転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ   作:水色の山葵

24 / 24
24「遠距離」

 

 首無し騎兵(デュラハーン)を倒し扉の向こうに進めば、やはりそこは殭屍導師(マスターキョンシー)を倒して到達した広間に続いていた。

 手に入った『鍵玉』は二つ。もう一つはミイラどものボスが持ってるんだろう。

 

 中華風の城に続く扉は俺が近づくと開き、向こうを覗いてみると、殭屍導師(マスターキョンシー)は俺の方を向いて首を垂れていた。

 どうやら一度倒したボスはもう戦闘の意志がなくなるらしい。

 まぁ、だからって無抵抗で倒されてくれるとは思わないから必要がなければ手を出したりはしないけど。

 

 さすがにこのまま探索するにはマナが減りすぎた。

 広間の【女神像(セーブポイント)】を使って俺はダンジョンから脱出する。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 魔法陣に転送されると同時に、魔法陣の傍で座り込んだ天城の姿が目に入る。

 

「まぁ……正直、助かったよ……」

「別に、あなたの言葉がムカついたからやっただけ」

「体調は?」

「前よりはマシかな。でもなんか、あなたが一人で行ったあと色々考えたんだけどね……」

 

 今日は少し疲れた。

 少し距離を空けて、俺も天城の隣に座る。

 

「やっぱり向いてない気がする」

「そうか」

「……漠然と、強い人は弱い人を護らなきゃいけないんだと思ってた」

「映画の見過ぎだ」

「ふっ、そうかもね。みんなそうなんだと思う」

「それに、お前はお前が思ってるほど強くもない」

「……そうだね。私は私の目指す特別には程遠かったみたい。ダンジョン管理委員会にいても、そこに到達できる気もしない。だから私、この仕事が終わったら辞めるよ」

「いいんじゃね。まだ高校生なんだしさ」

「うん」

 

 少しだけ、天城は俺の方に身体を寄せる。

 

「ねぇ褒めてよ。頑張ったでしょ?」

「まぁ、強くないとは言ったけど、お前の固有スキルが勝機を作ってくれたのはたしかだ」

「それだけ?」

「生意気で自信過剰なヤツだと思ってたけど、それを突き通して一発ブチ込めたのはお前の才能だと思うよ」

「ふぅん……」

 

 もう少し、天城は俺の方に寄ってくる。

 

「頭、撫でて」

「え、絶対嫌」

 

 体育座りの天城が俺を正面に捉えるように向き直る。

 

「バカ!」

「あイテッ」

 

 勢いよく突き出された靴の踵が俺の脛に直撃した。

 

 そのまま天城は立ち上がり、無言で建物の外に出ていく。

 

「なんだあいつ……」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 翌日から俺と天城は毎日ダンジョンに入った。

 殭屍導師(マスターキョンシー)と同じで、首無し騎兵(デュラハーン)も俺や俺と同行する天城を襲うことはなくなっていたからリビングアーマー狩りは順調に進んだ。

 

 今更だが、ダンジョン管理委員会の業務はかなり優先度が高いらしく、学校も出席扱いで休めるらしい。

 

 天城のメンタルの回復が二度目はかなり早くなっていたのと、天城が一日六時間近くダンジョンに入ったことで二週間ほどで目標を達成できた。

 

 それから天城は『死霊の楽園』を訪れることもなくなり、ダンジョン管理委員会を辞めたというやり取りを最後に連絡もなく、一カ月ほどが経った。

 

 

 十二月。俺がダンジョンに入り始めて十カ月が経った。

 今年もそろそろ終わり。世間的にも今年の振り返りに入ろうとしていた時、気まぐれにネットニュースを見ていると天城の顔が大きく表示されていた。

 

 

『大人気配信者「帝藍罹(みかどあいり)」、ダンジョンで出会った無名の配信者に「雑魚、邪魔」などの暴言を吐かれる』

 

 

 そんな見出しに合わせて帝藍罹と天城の顔写真が乗っていた。

 合わせて掲載されていたコメント欄では、帝藍罹の人気もあって天城を悪く言う意見が八割ほどを占めていた。

 

 あいつ、ダンジョン管理委員会を辞めてダンジョン配信者になってたのか。

 

「つーか、めっちゃ炎上しとるやん」

 

 しかし、記事をよく読んでみると『帝藍罹(みかどあいり)』が死にかけていたところを天城が助けたらしい。

 その後、天城の戦闘を手伝おうとした帝藍罹(みかどあいり)に天城が掛けた言葉が「雑魚なんだから邪魔する前に消えてくれない?」というものだったらしい。

 

 普通にアーカイブも残ってた。帝藍罹(みかどあいり)は俺もたまに目にするくらい人気の配信者だし、炎上はかなり大ごとっぽい。

 

 なんとなくメッセージアプリを開き、天城のメッセージ欄を開く。

 

 

 斑鳩彩人:お前、結構なオモロ女だったんだな

 

 

 すぐに既読が付き、返信が来た。

 

 

 天城代鳴:心配しろよ

 斑鳩彩人:やだよ だって大丈夫だろ?

 天城代鳴:まぁね そもそも本当のこと言っただけだし

 斑鳩彩人:言い方とか考えられないもんなお前

 天城代鳴:うっさい あのさ、明日も配信するから見に来ていいよ

 斑鳩彩人:気が向いたらな

 

 

 つーか、この炎上昨日のことなのにもう配信するのか。

 あいつメンタル強くなった? なんかあったのかな?

 

 まぁ俺には関係ないし、手助けする気もない。

 

 ただ、まぁ、たまになら見てやらんこともない。

 

 

 

 それからしばらくすると、炎上も落ち着いた。

 そして、炎上を切っ掛けに天城の人気が徐々に上がり始めた。

 

 相手によって一切変わらない歯に衣着せぬ態度。高校生とは思えない圧倒的な強さ。元ダンジョン管理委員会所属という異例の経歴。例え死亡(ロスト)しても翌々日にはダンジョンに入るメンタリティ。安全重視の『観光』に近い配信が多い中、安全度外視で『挑戦』する姿勢。それと顔。

 

 それが主な人気の要因らしい。

 今はフォロワーが五万人以上いて、同時視聴者数の平均は千人を超えているらしい。

 

「なんか遠い人間になっちまったな……」

 

 まぁいっか、たまたまあいつの仕事場と俺の仕事場が被ってて、たまたま一カ月く程度一緒に探索しただけの仲だ。別に関わる用事も必要もない。

 ネット上でたまに見て、たまに思い出す。それくらいの関係で、なにも問題はない。

 

 

 天城代鳴:どう? やっぱり私って特別だったでしょ?

 

 

 大晦日、紅白を見ているとそんなメッセージが飛んで来た。

 

 

 斑鳩彩人:いいや 俺の中じゃお前は今もまったく特別じゃねぇよ

 天城代鳴:相変わらず生意気ね

 斑鳩彩人:お前もな

 天城代鳴:来年もよろしくね

 

 

 俺は少し迷って、『あぁ、よろしく』と返信した。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 Tips【天凛銃アルソーヴァ】

 能力『白い二丁拳銃を召喚する。二丁拳銃からはマナで構成された白い弾丸を発射でき、リロードや反動は存在しないため命中精度と連射力は極めて高い。弾丸その物には威力はないが、吸着した物体に込められたマナを吸い取って爆発する。マナで構成されている存在に命中し、なおかつマナの吸収量が相手のマナ総量を上回った場合、その存在を即時消滅させる』

 

 特記事項1『マナ吸収の効果を持ち、爆発が効かないような強力なモンスター相手でも遠距離から「敵のマナを削る」という戦術が現実的に実行可能』

 特記事項2『相手のマナを利用する攻撃であるため、発動コストが極めて低い。加えて【魔士(マギ)】系クラスはマナ増加量とマナ回復力に優れるため、弾切れはほぼあり得ない』

 特記事項3『弾丸の威力は本人のマナ総量に依存しており、現時点でもランク3中位程度のモンスターまでは一撃で確殺可能。さらにレベルアップおよびクラスアップによって弾丸のマナ吸収量と爆発力の増加がみられ、将来性は極めて高い』

 特記事項4『敵が持つ魔法攻撃耐性によってマナ吸収力と爆発力が下がるなどが弱点として挙げられる』

 

 総評『魔法攻撃に対して耐性を持たない敵であれば絶大な効果を発揮でき、耐性を持っていたとしても「マナを削る」という攻撃手段は極めて有用である。よって現時点でランクA。将来的にはランクSに相当する固有スキルだと思われる』

 

 

 『ダンジョン管理委員会・特別調査報告書』抜粋――

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜(作者:ちんこ良い肉)(オリジナル現代/冒険・バトル)

火賀灯真は、世界が終わる日を知っていた。▼正確には、世界が“サービス終了する”日を。▼午前十時。▼現代日本にダンジョンが出現し、人類の一部にレアリティとクラスとスキルが配られる。▼世間は混乱し、国家は対応に追われ、凡人は怯え、英雄願望のある者は浮かれる。▼そして俺は、ゲームの周回で猛威を振るった、自爆宝具…もとい戦闘不能と引き換えに繰り出す超火力広域攻撃スキ…


総合評価:5458/評価:7.96/連載:35話/更新日時:2026年06月21日(日) 23:26 小説情報

エロゲ転生〜やり込んだ知識でハーレム無双〜(なお特殊性癖)(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

やり込んだエロゲに転生してしまった主人公。▼抜きゲー世界であるが、バトルもあるので、死なない、詰まない様にしながらエロく生きたいと思います。▼なお初っ端から周回用アイテムを回収する模様。▼カクヨムとマルチ投稿▼諸事情により未完▼本当に申し訳ない。▼理由は活動報告にて


総合評価:4908/評価:8.2/未完:130話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:00 小説情報

ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

現代ダンジョン立志伝〜大戦の軌跡〜▼……というゲームをプレイしていたプレイヤー達は、プレイヤーとしての知識を活かして成り上がりを目指すようです。▼2度の大戦以外にも日ノ本を狙う国はわんさかおりますが、プレイヤー達は生き残れるのでしょうか!


総合評価:5380/評価:8.5/連載:103話/更新日時:2026年05月12日(火) 19:51 小説情報

ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。(作者:塔乃登)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

[ストーリー/STORY]▼ここはセンクトアル王立学園。▼15歳になった少年少女が集まる国一番の学び舎。▼貴方の目標は学園生活を通して、学校に存在するダンジョンを攻略すること。▼塔の形をしたダンジョンの中には、さまざまなモンスターとシチュエーションが待ち受けています。▼仲間を集めギルドを設立し、その頂上を目指しましょう。▼300名を越える仲間たちと10名を越…


総合評価:8580/評価:8.47/連載:11話/更新日時:2026年06月30日(火) 07:00 小説情報

ホラー世界の狂言回しになったので、怪異どもをボコして回ることにした(作者:いつもより多く回っております)(オリジナル現代/冒険・バトル)

物語の世界には、時折胡散臭い狂言回しが出てくることがあるだろう。▼なった、それに。▼気づいたらそんな狂言回しになっていた男は、狂言回しの役割を放棄して人々を害する怪異をボコボコにして回ることにした。▼いっそお前の方がやばい怪異だろという勢いで暴れ散らかす狂言回し、阿鼻叫喚の怪異と被害者。▼除霊師達からは怪異と同類扱いされる男の行先やいかに。


総合評価:12165/評価:8.87/連載:14話/更新日時:2026年07月02日(木) 07:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>