転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
「『【
俺と
ヤツは、二つの強化スキルに加えてもう一つ、
『【
を、発動させる。
ッチ、目が離せなくなった。これじゃあっちのガキを狙うのは無理か。
『なぁ俺、俺はどこまでのスキルを使えると思う?」
「どういう意味だ?」
『言葉通りの意味だ。俺はお前の魂の複製で、そこに刻まれたスキルを使える。けどそれは複製された段階までの全スキルだ』
俺が最後に死んだのは
それ以降、俺はレベルアップしてない。ってことはこいつは俺と完全に同一のスキルを持っているってわけだ。
「だからなんだよ?」
『【
俺より一段階強いってことか……
いや、そもそも身体が違うんだ。身体能力の勝負じゃ勝てないのは目に見えてる。
「そうかい。まぁ俺が出てきたことには驚いたが、お前、俺とは相性悪いだろ」
『どういう意味だ?』
「お前は召喚獣まで複製できてるのか? 【
俺の両隣に爺ちゃんと極美が現れる。
『こいつは一本取られたね。【
「どういう状況じゃ?」
「お兄様の複製された魂、というわけですか?」
「そういうことだ」
「悪趣味でございますね」
「なるほどのう……」
爺ちゃんが【
「ならば、負ける道理は存在せぬな」
『爺ちゃん……って、偽物に呼ばれても困るよな?』
自虐的に笑いながら、俺の偽物は爺ちゃんに視線を送る。
「お主は偽物だ。迷宮の魔物だ。故に儂はお主の感情を考慮しない。だから、お前も儂の感情など考慮せずともよい。本物でないと悟っていたとしても、お主が彩人なら儂を超えたいと願うはずだ」
『……あぁ、そうだな。この身体であんたを超えてもその先に意味なんかないのに、俺はそう願っちまってる』
「案ずるな、お主の無念は儂が斬り捨ててやる。だからお主は今まで通り、儂を超えるために全力で拳を振るえばいい」
『ありがとよ、爺ちゃん……。多分
「かかって来い、彩人」
偽物の目が細まり、小さく笑みがこぼれる。
『うぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!』
偽物はすべてのバフスキルを使いながら、爺ちゃんに突っ込んで行く。
俺自身の動きを外から見たことなんかなかったけど、抱く感想は『雑』の一文字に尽きる。
爺ちゃんの動きを知っているからこそ、そこには洗練さはまるでなく、我武者羅に拳を振り上げるだけ。
身体の使い方は最初よりは多少マシなんだろうが、俺がダンジョンに入り始めてまだ一年も経ってない。
そんな俺と爺ちゃんの差は――
「【
「ッ!?」
――歴然だった。
「クソ……」
突き出された偽物の右腕が肘から切断される。
肉と骨と断面、しかし死体だからか血は溢れない。
『やっぱ、強いな爺ちゃんは……』
「お前も強くなった」
『……そっか』
諦めるようにそう呟いて、偽物は俺に視線をくべる。
『身体が
「当たり前だろうが。俺の考えなんて俺が一番理解できるに決まってる」
今、
そして俺には――
『ここだ。【
あらゆる行動妨害効果を一時的に無効化するスキルがある。
百八十度反転した偽物は、俺たちではなくこのダンジョンの死霊の生みの親を見据える。
傷を負うほど身体能力が向上する【
「えっ?」
『ざまぁみろよ、ご主人様』
「ぐげっ!」
硬質化した拳が、その子供の顔面を穿つ。
もしあれが普通の子供なら頭を破裂しているくらいの威力のはず……だが……相手はこのダンジョンの主だ。俺たちも全力で殺す。
「一刀流【
「【
無数の斬撃と光の奔流が、偽物ごとヤツを包む。
偽物はヤツの頭を掴んだまま、膝を折る。
「トドメだ。【
俺はそこに雷を落す。
さすがに俺を使役してたのには驚いたが、俺とは致命的に相性が悪かったらしい。
「ラスボスっぽかったけど案外余裕だったな。これなら第五階層のヤツらの方が……」
「【
極美の魔術が俺の背後に展開される。
なんで、と思ったのも束の間、その結界に『雷撃』が衝突して掻き消えた。
「は?」
「ふぅ、どうやら僕の命令を違反したスキルの効果は切れたみたいだね。まぁもう身体が活動限界か。それにしても、今ので決め切れなかったのは致命的だね」
俺の偽物は爺ちゃんと極美と俺の攻撃を受けてすでに戦闘不能だ。
俯せに倒れて痙攣している。
その死体を退けながら、そいつは悠々と立ち上がる。
無傷なわけじゃない。
身体は切り刻まれ、爛れ、焦げている。
だが、傷口の肉が蠢き、その傷がおそろしい速さで再生している。
「さて、残りのみんなに命令だ【
残りの……みんな……?
俺はさっきの雷撃が放たれた方向へ視線を向ける。
この部屋は天井がかなり高く、二階が吹き抜けになっているようで、部屋全体を囲うように手すりのついた通路が一周している。
そこに、所狭しと並んでいたのは……俺と同じ顔……
「二百八十一回、何の数字かわかるかい?」
「もったいぶるなよ。大体わかる」
「そう。君がこのダンジョンで死んだ回数だ。そして僕が使役する君の数でもある」
上から俺を見下ろす無数の俺たち。
それは正しく絶望的な光景だ。
「もう理解できていると思うけれど、ここに到達するまでに君は死に過ぎた。もう君に、このダンジョンを攻略する権利はない」
「
「素直でいいね」
「これが前人未踏のダンジョンの最奥の試練ってわけかよ……正真正銘の化物だなお前……」
「心外だね。でも、そう言えば自己紹介がまだだったか。僕は【死霊使い】にして【死体使い】、不死の探求者であり不老の実現者。名を『ウィリアム・ノヴァ』だ、どうぞよろしく」
芝居がかった仕草で、ウィリアムは一礼した。
――ラストボスモンスター【
「そしてようこそ、二百八十二体目の君」
二階にいる
『『『【
圧倒的な光量を放つ稲妻が俺の視界を埋め尽くし、身体を焼き尽くした。