異世界に転生した程度で煙草が辞められたら辞めてる 作:cigarette
街中。昔は当たり前に存在した物も、時代によって無常に消えていく。そしていつの日かそれは当たり前になり最初は大騒ぎになったとしても。時間がそれを風化させる。
「俺さぁ、毎日煙草辞めようと思ってるんだ」
「辞めようと思ってるだけだろ」
「まぁまぁ、話を最後まで聞いてくれ」
言葉を探しつつ肺の中に循環していく煙に酔いしれながら、次の言葉と共にゆっくり煙を吐き出した
「理由は沢山ある。今のご時世喫煙所だって少なくなってる。それに煙草の臭いとかで喫煙者は煙たがられる毎日だ」
「煙草だけにか?」
「やかましい」
「悪い悪い。で、何が言いたいんだ?」
お前が口を挟んでくるから話が進まないんだろと同僚に抗議の目を送るが、同僚は軽く誤っただけで深く気に留めた様子は無い。コイツはずっとそういう奴だから今更かと思う事にする。
「そうやって思われてさ、存在悪みたいな状況になっても辞められねえんだから。これは一生辞められねえなって思う訳だ。下手したら、俺は死んでも吸ってるかもな」
「だろうな、仕事時間にも抜け出して吸うほどだし。成仏出来なくて、此処に化けて出て来るかもな」
「ははっ、馬鹿言うなよ流石に死んだら吸えねえだろ……」
そう笑い、火が消えない内にフィルターに口を付けてゆっくりと煙を吸って。
「ゲホッゲホッゲホゲホゲホッゲホッ」
「おい、大丈夫か?」
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホッ」
やべえ、咳が止まらねえ。くっそこんな時でも煙草から手が離れねえ。駄目だ、息が出来ない。ヒューヒュー言ってる音が漏れる。これは、もう駄目だ。
「おい!落ち着け、息をっ。息を吸え!取り敢えず救急車呼ぶぞ!」
自分の死に際が分かるって良く死ぬ間際の人が言うけど、マジなんだな。自分がその状況になって初めて分かったよ。
喫煙所で死んだ俺と言う存在の話も、少し騒ぎになるだけで一月もすれば誰も口にすることは無くなるだろう。そんな事を考えながら、俺の意識は暗闇に落ちた。
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「そうして、貴方は死んだ訳です。ご愁傷さまです。それで貴方にはお話があります」
記憶は戻りましたか?と見覚えの無い女がそんな事を言った。この女の言う事を全部信じるとなると、俺はどうやら、煙草のせいで死んだらしい。だが、全くと言っても良いほど記憶に無い。だからこそ俺は、こんな事を言えるのだろう。
「ごめん、後にしてくれるか?今は取り敢えずなんか凄い煙草を吸いたいんだ」
煙草で死んだはずなのに、頭がおかしいとは思う。それでも吸いたいものは吸いたいのだから仕方無い。そう思ってスーツのポケットから取り出して吸おうとして、さっきのが最後の一本な事に気付いた。
「煙草持ってない?」
「無いです」
「チッ……」
「話を続けます。貴方は死にました、でも安心して下さい。貴方は生まれ変わり、別の世界で生きる事が出来ます。どんな人生も思いのまま
。ハーレム?チートで無双?使えない奴扱いされて追放されてからパーティーメンバーに自分の大切さを分からせてざまぁします?それとも、本当はTUEEEEけど実力隠して平凡な学園生活を過ごしながら時々厄介ごとに首突っ込んで俺なんかやっちゃいましたします?無機物転生や動物転生もありますし、悪役令嬢にダンジョン配信者でも……」
それに対し、俺は一旦止めた。俺が欲しいのはハーレムでも無双でも無い。俺が欲しいのは。
「煙草があればなんだって良い」
「は?いやいや、チートスキルで無双して俺TUEEEしたいとか転生して最初の入学式に向かう途中で盗賊に馬車が襲われていて、その女の子を救ったら実はその顔が王族で命を救われてベタ惚れするとかそう言う展開は?」
「いらねえよ、そんなベタなストーリーより煙草ワンカートンの方がよっぽど嬉しい」
「イカれてますね……。久々に楽しめそうです。分かりました、なら転生先は私が勝手に決めますよ」
「任せた」
「これで良し。では新しい世界へどうぞ!」
「一応聞くが、転生先に煙草はあるよな?」
「……(ニコッ)」
「おい、ふざけんなよ!なんか言えy」
騒ごうとしたら、謎の浮遊感に襲われて下に落ちる感覚に陥った。残念ながらそれは夢でも幻でも無いようで俺は実際に落ちていた。
次に目覚めた時、俺は赤ん坊だった。ふざけんな、赤子で喫煙しろってか。もうちょっと融通を聴かせてくれても良いんじゃないかとあの女ぬたいして思った。
お気に入りや高評価があれば続きます。