転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
「天凛銃アルソーヴァ」
呟くと共に私の両手に白い銃が現れる。
引き金を引くと同時に銃口から放たれた魔力弾は、『
だが私の目の前にいたのは一匹だけ。それは、『群れの他の影狼の影の中に潜む』という特性が関係している。
影狼が一匹消滅すると影の中からもう一匹が姿を現す。
そのもう一匹も倒せばさらに影の中からもう一匹が姿を現す。
倒してもすぐに復活する上に、倒さなければ数がどんどん増えていく。
そんな面倒な相手ではあるが、私の固有スキルの制圧力は
「今日もまぁまぁだったね」
――まぁまぁっていうか三回くらい負けてるからね
――諦めないのはすごいと思います!
――情報収集せずに特攻するのやめない?
――特性さえ理解すれば固有スキルとの相性はめっちゃいいから余裕っていうのは嘘じゃないけど、余裕になるまでが長かったね
――お前ら代鳴ちが余裕って言ってんだから余裕なんだよ
「うっさいマジで……てかあんたら教えなさいよ。それが仕事でしょ!?」
まったく、うちの視聴者はすぐに調子に乗る。誰に似たんだか……
ダンジョン内には電波は届かない。
代わり魔力を使って映像を撮り、魔力を伝って外に映像を送る。送られた映像は電気変換され衛星を通じて世界に発信される。
詳しいシステムは知らないけど、大まかにはそんな感じらしい。
宝物ではないけれど、ダンジョンから得られた素材を使って作られた物品を『魔道具』と呼ぶ。
このダンジョン配信を可能としているのもそんな魔道具の力の一つだ。
ちなみにコメントは『セカイの声』のチャンネルを多少弄る形でリアルタイムで私に届けられる。これも魔道具の力。
頭に強制的に入ってくるからちょっとうるさい時もあるけど、オンオフやブロックや音量調整も自由だからそこまで不便は感じない。
「今日の配信はこの辺で終わり。宿題しないといけないから。じゃあね、まぁ見たくなったらまた見に来てもいいわよ?」
――なんそのツンデレ
――かわいいかよ
――お疲れさまー
――また見に来るよ
――高校行きながらとか絶対大変だよな
別に大変じゃないよ。
ちょっと前に比べたら、全然。
そう思いながら私は配信用の水晶端末を操作し、配信をオフラインにする。
ダンジョンから出ると同時に私はスマホを取り出し、SNSを開く。
エゴサすればイラつくコメントも結構あるけど、最初に炎上したせいで結構慣れた。
それに応援してくれるコメントの方が百倍くらい多いから別に気にならない。
エゴサするのは最初みたいに変なことで炎上してないかチェックするため。
そのあとは、最近流行ってるダンジョンとか配信方法とかをリサーチしていく。
プロ意識なんて別にないけど、私を見ることに時間を使ってもらってるなら相応のお礼をしたい。
タイムラインを見ていると、有名な配信者の発信が目に入ってくる。
『ノイズキャンセリングイヤホンでマンドラゴラの絶叫耐えられるかチャレンジ(プロモーション含む)』
『バナナでエクストラモンキーを罠に嵌めてみる』
『色違いのモンスターカードを親友の【
『限界までマナを使うチャレンジ321日目』
『ダンジョンの地面掘ってみた!』
『絵画鑑定士と行くお城風ダンジョン巡りPart21』
『上位探索者にコーチングしてもらう。w/リョーヘイさん』
色々面白そうなことやってるけど、私が真似できそうなのは少ないな。
適当にスワイプしていくと、あまり有名じゃない配信者の発信も表示され始める。
もういいかな、なんて思いながら帰るまで暇だからという理由で惰性で見ていくと一つの投稿が目に留まった。
『亜人の頭開樹海:第五階層でトロルに出会っちゃいました! 追いかけられたけど、他の人がタゲ貰ってくれたみたい。凄い強かったからプロの人かな? ていうかお礼した方がいいかな?』
そんな文面と共に投稿されていた動画には、血だらけになりながらそれでもどこか楽しそうに戦う……
「は?」
動画をよく見ても、見れば見るほどあいつの顔で恰好で背丈だ。
あいつ、死霊の楽園以外のダンジョンに行ってる様子なんてなかったのに……
ていうか、なんで私に相談もないのよ……!
私はすぐにメッセージアプリからあいつの……彩人の欄を開く。
◆
天城代鳴:【動画】
天城代鳴:最近は別のダンジョン行ってるの?
というメッセージが天城からやって来た。
動画の方を見れば、今日の昼に俺がトロルと戦った時の映像だ。
どっかの配信者の放送の切り抜きらしいけど、あんまり大手の配信者じゃないらしく、再生数は数百回程度。
それに結構遠巻きの映像だから、個人を特定するのは知り合いでもなければ難しいだろう。
つーか、そりゃそうか。
ダンジョン内で配信や撮影してる人間ってのは結構いる。
ダンジョン内での犯罪防止にも役立つし、盗撮とかは相当に悪質なモノじゃない限り見過ごされることがほとんどなのだとか。
俺以外にも人がいるなら今日の戦闘シーンが撮影されてても不思議はない。
斑鳩彩人:ちょっと面倒な相手と出くわしてな
斑鳩彩人:レベリングと人型相手の修行も兼ねて『亜人の
天城代鳴:へぇ
天城代鳴:あ、超偶然だけど私そこ行ったことあるよ
天城代鳴:『死霊の楽園』ではお世話になったし案内してあげようか?
案内……か……
別に複雑な構造のダンジョンってわけでもないから俺一人で行くのは簡単だし、そもそも天城はちょっとした有名人なわけでその隣を歩くのを見られるというのはそれだけで多少緊張する。
目立つのは嫌いだ。というか、人と関わるのが好きじゃない。
それになるべく固有スキルのことはバレたくない。
斑鳩彩人:いや
天城代鳴:心配させてよ、友達でしょ?
友達……そういや、そんな関係はここ一年まったく存在しなかったな。
大学では話す相手は何人かいた。けど、卒業後も交流を取るような間柄の人間は一人もいない。
こういう出会いは、大切にするべきなんだろうか。
天城もなんだかんだ悪いヤツじゃない。ちょっと高圧的でちょっとガキなだけ。
斑鳩彩人:わかった
斑鳩彩人:集合時間と場所を決めるか
天城代鳴:うん!