転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
修行を始めたとはいえ生活費は必要なわけだからちゃんと探索もする必要がある。
それに第五階層の調査も今後の探索を考えれば必須だし、そもそも『レベルアップ』と【
だから『中国っぽい建築の宮殿』と『エジプトっぽい砂岩の城』も調べてみたが、そこにいたのはリビングアーマーにもまったく引けを取らない強力なアンデッドたちだった。
まずは『キョンシー』。
リビングアーマーが斬撃や刺突の達人だとすれば、キョンシーは『打撃の達人』だ。
キョンシーには男型と女型がいるが、男の方は一発一発の威力が高く女の方は身体が柔らかくて回避力が高い。
男の方は相打ち覚悟でやれば殴れないこともないが、女の方はマジで攻撃が当たる気がしねぇ。極美の魔術スキルのモーションもすぐバレて回避され始める始末だし、まともに戦えてるのは爺ちゃんだけだ。
そしてエジプト風の城に出て来たのは『ミイラ』だ。
こいつらが使ってくるのは『呪術』だ。体に触れられると呪いを付与され、どんどん身体能力が下がっていく。しかも一回食らうと持続的に効果が蓄積していき、最終的に心臓が止まって死ぬ。
あと触れられる度に効果が増幅していって、心停止に近付く。
スケルトンの極美ですら行動速度の低減は効いているようで、かなり厄介だ。
とはいえ、隠密系の能力にすぐれる極美はそもそも相手から攻撃を受けない。
爺ちゃんはキョンシーとは普通に戦えてるし、ミイラには刃以外で触れないようにするというやり方で渡り合っている。
やっぱ俺が足を引っ張ってる。
とはいえ、何度か探索を繰り返したことによる成長もあった。
――個体名『斑鳩彩人』所有クラス一覧
一次職【
二次職【
――個体名『極美』所有クラス一覧
一次職【
二次職【
――個体名『斑鳩十蔵』所有クラス一覧
一次職【
二次職【侍】lv20
一次職は選択肢としてあるものはほとんど習得した。
俺たちの次の転職先の選択肢としては……
――個体名『斑鳩彩人』転職可能クラス一覧
一次職【
二次職【
三次職【陰陽師】【呪術師】
――個体名『極美』転職可能クラス一覧
一次職【
二次職【
三次職【
――個体名『斑鳩十蔵』転職可能クラス一覧
二次職【
三次職【剣豪】
全員三次職の選択肢はある。
一次職を片っ端から取っていった影響で二次職の選択肢は爆増している。
一つ一つのスキルの威力を考えるならより上位のクラスになった方がいい。
手数を優先するなら二次職を片っ端から転職していくべきだ。
ミイラの『呪い』を考えると『解呪』を期待できそうな【
――【呪術師】が選択されました。
――クラススキル【
――クラススキル【
――クラススキル【
――【
――クラススキル【
――クラススキル【
――【剣豪】が選択されました。
――クラススキル【
――クラススキル【
――クラススキル【
俺が【呪術師】を選んだのは三次職がどういう強さのスキルが手に入るのか体験したかったのと、今身体能力が変化したり近接能力が増加するようなスキルを手に入れても十全に使い熟せないと思ったからだ。
少なくとも、爺ちゃんに一撃入れれるくらいになるまで少し時間が欲しかった。
極美を【
爺ちゃんは元々【剣豪】だったわけだし、単純にこのクラスにするのが一番の戦力増強になると思ったからだ。
爺ちゃんって味方と協力するような戦闘スタイルはほぼないから、単純に個人能力が上がるクラスを選ぶのが得策だと思った。
それと探索で『キョンシーのモンスターカード』がドロップしていたから、【
キョンシーはランク3のモンスターカードだから一枚で極美のランクを上げることができる。
「極美、レイスでいいんだな?」
正直、どのモンスターになるのが俺の探索にとって有用なのかなんてまったくわからないから進化先は本人の意向を優先した。
「カカ」
二度ほど頷いた極美は、俺がスキルを発動させると同時にカードに吸い込まれる。
すぐにカードの絵柄の変化が訪れ、爺ちゃんの時と同じように進化は完了した。
けど……
「やっぱ、女だったのか……」
カードに描かれていたのは半透明な身体を持った長い黒髪の女だった。
清楚というか、着物姿も相まって大和撫子って印象を受ける。ていうか爺ちゃんの時もだったけど、服まで一新されるのはどういう原理なんだろうか……
見た感じ俺より少し年下に見えるが、爺ちゃんが若返った前例もあるし見た目の年齢は信用なんない。
召喚し直してみると、絵柄通りの女が出て来た。
「進化できてよかったな」
「よろしくお願いいたします」
「……喋れるのか」
「どうやらそのようです」
「じゃあ一応聞くけどさ、召喚獣って言ったって意志があるんだろ? このまま俺を手伝ってくれるのか? 嫌ならもう召喚しないってこともできるけど」
「このままお仕えしたいと存じます」
そう言って半透明な極美は俺に向かってゆっくりと頭を下げた。
「あっそう。じゃあこれからもよろしく」
レイスという種族の特性は『物理攻撃の無効化』で、多少マナが宿ってるくらいの攻撃なら普通にすり抜けるらしい。
ただ、マナで構成された魔術系のスキルとかは普通より多くのダメージを受けてしまうらしい。
まぁ、極美のスキル構成的に狙われることはあんまりないだろうしそこまで問題はなさそうだ。
「主様、一つお願いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「お許しいただけるのであれば、今後は『お兄様』とお呼びしたいのですが、ダメでしょうか?」
レイスのことを検索していたスマホが、畳の上に落ちた。
「はい? な、なんで?」
「生前、私には家族というものがおりませんでした。主様と十蔵様の日常的な会話は私の理想そのもので、羨ましかったのです」
日常的な会話?
ダンジョン外じゃ俺と爺ちゃんの会話なんて、「晩飯なににするか」とかそういう話しかしてないと思うけどな……
ていうか、
「生前……の記憶があるのか?」
「名は思い出せません。なぜ死んだのか、なぜスケルトンになったのかもわかりません。ですが、それ以外は……おそらく私が命を落としたのであろう二十歳までの記憶がレイスに進化すると同時に蘇ってきたのです」
二十歳までしか記憶がないから俺より年下で、だから俺が『兄』ってことか。
ダンジョンが発生して五十年。
しかし、未だにダンジョンは未知で溢れている。
それに俺が行っている『死霊の楽園』のような過疎地ともなれば、わかっていることが少ないレベルだ。
少なくとも今の時点で、極美の記憶について推察できることはなさそうだ。
それによく考えれば記憶があろうがなかろうがどうでもいい。
「まぁ、好きにしていいよ」
「ありがとうございます、お兄様」
「では、お主も儂の孫じゃな。儂のことも十蔵様などという堅苦しい呼び方はせずとも良いぞ」
隣で茶を啜ってた爺ちゃんが短くそう言った。
なんであんたはまったく驚いてないんだよ。
いや、もしかしてこのメンタリティが剣術の極意なのか……!?
「ありがとうございます。それでは『お爺様』と」
「よかろう」
その日は布団に入った後、睡魔に負けるまで三人のスキルを確認して過ごした。
――固有スキル【
――クラススキル一覧【
――種族特性【物理攻撃無効】【魔法攻撃弱点】
――クラススキル【
――固有スキル【危機察知】【八艘跳び】
――種族特性【吸血強化】【日光弱体】
――クラススキル【