転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ   作:水色の山葵

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31「思索」

 

 また死んだ。

 

 細かく数えてはなかったが、あのボスモンスターいわく二百八十二回目の死らしい。

 

 それにしても二百八十二体の俺が相手か……

 しかもそれを全員倒したとしても、あのバカ再生力の本体が出てくる可能性が高い。

 

 どうやったら倒せる?

 何度も挑んで数を減らす? 無理だ。ダンジョンのモンスターはリセットされている。首無し騎兵(デュラハーン)剣聖骸骨(サムライレヴナント)もそうだったのに、あそこにいる俺だけが別枠と考えるのはあまりにも希望的な話だ。

 

 一応使えそうなスキルはいくつかある。特に【殺人鬼(キラー)】のクラススキル【同族連続殺害記録(キルカウント)】は俺が偽物共を上回ることが可能なスキルだ。

 俺は俺を殺し続ける限りパワーアップし続けるが、相手はそうはいかない。

 それと、敗北した相手に再挑戦する場合に神経系を強化する【勝者必敗(プロトコル=ヴィクトリー)】も発動するはずだが、それは戦いを重ねれば相手も使ってくる可能性がある。

 

 それと、死の間際、俺はあいつらをスキルを使って見ていた。

 【同族連続殺害記録(キルカウント)】と同じく【殺人鬼(キラー)】のスキルである【獲物選び(ポテンシャルアナライズ)】は『【人】に分類される生物にのみ発動可能。相手のレベル、もしくはランクを見抜く』という効果だが、どうやらアンデッドになっても元人間なら発動可能らしい。

 

 見抜けたのはモンスターとしてのランク。モンスターカードの裏に書かれてるヤツだ。

 スケルトンが1、ゾンビが2、キョンシーやリビングアーマーが3、殭屍導師(マスターキョンシー)首無し騎兵(デュラハーン)滅びた魔術師(ルイン・カーメン)が4だった。

 

 最初の頃に死んだ俺はモンスターで言うところランク1以下のマナ量だったはずだが、偽物たちのランクは2と3と4のどれかだ。

 多分、肉体性能だけでもランク2以上はあるってことなんだろう。

 

 大まかにだが内訳は、ランク2が二割、ランク3が六割、ランク4が二割ってところだった。

 まぁ、そいつが死んだ時点のスキル+肉体強度しか持ってないならそんなもんだろう。

 

 それに俺にとって有利な情報もある。

 俺の数が二百八十二体しか用意されていないということは、『魂の欠片』とやらをさらに複製することはできないってことだ。リセットされるとはいえ、同時に相対する数が限られているのは有益な情報だろう。

 

 ダンジョン内で俺がさらに死なない限りは、敵の数が増えることはない。

 

 まぁ、すでに死亡回数が多すぎるから気休めにしかならないけど……

 

「つっても、さすがにまだ情報が足りなさすぎるな……」

 

 

 ◆

 

 

 翌日、俺は再挑戦待機時間(ペナルティタイム)を終えてすぐに『第六階層』へ向かった。

 台座のあった部屋に女神像(セーブポイント)があるから、ボスまで直行できる。

 

 薄暗い地下室で待ち受けていたのは無数の俺たち。

 死者使い(アンデッド・ロード)の姿は見えない。

 

「あのガキはどこに行ったんだ?」

 

 偽物(オレ)の一人にそう問いかければ、偽物(オレ)たちは部屋の奥にあった扉を一瞥する。

 どうやら奥の部屋にいるらしい。ってことは、あのガキは偽物(オレ)たちと一緒に連携して戦う気はないのか。

 

 ナメられたモンだ。

 

 俺と偽物(オレ)たちは、同時に各種身体強化を纏う。

 うん、【勝者必敗(プロトコル=ヴィクトリー)】も発動できてるな。

 

 さらに俺は、

 

「【獲物選び(ポテンシャルアナライズ)】」

 

 を起動。偽物(オレ)たちの顔の一部にタトゥーのような数字が可視化される。

 それはあいつらのモンスターとしてのランクを示す。

 

 数は圧倒的に敵の方が多い。受けに回れば死ぬだけだ。

 

「【俊足(ステップ)】」

 

 加速する先はランク2の奴らが密集する地点。

 そこにいる奴らなら、俺の方が圧倒的に強い。

 

「【鉄拳(アイアンフィスト)】!」

 

 一撃必殺。俺の拳は偽物(オレ)の頭蓋を砕く。

 ランク2相当のヤツなら、ゾンビを相手にすると大差ない。

 

 すぐに別のヤツに向き直って拳を叩き込む。

 感覚的に【連打撃(インパクトラッシュ)】は発動していない。全部俺って言っても同一個体って認識はされないらしい。

 

 だが、二人目の偽物(オレ)を倒した瞬間【同族連続殺害記録(キルカウント)】の発動を感覚的に理解できた。

 二体じゃ微々たる強化だが、このスキルの本質は殺し続ける限り無限に身体能力が強化され続けることにある。

 

『爺ちゃんや極美は出さなくていいのか?』

「出していいくらい俺がお前らの相手できるようになったら出してやるよ」

『なるほどな、同感だ』

 

 殴って殴って、たまに蹴り飛ばして、できる限り早く、できる限り多くの敵を殺せ。

 

 でないとすぐに……

 

『【主護(マスターガード)】』

 

 転移のスキルで、俺が攻撃しようとしたヤツの目の前に違う個体が現れる。

 転移スキルがある時点で相当ランクの高い個体だ。顔の数字はやはり『4』。

 

『【流弾(パリィ)】! 弱ぇヤツしか殴れねぇか?』

 

 俺を煽るように偽物(オレ)は笑い、俺の拳はそいつの拳に弾かれる。

 俺っていつも戦ってる時はこんな顔してんのか。気持ち悪い笑顔だ。

 

「るせぇ、デザートは後から食うモンだろうが」

『デザートだ? どう考えたってメインディッシュだろ!?』

 

 まずい、囲まれた。

 けど、【同族連続殺害記録(キルカウント)】は七、八体稼げてる。

 今この場で身体能力が一番高いのは間違いなく俺――

 

『おせぇぞ!』

 

 速度で勝るはずの俺の顔面に拳が飛んでくる。

 すんでで首をひねって避けるが……速っえぇ……

 

 そういやこいつら、素の身体が俺より高性能なんだっけか。

 

「せこいんだよ! 【亜空鞘(ソードインベントリ)】【斬撃(スラッシュ)】!」

 

 亜空間から引き抜いた直剣で放った斬撃は、ランク4の偽物(オレ)の肩から入り、肉を抉り肋骨を砕く。

 

 相手は俺だ。行動は読まれる。今まで通りの戦い方じゃ通用しねぇ。

 拳じゃなく剣で……

 

『バカかよ、一番得意な武器を使わず俺たちに勝てると思ってんのか? 頭しっかり整えて出直して来い』

 

 俺の【斬撃(スラッシュ)】は胸辺りまでを裂いたが、しかしそこで止まる。

 斬撃を食らった偽物(オレ)は、斬撃による痛みなど感じていないような余裕の笑みを浮かべながら距離を詰め――

 

 まずい、傷を負うほど能力が増す【傷至戦蛮(ダメイジングパワー)】が発動してる……

 それに、仲間を殺した相手への攻撃が強化される【喪失円舞(ロストダンス)】も……

 

 クソ……【同族連続殺害記録(キルカウント)】があっても全然有利じゃねぇ……

 

『この程度で諦めんなよ、俺』

 

 そう言って、偽物(オレ)は俺の鳩尾に拳を叩きつける。

 

『【鉄拳(アイアンフィスト)】』

 

 拳は俺の身体を腹から背中まで貫通していた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 死んだ……

 まぁ、見えていた結果ではある。

 けど、色々わかった。

 

 やっぱり面倒なのは【喪失円舞(ロストダンス)】のスキルだ。

 一体でも倒した時点でそのスキルを持つ全員が強化される。

 つーかスキル多すぎなんだよ。なんなんだあいつら。

 

 けど、やっぱり試したのは正解だったな。

 実験検証は早めにしておかないとレベルアップした俺がコピーされることになるし、情報収集の結果次第で早めに選択するクラスを選びたい。

 

 さて、敵の戦力は大まかに理解できた。

 何度も挑んで学習するって今までの方法じゃ、相手の戦力増強の方が早いってこともわかり切ってる。

 

 爺ちゃんとの修行はマストだとして、レベルアップも必要不可欠だ。

 今まで通り【死霊の楽園】で死なずにレベリングするか?

 けど、リビングアーマーとかキョンシー、ミイラ相手のレベリングだと三次職のレベルアップは頭打ち感がある。

 

「行ってみるか、別のダンジョン……」

 

 

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