監察官のちょっと奇妙な冒険   作:プロメイア推しの人

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虚狩りって称号かっこよすぎん?俺もそういうの欲しい。

「柳さん、お久しぶりっす!」

 

「お久しぶりです。監察官の方はどうですか?」

 

「めっちゃ楽しいっす!」

 

「それは紹介した甲斐がありました」

 

今日は六課の皆に久しぶりに会いに来た。

ふふふ………何を隠そう。俺は元々ホロウ六課なのである………。

 

ん?じゃあファンもいるのかって?

残念だな!!俺はあくまで非正規!!表舞台に立つ事は許されていない!!!

クソう!!!(血涙)

 

「久しいな、フラマ」

 

「お久しぶりっす!雅さん!!」

 

こちら、最強無敵の雅さん。

虚狩りっていう、まじやばい人です。

 

「どうだ、今から模擬戦を」

 

「それは無理です!!」

 

むか~し、雅さんから六課にスカウトされたんだけど、その時に一回戦った。

あくまでHIAのデータ上で。

結果、俺は頭と胴が泣き別れ。雅さんは全身がちょっと火傷したくらい。

 

無理無理無理無理。

 

「あ~!!フラ(にぃ)!!」

「フラさん………」

 

右は蒼角。左は悠真。

どっちも俺の同僚だ。元だけども。

 

「蒼角ぅぅ!!お久~!!!」

 

俺に飛び込んできた蒼角をそのまま抱きかかえる。

高いたか~い。

ちなみにロリコンじゃねぇからぁぁ!!この可愛さぁ!

 

「うわ~!!高~い!!!」

 

なんやこの生物、カワいすぎやろ。

 

それで。

 

「悠真はな~んで顔が死んでんの」

 

「はい………」

 

壊れちゃった。

 

「フラマ隊員の行っていた仕事を、浅羽隊員に与えてみたんです」

 

「あ~………そゆことで」

 

「監察官に不満があるのなら、戻ってきてもらってもと思っていたのですが………」

「そういう訳にもいかないようですね」

 

「すんません。俺の我儘で」

 

「こちらのただの愚痴です。気にしないでいいですよ」

「とはいえ、あなたが楽しそうで安心しました」

 

柳さんはそう言って、いつもの落ち着いた笑みを浮かべた。

 

「いやぁ、監察官も大変っすけどね。でも、なんだかんだ楽しいっすよ。セヴェリアンさんも良い人ですし」

 

「それは何よりです」

 

「犬耳だし」

 

「そこは関係ありますか?」

 

「大いにあります」

 

犬可愛いよね。

即答したら、柳さんは少しだけ困ったように笑った。

雅さんは真面目な顔で聞いている。

 

「フラマは犬が好きなのか」

 

「はい!犬可愛いですよね!」

 

「………狐はどうだ?」

 

「狐も好きです!!コンコン!!」

 

俺は両手で狐ポーズを取りながらそう言う。

 

これが日本が誇る、オタク大好き狐コンコンである。

 

「フラ兄、狐さんだー!」

 

蒼角がきゃっきゃと笑う。

 

かわいい。

この笑顔を守るためなら、俺は世界の一つや二つ燃やせる。

 

「コンコン。悪い子はいねぇがー」

 

「それ狐じゃなくないですか……?」

 

悠真が机に突っ伏したまま、死にかけの声で突っ込んできた。

 

生きてたんだ、悠真。

てっきり書類に魂を吸われたのかと。

 

そんな俺たちのやり取りを見て、雅さんは少しだけ黙っていた。

 

「……そうか」

 

「はい?」

 

「狐も、好きか」

 

「好きっすね。犬も猫も狐も好きです。もふもふは世界を救うので」

 

「もふもふ……」

 

ぽつり、と。

 

本当に小さな声だった。

 

けれど俺の耳は聞き逃さなかった。

なぜなら俺は、もふもふという単語に対してだけ聴力が三倍になる男だからである。

ちゃんと当社比だぞ。

 

「はい。もふもふです」

 

「……そうか」

 

雅さんは真面目な顔で頷いた。

 

真面目な顔で、もふもふを受け入れた。

 

「フラマは、そういうものが好きなのだな」

 

「大好きっすね。犬も狐も、耳とか尻尾とか、こう……命が助かる感じがします」

 

「命が」

 

「助かります」

 

「そうか」

 

雅さんはまた少し黙った。

そして、なぜか視線を横に逸らした。

 

ん?

どうした?

俺なんか変なこと言った?

いや、今さらか。

俺はだいたい変なことしか言ってない。

 

「なら」

 

雅さんが、ゆっくりと口を開いた。

いつもより、ほんの少しだけ声が小さかった。

 

「触ってみる……か?」

 

「…………」

 

時が止まった。(ザ・ワールドォォ!!)

 

いや、嘘。

たぶん止まってない。

でも俺の中では止まった。

 

今、何と?

 

触ってみる、か?

 

何を?

 

いや、文脈的に一つしかない。

 

耳。

 

雅さんの狐耳。

 

「え」

 

間抜けな声が出た。

雅さんは俺と目を合わせないまま、ほんの少しだけ耳を伏せた。

 

「嫌なら、いい」

 

「嫌なわけないじゃないですか!!!!」

 

声がデカくなった。

 

柳さんがそっと目を伏せた。

悠真が机に突っ伏したまま肩を震わせた。

蒼角は「おー!」と謎に盛り上がっている。

 

「では……少しだけだ」

 

「はい。少しだけ。俺、紳士なので」

 

「紳士は自分で紳士と言わないと思います」

 

柳さんの冷静な一撃が飛んできた。

 

痛い。

でも今の俺は無敵である。

なぜなら、これからもふもふに触れるから。

 

俺は恐る恐る手を伸ばした。

 

銀行強盗の銃弾を額で受けた時より緊張している。

何なら雅さんと模擬戦した時より緊張している。

あの時は死んだ。

今回は尊さで死ぬかもしれない。

 

指先が、そっと耳に触れた。

 

「…………」

 

やわらかい。

 

いや、待て。

 

やわらかい。

 

語彙は、ここで死にました。

俺の中の国語辞典が真っ赤に燃えた。

残った言葉は、やわらかい、すごい、ありがとう、だけである。

 

「……どうだ」

 

雅さんが小さく聞いた。

 

その声が、少しだけ硬い。

いや、照れてる?

照れてます?

もしかして照れてます?

 

耳もほんのり動いた。

 

「めちゃくちゃ……もふもふです……」

 

「そうか」

 

雅さんは短く答えた。

けれど、その横顔はいつもより少しだけ赤い気がした。

 

気のせい?

いや気のせいじゃない。

俺の目は節穴だが、もふもふ関連だけは信頼できる。

 

「フラ兄、いいなー!」

 

蒼角がぴょんぴょん跳ねる。

 

「蒼角も触りたいか?」

 

雅さんが尋ねると、蒼角は目を輝かせた。

 

「いいの!?」

 

「ああ」

 

「やったー!」

 

助かった。

蒼角が入ってくれたおかげで、空気が爆発せずに済んだ。

 

俺一人だったら危なかった。

主に俺の心臓が。多分もう人間のはないけど。

悠真がぼそっと言う。

 

「フラさん、顔すごいですよ」

 

「どんな顔?」

 

「宝くじ当たった人」

 

「実質当たっただろ」

 

「否定できないのが嫌ですね」

 

柳さんは口元に手を当てて、微笑んでいた。

 

「課長が自分から許可を出すのは珍しいですね」

 

「柳」

 

「何でもありません」

 

出た。

何でもない。

これは何でもあるやつです。

雅さんは咳払いを一つした。

 

「……次に来る時は、メロンを頼む」

 

「はい! 最上級のやつ持ってきます!」

 

「普通でいい」

 

「いや、ここは妥協できません。今のもふもふ代として」

 

「代金ではない」

 

「では感謝の証として」

 

雅さんは少し困ったように、けれど嫌ではなさそうに目を伏せた。

 

「……なら、受け取る」

 

あ。

 

なんか今の、ずるい。

 

そんな静かに言われたら、こっちが変に意識するだろ。

いや、俺は意識してませんけど?

全然してませんけど?

ちょっとコアの稼働音がうるさいだけですけど?

 

六課は相変わらずだった。

 

柳さんは全部見透かしてそうで、

悠真は疲れた顔で笑っていて、

蒼角は楽しそうで、

雅さんは強くて、怖くて、少しだけ柔らかかった。

 

「じゃ、次はメロン持ってきます」

 

「待っている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お師匠~!!お久です~!!」

 

「なんだ、お前さんか」

 

「はい!お前さんです!」

 

「フラさ~ん!!久しぶりです~!!」

 

「福姉~~!!!相変わらずもふもふ~!!」

 

「うひゃぁ!くすぐったいです~!!」

 

相変わらずお耳がもふもふ~。気持ちいい~。

 

「お~!!フラ兄弟子じゃないか!帰ってたのか!!」

 

「潘~!!………ちょっと太った?」

 

「………言わないでくれ!お師匠に叱られる」

 

と、言う訳で俺はちょっと昔に雲嶽山に入門していたのだ。

………一年いかないくらいだけども。

 

最近になって、初めて皆が下山してきたってリンさんから聞いた。

あの変な事件をちょっと手伝って、その後ちょっと経って再び舞い戻って来たのである。

 

「釈は………いないっすよね」

 

「まぁ………な」

 

「すんませんお師匠。変な気つかわせちゃって」

 

「お前さんのせいじゃない。気にするな」

 

「あれ?そう言えば瞬はどこに?」

 

「瞬光ちゃんは今、虚狩りの任務に行ってます!」

 

「あ~……いつ頃になりますかね?」

 

「今日中には帰るって言ってたましたよ」

 

「じゃ、待ちますか~」

 

「仕事の方はいいのか?」

 

「大丈夫っす!今日は休みなので!!」

「ってな訳で潘!!厨房借りるぞぉ!!勝負だ!!!」

 

「よ~し!負けるつもりはないぞぉ!!」

 

 

 

 

「つ、疲れた~…………」

 

今日は、虚狩りの任務の日。

ホロウで沢山のエーテリアスを倒した後、私は帰路に就いていた。

 

(やっぱり、緊張しちゃうな~)

 

あの日から、青溟剣に少し近づけたっていうか………使いこなせてる気はするけれど。

その分、身体的な疲労が大きいかも。

 

「………ん、いい匂い」

 

帰り道の途中で、民家から漂ってきたいい匂い。

思わずぐ~っとお腹が鳴りかける。

 

(早く帰ろっ!)

 

帰ったら、多分潘さんが美味しい料理を作ってくれてる筈!

しばらくして、適当館のほのかな光が見えてきた。

 

「ただいまー……」

 

適当館の扉を開けた瞬間、ふわっと湯気と香ばしい匂いが流れてきた。

 

あ、好きな匂いだ。

 

疲れていたはずの身体が、それだけで少し軽くなる。

任務の後で足も腕も重かったのに、胸の奥だけがふわっと温かくなった。

 

「おかえりなさい、瞬光ちゃん!」

 

「戻ったか、瞬光」

 

福姉とお師匠の声。

それだけでも安心するのに、厨房の方から聞こえてきた声に、私は思わず足を止めた。

 

「潘!その火加減、完璧すぎる!さすが俺の兄弟子!」

 

「フラ兄弟子こそ、その盛り付けは見事だ!」

 

「ふっ……俺は盛り付けに魂を込める男……」

 

「それは初めて聞いたぞ!」

 

「今考えた!」

 

その声を聞いた瞬間、疲れがどこかへ飛んでいった。

嘘みたいに、胸が跳ねる。

私は厨房を覗いた。

そこには、腕まくりをして潘さんと並んで料理をしているフラ(にぃ)がいた。

 

「……フラ兄?」

 

私が呼ぶと、フ兄はぱっと顔を上げた。

そして、いつもの笑顔で笑う。

 

「おかえり、瞬」

 

その一言だけで、頬が熱くなる。

ずるい。

任務帰りで疲れている時に、そんな顔で迎えられたら、嬉しくならない方が無理だ。

 

「ただいま、フラ兄」

 

自分でも声が少し柔らかくなったのが分かった。

フラ兄は気付いているのか、いないのか。

たぶん、気付いてない。そういうところも、少しだけ悔しい。

 

「今日は休みだったからさ。顔出しに来た」

 

「そうなんだ……」

 

もっと色々聞きたいのに、言葉がすぐに出てこない。

久しぶりに会えたのが嬉しくて。

厨房にいる姿が懐かしくて。

それに、私のためにも作ってくれているのかな、なんて思ったら、余計に胸が落ち着かなくなる。

 

「瞬光ちゃん、ちょうど出来たところだ!」

 

潘さんが大きな皿を机に置く。

並んだ料理は、どれもすごく綺麗だった。

 

潘さんの料理は、優しくて丁寧。

見ているだけでほっとする。

 

フラ兄の料理は、少し華やかで、でも雑じゃない。

勢いがあるのに、ちゃんと細かいところまで気を配ってある。

二人とも、本当に上手い。

 

「……すごい」

 

思わず声が漏れた。

 

「だろ?」

 

フラ兄が少し得意げに笑う。

その顔を見たら、また胸がきゅっとした。

 

「うん。すごく美味しそう」

 

「いっぱい食えよ。今日の俺と潘はかなり強い」

 

「料理で強いって言うんだ」

 

私は小さく笑った。

フラ兄の言葉は、少し変で、でも聞いていると楽しい。

ずっと聞いていたくなる。

席に座ると、フラ兄が私の前に皿を置いてくれた。

 

「瞬、任務お疲れ」

 

「……うん」

 

その声が、優しかった。

さっきまで張りつめていたものが、ゆっくりほどけていく。

 

「ありがとう、フラ兄」

 

私がそう言うと、フラ兄は少し照れたように鼻の下をこすった。

 

「あー、うん。どういたしまして」

 

その仕草が、なんだか可愛く見えてしまって、私は慌てて料理に視線を落とした。

だめ。

顔が熱い。

 

「瞬光」

 

そこで、お師匠が湯呑みを置いた。

 

「まったく………私の弟子をすぐ持っていきおって」

 

「も、持っていくなんて、そんな!」

 

私は慌てて首を振る。

でも、言いながら少しだけ思ってしまった。

 

もしフラ兄が手を引いてくれたら。

私は、たぶんついて行ってしまう。

そんなことを考えて、また頬が熱くなった。

 

「瞬、顔赤いぞ。任務で熱でも出たか?」

 

フラ兄が心配そうに覗き込んでくる。

 

近い。

 

近い近い近い。

 

「だ、大丈夫」

 

「本当か?」

 

「うん。大丈夫だから」

 

本当は全然大丈夫じゃない。

心臓がうるさい。

青溟剣を握っている時より緊張している気がする。

福姉がにこにこと私たちを見ていた。

 

「瞬光ちゃん、嬉しそうですね~」

 

「福姉……!」

 

「ふふ、いいことです~」

 

お師匠は少しだけ面白くなさそうに茶を飲む。

 

「飯が冷めるぞ」

 

「あ、うん」

 

私は箸を取って、料理を一口食べた。

 

「……おいしい」

 

本当に、おいしかった。

任務の疲れに染みる味。

温かくて、優しくて、少しだけ元気が出る味。

 

「本当か?」

 

フラ兄が嬉しそうに身を乗り出す。

 

「うん。すごくおいしい」

 

「よっしゃ」

 

その笑顔を見て、私まで嬉しくなる。

潘さんも満足げに笑っていた。

 

「今日はフラ兄弟子と俺の合作だからな!」

 

「うん。二人ともすごい」

 

私がそう言うと、フラ兄は胸を張った。

その素直さに、私はまた笑ってしまった。

 

久しぶりのフラ兄。

温かいご飯。

少し拗ねたお師匠。

笑っている福姉と潘さん。

 

任務の疲れは、もうほとんど消えていた。

 

「フラ兄」

 

「ん?」

 

「また、作ってね」

 

そう言うだけなのに、少し勇気がいった。

フラ兄は一瞬だけ目を丸くして、それから嬉しそうに笑った。

 

「任せろ。瞬のためなら、いつでも作る」

 

心臓が、跳ねた。

たぶんフラ兄は、何も考えずに言っている。

でも、私はそうじゃない。

その言葉を、しばらく忘れられそうになかった。

 

 

 

 





フラマ……なんか、かっこいい異名欲しい。


雅……雅にとってフラマは騒がしく、掴みどころがなく、けれど不思議と傍に置きたくなる男。
総一郎にバレないように遊びに行ったり、バレないように花を送ったり。とにかく総一郎にフラマの事がバレないように気を使っている。

瞬光……瞬光にとっていつも突然現れて、笑って、彼女の疲れをほどいてくれる男。
アキラに異性の好みを聞いたり、ダイアリンと照に相談してみたり、色々必死である。
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