監察官のちょっと奇妙な冒険   作:プロメイア推しの人

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これは、俺がよく分からん機械になるお話だ。

 

「全員動くな!!!動けばこいつを殺す!!!」

 

「きゃぁぁぁぁ!!!!」

 

今まで世界で何度口にされたか分からぬ程の定型文。

銀行の一番左端の受付。もっとも出口から遠い場所から、その声は銀行に響いた。

 

「金を持ってこい!!ありったけだ!!!」

 

銀行にいるボンプは、全て床に突っ伏している。

どうやら、愉快犯ではなく計画犯のようだ。

ボンプをハッキングし、通報を出来なくしているのだろう。

 

コツ………

 

「な、なんだてめぇ!!」

 

男が焦りの声を上げたのを聞き、眼を瞑っていた市民も目を開けた。

 

コツコツ………

 

「こ、こっちくんじゃねぇ!!こいつがどうなってもいいのか!!」

 

その声でようやく、歩き続けたその男は歩みを止めた。

ポケットに手を突っ込んだまま、男は口を開いた。

 

「さっさと人質を解放しろ」

 

「は、はぁ!!??」

 

目の前の男の言葉に、強盗犯も驚きを隠せない。

無理もない。

計画を練りに練ったというのに、この男はさっさと全てを台無しにしろと言うのだから。

 

「う、うるせぇ!ぶっころすぞ!!!」

 

強盗犯は人質に向けた銃を、構えなおし、目の前の男に向けた。

 

「撃ってみろよ」

 

「………」

 

強盗犯の喉を、ねばっこい唾液が通る。

強盗犯は、これが初犯だった。拳銃など持っているだけで恐れ多い。

 

「チキン野郎が」

 

男の言葉は、強盗犯の苦い記憶を呼び起こした。

中学、高校。醜く、汚く、幼く、恥ずべき過去の自分。

 

 

銃声が、轟く。

 

 

奇跡か、必然か。

銃弾は確かに男の額を捉えた。

 

 

 

「いい腕だな」

 

 

 

銃弾の衝撃によって顎をあげ、天井を仰がされた男が、喋った。

男が頭を戻せば、銃弾の命中箇所には黒ずみが残っているだけ。

そこから、カランコロンと銃弾が転がり落ちた。

 

強盗犯は驚きというよりも、恐怖が勝っていた。

この時代だ。目の前の人間にしか見えない男が知能構造体であってもおかしくはない。

だが、自分が持っている銃は特別製と聞いている。

知能構造体もものともせずに、打ち抜けると聞いていた。

 

「じゃあ次俺の番な」

 

男は右手をポケットから取り出した。

そこには、正しく人間の手と呼べるものが出てきたが、その認識をすぐに改める事になる。

 

ガコン

 

小さく響く音。

その音を境に男の腕は変形し、メカメカしい腕へと変化する。

そのまま男は体を引き、構えた。

 

「こ、こいつがどうなってもいいのか!!」

 

男の言う通り、人質がいる。

本来ならば、手出しは出来ない。

 

()()()()()()()()()()()()

 

全て、見透かされた。

 

「じゃ、ちょっとくらい我慢してな」

 

男の腕が赤く光る。

距離が離れていても、関係ないのだろう。

確固たる自信をもって、男は構えている。

 

 

 

「赫灼熱拳」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは何をやってるんですか!!!!」

 

「うぅ………ごめんちゃむ………」

 

「それは何ぞ?」

 

「なんか白いやつっす」

 

「反省してるんですか!?」

 

「してるちゃむ………」

 

「全身火傷は、どう考えてもやりすぎです!!!」

 

「だって~一番早いし~」

 

「だからと言って………」

 

「まぁまぁ朱鳶よ。市民の被害はゼロ。さして我々も文句は言えまい」

 

「先輩まで………」

 

「青衣先輩!あざっす!!」

 

「その代わり、今度茶にでも行こうぞ」

 

「喜んで!」

 

そんなこんなで、俺は迎えに来てた車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

「いや~お迎え頼んじゃってすみません。セヴェリアンさん」

 

「………それはいいが、また彼女に迷惑を掛けたのか?」

 

「あれは違くて」

 

かくかくしかじか。

 

「……文句を言われる筋はあるだろう」

 

「いやまぁ否定は出来ないっすけど」

 

「君は事件に巻き込まれる機能でもついているのか?」

 

「そんなのセヴェリアンさんが一番知ってるじゃないですか~」

 

「………それもそうか」

 

おっと。自己紹介が、まだだった。

 

俺の名前はフラマ。フラだったり、フラマだったり。呼ばれ方は色々。

覚えてくれると嬉しいぞい。

お察しの良い人……というより、ヒロ〇カを見てる人は、お気づきだろう。

 

俺は、日本生まれだ。

 

ま~やばいよね。朝、目が覚めたらゴミ捨て場に眠ってましたとさ。

それで何か体も機械になってるし。

大概にsayよ!

と、最初はおもったけど、まぁ人間慣れるもんよ。こっち来たのは結構前だし。

 

今となっちゃしっかりお仕事にも付けております。

監察官!!名前の響きがかっくいいぃぃぃ!!

 

「どうかしたか?」

 

「いえ!自分の仕事に改めて誇りを持ったまでです!!」

 

「………そ、そうか」

 

ちなみに、日本にいた頃の俺はぴちぴちの男子高校生。

アニメだって見るし、ゲームだってするし、友達と遊びに行ったりもしてた。

かのじょ?知らない単語ですね。ボケが。

 

そんな俺に、一つ困った事がある。

ゼンレスゾーンゼロを、俺は………………。

 

 

 

知らない!!!!

 

 

 

おいおい。こういうのは、転生者が知りこんでる世界に行って、俺つえ~するんじゃないのかよ!!

こっちが勝手に知ってる美少女キャラのトラウマを知って、救って、惚れられるみたいなノリじゃないのかよ!!

大概にsayよ!(二回目)

 

「今度はどうした」

 

「世界に怒りを抱いています」

 

「………そ、そうか」

 

こちらは、俺の上司のセヴェリアンさん。犬耳。かっこいいよね。

もう一人、俺と同じ部下がいるんだけど。今はいないからまた今度ね。

 

他にも知り合いはまぁまぁいる。

まぁそれも出会った時に紹介していこうか。

 

「強盗犯の所持していた銃だが、通常で流通しているものではない」

 

セヴェリアンさんは、運転席からこちらを見ることなく言った。

なんすかなんすか。めちゃくちゃかっこいい話じゃないすか。

 

「知能構造体なぞ容易に撃ち抜ける。本人はそう聞かされていたらしい」

 

「実際は俺のおでこで跳ねましたけどね」

 

ちょっとめりこんじゃったけど。いてて。

 

「君の身体を基準に話をするな。あれは十分に危険な代物だ」

 

「マジすか、こっわ」

 

「………君の楽観姿勢を見習いたいものだ」

 

「そんな~照れても何も出ないっすよ~?」

 

「褒めていない」

 

うぅ………いじわるちゃむ。

まぁ暇だし。俺の昔話でも話すか。

ん?作者が次に何書くか迷ってるから適当に過去編にするだけだろって?

 

消えろ。ぶっ飛ばされんうちにな。

 

 

 

 

 

 

昔話と言っても、別に大した話じゃない。

 

どこにでもいる高校生だった。

 

朝は母親に叩き起こされ、眠い目を擦りながら制服に袖を通し、パンを咥えるほど漫画みたいなことはしないけど、まぁそれっぽく慌ただしく家を出る。

 

教室では友達とくだらない話をして、授業中はノートを取っているフリをしながら落書きをして、昼休みには購買の争奪戦に負けて絶望する。

 

放課後はゲーセンに寄ったり、家でゲームしたり、動画を見たり、アニメの感想で友達と盛り上がったり。

 

本当に、それだけ。

 

特別な才能があったわけでもない。

誰かに選ばれるような理由があったわけでもない。

ましてや、世界を救う使命なんてものを背負っていた覚えもない。

 

俺はただ、普通だった。

普通に生きて、普通に笑って、普通に明日が来ると思っていた。

その日も、そうだった。

 

「じゃあなー」

 

「おう、また明日」

 

それが、最後に覚えている元の世界の会話だった。

 

いや、正確には違うかもしれない。

家に帰った記憶も、夕飯を食べた記憶も、風呂に入った記憶も、スマホを触っていた記憶も、あるような気がする。

 

けれど、そこから先が曖昧だ。

 

眠ったのか。

倒れたのか。

死んだのか。

 

そこは、今でも分からない。

ただ一つだけ、はっきり覚えていることがある。

 

 

 

次に目を覚ました時、俺はゴミ捨て場にいた。

 

 

 

「…………」

 

最初は、夢だと思った。

 

だってそうだろ。

目を開けたら知らない天井、ならまだ分かる。あるあるだけど。

いや、それも大概だけど。

 

でも俺の場合、知らない天井ですらなかった。

 

見えたのは、薄汚れた路地裏の空。

鼻を突くような鉄と油の臭い。

どこかで鳴っている機械音。

 

そして、俺の上に積まれていた、なんかよく分からん金属片。

 

「……え?」

 

出た声は、自分でも情けないくらい間抜けだった。

 

起き上がろうとして、違和感に気付く。

 

身体が重い。

 

いや、重いというより、知らない。

 

自分の身体なのに、自分の身体じゃない。

腕を動かそうとすれば、内側で何かが擦れるような感触がする。

足を動かせば、骨とは違う何かが噛み合う音がした。

 

「は?」

 

俺は右手を見た。

 

そこには、手があった。

 

ちゃんと五本指で、爪もあって、肌の色も人間のそれだった。

 

でも分かる。

 

これは違う。

 

見た目だけが人間で、中身はもっと別のものだ。

 

「……いやいやいやいや」

 

笑った。

笑うしかなかった。

 

「なにこれドッキリ?どこ?カメラどこ?」

 

辺りを見回す。

もちろん、カメラなんて見つからない。

 

代わりに見つかったのは、俺を見て固まっている小さな機械みたいなやつだった。

 

丸っこい身体。

短い手足。

よく分からん耳みたいなパーツ。

 

後に俺がボンプと知る存在である。

そいつは俺と目が合うと、数秒ほど沈黙したあと、短い悲鳴みたいな電子音を上げた。

 

「ちょ、待て待て!俺も被害者側!どっちかっていうと助けてほしい側!」

 

必死に手を伸ばした。

 

その瞬間。

 

 

 

ガコン。

 

 

 

右腕が、開いた。

 

いや、開いたという表現が合っているかは分からない。

手首から肘にかけて、皮膚に見えていた部分がずれて、内側からいかつい機械が出てきた。

 

ボンプは完全に固まった。

 

俺も、もちろん固まった。

 

「…………」

 

「…………」

 

無言の時間が流れる。

そして俺は、できるだけ優しい声で言った。

 

「今の、俺じゃないです」

 

ボンプは逃げた。

 

まぁ、そりゃそう。

 

俺だって逃げたい。

 

自分から。

 

「……どうすんだ、これ」

 

立ち上がる。

足は動く。

腕も動く。

呼吸もできる。

 

でも、身体の奥に、知らない熱がある。

 

人間の身体には絶対にないはずの、炉みたいなものが、腹の奥で静かに燃えていた。

 

その熱が、俺に教えてくる。

 

お前はもう、前と同じではない。

 

そう言われている気がした。

 

「……帰りてぇ」

 

口から出た言葉は、思ったより小さかった。

 

強がる余裕なんてなかった。

ふざける余裕もなかった。

 

見知らぬ世界。

見知らぬ身体。

通じない常識。

帰る方法も分からない。

 

スマホはない。

財布もない。

学生証もない。

 

あるのは、よく分からない改造済みの身体だけ。

異世界転生ものなら、ここで美少女が拾ってくれるところだろう。

 

優しく手を差し伸べてくれて、

「大丈夫ですか?」なんて声を掛けてくれて、

そのまま物語が始まる。

 

そういうもんだろ。

 

そうであれよ。

 

頼むから。

 

 

 

「もしかして……また…お宝?」

「そうかも………」

 

 

 

「美少女キタぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

「急に動いた」

 

 

 

 

と、こんなんである。

ニコの姉貴に拾われて、なんやかんやあって監察官になったという訳だ。

 

アンビーとビリーとは今でも仲良いし、姉貴にはたまに、プレゼントを送ってる。

全部売ってるかもだけど。

 

俺がいなくなってから、猫も来たらしい。猫!?!?

 

「ここでいいか?」

 

「あ、すみません!ここで大丈夫です!ありがとうございました!」

 

「気をつけて」

 

「セヴェリアンさんも!お気をつけて!!」

 

黒塗りの車から降りて、俺は自分の家へ戻る。

俺の家は至って普通of普通。だが、それでいい!

それこそが楽園なのだぁ!!

 

「ただいまぁ!!」

 

誰もいないけども、こういうのを言うのは俺の性格上の話だ。掘り下げんなよい。

俺だって!!帰ったら、元気な女の子にただいま!って笑顔で言って欲しいよ!!

料理、出来てるよ!お風呂も!!なんて言われてぇよ!

………それとも………//。なんて蠱惑的な目で見られてぇよ!!

 

「クソぉぉぉ!!!」

 

という訳で、俺は今日も自炊をするのであった。

 

 




好評だったら続けます~。
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