転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:ゆかに
まず選ぶべきは一次職と二次職のどっちにするか、だ。
二次職の利点は単純に強いこと。一次職よりクラススキルの数も多いし、スキルの効果も高い傾向にあるらしい。レベルも最大20まである。
スキルは基本的にクラスに就いた時と、レベル10毎に一つずつ貰えるから二次職は三つのスキルを獲得できる。
ちなみに、俺が今なっている【
まぁ、
一次職の利点は10レベルまでしかないこと。極めるまでが早いし、転職可能クラスを見る限り、直接戦闘系を選べばその派生の二次職が選べるようになるんだろう。
「よし、【
二次職は字面からして全部後衛っぽい。
けど、前衛の仲間なんていないわけだし(モンスターカードは一枚も出てない)自分で戦える方がいいに決まってる。
――【
――クラススキル【
この【
クラススキルの【
ただ、使い続けると体力を多く消耗してすぐバテるらしいので、ここぞという戦闘まで温存するのがベターらしい。
一応二ヵ月通っていたこともあってスケルトンを倒すコツみたいなものも掴んできた。
最近は一日に十体ほど倒せるようになっている。
このスキルがあったら十五体くらいは目指せるだろうか?
まぁそれでも日給二千円ちょいにしかならない。しかもそれも理想値の話で、死亡時のランダムロストで魔石がなくなればその分稼ぎは減る。
平均で言えば日給千円くらいだ。
一応、大学卒業してから午前中は引っ越し業者のバイトを入れてるけど、それでも金欠には変わりない。節約しないとな。
なんて思いながら、俺は今日も『死霊の楽園』に足を踏み入れる。
いつもと景色は変わらない。
出てくるモンスターも浅瀬じゃスケルトンだけだ。
「早速行くか。【
おぉ、たしかにパワーが漲ってくる感覚がある。
今ならパンチで石とか割れそうだ。
でも維持するの辛いな。インパクトの瞬間とかに使うのは……ダメだな、踏み込みや腕を引く動作からすでに筋力強化の恩恵は受けている。
やるなら、モーションに入る瞬間に使う必要がある。
でも、戦闘中にそんなポンポン切り替えたりできん。
俺はシングルタスクだ。
「まぁ、強くなってるのは間違いないんだ。骨壺に入れられるように粉々にしてやんよ」
「カカカカカカカカカカカカカカカ」
土から湧いて出て来たスケルトンに向かって走る――バタン!
「え……」
顔面に地面が迫って来た。顔を触ると手が赤く濡れている。鼻血だ。
コケた? なんで? 急に筋力が上がって感覚が狂った? やば、靴紐ほどけてる。
「カカカカカカカカカカカカカカカ!」
あ、やば、死――
「んでたまるかバーカ!」
起き上がり様にタックルをキメてスケルトンを押し倒す。
このスケルトン男だろうか女だろうか。
男だったらこの体勢はちょっと嫌だ。でも女だとこの後することに気がひける。
「あぁ、まぁどうでもいいや。スケルトンだし」
顔面をぶん殴る。
さすがにこの体勢からなら外さない。
スケルトンの顔面は一撃で粉々になった。
「おぉ、マジで威力上がってるわ」
スケルトンは頭を粉砕すると動かなくなる。
何度も潜った経験からそれは理解していたから頭を狙った。
自傷ダメージ以外は無傷だ。これは結構俺的快挙だ。
その場には魔石……と、一枚のカードが残った。
「お、やっと出た」
今まで倒したスケルトンの数は多分百体以上。
このカードどんくらいの確率で出るんだよ。それかなにか条件があるんだろうか。
まぁいいや。
俺は『スケルトンのモンスターカード』を拾い上げる。
って、ちょっと待て、俺は今【
なんで【
「おい、俺のスキル一覧を教えろ」
虚空へそう声をかけると、俺にだけ聞こえる『セカイの声』が返答した。
――固有スキル【
――クラススキル【
マジか。いや、よく考えればおかしいことじゃない。
二次職になっても一次職のスキルは誰でも使える。つまり転職後もスキルは引き継がれてるってことだ。
じゃあ転職すればするほど使えるスキルは増えていくってことか……
「おもろくなってきたじゃん……」
別に探索者を本業にする気はそこまでない。
これは俺の傷心を癒やし、もっと強いメンタルを手に入れるための修行みたいなモンだ。
けど、修行だからって楽しいことがあってもいいだろう。
レベル上げをする意味が他人よりあるなら、とことんやってみよう。
「ってそうだ、【
スケルトンのモンスターカードを握り、スキルの発動を祈る。
そうすれば、カードが消えて目の前にスケルトンが現れた。
直観的に理解できる。こいつは俺の味方……というか絶対服従の奴隷みたいなものだ。
「お前、喋れたりする?」
「カカカ」
「なるほど、無理と。名前いる?」
コクコクとスケルトンは頷く。
どうやら俺の言葉は理解しているらしい。
「じゃあ『最強白騎士丸』と『アルティメットホワイト』どっちがいい?」
そう聞くと、スケルトンは完全に停止した。
あぁ、そっか喋れないから答えられないのか。
ジェスチャーとかしてくれてもいいのに。
「じゃあ最強白騎士丸が右手で、アルティメットホワイトが左手だ。好きな方を上げな」
スケルトンは動かない。
あれ、通じてないのか?
「名前だよ名前。どっちがいいって聞いてるんだ」
「……」
「え、まさかどっちも嫌なの?」
コクコクコクコクと、高速で首を縦に振るスケルトン。
なんだとこいつ、主に逆らいやがって。
逆にダサい名前を付けてやる。
「じゃあ『
どうだめっちゃダサいだろう。なんせギリ現実にありそうだ。
しかもこのスケルトンが男か女かもわからないのに女性名っぽい。
スケルトンは俺の問いに、両手を上げて応えた。
バンザイのポーズっていうか、大名とか王様がやられてる「ははー!」みたいな感じだ。
そうかそうか、そんなに懇願するほど嫌か。
「よし、お前の名前は極美で決定だ」
俺に逆らうとこうなるんだ。覚えておけ配下一号。
「じゃあお前の役割は遊撃だ。俺が戦ってる横から隙を見て攻撃しろ。絶対自分が攻撃を受けようとかするなよ。俺のストレス発散にならないからな」
スケルトンは「マジでいいんすか?」みたいな感じで顎が外れるほど大きく口を開いている。
そうか、そんなに戦いたかったか。だが残念だったな、美味しいところは主である俺のものだ。お前は指を咥えながら適当に攻撃を加えていろ。
なんてやっていると、新しく土の中から敵のスケルトンが姿を現した。
「早速だな。じゃあちゃんと命令通りにやれよ」
「カ!」
俺が敵スケルトンの正面に躍り出るのを見て、極美は側面に回り込む。
それを警戒するように敵スケルトンが視線を逸らすが……
「お前の相手は俺だ全身カルシウム」
近づいてぶん殴る。アッパーカットの要領で顔を狙ったが、さすがに反応されて掠めるにとどまる。
とはいえそれでも顎が削れた。【
敵スケルトンは俺の相手をするしかなくなり、極美は隙を突いて殴り付けている。
ダメージが徐々に敵スケルトンに蓄積していき、いつもよりずっと楽に勝てた。傷もいつもよりずっと少ない。
けど、疲労が強い。多分スキルを沢山使ったからだ。
たしかネットにはモンスターカードは主が死んでもロストしないと書いていた。モンスターカードがなくなるのは、そのモンスターが死んだ時で、死ぬ前にカードに
カード化している間は、モンスターの傷が徐々に回復する効果もあるとか。
「じゃあまぁ、行けるところまで行ってみるか」
「カカカ」
結局その日はスケルトンを二十体ほど討伐できた。
でも死んで魔石を十五個
バイト頑張ろ。
それからも極美と二人でスケルトン討伐に勤しんだ。
倒せる敵の数が増えたお陰か、レベルアップは早かった。
二週間くらいで【
――条件を達成しました。
――自動的に二次職が付与されます。
――キャンセルされました。
――固有スキル【
――以下よりクラスを選択してください。
一次職【
二次職【
――個体名『極美』が条件を達成しました。
――自動的に一次職が付与されます。
――キャンセルされました。
――固有スキル【
――以下よりクラスを選択してください。
【
お前もクラスチェンジできるんかい。