監察官のちょっと奇妙な冒険   作:プロメイア推しの人

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なんかこう、多対一ってよくないと思うんすよね

「今回は、治安局と防衛軍での合同戦闘演習を行う」

 

「なるほど?」

 

「先のラマニアンホロウでの、始まりの主を起源とするホロウの活性化。今後、それらが異なる場所で起こる可能性は否定できない」

 

「………なるほど?」

 

「よって、君にはその演習でのエーテリアス………つまり()として参加してもらう」

 

「………はい?」

 

 

 

 

 

 

「よろしくお願いしまぁす!フラマって言いまぁす!」

 

「「「「「………」」」」」

 

やめて。沈黙はやめて。

でなんで女性しかいないんすか。セヴェリアンさん。聞いてないっす。

 

「よろしく頼む。()()()()大佐」

 

「こちらこそ、この様な機会をご用意していただき感謝する。セヴェリアン上級監察官」

 

俺置いてけぼり。セヴェリアンさん。こっちのフォローしてくださいよ。

さっきから冷たい視線がぐさぐさ俺に刺さってるんですわ。

 

「フラマ監察官」

 

「………はいぃ」

 

「以前の事で、君にはすぐに謝礼を送らなければならなかった。遅れてしまってすまない」

 

「え………あぁ、別にいいっすよ、あんなん」

 

「君はそういうと思っていたので、すでにセヴェリアンさんに口座を教えてもらった」

 

「セヴェリアンさん。俺の権利はいずこに」

 

「君は然るべき謝礼を受ける必要がある。その為に協力しただけだ」

 

 

 

 

 

時は少し遡る。

 

「お手柄………?」

 

「かつて捨て駒にした」

 

「あの兵士達もか……?」

 

「彼らもまた」

 

「お手柄か?」

 

イゾルデは、腰に備えた銃を滑らかな動きで構えた。

 

自らの意思を、彼らの想いを叶える為に。

 

誓いを、果たす為に。

 

しかし、運命とは、全てに繋がり形を為すもの。

 

はるか遠くの蝶の羽ばたきは、この地にて竜巻を起こす。

 

()()、衛非地区に来ていた。

()()、エーテリアスと戦っていた。

()()、何かでかいエーテリアスに吹っ飛ばされた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!」

 

ガキン

 

「なっ!?」

 

「いっつ~………ここどこだ?めっちゃ飛んだし。てか俺無傷かよ。まじすげぇなこの身体」

 

「貴様は………」

 

「君は………」

 

「え、え、え、?(ナニコレ。なんかお偉そうな人の間にいんの?オワタ。セヴェリアンさん。俺首飛ぶかも)」

 

「貴様……どこの所属だ」

 

「あ、監察官す。よろしくおなしゃす。(なんだこのおっさん。悪そうな顔してんな)」

 

「か、監察官だと!?」

 

「………(なんでそんな驚いてんの。俺ただのセヴェリアンさんの下働きよ?)」

 

「………そういう訳だ。少将閣下。あなたの悪事………いや、悪事とすら呼び難い過去の愚行は、もうすぐにでも白日に晒される」

 

「………(はい?何の話すか?ってかこの人えっぐ美人。そして片方が怪しさプンプン丸。まぁいいや。美人さんの味方しよ)」

 

「そうだとも!!あんたらのうす汚い顔に書いてあるぜ!!おでこに悪ってな!!キン〇マンもびっくりだなおい!!」

 

「貴様一体何を…………だが貴様をここで黙らせればぁ!!撃て!!」

 

「まずい……そこの方!!海に!!!」

 

打ち出された銃弾の数の分、硝煙が辺りに舞う。

 

「………っ………!」

 

「何なんだぁ………今のは………?」

 

「は、はぁ!?」

 

「所詮、クズはクズなのだ………」

「はい、銃撃つとか余裕で公務執行妨害かつ暴行罪な。逮捕で」

 

 

 

 

「まぁとりあえず貰っときます………(俺ただ吹っ飛んだだけなんて言えねぇ~)」

 

「今回はただの事前練習に過ぎない。防衛軍の小隊。そしてこちらの私の部下。君たちで模擬線を行ってもらう」

 

「おい、イゾルデ」

 

うっわ。なんかシッポ喋ってる。流石に見た事ないわ~。

 

「どうした鬼火。何か不満が?」

 

「不満も何も………たった一名でこの私の小隊に敵うとでも?」

 

「君はこの上級監察官の推薦を無下にする気か?」

 

「そいつの目が節穴であった事を、証明する事になると言っているんだが?」

 

なんだおい!セヴェリアンさんが本気だしたらてめぇなんてミンチもいいとこだぞおい!!

どんだけ強いか知らんけど!!強いっすよね!?セヴェリアンさん!!

 

「隊長!落ち着いてくださいぃ~!!この方にも失礼であります~!!」

 

「オルペウス!邪魔をするな!!」

 

「ダメであります~!!」

 

シッポと本人の意識って別なのか。すご。俺もなんか付けれたりするんかな。

 

「11号、トリガー、シード!!さっさと終わらせて帰るぞ!!」

 

 

 

 

そんな訳で、HIAにて。

実戦に近い状況を作れる、すごいやつだ。

俺は詳しく知らない。

分かるのは、ここなら多少派手に暴れても怒られにくいということだけである。

 

「今回、防衛軍側は小隊行動を前提とした制圧演習。治安局側は監察官フラマを、特殊エーテリアス個体として投入する」

 

「特殊エーテリアス個体……」

 

イゾルデ大佐が、俺を見る。

その目がなんか怖い。

 

「俺、人間扱いじゃないんすね(まぁ人間ではないけど)」

 

「敵役だ。諦めてくれ」

 

「うっす」

 

セヴェリアンさんが言うなら仕方ない。

 

「勝利条件は二つ。防衛軍側はフラマ監察官の無力化、もしくは制限時間内の目標地点到達。フラマ監察官側は、敵部隊の戦闘不能判定、または目標地点の防衛だ」

 

「なるほど。つまり俺は全員ぶっ倒せばいいんすね」

 

「言い方は悪いが、概ねそうだ」

 

「ふん」

 

鬼火隊長が鼻で笑った。

いや、尻尾なのに鼻で笑ったって表現合ってんのかな。

分からん。でも雰囲気は鼻で笑われた。

 

「所詮は一人だ。いくら特殊個体扱いだろうと、小隊行動の前では限界がある」

 

「隊長、油断は禁物でありますよぉ……」

 

「オルペウス、黙っていろ」

 

「ひどいでありますぅ……」

 

オルペウスさん、めっちゃ苦労人の匂いがする。

上が勢いで突っ走るタイプだと下が苦労するんだよな。

俺の部活………先輩がごみくそだったのを思い出すぜ。

シャトルラン200行くまで帰れないは今でも頭おかしい。

 

「………11号は………」

 

「包囲で………」

 

すげぇ~。ちゃんと軍隊だ。なんか作戦立ててる。

 

俺?

俺は今、ストレッチしてる。

 

「何をしている」

 

「準備運動っす」

 

「余裕だな」

 

「いや、運動前には大事ですよ」

 

「ふざけているのか?」

 

「割と常に」

 

「…………」

 

あ、セヴェリアンさん怒った。でも仕方ない。

俺は真面目にふざける男なので。

 

「では、開始する」

 

セヴェリアンさんが片手を上げた。

視界が切り替わる。

一瞬で、周囲が瓦礫だらけの市街地になった。

 

崩れたビル。

ひび割れた道路。

遠くには、赤黒いホロウの空。

うわぁいつ来ても再現度高ぇ。

 

「どうすっかな~」

 

はっきり言って、勝てる気がしないのであります~。

四対一て。普通にいじめだろが。

う~む……武器的に最初に仕掛けてくるのはトリガーさんなんかな~。

 

む………マテ。この状況……俺が勝ったらクソかっこいいのでは!?

しかもよく考えたら、なんかワールドトリ〇ーみたな?俺、迅さん的な?

 

「うっし!気合入ってきたぁぁぁぁああああああ!!!!痛ぁ!!??」

 

おでこ狙撃されたぁぁ!!痛すぎぃぃぃ!!!

セヴェリアンさん絶対痛覚設定いじったな!?

 

「やっべぇ。全然見えなかった!!よそ見しすぎだろ俺ぇ!」

 

「えぇ。油断大敵というやつよ」

 

「うっわ上かぁ」

 

上から降って来たのは11号さん。ちょっと待て。その角度は。

俺は横っ飛びで躱す。

 

「11号さん!?そ、その………ぱ、ぱ、ぱぱ、ぱ、パンツが………」

 

「それであなたが油断するなら。いくらでも見せるわ」

 

「冗談でしょう!?ちょっと!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?そういう教育してるんですか!?」

 

「し、心外だ!!」

 

「11号さん!そういう事を言ったらダメであります!!」

 

「………そうなのね」

 

お、流石に出てきた。

そりゃそうでしょ!?こんなおかしな人がいるって、もしかしてあなたの小隊って激やば………。

 

「その邪な考えを止めろ!!」

 

うっわ。火炎放射。ポケモ〇かな?

そんでもって同時に、11号さんも切りかかってくる。

跳躍にて、俺は回避しようとしたけども。

 

「ばびゅ~ん」

 

うっそん。そのいかつい人って空飛べるの?

俺はビックシードさんの拳で近くのビルの中に吹っ飛ばされる。

 

「いつつ………ってまた狙撃!!」

 

「すご~いトリガーの狙撃二回目で避けちゃった」

 

シードさんはビックシードさんに乗りながら、話しかけてくる。

 

「褒めても何も出ないっすよ?」

 

「ばいば~い」

 

ひゃぁ~。ミサイル構えないでくださいよ~。

じゃ。

 

「さいなら~」

 

「あ、逃げちゃった」

 

こんなん狙撃ダルすぎでしょ。

11号さんとオルペウスさんは、俺とシードさんの速度についてこれんだろし。

鬼ごっこだ。

 

「トリガー?逃げれる~?」

 

『いえ。おそらくもう熱源を捕捉されています。ここでシードの戦闘補助を』

 

「ありゃりゃ。バレてら」

 

さっきからすんごいね。狙撃にミサイルに、ビックシードパンチに。

トリガーさんの位置分かってるから狙撃は避けれてるけどさ。

足の駆動音がすんごい事になってるよ。熱暴走しそ。

 

「見つけたぁ!!」

 

熱じゃなく、目でしっかり見えた。

もう足限界ぃ!!

ビルの屋上になんとか着地!

 

「お疲れした!狙撃バカ上手いっすね!!だから先に来たんですけど!!」

 

「………知能構造体だったのですね。それが分かっていれば初撃で関節部を打ち砕けたのですが」

 

「うひゃ~こわ」

 

『トリガー、脱落だ』

 

うっし、あと三人ね。

 

「………ん~」

 

「さっきからどしたんすかシードさん?急に黙ってばっかで」

 

「ちょっと考えがね~………」

 

「ま、いいすけど。火拳んんん!!!!」

 

俺の手から放たれた炎が、空中で拳の形を取って、轟音と一緒にビックシードさんへ突っ込んでいく。

 

「わぁ」

 

シードさんが、相変わらずゆるい声を出した。

ビックシードさんが腕を上げる。

分厚い装甲の拳が、俺の火拳を真正面から受け止めた。

 

炎が弾ける。

赤い火の粉がおんぼろビルに散った。

 

「おお、硬ぇ!!」

 

「正面からだと、あんまり効かないね~」

 

「でしょうねぇ!!」

 

知ってた。

いや、今知った。

まぁいい。

 

正面からぶち抜くつもりはない。

弾けた火の粉が、屋上に落ちる。

瓦礫の隙間。

崩れかけの壁。

そこに、じゅ、と小さな火が残った。

 

「ん~……」

 

シードさんが、また首を傾げる。

 

「やっぱり、それ」

 

「どれっすか?」

 

「火拳?当てるためだけじゃないよね~?」

 

「…………」

 

ふわふわしてる声で、さらっと核心に触れてくるのやめてほしい。

 

「いやいや、今のは普通に必殺技っすよ。火拳。海賊が使うんですよ」

 

「名前の割に、地味に火の残り方が変なんだよね~」

 

「え、そこ?」

 

「そこだよ~」

 

シードさんはビックシードさんの上で、にこにこと笑っている。

 

「トリガーを落とすまでに走り回ってた時も、ところどころ熱が残ってた。今の火拳も、弾けた火が消えきってない」

 

「炎なんだから残るでしょ」

 

「普通はね~。でも、君の火は残り方が選ばれてる感じ」

 

「…………」

 

「ばら撒いてるんじゃなくて、置いてるのかな~?」

 

「シードさん、もしかして頭良い?」

 

「もしかしてってひどくない~?」

 

「すんません。雰囲気がふわふわしてたので」

 

「ふわふわでも考えるよ~」

 

「なるほど。ふわふわ賢者って訳ですか」

 

「それはちょっとかわいいね~」

 

気に入るんだ。

 

『シード、状況報告』

 

「トリガーは落とされちゃったけど、フラマ君の足もけっこう限界っぽいよ~。でもなんか怪しい~。あんまり自由にすると、後で困るかも~」

 

『ならば足を止めろ』

 

「は~い」

 

シードさんが軽く手を振る。

次の瞬間、ビックシードさんの背部が開いた。

 

「うっわ、またミサイル?」

 

「今回はちょっと違うよ~」

 

放たれたのは、ミサイルじゃなかった。

小型の杭。

いや、杭というより、地面に突き刺さるアンカーみたいなもの。

それが俺の周囲へ降り注いだ。

 

「なにこれ」

 

杭が地面に刺さる。

直後、淡い光が杭同士を繋いだ。

 

「え?」

 

「簡易制圧フィールド~」

 

「名前が普通に怖い!」

 

俺はすぐに横へ跳ぼうとする。

が。

足が、重い。

 

「ぬおっ!?」

 

踏み込んだ瞬間、膝が落ちかけた。

重力が増えたみたいな感覚。

いや、仮想空間だから実際どうなってるか分からんけど、とにかく動きづらい。

 

「知能構造体なら、駆動補助に干渉できるかな~って」

 

「シードさん!初対面の男の関節に干渉するのはどうかと思います!」

 

「戦闘中だからね~」

 

「正論!」

 

まずい。

足がおっそい。

これだと、鬼火隊長と11号さんが追いついてくる。

案の定。

 

「見つけたぞ」

 

背後から低い声。

 

「うっわ来たぁ!!」

 

鬼火隊長の炎が、瓦礫の向こうから立ち上がる。

その横を、11号さんが無音で駆けてくる。

 

挟み撃ち。

前にはシードさん。

後ろには鬼火隊長と11号さん。

え、詰みでは?

 

「フラマ監察官」

 

11号さんが淡々と言った。

 

「投降を推奨するわ」

 

「優しい!」

 

「抵抗した場合、腕からよ」

 

「優しくなかった!」

 

オルペウスさんが鬼火隊長の炎を大きく揺らした。

 

「逃げ回るだけの時間は終わりだ」

 

「いやぁ、逃げるのも立派な戦術でして」

 

「ならば逃げられない状況ではどうする?」

 

「…………」

 

俺は周囲を見た。

制圧フィールドとやら。

正面にビックシードさん。

背後に炎と刃。

足は重い。

トリガーさんは落とした。

 

でも残り三人が普通に強い。

どうする?

どうする、俺。

 

 

「ま、もういっか」

 

 

どぉぉぉぉぉぉん!!!!!!

 

 

「なっ………!!」

 

「これは………」

 

「どうゆうこと………?」

 

俺の周り。だけじゃなく、先ほどの火種が残された場所。

 

その全てに火柱が立っている。

 

さっきの火拳。

 

その前、トリガーさんへのガンダッシュ。

 

その全てに、火種は生じる。俺が炎を操る以上は。

 

「燃焼物、酸素、点火源」

 

「何を………」

 

「炎に必要なもんです」

「点火源はもう配りました」

 

ちょ、ちょっと周りの炎熱い。けどかっこつけろ俺!

 

「俺が、これを出来る原理はよく分かりません」

 

「酸素をどうこうしてるつもりもないし、大気を操ってる気をしません」

 

「でも、出来るんですよ」

 

「だから、多分俺の勝ちです」

 

パキンと、制圧フィールドを作ってた杭が壊れる。

熱で溶けたんだろな。

 

「あ、熱いであります………」

 

俺は、完全に火柱に包まれる。

いや、あっつ。あつすぎあつすぎ。ちょっと加減して俺。

 

シードさんのミサイルも、鬼火さんの火炎放射も、全てを溶かして。

俺の周囲の火柱は燃え盛る。

だからあついて。

 

大量の汗が、三名の軍人の頬を撫でる。

 

「な、なにも出来ないでありますぅ!」

 

「隊長、突撃の指示を」

 

「突撃しても、意味ないと思うな~。下からの勢いがすごいもん」

 

「じゃ、じゃあどうするでありますかぁ~!」

 

「シード。単独行動を許す。下に行き、出来る限りの熱源を消してこい」

 

「りょ~か~い」

 

やばいかも。消されたらオワオワリ。

 

「11号。火が消えた瞬間に、突撃するぞ」

 

「了解」

 

う~む。シードさんが頑張ってるのか。

さっきから火柱がどんどん消えちゃってるし。

 

「今だ!!」

 

俺の背後、一つの穴が開く。

そっから指示を出された、11号さんが突っ込んでくる。

 

「………ごめんなさい。ちょっと熱いんで我慢してくださいね」

 

「っ!」

 

 

 

「赫灼熱拳:ジェットバーン!!!!」

 

 

 

『11号、脱落だ』

 

くっそ右腕やられた!!

最後の最後で、持ってた刀を投げられた!!

 

「隙ありだな!!!」

 

「まずった!」

 

いつの間にか、シードさんは反対側の熱源も消したらしい。

俺の背後に、鬼火隊長の火炎放射ってかもうビーム!!が突き刺さる。

 

「あちっぃぃぃぃ!!!!!」

 

「最大出力でありますぅぅぅ!!!」

「いいぞオルペウス!!」

 

「ぐ、ぬぬぬぬ……!」

 

俺は歯を食いしばりながら、前に倒れないよう踏ん張る。

出力が高すぎる。

自分の火柱で熱いとか言ってたさっきの俺を殴りたい。

本物の火力というものを今、背中で理解している。

 

『フラマ監察官!』

 

通信越しにセヴェリアンさんの声が飛んだ。

 

『損傷値が上がっている。無理はするな』

 

「無理してないっす!」

 

『嘘をつくな』

 

「ちょっと燃えてるだけっす!」

 

『それを無理と言う』

 

正論。

だけど、ここで倒れるわけにはいかない。

11号さんは落とした。

トリガーさんも落とした。

 

残るは、鬼火隊長とシードさん。

オルペウスさんは……いや、あの尻尾どう判定すればいいんだ?

別人格だよな?

 

今度ちゃんと聞こう。

今聞く余裕はないけど。

 

「シード!熱源の残りは!」

 

「ん~、屋上周辺はかなり消したよ~。でもフラマ君の真下と、ビル内部にまだちょっと残ってるね~」

 

「ならば下ごと砕け!」

 

「は~い」

 

「え?」

 

ビックシードさんの巨体が、屋上の端に降り立った。

まずい。

 

このビル、おんぼろである。

さっきから火柱だの爆発だのビックシードパンチだので、だいぶ限界っぽい。

そこにあの重量級が乗る。

 

つまり。

 

「ちょ、待っ――」

 

ばきん。

足元が割れた。

 

「うわああああああああああ!?」

 

床が抜ける。

俺も落ちる。

瓦礫も落ちる。

ついでに火種も落ちる。

 

視界がぐるんと回った。

 

「落ちたね~」

 

「追うぞ!」

 

「了解でありますぅ!」

 

上から鬼火隊長たちの声。

ちょっと待って。

普通、落ちた相手には一拍置かない?

 

置かないか。

軍人だもんね。

置かないよね。

俺は崩れた床材と一緒に、ビルの内部へ落下した。

 

「ぐえっ」

 

背中から瓦礫に叩きつけられる。

だが、悪いことばかりじゃない。

火種が集まってる、これなら、もしかしてあれで出来るんじゃねぇ!?

やるっきゃないっしょぉ!

 

すぐにオルペウスさんとシードさんは降りてきた。

 

俺との距離10mくらい。

まぁ多分大丈夫だろ。原作もこんくらいだった気がする。

 

「そっちの得意でやってあげますよ」

 

「何をだ」

 

「■」

 

 

「“開”」

 

 

炎で弓を象り、番うは炎の矢。

 

 

「………シード、火力補助を」

 

「りょ~か~い」

 

「オルペウス!最大出力でいくぞぉ!!!」

 

「りょ、了解でありますぅ!!!」

 

鬼火隊長の口に、炎が溜まっていく。

シードさんも、ビックシードさんからいつでもミサイルを撃てるようだ。

 

「フラマ監察官」

 

「なんすか鬼火隊長」

 

「君を侮辱した事を謝る。君は素晴らしい戦闘技術の持ち主だ」

 

「………照れちゃって火力が上がりそうっす」

 

「やってみろ!!!」

 

「うっす!!!!」

 

タイミングを、両者は合わせるつもりはなかった。

ただ、自らの最高出力への為の時間が瞬き一つの単位で等しかっただけである。

 

炎の矢。

 

圧縮された高圧の熱線。それに伴う誘導ミサイル。

 

それらは一地点で混ざり合う。

 

筈だった。

 

 

矢を打ち抜き、フリーになったフラマの手。

 

右手は、11号によってもう本来の機能は使えない。

 

よって、空いたのは唯一左手。

 

 

「っ!貴様ぁ!!」

 

 

パチン

 

 

指を鳴らして、道を作る。

 

それこそが、この場で出来るフラマの最善手。

 

辺りの火種から同時に。

 

線が伸びる。

 

「すんません!!こちとらヴィランなんで!!!」

 

フラマの放った矢に注力していたシードとオルペウスは、その追尾する炎になすすべなく燃やしつくされた。

 

 

 

 

 

 

「いぇ~い!!勝ちぃ!」

 

「見事だったな、フラマ」

 

「いや~。でも仮想空間だったから色々あんな事出来ただけっすね」

 

「なるほど、ホロウの空間は絶えず変化する。君の空気中の導火線も、上手くいかない可能性が高いと?」

 

「そっす、そっす。よく考えて使わないと、自分が燃えちゃいますわ」

 

「君は意外と考えるんだな……評価を改める必要がありそうだ」

 

「うっす!改めてください!!」

 

「元気だな……」

 

「勝ったんで!!」

 

「仮想空間内では、右腕損傷判定、両脚部損傷判定、熱制御異常判定まで出ていたがな」

 

「でも現実の俺は無傷!!」

 

俺は両腕を広げて見せる。

 

そう。現実の俺はぴんぴんしている。

 

右腕も動く。

両足も動く。

熱制御系も別に壊れていない。

 

HIAすげぇ。

仮想空間ありがとう。

 

「ただし、痛覚フィードバックは入っていただろう」

 

「はい。めちゃくちゃ痛かったっす」

 

「なら少しは大人しくしろ」

 

「勝ったので無理です!!」

 

「二回言えば許されると思うな」

 

セヴェリアンさんが呆れたように言う。

でも、その声はどこか柔らかかった。

 

「フラマ監察官」

 

イゾルデ大佐がこちらへ歩いてきた。

俺は反射的に背筋を伸ばす。

 

「君の戦い方は、非常に参考になった」

 

「え、マジすか」

 

「ああ。正面火力ではなく、地形、残火、相手の意識、そして攻撃そのものを利用する。通常のエーテリアスとは違う、極めて厄介な敵役だった」

 

「厄介……褒めてます?」

 

「褒めている」

 

「やったぜ」

 

鬼火隊長が、目尻が天井に刺さる勢いで俺を睨む。

 

「調子に乗るな。次は最初から君の火種を潰す」

 

「次あるんすか!?」

 

「当然だ。こんな負け方で終われるか」

 

「隊長ぉ……もう火力勝負は嫌でありますぅ……」

 

オルペウスさんがしおしおになっている。

かわいそう。

九割くらい鬼火隊長のせいである。

 

「オルペウス。次はもっと火力を上げるぞ」

 

「やっぱりでありますぅぅぅ!!」

 

「部下に優しくしてあげてくださいよ」

 

シードさんはビックシードさんの上で、にこにこと手を振っていた。

 

「フラマ君、次は火種を置かせないようにするね~」

 

「俺の存在意義を消しに来ないでください」

 

「だって置かれると面倒なんだもん」

 

「最高の褒め言葉っすね」

 

「うん、褒めてるよ~」

 

11号さんは静かに俺を見る。

 

「次は右腕ではなく、初手で両脚を狙うわ」

 

「仮想空間でも怖い宣言!!」

 

「逃げられると面倒だから」

 

「俺、今日だけでめっちゃ面倒って言われてる……」

 

「事実よ」

 

淡々と断言された。

つらい。

でも嬉しい。

いや、嬉しいのかこれ。

 

「フラマ」

 

セヴェリアンさんが俺の横に立つ。

 

「はい」

 

「今回の演習結果は、治安局側、防衛軍側、双方にとって有意義なものだった。君の働きは十分評価に値する」

 

「……へへ……じゃあ、特別手当とか」

 

「仮想空間の使用ログと、君の戦闘データ解析が先だ」

 

「現実的ぃ……」

 

「冗談だ。手当の申請はしておく」

 

「セヴェリアンさんが冗談を!? しかも優しい!?」

 

「私も冗談くらい言う」

 

「上級監察官ジョーク……!」

 

「黙れ」

 

怒られた。

でもちょっと楽しい。

セヴェリアンさんが呆れたように息を吐く。

 

「とにかく、演習は終了だ。フラマ、ログ確認の後に休憩を取れ」

 

「了解っす」

 

俺は元気よく歩き出そうとした。

 

踏み出した。

 

ちゃんと歩けた。

 

さすが現実。

傷一つない。

 

ただ。

 

「……あれ」

 

膝が、ちょっと笑った。

 

肉体は無傷。

でも精神は疲れていたらしい。

 

俺はその場でふらっと揺れた。

 

「フラマ」

 

セヴェリアンさんが支えてくれる。

 

「大丈夫か」

 

「大丈夫っす。ちょっと、仮想の痛みが現実に残ってる気がするだけで」

 

「それを疲労と言う」

 

「なるほど。じゃあ疲労です」

 

「休め」

 

「は~い」

 

ていうか絶対、再戦したくねぇ~。

ま、いっか~。新技作れたしヨシッ!

 

 




「強かったでありますね~フラマ監察官」

「う~ん……」

「炎の扱いに手馴れてるというよりかは、想像を現実にしている感じがしたわ」

「う~ん……」

「熱源探知も素早かったですね。おそらく二射目にはバレていました」

「う~ん……」

「火力もなかなかだ。………それで、シードは先程からどうした」

「いや~……多分、気のせいだと思うんだけど~………」

「言ってみろ」

()()?っていうかなんというかそんな雰囲気がしたんだよね~」
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