「お前…!今世でも皆に危害を加えるつもりか!」
シドはそう言って背中の剣を取り目の前の大男…『フーゴ』に切っ先を向ける、だがフーゴは手を前に出し制止の構えをとる
「落ち着け、今はもう『クリスタル』やら『ダルメキア』だのややこしい関係はもうないからお前と争うつもりもない…それに…」
フーゴはシドの肩をポンと叩きかつての憎しみは何処へ行ったのかその顔は優しい笑みを浮かべている
「この世界で記憶が戻ってすぐ俺この新エリー都に残っていた前世での文献を全て漁った…『ダルメキア』の行く末、『ベネディクタ』のこと、そしてこれまでの全ての元凶である『アルテマ』という存在をな…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
その言葉を最後にフーゴはアルテマの方をギロリ睨み、全身から光を発したかと思うとその身体は岩石を纏ったかのような姿へと変貌する
「おい馬鹿止めろ!うちの店ぶっ壊す気かこの筋肉ダルマ!」
ゴンゾウが慌てて止めようとするも激情を抑え切れないフーゴはアルテマに今にも殴りかかりそうな程にまで距離を詰める
「お前が…!お前が俺と彼女を誑かしたんだな!あの『小僧』を送りこみ…こいつに俺を始末させるために…!」
《……その通りだ『タイタン』、シドに汝を喰らわせるためにな…しかしあやつと同じように自らの意思で召喚獣の力に覚醒するとは……これが『想い』の強さか》
「何をごちゃごちゃ言ってやがる…!お前のせいで彼女は…!今ここでその報いを受けて貰うぞ…?死んで償え!」
「『タイタン』っっ!!!」
ガキイイインッ!
フーゴがその剛腕をアルテマに振り下ろす前にシドはかつて彼から奪った力でその拳を受け止める
「何故だクライヴ・ロズフィールド…!お前が一番こいつに惑わされてきたはずだ!」
「確かにそうだ…!だがこいつは今その罪と向き合う為に俺たちと共に戦っているんだ!裁くのはその全てが終わってからでも遅くはないはずだ…!だから…今は拳を収めてくれ!」
シドはフーゴの目を真っ直ぐ見つめる…
「…………」
シュン……
シドの言葉が響いたのかフーゴは『半顕現』を解き、元に戻る…元に戻ったフーゴを見た赤髪の少女が持っていたハンマーを放り捨てて駆け寄り、それを見たゴンゾウはホッと胸を撫で下ろす
「おじさん!大丈夫か!」
「ナイスフォローだクライヴ…危うく店が潰れるとこだったぜ……」
「……お前の言うことも一理ある、昔も今もこの世界はクソッタレだ。今でさえホロウだの訳のわからないことばかり起きやがる…そのせいでこいつの親父…今の俺の兄貴もくたばっちまった…」
フーゴは心配して駆け寄っていた赤髪の少女の頭を撫で、
その言葉を聞いたジョシュアは目を丸くする
「え?君…『白祇重工』の『クレタ』社長と親戚なのかい!?」
『白祇重工』現在は新エリー都の黒雁地区に現場の拠点を置いている建設会社であり、この赤髪の少女『クレタ・ベロボーグ』は先代をとある事故で失った後若くして社長の座を受け継いだのである…
「そうだ。今の俺は『フーゴ・ベロボーグ』…こいつの伯父だ」
フーゴはクレタの頭を髪が乱れるくらいに強く、だが優しく撫でる
「伯父貴…!撫でないでくれよ!」
「どうしたんだクレタ?さっきは昔みたいにおじさんって言ってくれたじゃないか?嬉しかったぞお?」
「う、うるせえ!!!/////」
「はいはい。おチビちゃんは相変わらずおじさん大好きだもんね♪自己紹介が遅れてごめんね、白祇重工技術顧問の『グレース・ハワード』だよ。よろしく」
そう言って先ほどまで作業をしていたのか少し汚れた手袋越しにグレースがシド達に握手をする
「一通り過去の清算は終わったか?そんじゃあ『同窓会』の続きでもやるか。で、フーゴ…説明してやりな」
ゴンゾウに促されたフーゴは咳払いしてから話始める
「どこまで話したか?……そう彼女のことだ!あの時の真実を確かめるために俺は『治安局』に向かったんだ」
「…どうして治安局なんだ?」
シドの疑問に対してフーゴは少し間を置いてから答える
「彼女が治安官として働いていたからだ。名簿を見て飛んでいったさ…」
「彼女…治安官になってたんだな…」
「再開した彼女は変わらず美しかった……俺はまた一緒になれればと思い声をかけた…だが…!」
少し意外な顔をするシドに対して何故か拳を握りしめるフーゴ…
「彼女の薬指に…『指輪』があったんだ…!彼女の力…『ガルーダ』の色と同じようなエメラルドの指輪が…!それはつまり他の誰かと契りを交わしたということだ…!それを見た瞬間俺はそれはもう問い詰めたさ…!『俺との理想郷はどうするんだ!?』ってな…」
「………それで、彼女は何と?」
シドが続きを促すとフーゴはため息をつきながら何処か遠い目をしながら言葉を続ける
「『私は…もう二度と迷いたくないの…だから貴方も私のような女は忘れて自分の幸せを探して』と言われたんだ…絶望した俺を見る彼女の目は慈しむような優しい目をしていた……きっと相手の男は俺よりも彼女のことを深く愛しているのだろうな…悔しいが完敗だった…」
「…………(;¬ω¬)」
フーゴの熱弁を聞いて何故か目を逸らすゴンゾウ…シドが左薬指を見ると『先程フーゴから聞いたのと同じようなデザインの指輪』を付けていた…
「(『シド』……)まあその…なんだ?大切な人との別れは辛いよな…気持ちはよく分かるよ……でも今のお前には家族が…『大切な姪と兄の残した会社』がある、それまでは彼女達を支えてやれば…」
ガシッ!
「えっ?」
シドの苦し紛れの励ましを聞き終わる前にフーゴはがっちりと両手で肩を掴み、その顔は感動の涙で溢れていた
「俺の気持ちを分かってくれるのかクライヴ…いや、兄弟《ブラザー》…!俺はこんな良い漢を殺そうとしていたなんて……!」
「いや…あの…え?」
突然のことに困惑して何も言えないシドであるがクレタとグレースは恐らく慣れているのか、冷静な様子だ
「わりぃなシド、伯父貴はこうなったら話聞かねえんだ…」
「いい人ではあるんだけどねえ…この間プロキシと一緒に行動した時もおチビちゃんが危ないってなった瞬間突っ走っていって…その時にさっきのよくわからない力に目覚めたんだよね」
「そ、そうなのかアウアウアウアウ…」
フーゴに両手を振られ身体を上下に揺らすシド…そしてグレースその言葉を聞いたアルテマは《やはり》かと呟く
《シドよ…汝の言う通り『想いで繋がる』という言葉は嘘ではなかったようだな…恐らくはあやつの『守りたい』と思う強固な『自我』によりタイタンの力を引き出したのであろう…これが人という存在か》
「どうやら君も人の持つ強さに気付いたみたいだね……理である君が成長するなんてね」
《『人は皆成長するもの』であろう?フェニックスよ》
「ふふ……そうだね」
「誰でもいいから早く止めてくれ…そろそろ腕の感覚が無くなってきた…」
この後数人がかりでフーゴを落ち着かせ、どさくさに終わらせようとしていたアルテマのメンテナンスを終えた三人と一匹はフーゴ達と別れカスタムショップを後にし帰路に着き、激動の1日を終えた
────3日後とある『ホロウ』にて
「これで残りはいないか?」
《ああ、もはやこのエリアに迷いこんだ者達はおらぬ…全員助けだしたようだ》
「よかった。なら依頼主と合流しよう、報酬は…正直要らないんだが駄目か?」
「駄目だよ兄さん、しっかり貰わないと足元見られるからね?」
「仕方ないけどこれが今のやり方なのよクライヴ」
あれからアルテマによって元の力をある程度取り戻し、エーテル適正と高まったジョシュアとジルは総勢5人(犬と神含む)のパーティーでホロウに潜っていた
「そうか…ならお前達二人は先に行っててくれ、俺は少し残って一応深部に人が居ないか探ってくる」
「了解だよ、気を付けてね兄さん。行こうかジル」
シドの言葉を聞いた二人はホロウを後にし、シド、アルテマ、トルガルは歩き始めようとするが
「お前が『不死鳥のシド』だな?悪いが同行を願おう」
背後から声をかけられた三人が振り向けば目の前には着物姿で腰に刀を下げ、赤い瞳を宿した狐のシリオンが佇んでいた
「あんたは…『星見雅』か…」
《ふむ、確か虚ろを狩る者だったか…?腰の刀を見るに、『妖刀』の類いか…だが何処か知っている気配も感じるな》
「グルルルル…」
冷静なシドとアルテマに対してトルガルは牙を剥き出しに彼女を威嚇する
「『エーテル物資を違法に採掘するわけでなく、ただ迷いこんだ一般人を助け続け、犬と人の言葉を喋るボンプを連れたマントの男』報告通りだな…しかし『無尾』のことに感づくとは、悪いがそのボンプも預からせてもらうぞ…」
「すまないがこいつは非売品でレンタルも受け付けてないんだ。それに俺はこんなとこで捕まるわけにはいかない」
「……残念だ」
シュバッ!
キイイイイイイインッ!
「ぐっ…!虚狩りと言われるだけあるな…!速い…!」
「ガウッ!」
ガキィッ…!
「良い連携だ。信頼されているのだな…」
雅は即座に刀を抜き、横薙ぎの形で斬りかかるがシドは冷静に受け止めるとそれを見逃さずトルガルが横から腕に噛みつく…が、彼女の左腕は甲冑に覆われておりその鋭い牙は通らずに硬い金属音が響く
ズザアアアアアアッ…
「無事か?トルガル」
「バウッ!」
《どうやら我らを逃がす気は無いようだ。かといってこのまま手加減を続ければ勝てる見込みは無かろう…》
「……みたいだな…女性相手に申し訳ないが一気にカタを付ける…!」
シドは剣に手をかざす
シュイイイイイン…
するとその形が徐々に変化していき野太刀を思わせる大振りな武器へと変わる
「『オーディン』…!」
雅はその武器を見るや否や鞘を強く握りしめる…
「それは『兄上』の『斬鉄剣』…!何故お前が…!?」
「『兄上』だと…!?まさか…!」
「そういうことだ……止めておけ雅、お前では勝てん…」
ふと対峙する二人の頭上から声が聞こえ、同時に見上げると瓦礫の上から全身を甲冑で包んだ彼女と同じ狐の耳を持ったシリオンが降りてくる
《なるほど…汝の分け身であったか『オーディン』よ》
「お久しゅう御座いますかつての我が主……そして、こんな形で再開するとはなミュトス…いや『クライヴ・ロズフィールド』…」
「『バルナバス』…!」
『バルナバス・ザルム』ヴァリスゼアにおいて闇の召喚獣『オーディン』のドミナントであり『ウォールード王国』と呼ばれた国をその身一つで築き上げた男、そしてかつてはアルテマの忠実な下僕としてシドと死闘を繰り広げた男である
「今は『星見流《りゅう》』こいつの兄妹だ。無尾を収めろ雅…俺はこいつと話がある」
「……わかった。だが兄上に何かあれば即斬る」
雅は警戒を解かず渋々刀を鞘に収める
「さて…何処から話したものか…だがとりあえずはこのホロウを出てからにしよう…そろそろ妹のエーテル適正にも限界がある」
「……ああ」
彼の言葉に敵意を感じなかったシドは武器を下ろし、後を付いていくのであった...
これでもう本編でのドミナントはあとガルーダだけになりましたね(リヴァイアサンは覗く)
ちなみにこの物語の時系列としては一章第3幕辺りですね、なので白祇重工編まではメインストーリー進んでます