ヒカ碁の世界で緒方精次となったからには、打倒saiを掲げたい。   作:くま子

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第十話 本因坊

 新緑がまぶしい五月に幕を開けた本因坊戦七番勝負は、緒方が初戦を華麗な打ち回しで制したものの、その後は現本因坊・桑原の粘りに苦しめられ、盛夏の中、ついに最終局へともつれ込んでいた。

 老舗ホテルの一室での一局。

 1日目は緒方の封じ手で幕を閉じた。

 夕食へ向かう関係者たちの輪から外れて歩いていた緒方へ、桑原がゆるりと声をかけた。

 

「ところでキミ、封じ手はちゃんと書けたかな?」

「は?」

 

 何の用かと思えば、要は盤外戦術だった。

 緒方にとって、挑戦手合いはこれが初めてだ。しかも、ここまでの六局はすべて桑原が封じている。

 慣れない封じ手で、疲労や迷いから誤った選択をしなかったか──そう揺さぶりをかけに来たのだ。

 

(クソジジイが……)

 

 実は緒方にとって、桑原は忘れ難い相手だった。

 人生2周目を生きているとはいえ、緒方にも慣れないこと、初めてのことは山ほどある。その最たるものが、囲碁のプロ棋士になるということだった。

 その第一歩となる新初段シリーズ。

 緒方を迎え撃ったのは、桑原本因坊だった。

 顔合わせからわずか数分。新しい世界への期待に胸を躍らせていた緒方は、桑原の盤外戦術に見事に呑まれ、縮こまった惨めな碁を打たされることとなった。

 対局後、あれほど情けなさに顔を赤くした一局は、後にも先にもあれきりだ。今でこそプロの洗礼のひとつとして飲み込めているが、当時は随分引きずったものだった。

 

「ふひゃひゃ。不安になってくるじゃろう」

 

 散々煽った末に不敵に笑う桑原に対し、緒方は意外にも静かに笑っていた。

 

(……そういえば、原作でもこんな流れだったか)

 

 いつか見た光景(シーン)

 だが、揺らがないのは既知の展開だからではない。

 

「確かに二択で迷いましたね」

「そうじゃろう」

「ですが問題ありません。どちらに打っても、俺が勝つので」

「……ほぉ」

 

 迷いなく言い切った緒方に、桑原の眉がわずかに跳ねた。

 2人きりの廊下に、ヒリついた空気が流れる。

 

「爺さん。悪いが、その名は必ず貰うぜ」

 

 ガラリと口調を崩した緒方が、悠然と笑う。

 

「俺が、その名でもって迎え討たなきゃならない奴が、上がってくるんでな」

 

 この世界は、原作から随分とずれてしまった。

 それでも、佐為がヒカルのために存在しているのなら、遠からず扇を託して消えるはずだ。

 だがそれは、師弟として最も重要な真剣勝負を交わさぬまま、2人が別れるということでもあった。

 

 その事実に思い至った時、緒方は思わず身震いした。

 もし、自分がタイトル戦に挑む前に塔矢行洋が引退してしまったら。

 間に合わなかったことを、どれほど悔やむだろう。どれほどやりきれない思いを抱くだろう。

 だが、緒方には佐為の喪失を防ぐ術など思い浮かばない。

 それに──たとえ方法があったとしても、実行する気はなかった。

 

 ならば、せめて代役を務めるべきだろう。

 仮にも師を名乗る身であり、佐為に黒星をつけた人間なのだから。

 

 なにより、あれほど本人(・・)と打ち合い、鍛えられておきながら、「獲れませんでした」では男が廃る。

 

「そんなビッグイベントが控えておるなら、老骨に鞭を打たんといかんなぁ」

「ああ。引退後の楽しみにしておいてくれ」

 

 睨み合った両者はそれ以上言葉を交わすことなく、互いに背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 季節は巡り、夜の長さが日ごとに増す9月。

 きらびやかなホテルの大宴会場。就位式の壇上でスポットライトを浴び、允許状を記者たちへ掲げているのは、新本因坊となった緒方だった。

 白紋付に縞袴。紫の羽織紐を合わせたその姿は、恵まれた体格も相まって、威風堂々たる風格を漂わせていた。

 

『なんと麗しい……』

 

 会場の隅で、立食パーティーのローストビーフに目を輝かせる制服姿のヒカルの隣で、佐為がうっとりと壇上を見つめていた。

 

(かっこいいのは認めるけどさ。白い着物って、なんか結婚式みたいじゃね?)

『何を言うのですヒカル。 あれは武家の白ですよ!』

 

 佐為は興奮したように身を乗り出した。

 

『ご覧なさい、あの御衣の凛とした美しさ! そして胸元の深紫を!なんと粋なことでしょう‼︎まさに、本因坊の家督を継ぐ者にふさわしい、品格と佇まいです』

(テンションたっけぇ……)

 

 佐為は緒方に、並々ならぬ恩義と情を抱いている。

 現役最強と謳われる棋士に引き合わせてもらい、孤独な夜を慰める膨大な棋譜を与えられ、さらには世界中の棋士と打てる環境まで整えられた。

 そして、今世で最も多く盤を挟んだ好敵手でもある。

 今や佐為は、緒方のためなら──死んでいるのだが──命すら惜しまないのではないかと思えるほど傾倒しており、七番勝負が始まってからは、その勝敗に一喜一憂するあまり、余波を受けるヒカルがぐったりする始末だった。

 一局終わるごとに緒方と検討を重ね、自ら桑原の棋風を研究し、勝負の前には必ず緒方の武運を祈る。

 その熱の入りようは、棋院で緒方を見かけた際に、『ふれーふれー、お・が・た!』と、どこで覚えたのか今風の応援をし始め、ヒカルを驚愕に固まらせるほどだった。

 

 アイドルを前にしたファンのようにキャーキャー騒ぐ佐為とは対照的に、ヒカルは手持ち無沙汰に壇上を眺めていた。

 知り合いもほとんどおらず、立食パーティーが始まるまでは暇なのだ。

 

(なんか、『俺の時代だ、文句あるか』って感じだなぁ……)

 

 本人に聞けば、緊張してんだよと返ってくるだけなのだが、その泰然とした印象に、ヒカルには己の師が酷く遠い人のように思えた。

 

 盾の授与など興味のない話題が続き、ヒカルの視線がふらりと逸れる。

 なんとなく目に留まったのは、会場の中でもひときわ注目を集める一団だった。

 塔矢名人と、その門下生たち。

 その中で凛とした佇まいで壇上を見つめるアキラに、ヒカルの胸がチクリと痛んだ。

 

 名人に挨拶に伺った時、アキラはヒカルに一瞥すら投げてよこさなかった。

 若獅子戦の時と、同じだった。

 あの時も、院生など意識するにも値しないとばかりに無視され、1回戦で敗退したこともあり、結局その背を遠くから眺めることしかできなかった。

 

 今一度、壇上へ視線を戻す。

 ヒカルは、まだ一度も緒方と互先で打ったことがない。常に置き石があり、今もなお二子局だ。

 けれども、盤の向こうに座る勝負師としての緒方を、ヒカルは何度も間近で目にしている。

 

(早く、強くなりたい。プロになって、もっともっと強くなって──)

 

 そうすれば、アキラだけでなく、緒方の視線も自分を捉えてくれるのではないだろうか。

 プロ試験開始まで、後数日。

 まだスタートラインにすら立てていない自分を実感しながら、ヒカルは憧れだけではない眼差しを壇上へ向ける。

 そんなヒカルを、佐為だけが静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

467 :検討中の名無しさん

緒方本因坊のブログにおめでとうしに行ったら

とんでもねぇ内容が更新されてやがる

 

469 :検討中の名無しさん

RX-7お前かよwwwwwww

 

470 :検討中の名無しさん

sai、マウス持つのも難しい身の上って……

 

472 :検討中の名無しさん

真っ赤なRX-7乗ってる緒方九段説、正解で草

 

475 :検討中の名無しさん

お前らがネタにし続けた結果
本人から答え合わせ来たぞ

 

476 :検討中の名無しさん

saiおじいちゃん…… (´;ω;`)

 

480 :検討中の名無しさん

急に重い話来てビビった

 

482 :検討中の名無しさん

だからネット対局だけなのか

 

484 :検討中の名無しさん

身バレすると周りに迷惑かかるから本名明かさないって
なんか納得したわ

 

488 :検討中の名無しさん

緒方本因坊ブログまとめ

 

・RX-7=緒方本因坊本人でした


・saiの代理人やります


・saiは身体的事情でネット対局のみ


・碁石やマウス持つのも困難


・身バレすると周囲に迷惑かかるので本名等非公開


・今後もWGN継続


・実力者との対局希望


・申し込みは緒方本因坊経由で

 

以上

 

490 :検討中の名無しさん

>>488

有能

 

496 :検討中の名無しさん

five君、マウス操作までしてあげてたのか……

 

497 :検討中の名無しさん

「おじいちゃん、今日は韓国の人来てるよ」

 

503 :検討中の名無しさん

ちょっと泣けてきた

 

505 :検討中の名無しさん

急に家族愛スレになるな

 

508 :検討中の名無しさん

five君、寝たきりのお爺ちゃんの面倒見ながら

囲碁覚えたのか

 

510 :検討中の名無しさん

隣で「そこはコスミじゃ」
とか言われ続ける環境

 

513 :検討中の名無しさん

英才教育すぎる

 

514 :検討中の名無しさん

なんで孫説が確定みたいな流れになってんだよ


 

519 :検討中の名無しさん

>>514

saiはおそらく寝たきりやで

可愛い孫でも妄想しないと、重すぎるやん


 

520 :検討中の名無しさん

世界中から対局申請届いてるだろうな

 

523 :検討中の名無しさん

本因坊の窓口業務想像したら草

 

528 :検討中の名無しさん

「sai先生、本日は韓国の李九段から申し込みが」


「ほう……受けてみるか」

 

530 :検討中の名無しさん

緒方本因坊のせいで、俺の中のsaiが組長に

 

538 :検討中の名無しさん

RX-7=緒方本因坊確定した今
あの観戦拒否対局の価値ヤバくね?

 

541 :検討中の名無しさん

見せろォ!!!!!!


棋譜を見せろォ!!!!!!!!

 

567 :検討中の名無しさん

実力者との対局希望


オラワクワクしてくっぞ

 

572 :検討中の名無しさん

韓国勢絶対申し込むだろこれ

 

576 :検討中の名無しさん

HanRiver来るか?

 

580 :検討中の名無しさん

redstarも絶対来る

 

595 :検討中の名無しさん

でも緒方本因坊が窓口じゃ
下手な奴対局申し込めなくね?

 

597 :検討中の名無しさん

sai先生と打ちたいです!二段です!
とか送れる空気じゃない

 

601 :検討中の名無しさん

実質プロ高段者専門窓口だろこれw

 

602 :検討中の名無しさん

緒方本因坊が選別してるの想像すると怖い

 

606 :検討中の名無しさん

「……君では役不足だ」
とか普通に返ってきそう

 

608 :検討中の名無しさん

誤用発見。役不足警察だ!

 

619 :検討中の名無しさん

>>601

本因坊になってから代理人名乗ったのって
そういうことだろ

 

621 :検討中の名無しさん

タイトル保持者が窓口なら変なの弾けるし

 

622 :検討中の名無しさん

sai側の事情考えるとまあ妥当ではある

 

629 :検討中の名無しさん

タイトルホルダーがマネージャー業すんのか

さすがsai

 

634 :検討中の名無しさん

緒方本因坊「本日の挑戦者はこちらです」

 

636 :検討中の名無しさん

インテリヤクザをアゴで使うsai

やはり組長では?

 

638 :検討中の名無しさん

ポジション的に名人が組長

saiは会長だろ

 

640 :検討中の名無しさん

面接を突破できる気がしない

 

643 :検討中の名無しさん

つまり何も変わらないな

 

644 :検討中の名無しさん

そいや俺らfive君に蹴られてんのか

 

646 :検討中の名無しさん

「おじいちゃん今疲れてるから」
カチッ

 

649 :検討中の名無しさん

地味にfive君権力持ってて草

 

652 :検討中の名無しさん

five君がマウス持ってるとは限らないわけで

 

658 :検討中の名無しさん

saiおじいちゃんと孫のfive君って

緒方ブログ読んでも否定されてなくね?

 

660 :検討中の名無しさん

むしろ補強まである

 

731 :検討中の名無しさん

緒方本因坊って塔矢門下なんだし
名人vs.saiはないんですか

 

736 :検討中の名無しさん

実現したら鯖落ちだな

 

740 :検討中の名無しさん

緒方本因坊なら普通に組めそうなんだが

 

744 :検討中の名無しさん

塔矢名人がネット碁やるイメージ無さすぎる

 

748 :検討中の名無しさん

でもsaiの存在知ってるよな絶対

 

753 :検討中の名無しさん

緒方本因坊、君には期待しているよ

 

758 :検討中の名無しさん

期待と言えば

次から観戦開けてくれるんですよね?

 

762 :検討中の名無しさん

開いてなかったらブログに突撃する奴が出るぞ

オレとか

 

803 :検討中の名無しさん

これからsai見ると安心しそう

 

808 :検討中の名無しさん

生存確認扱いで草

 

812 :検討中の名無しさん

キターの代わりに生存レスですねわかります

 

817 :検討中の名無しさん

(´;ω;`)
長生きしてくれsaiおじいちゃん

 




就位式は時系列的に、第十一話とばして第十二話の途中らへんなんですが、ここに入れると収まりが良いので入れました。
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