっかり言ってる理由が分からないのか」

春樹は、手を離し、メインモニターの方へ歩いていった。

そして、一つの音声ファイルを開き、再生ボタンを押した。

『んー……いい子いい子。今日も一日、よく頑張ったわね……よしよし、ちゅっ♡』

スピーカーから流れてきたのは、つい数時間前に行われた、ちょこのASMR配信の切り抜き音声だった。

極上の、甘く蕩けるようなバイノーラル音声。

「……ひゃっ!? ちょ、ちょっと、なんでそれを急に大音量で流すのよ! 恥ずかしいじゃない!!」

ちょこが慌てて耳を塞ぐ。

「よく聴け。この音声の、お前の『中低音の豊かさ(チェストボイスの共鳴)』と、『吐息の減衰曲線(リリースタイム)』を」

春樹は、モニターの波形を指差した。

「これは、奏の無邪気な高音域のエネルギーとは全く違う。お前が何百時間もマイクに向かい、リスナーをどうやって癒やすかを研究し尽くして手に入れた、お前だけの『究極の武器』だ。……俺は、このお前の波形が、ホロライブの全タレントの中で一番『美しい』と思っている」

「えっ……」

ちょこの動きが止まる。

「奏は確かに可愛い親戚のガキだ。あいつはまだ未熟だから、俺が保護者としてわかりやすく手取り足取り設定をしてやる必要がある。……だがな」

春樹は、振り返り、不敵な笑みを浮かべた。

「お前はもう、俺の手助けなんかなくても、自分の力で何百万人ものリスナーを癒やせる『一流のエンターテイナー』だ。だから俺は、お前を『手のかかる妹』としてじゃなく、一人の『プロフェッショナル』として、一切の妥協なく厳しい調整をかけているんだよ」

春樹の言葉は、ちょこの抱えていた劣等感を、根底から覆すものだった。

「俺がお前に文句を言うのは、お前の波形が俺の想像を超えるほどのポテンシャルを持ってるからだ。……お前が奏みたいに子供っぽく甘えてこないのは、お前が『大人の癒月ちょこ』として、自分の足で立っている証拠だろ」

春樹は、再びちょこの前に歩み寄った。

そして、今度は――昔、泥んこになった彼女を慰めた時と同じように。

しかし、あの頃よりはずっと『大人の女性』を尊重する、絶妙な距離感で。

春樹の大きく無骨な手が、ちょこの頭にポン、と優しく置かれた。

「……お前は、お前のままでいい。無理に背伸びして色仕掛けなんかするな。俺の前では、お前の一番リラックスした、自然な波形(声)だけを聞かせてくれればいいんだよ、ちょこ」

その、低くて、不器用で、世界で一番温かい声。

ちょこの心の中で燻っていた黒い感情が、春樹の絶対的な肯定によって、一瞬にして浄化されていくのを感じた。

「……ずるい」

ちょこは、ポロポロと新しい涙をこぼしながら、今度は春樹の胸に顔を押し付けた。

「春樹にぃは、本当にずるい……っ。そんなこと言われたら、私、もっと春樹にぃのこと好きになっちゃうじゃない……っ」

「おいおい。俺はエンジニアだ。恋愛フラグの処理は……」

「うるさい! 今はただ、このまま頭撫でてなさいよ、バカ!!」

ちょこは、サキュバスのプライドも何もかも投げ捨てて、ただの『ちょこ』として、大好きな春樹の胸で思い切り泣いた。

春樹は「やれやれ」と溜息をつきながらも、静電気の文句を言うこともなく、彼女が泣き止むまで、静かにその背中を撫で続けた。

### Scene 5:サキュバスの逆襲と、甘い香りの余韻

30分後。

すっかり泣き止み、メイクを直したちょこは、パイプ椅子に座って、春樹がローストビーフ丼の残りを平らげるのを見ていた。

「……まったく。お前が泣き喚くから、肉が冷めちゃったじゃないか」

「冷めても美味しいでしょ? ちょこ特製なんだから」

ちょこは、もう不安の欠片もない、いつもの妖艶で余裕のある笑顔を取り戻していた。

「……まあな。ごちそうさまでした」

春樹が手を合わせ、タッパーを片付ける。

「さて、と。私もそろそろ帰って寝るわ。明日はお昼から収録だし」

ちょこは立ち上がり、コートを羽織った。

「ああ。夜道に気をつけて帰れよ。それと、マイクの防湿フィルター、予備を俺のロッカーに入れてあるから、帰りに持っていけ」

「ふふっ、ありがとう。春樹にぃ」

ちょこは、防音扉に向かって歩き出し、ドアノブに手をかけた。

しかし、そこでふと足を止め、振り返った。

「……ねえ、春樹にぃ」

「なんだ」

ちょこは、極上のサキュバススマイルを浮かべ、甘く、悪戯っぽいトーンで言った。

「春樹にぃが私の波形を『一番美しい』って思ってくれてることは分かったわ。……でもね、私、春樹にぃのことが『男として』好きなのは、変わらないから」

「……は?」

春樹が虚を突かれた顔をする。

「奏ちゃんには『パパ』として愛想を振りまいてればいいわ。でも、私はいつか絶対に、その鉄壁の防壁を突破して、春樹にぃの心電図(波形)をぐちゃぐちゃに乱してあげるんだから。……覚悟しておきなさいよね♡」

バチンッ! と、完璧なウインクを投げ放ち。

ちょこは、嵐のようにコントロールルームから去っていった。

バタン、と防音扉が閉まる。

静寂が戻った部屋で、春樹は数秒間呆然としていたが、やがて深く、重いため息をついた。

「……まったく。泣いたり怒ったり誘惑したり、本当に忙しい奴だ」

春樹はメインモニターに向き直り、コーヒーマグを手に取った。

しかし、部屋の空気には、ちょこが纏っていたイランイランの甘い香りが、まだ微かに、けれど確かな存在感を持って残っていた。

「……香水がキツいと言ったのにな」

春樹は、少しだけ口元を緩め、キーボードに指を置いた。

天才エンジニアの絶対零度の防壁に、また一つ、甘くて厄介なノイズが刻み込まれた夜。

ホロライブという騒がしい家族は、これからも彼に休む暇など与えてはくれないのだ。

 

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