前回、夏休み明けの学校から帰ろうとして虚狩りの星見雅とエンカウントしたシド……同級生達からのどす黒い感情を向けられながらも彼女に半ば強引に手を引かれ真昼のスクウェアへと足を運ぶのであった
「シド、次はあそこに入りたいんだが構わないか?」
「ここって…メイドカフェか…?なんでここに?」
「前々から入ってみたいと思っていたのだ。ここにはメロンを使ったメニューがあると聞いてな」
そう雅が指差す先にはあからさまな美少女が全面に押し出された看板に『おかえりなさいませ♡』と店頭にデカデカと台詞の書かれたカフェが建っている…
「いや…俺はまだしもあんたのような人が行くのはいささか…」
「入るぞ」
「あ、ちょ…」
カランカラン…
「「「おかえりなさいませ♡ご主人様♡」」」
2人が入り口を開けると入店を知らせる音が店内に響き、それを聞いたメイド達が可愛らしい声と仕草で出迎えてくれる...が、その内の1人であるシリオンの女の子は最初こそ気だるげそうな顔をしていたがシドの姿を見ると一気に顔色を変える
「おかえりなさいませ~って『クライヴ』…?!」
「エ、『エレン』…?なんでここに……というかこれは…その……」
「知り合いか?」
「……俺の一つ下で後輩の『エレン・ジョー』だ。」
シドはバツが悪そうに片手で顔を覆いながら雅に紹介するが当のエレンは2人を交互に見比べるとムスっとした顔をしてシドに詰め寄る
「あんた……虚狩りとなんでこんなとこに来たの……?まさかデートとかじゃないよね?」
そう言うエレンの目はまるで浮気を疑う妻のような目をしているが実際に付き合ってるわけではない
「ち、違うぞエレン…!?彼女とはたまたま下校した時に出会っただけで……というかお前こそどうしてここに?」
「あたしはただのバイト、給料が良いから。というか先に質問に答えてよ、こいつとはデートなわけ?」
ズイッとさらに距離を詰めるエレンにシドはたじたじになりながらもどうにか誤解を解こうとする
「いや…そう言う訳じゃ…」
「そうだが?」
が突然に雅がとんでもない爆弾を投下する
「え……?」
「………は?」
その言葉にシドは鳩が豆鉄砲を喰らったかの様に硬まるがエレンの目からは元々薄かったハイライトが完全に消え失せ怒気を含んだ声がもれる
「み、雅さん……?今のはどういう…?」
「む?言葉の通りだ。今の私は『異性とでえとをする修行』をしている最中だからな」
少しして正気に戻ったシドが雅に言葉の意味を問うも彼女は長い耳をピコピコさせながら『むふぅっ(`ω´)』と笑顔で答える。普通なら可愛らしいものだが今は状況が状況なせいで火に油である
「……(ムスッ」
グィッ…
「あんた……あたしがいながら堂々と浮気するんだ…?ふ~ん?…………もうすぐしたらあがるから待ってて」
「うえっ?あ、ああ…」
そう言うとエレンはバックヤードへと引っ込んでいき、落ち着いたのを見計らった他のメイドが席へと案内するがシドを見る目は入り口をくぐった時よりも冷ややかであった…
「む……!このメロンは美味いな…(パアアアア)お前も食べてみろシド」
席に着いた(何故かシドの隣に座った)雅は注文したメニューのパフェを食べながら自分が先に口を付けたスプーンに一口分をよそいシドに所謂『あ~ん』を促す
いやそれは間接キスになるのではと思ったシドだったが彼女の笑顔に断りきれずに口をつける
「んむ…思ったより甘ったるくないんだな…にしても本当にメロンが好きなんだなあんたは」
「ああ、春夏秋冬…年中無休で食べても美味な食べ物だ」
「後者はちょっと違う気がするが……まあ好きな物があるのは良いことだな……ふっ……」
子供のようにはしゃぐ雅にシドはまるで学生とは思えない顔を……例えるなら若くして夫を亡くした未亡人のような優しくも何処か哀愁と色気の漂う聖母像のような微笑みを彼女に向ける……
ちなみに今世でのシドはこの笑顔によって数多のクラスメイトや仕事の依頼人といった周りの人物を老若男女問わずに堕としておりそれは虚狩りである彼女とて例外ではなく…
「……!……そ、そうか…/////(ピコピコ」
それはもう見事にその笑顔に完堕ちしたのであった。先ほどまで逞しくピンと立っていた耳は力なく垂れ下がりながらも嬉しそうに揺れており、頬はうっすら赤みがかっている…
バシンッ!
「ぶふぉっ…!?」
「随分楽しそうじゃん?……あたしも混ぜてよ」
バイトが終わりメイド服から学生服へと着替えたエレンの尻尾が無防備なシドの顔面にクリーンヒットし、顔全体に真っ赤な跡が残る
「も、もう終わったのか…?」
「うん。それで?言い訳くらいは聞くけど、なんであたしがいるのに浮気するわけ?」
そう言うとエレンはシドの空いている方の隣にドカッと座り込み上目遣いで彼に近付く
「いや……浮気も何も前に言ったように俺には大切な人が…」
「だから何?それに新エリー都の法律で『重婚は可能』なの知らないでしょ?ならいいじゃん…まあでもあたししか見ないと許さないけどね?」
ホロウ災害により人類はかつての半分以下にまで下がった結果その影響でどの企業も深刻な人手不足に陥っており、この新エリー都が出来て暫くして市長が『人類が再び繁栄する為』という名目で重婚制度を流布したのである。この案については賛否両論であったが一部の上流階級にとっては『合法的に愛人を作れる』としてその案を後押しするよう議員達に働きかけ可決されたのである
「…あれはあくまで双方の、そして相手の配偶者が合意すること第一だっただろ?」
「なんだ…知ってたんだ」
シドはそんなエレンに対して真剣な表情で彼女の想いに対して拒否の意思を示す
「……それに俺は古い人間だから出来ることなら彼女一人だけを大切にしたいんだ。君には君の人生がある。これから先多くの出会いと別れがあるんだから一時の感情に身を任せるんじゃなくてもっと視野を…」
「あんたしか見えてないから関係ない、というか古い人間ってあたしより1個上なだけじゃん…急におじさん臭いよ」
「おじ…!?(゚Д゚;)ガーン」
が、そんな彼の意図は現役JKのエレンにら伝わらずむしろ『おじさん臭い』と言い返されショックで俯くシドであった…そんな彼の肩に雅が手を置くと
「であれば私の方が適任だな、私は星見家を継ぐ以上ある程度の家柄を求められる上『ロズフィールド家』は代々騎士の家系という由緒正しい出自だ。父上にも『彼の息子なら安心だ』と太鼓判を押されているから近々お前の父親にも話を通す予定だ」
「え…?」
再びとんでもなくドデカイ爆弾を投下する…
「………(ムスゥ」
グイッ…!ギュウウウウウ…
ふとエレンがシドの腕を強く抱きしめ自身の側に引き寄せる
「虚狩りだかなんだか知らないけどこいつはあたしのだから…!」
「お前のものと決まった訳ではないだろう?それに今のこいつは私と『修行』をしている故、お前には関係のないことだ」
「多いに関係あるんだけど?……あたしのに手を出すならその喉笛噛み切ってやるから……」
「ほう…可笑しなことを言うのだな?お前の牙が届く前にそのヒレを残さず斬り落としてくれよう…」
ゴゴゴゴゴゴ
そういうと二人は席を立ち向かい合う…雅は腰の刀に手をかけ、エレンは一体どこから出したのか巨大な裁ち鋏のような武器を取りだし店内の空気はまるで極寒の如く冷え始めるが
シドはその光景を冷静に見つめながらもぎこちない動作で携帯から通話ボタンを起動し…
「もしもし治安局ですか…?今ちょっと虚狩りが店で刀を抜いてて…」
法の番人である国家権力へと通報し、程なくしておびただしい数のパトカーがサイレンを鳴らしながらカフェへと駆けつけた…
「全く…通報を聞いて飛んで来たかと思えば何をやっているんですか雅!」
「修行の邪魔をするサメを調理しようとしただけだが?」
「堂々と殺害予告を言うんじゃありません!貴女はもう少し虚狩りの自覚を持って下さい!」
「むぅ…(ヘニョ)」
店の外で雅は赤と黒の髪を束ね、色々と治安を守れそうにない格好をした治安官の女性『朱鳶』から説教を喰らい落ち込んでいた……そして一通り説教を終えた彼女はシドの方を向く
「通報ありがとうクライヴ君…大変だったわね?」
「気にしなくていいさ朱鳶さん。しかしあんたは何時も頑張ってるな…学生の俺が言うのもなんだがたまには休んだらどうだ?」
「私なんてまだまだですよ……ところで彼女が言っていた『修行』って何です?」
そう訪ねた朱鳶にシドはやれやれと頭をかきながら
「彼女が言うには『異性とデートする修行』だと…それでここまで連れてこられたんだ。それでエレンとも会って…」
バキッ…!
「デ、デデデデートっっ…!?/////あ、貴方はまだ…まだ学生だというのにこんな昼間から…しかもこんなお店で……破廉恥です…!/////いいですか?!学生の本分はまず勉強することからですね!」
説明が終わる前に彼女の顔が真っ赤に染まり、持っていたペンをへし折りながらシドに詰め寄るとそのまま説教を始めだす…
「まあ落ち着くがよい朱鳶よ、今は『多様性』の時代…それに若い内から色恋等を学ぶのを若者の間では所謂『アオハル』と言うらしいぞ?」
そんな彼女の後ろから翡翠色の髪をツインテールに結んだ機械人の治安官『青衣』が宥めに入る…が朱鳶はキッと顔をしかめながら振り返る
「ですが先輩!いくら法律で重婚が認可されてるからといってこれは余りに…!」
「そうカリカリするでない、お主としては好意を寄せる男が他の女子に言い寄られているのが気に食わぬだけであろう?確かにあやつは幼い頃から様々な相手にモテておるからn」
「先輩っっっ…!!!//////」
「これこれ揺らすでnあばばばばばばばば」
朱鳶はさらに顔を真っ赤にして青衣の両肩を掴み前後左右に揺らす…
暫くして落ち着きを取り戻した朱鳶は軽くその場で取り調べを行う
「では、クライヴ君はもう帰って大丈夫です。ご協力感謝します」
「ああ、ありがとう。だが雅は…」
「彼女ならもうすぐ六課から迎えが来るはずよ。それと…そ」
「なんだ?」
「こ、この後予定が無ければ一緒に映画を見てくれないかな…?////れ、恋愛物なんだけど…一人で見るのは恥ずかしくて…勿論君の分の代金は出すから!……いいかな?////」
そう両の人差し指を合わせながらモジモジした様子でシドの方を見つめる
「ん?構わないぞ。確か流行りのやつだったな。俺も気になってはいたからな」
「ほ、ほんと?!よかった…!じゃあこの後映画館前で待ってるね!……ふふ////」
チャキ…
「……朱鳶、やはりお前も女なのだな…この手で友を斬らねばならぬとは残念だ…」
デートに誘えた朱鳶の首もとに冷たい感触が走り、横目を向けるといつの間にか拘束を解いた雅が刀を抜き彼女の背後に立っていた
「雅…!何の真似です!」
「それは此方の台詞だ…私からシd、クライヴを奪い取ろうとするとはな…?覚悟は良いk」
「「課長…(雅)?」」ゴゴゴゴゴゴゴ
「……!」
刃を振り下ろそうとするさらに背後から二つの巨大な殺気を感じた雅がゆっくり後ろを向くとそこには恐らく連絡を受けたであろう柳と流が笑顔で立っていたが二人から立ち昇る気配は正に怒髪天を突くかのようなどす黒いオーラが伝わってくる…
「あ、兄上…柳……これには…理由が…」
その様子に先ほどまでのオーラは何処へ飛んで行ったのか今日一番に耳を垂れ下げ、雅はあたふたした様子で手を空中で動かす
が、彼女に言い訳に対してあくまで笑顔で接する二人を見てシドは悪寒を覚える
「なら今日行う予定だった大事な会議を無断で欠席してまでルミナススクウェアまで来る程の理由を聞かせて貰おうか?」
「さぞ納得のいくご説明を下さるんですよね『雅』…?」
「……さい」
「「声が小さい(ですよ?)」」
「ごめんなさい……」
二人からの圧に負けた彼女はその場で正座し、これまた今日一番の説教を喰らうのであった……
今のところ戦闘パート無いので次回は頑張って作ります……
いやあにしてもヴェリナさんは本当に叡知ですねえ……あと周回がマジ早くなった
重婚についてはオリジナル設定です。だってあの世界ってかなり文明発展してるように見えるけど普通に終末一歩手前だしこれくらいぶっ飛んだ法律1個くらいありそうだし…