監察官のちょっと奇妙な冒険   作:プロメイア推しの人

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ちなみに、この世界の時刻はver2.6終了時点となっております。
妄想エンジェルのやつね。



悪い………やっぱ辛えわ………

「リンさん、お久しぶりです~」

 

「フラマじゃん!久しぶり~!!」

「っていうか、この前の事件でフラマは大丈夫だった?」

 

「あぁ全然っす!何が起こってたかは知らないんすけどね」

 

「知らない?結構おっきな事件じゃなかった?」

 

「俺、軟禁されてたんで」

 

「な、軟禁!?」

 

「ハッキングされたらやばいんで。しゃあなしっす。シーシィアに付いてってたら、俺が狙われてたかもしれないですし」

 

「そっか……大変だったね」

 

「シャットダウンモードとやらを、初めてやったんですけど、それ使ったらすぐでしたけどね」

「あ、そうだ。おすすめの映画あります?俺が前好きって言った感じの」

 

「あ~和風みたいなジャンルだよね」

「ちょっと待ってね!調べてくる」

 

今日の俺は、Random Playっていうビデオ屋に来ている。

ここの店長さんとは、邪兎屋の時からお世話になってて、俺もこうしてたまにビデオを借りに来る。

 

一応この世界にも雅さんが使ってるように刀があったり、畳があったり。

昔の日本的な文化もある。それを題材にした映画はやっぱり俺のお気に入り。

 

一時期は俺が日本で見た作品をこっちで出せば億万長者……なんて考えた事もあったけど。

郷に入っては郷に従え、だ。こっちの作品も面白いのばっかだし。

 

お、落ち着いて………ふ、フラマ………」

 

「何かありました?」

 

「今、ルミナススクエアの映画館でさ!フラマが好きそうな映画が上映されてて………」

 

「お~!ほんとっすか!!」

 

「そ、それで………その………」

 

「じゃあ、リンさん一緒に行きません?暇だったらでいいですけど」

 

「う、うん!それじゃ行こ行こ!!」

 

 

「ンナ、ンナナ!!(リン!凄い頑張った!!)」

 

「そうだね。18ちゃん。リンにしては勇気を出したと思う」

 

「ンナ~(まだまだ長そう~)」

 

 

 

 

上映中、フラマはずっと楽しそうだった。

 

もちろん、声を出して騒ぐ訳ではない。

けれど、良い構図が出るたびに目が輝き、殺陣の場面ではほんの少しだけ前のめりになる。

それが、子供っぽくて思わず微笑んでしまった。

 

リンは、スクリーンよりも隣の横顔を見てしまう瞬間が何度かあった。

 

映画そのものは、静かな作品だった。

 

刀を失った浪人が、流れ着いた村で小さな家族に助けられ、やがてその村を守るためにもう一度刀を取る。

派手な爆発も、過剰な台詞もない。

ただ、誰かを守る理由が少しずつ積み重なっていく映画だった。

 

中盤。

浪人が、村の親子と囲炉裏を囲む場面があった。

 

母親が不器用に握った飯を差し出し、父親が「遠慮せず食え」と笑う。

子供は浪人の刀を怖がりながらも、少しずつ隣に座るようになる。

 

何でもない場面だった。

 

戦いもない。

重要な秘密が明かされる訳でもない。

ただ、誰かが誰かにご飯をよそい、温かい場所へ招き入れるだけの場面。

 

その時、隣のフラマがふっと静かになった。

 

リンは最初、映画に集中しているのだと思った。

 

けれど、違った。

 

スクリーンの光に照らされたフラマの頬を、涙が一筋だけ伝っていた。

 

「……フラマ?」

 

小さく声をかける。

 

フラマは、少し遅れて瞬きをした。

自分でも泣いていることに気づいていなかったように、慌てて袖で目元を拭う。

 

「わ、すみません。なんか、変に来ちゃいました」

 

声はいつもの明るさを保とうとしていた。

 

でも、少しだけ掠れていた。

 

リンは映画の音に紛れるくらいの声で聞く。

 

「大丈夫?」

 

フラマは、スクリーンを見たまま小さく笑った。

 

「大丈夫っす。ほんと、大丈夫なんですけど……今の場面、ちょっと両親を思い出しちゃって」

 

「昔、うちもあんな感じで、飯の時だけ妙に賑やかだったんですよ」

 

リンは何も言わなかった。

 

相槌だけで急かしたくなかった。

 

フラマは涙を拭って、少し照れたように続ける。

 

「普段は俺が何かやらかして怒られてばっかだったんですけど、飯の時だけは父さんが変な話して、母さんが笑って、それで俺もつられて笑って……なんか、そういうの思い出しました」

 

「映画ってすごいっすね。刀の映画見に来たはずなのに、こういう何でもない場面で刺してくるんすから」

 

そう言って笑うフラマの横顔は、いつもより少し幼く見えた。

 

明るくて、素直で、どこか眩しい人。

でも、その明るさの奥に、ちゃんと失くしたものがある。

 

リンは胸の奥がきゅっと締めつけられるような感覚を覚えた。

 

「……そっか」

 

短く返すのが精一杯だった。

 

でも、それだけでは足りない気がして、リンは小さな声で続ける。

 

「フラマがそういう話してくれるの、私は嬉しいよ」

 

「映画を見て、思い出したものをちゃんと言葉にしてくれるのって……なんか、すごく大事なことだと思うから」

 

フラマは少しだけ驚いたようにリンを見た。

 

それから、いつもの明るい笑顔を少しだけ取り戻す。

 

「リンさん、やっぱ映画見るの上手いっすね。感想だけじゃなくて、人の気持ちまで拾ってくれる感じがする」

 

「そ、そんな大げさじゃないよ」

 

「いや、ほんとに。今日、リンさんと来てよかったです。一人だったら、たぶん泣いたの誤魔化して終わってたんで」

 

その言葉に、リンの心臓が一つ跳ねた。

 

フラマは何でもないようにスクリーンへ視線を戻す。

本人はきっと、自分がどれだけ真っ直ぐな言葉を投げたか分かっていない。

 

リンは少しだけ俯いて、手元のポップコーンを見た。

 

キャラメル味の甘い匂いがする。

けれど、胸の奥はそれよりずっと甘くて、少し痛かった。

 

「……うん。私も、今日一緒に来られてよかった」

 

フラマは嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、最後までちゃんと見ましょう。これ、絶対ラストも良いやつっすよ」

 

「ふふっ、切り替え早いね」

 

「泣いた分、集中力上がりました」

 

「そういうもの?」

 

「たぶん!」

 

明るく言うフラマに、リンもつられて笑った。

 

スクリーンでは、浪人が静かに刀を取っていた。

 

けれどリンにとって、その映画で一番印象に残ったのは、きっと戦いの場面ではない。

 

隣で涙を拭いながら、両親のことを少しだけ話してくれたフラマの声。

 

その方が、ずっと胸に残る気がした。

 

 

 

 

映画が終わると、フラマはしばらく座席に座ったままだった。

 

エンドロールの白い文字が、暗いスクリーンをゆっくり流れていく。

 

「……いや、良かったっすね」

 

いつもの明るさが戻ってきている。

でも、少しだけ柔らかい声だった。

 

「殺陣も良かったんですけど、今回は飯の場面が一番刺さりました。ああいう、戦う理由を言葉で説明しないで見せるの、ずるいっすよね」

 

リンは頷いた。

 

「うん。私も、あそこ好き。きっとあの場面があるから、最後に刀を取るところがちゃんと重くなるんだと思う」

 

「分かります。守りたいものを先に見せられてるから、戦う場面がただのアクションじゃなくなるんすよね」

 

フラマはそう言ってから、少し照れたように笑った。

 

「あと……さっきは心配かけてすみません」

 

「心配はしたけど、嫌じゃなかったよ。むしろ、少しだけフラマのことを知れた気がしたから」

 

リンがそう言うと、フラマは目を丸くした。

 

それから、ぱっと明るく笑う。

 

「じゃあ、また映画見に行きましょう。俺、リンさんとなら感想言いやすいですし。次は泣いてもすぐバレますけど」

 

「バレたら、また大丈夫?って聞くよ」

 

「それはありがたいっすね。じゃあ安心して泣けます」

 

「映画館で泣く前提なんだ」

 

「良い映画なら泣きます!」

 

フラマは堂々と言った。

 

リンは笑ってしまった。

 

明るくて、素直で、少し鈍感で。

でも、人の言葉をちゃんと受け取ってくれる。

 

その横顔を見ながら、リンは思った。

 

次も、また誘いたい。

 

今度は勢いじゃなくて。

ちゃんと、自分の言葉で。

 

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