転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
爺ちゃんがキョンシーのボスっぽいモンスターを倒すとその肉体の消失から二つの物質が残った。
一つは魔石。通常のキョンシーのものより倍近く大きい。俺が倒した
そしてもう一つはセカイの声いわく【青の
占い師が持っている水晶玉のような見た目で、名前の通り青い光を内包している。
鍵というからにはあの親玉キョンシーが護っていたバカでかい扉を開くためのものかとも思ったが、見る限りそれはすでに開いている。
使い道をセカイの声に聞いてみたが……
――それは仙境へ至る鍵であり、忘れさられた反逆者の記録の宝玉。
わけのわからんことを言いだしたから、とりあえず【
今はただの魔石入れだからそんなに困ってはないけど、五キロまでしか入らないんだからあまり圧迫しないでほしいものだ。
「まぁ、進んでみるか」
「それがよかろう」
ちなみに、極美は爺ちゃんと親玉キョンシーの戦いが活発化した段階で送還してある。
瓦礫でロストなんかしたら最悪だし。
ちなみに、ダンジョン内にある物質は破壊できない。
厳密にいえば、『壊しても元に戻る』のだ。
実際、ボロボロになった宮殿もすでに再生を始めている。
逆再生のような光景を横目に、俺と爺ちゃんは扉の先である三つの城の中心地点に向かう。
大理石のような白い床と壁。
壁には、俺が入って来たのとは別に二つの巨大な扉がある。
そして中央には丸いくぼみのある台座が三つあり、その中心には少し大きめの石製の棺桶のようなものがある。
それに、壁の隅に【
「ふむ、この壁も床も扉も……そしてこの棺桶も尋常ではないマナを持っているようだ」
「ん?」
「ダンジョンのモンスターに通常兵器はあまり効果がないのは、モンスターが持つマナがマナを持たない攻撃に対しての耐性を与えているからだ。だが、マナの総量に差がありすぎた場合、マナを込めた攻撃であっても通用しないことがある」
「それは知ってるけど、なんで今その話?」
「察しが悪い孫じゃのう。じゃから女に見限られるんじゃ」
おい、それは禁句やろうがい。
「要するに、この部屋は『壊せない』ということだ」
「なるほどね。最初っからそう言ってくれればいいじゃん」
「ふん」
この棺桶もきっとそうなんだろう。
触ってみたが、ガッチリ鍵がかかっているようで開く気がしない。
それに、残り二つの扉も構造的に他の二つの城に続いているはずだ。このダンジョンの最奥はこの扉の先にはない。
じゃあこの部屋でこの階層は終わり?
いや、それにしては意味不明な構造だ。城を融合なんてさせずに一つずつ並べてある方が自然に思える。
わざわざこんな構造にしているのは、それ自体に理由があるからなんじゃないだろうか。
たとえば……
「うん、やっぱりこの台座のくぼみにさっきの宝玉がガッチリハマるな」
台座のくぼみの上には青、赤、緑の宝石があしらわれている。
それに対応する宝玉が他にもあって、それを揃えろってことなんだろう。
謎解き……ってほどでもないな。
単純にボスが三匹いて、そいつら全部倒さないと先に進めないってことなんだろう。
けど、あの親玉キョンシーレベルのヤツが他に二匹もいるのかよ……
爺ちゃんなら倒せるのかもしれないが、この先にもっと強い奴がいるかもしれないってことを考えるとレベル上げは必須だな。
それにしても、あれは圧巻の戦いだった。
まずもってして、あの二人の動きは俺には捉えることもできなかった。
知覚系のスキルを持っていないことも原因だろうが、【
それでも見えなかった。
厳密に言えば、爺ちゃんや親玉キョンシーが地点から別の地点に移動したのはわかったが、どういう軌道、動きでそうなったのかはまったくわからない。
中間が抜けたパラパラ漫画を見せられてる気分だった。
そして、途中から武器を連続で持ち換えながら戦う親玉キョンシーの技量の高さ、器用さ、万能さは多少武術の学びを得た今の俺だからこそ『意味不明』であるということだけは理解できた。
強いとかそういう次元じゃない。
千年の時があったとしても、俺という人間があのキョンシーと同等の技量まで強くなれる気はしない。
そして、その武技のすべてに完璧に対応し、最終的に無傷で完勝した爺ちゃんのスペックはさらに異常だ。
勿論【
「爺ちゃん、俺爺ちゃんみたいになれるのかな……?」
「何故そのようなことを気にする?」
「何故って、俺は強くなりたいから」
「強くなる道は一つではない。お主にはお主の道がある。それが儂を追うことであるか決めるのは、お主にはまだ早い」
まぁたしかに、俺は爺ちゃんと違ってクラスが近接戦闘に特化してるわけじゃない。
遠距離系や回復、補助系も上げる予定だった。
そうなると、爺ちゃんの言う通り爺ちゃんみたいになろうとすることは最適とは言えない気がする。
「最強など目指すな、そんなものは驕りでしかない。目指すべきは常に『最適』だ」
最適か……
それなら俺の力はかなり熟せる気がする。
「それで、今日はどうする? まだお主は死んではおらぬし、外の陽も明るいだろう。このまま他の城の探索を続けるか?」
「いや、一回帰るよ。ちょっと考えたいこともあるし」
三次職【呪術師】のレベルがさっきの爺ちゃんの戦闘で20を超えた。
得たスキルは【
ランクというのがよくわからないが、これがあればミイラとの戦いもかなり楽になりそうだ。
ただし問題は、このスキル俺自身にしか発動しないという点。
神官系を進めている極美が解呪のスキルを獲得できなかった場合、ミイラとの戦闘は俺一人でやる必要がある。
そう話すと、爺ちゃんは小さく頷き、異空間から刀を取り出した。
「そうか。ではお主の力を高める他に三つの宝玉を手に入れるのは現時点では不可能ということだな。ならば、時間も勿体ない。お主を
こんなところで戦おうってか……
まぁ、この部屋にはモンスターもいないし、【
だったら、都合はいい……のか……?
「儂の力の上限は先ほど見せた。一端でも引き出してみよ」
そう言いながら爺ちゃんは一気に俺に近付き、刀を振り下ろす。
けど、さっき見た戦いに比べればその動きはずっと遅い。スキルを使ってないんだろう。
「嘗めんな!」
俺は直接戦闘系の全スキルを全力で発動させる。
トドメの一撃は『一刀流【
飛翔する斬撃が全方位から同時に迫り、死に物狂いで一つを防ぎ、残りの七度の斬撃に対応しようと思った次の瞬間には、俺の視界は黒く染まっていた。
あと何年あれば、俺はアレになれるんだろう。
きっと、それを見せてくれたのはさっきの問いについて自分で考えろってことなんだろう。爺ちゃんと同じ『剣術』という道を進むのか、それとも別のなにかを極めるのか。
そんなことを考えながら、また俺は死んだ。