転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
手に入った『鍵玉』は二つ。もう一つはミイラどものボスが持ってるんだろう。
中華風の城に続く扉は俺が近づくと開き、向こうを覗いてみると、
どうやら一度倒したボスはもう戦闘の意志がなくなるらしい。
まぁ、だからって無抵抗で倒されてくれるとは思わないから必要がなければ手を出したりはしないけど。
さすがにこのまま探索するにはマナが減りすぎた。
広間の【
◆
魔法陣に転送されると同時に、魔法陣の傍で座り込んだ天城の姿が目に入る。
「まぁ……正直、助かったよ……」
「別に、あなたの言葉がムカついたからやっただけ」
「体調は?」
「前よりはマシかな。でもなんか、あなたが一人で行ったあと色々考えたんだけどね……」
今日は少し疲れた。
少し距離を空けて、俺も天城の隣に座る。
「やっぱり向いてない気がする」
「そうか」
「……漠然と、強い人は弱い人を護らなきゃいけないんだと思ってた」
「映画の見過ぎだ」
「ふっ、そうかもね。みんなそうなんだと思う」
「それに、お前はお前が思ってるほど強くもない」
「……そうだね。私は私の目指す特別には程遠かったみたい。ダンジョン管理委員会にいても、そこに到達できる気もしない。だから私、この仕事が終わったら辞めるよ」
「いいんじゃね。まだ高校生なんだしさ」
「うん」
少しだけ、天城は俺の方に身体を寄せる。
「ねぇ褒めてよ。頑張ったでしょ?」
「まぁ、強くないとは言ったけど、お前の固有スキルが勝機を作ってくれたのはたしかだ」
「それだけ?」
「生意気で自信過剰なヤツだと思ってたけど、それを突き通して一発ブチ込めたのはお前の才能だと思うよ」
「ふぅん……」
もう少し、天城は俺の方に寄ってくる。
「頭、撫でて」
「え、絶対嫌」
体育座りの天城が俺を正面に捉えるように向き直る。
「バカ!」
「あイテッ」
勢いよく突き出された靴の踵が俺の脛に直撃した。
そのまま天城は立ち上がり、無言で建物の外に出ていく。
「なんだあいつ……」
◆
翌日から俺と天城は毎日ダンジョンに入った。
今更だが、ダンジョン管理委員会の業務はかなり優先度が高いらしく、学校も出席扱いで休めるらしい。
天城のメンタルの回復が二度目はかなり早くなっていたのと、天城が一日六時間近くダンジョンに入ったことで二週間ほどで目標を達成できた。
それから天城は『死霊の楽園』を訪れることもなくなり、ダンジョン管理委員会を辞めたというやり取りを最後に連絡もなく、一カ月ほどが経った。
十二月。俺がダンジョンに入り始めて十カ月が経った。
今年もそろそろ終わり。世間的にも今年の振り返りに入ろうとしていた時、気まぐれにネットニュースを見ていると天城の顔が大きく表示されていた。
『大人気配信者「
そんな見出しに合わせて帝藍罹と天城の顔写真が乗っていた。
合わせて掲載されていたコメント欄では、帝藍罹の人気もあって天城を悪く言う意見が八割ほどを占めていた。
あいつ、ダンジョン管理委員会を辞めてダンジョン配信者になってたのか。
「つーか、めっちゃ炎上しとるやん」
しかし、記事をよく読んでみると『
その後、天城の戦闘を手伝おうとした
普通にアーカイブも残ってた。
なんとなくメッセージアプリを開き、天城のメッセージ欄を開く。
斑鳩彩人:お前、結構なオモロ女だったんだな
すぐに既読が付き、返信が来た。
天城代鳴:心配しろよ
斑鳩彩人:やだよ だって大丈夫だろ?
天城代鳴:まぁね そもそも本当のこと言っただけだし
斑鳩彩人:言い方とか考えられないもんなお前
天城代鳴:うっさい あのさ、明日も配信するから見に来ていいよ
斑鳩彩人:気が向いたらな
つーか、この炎上昨日のことなのにもう配信するのか。
あいつメンタル強くなった? なんかあったのかな?
まぁ俺には関係ないし、手助けする気もない。
ただ、まぁ、たまになら見てやらんこともない。
それからしばらくすると、炎上も落ち着いた。
そして、炎上を切っ掛けに天城の人気が徐々に上がり始めた。
相手によって一切変わらない歯に衣着せぬ態度。高校生とは思えない圧倒的な強さ。元ダンジョン管理委員会所属という異例の経歴。例え
それが主な人気の要因らしい。
今はフォロワーが五万人以上いて、同時視聴者数の平均は千人を超えているらしい。
「なんか遠い人間になっちまったな……」
まぁいっか、たまたまあいつの仕事場と俺の仕事場が被ってて、たまたま一カ月く程度一緒に探索しただけの仲だ。別に関わる用事も必要もない。
ネット上でたまに見て、たまに思い出す。それくらいの関係で、なにも問題はない。
天城代鳴:どう? やっぱり私って特別だったでしょ?
大晦日、紅白を見ているとそんなメッセージが飛んで来た。
斑鳩彩人:いいや 俺の中じゃお前は今もまったく特別じゃねぇよ
天城代鳴:相変わらず生意気ね
斑鳩彩人:お前もな
天城代鳴:来年もよろしくね
俺は少し迷って、『あぁ、よろしく』と返信した。
◆
Tips【天凛銃アルソーヴァ】
能力『白い二丁拳銃を召喚する。二丁拳銃からはマナで構成された白い弾丸を発射でき、リロードや反動は存在しないため命中精度と連射力は極めて高い。弾丸その物には威力はないが、吸着した物体に込められたマナを吸い取って爆発する。マナで構成されている存在に命中し、なおかつマナの吸収量が相手のマナ総量を上回った場合、その存在を即時消滅させる』
特記事項1『マナ吸収の効果を持ち、爆発が効かないような強力なモンスター相手でも遠距離から「敵のマナを削る」という戦術が現実的に実行可能』
特記事項2『相手のマナを利用する攻撃であるため、発動コストが極めて低い。加えて【
特記事項3『弾丸の威力は本人のマナ総量に依存しており、現時点でもランク3中位程度のモンスターまでは一撃で確殺可能。さらにレベルアップおよびクラスアップによって弾丸のマナ吸収量と爆発力の増加がみられ、将来性は極めて高い』
特記事項4『敵が持つ魔法攻撃耐性によってマナ吸収力と爆発力が下がるなどが弱点として挙げられる』
総評『魔法攻撃に対して耐性を持たない敵であれば絶大な効果を発揮でき、耐性を持っていたとしても「マナを削る」という攻撃手段は極めて有用である。よって現時点でランクA。将来的にはランクSに相当する固有スキルだと思われる』
『ダンジョン管理委員会・特別調査報告書』抜粋――