転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
「やほ」
「え?」
待ち合わせ場所に時間通りに現れた天城は、以前会った時より大きく変わっていた。
特に、髪の色が赤みのあった茶髪から黒髪になっていた。
「なにお前、染めたの?」
「元々染めてたのを戻したの」
「なんで?」
たしか、少し前の配信じゃ赤髪だった。
「気分よ。でもこれで、私と一緒にいるところを見られても私だって思う人はあんまりいないと思うよ」
そんなにファンが多いわけでもないし、ちょっと自意識過剰かな? と、天城は小さく笑いながら俺の顔を覗きこんでくる。
「悪い。気を遣わせたな」
「だから、気分だってば。ほら、感想は?」
「そりゃ似合うだろ。面が良いんだから」
「……うぉ、急にやめてよ」
「お前が言えって言ったんだろうがよ」
「そうだけど……ほら、行くわよ!」
そう言って天城は魔法陣の方へズカズカと歩いて行く。俺もそれに続いた。
メッセージで天城が第十階層まで行っていることは聞いていたから、転移先は俺の最深到達階層である第七階層だ。
第七階層の敵はオークが八割。
残りがゴブリンやコボルト、稀にオーガ、超稀にトロル。
死霊の楽園に比べて敵の種類が多く、対応力が試される。
第七階層は初心者のゾーンは抜けたって感じだから、他の探索者と遭遇することはかなり減った。
「【召喚《サモン》】」
取り敢えず、俺は二人を呼び出す。
「そういや、天城は二人とちゃんと話したことはなかったよな?」
「吸血鬼にレイス、よね? 仲間もアンデッド系なんだ。二人ともよろしくね、天城代鳴よ」
「彩人の祖父、斑鳩十蔵じゃ」
「お兄様の妹の極美と申します」
「……え、お爺ちゃんと妹さん? モンスターなのに?」
あ、俺はとっくに慣れたけど普通の人がこの状況になるとそういう反応にもなるか。
「爺ちゃんは正真正銘そうだけど、極美は義理みたいなもんだな」
「はい。生前は家族仲がいい家庭ではなかったので、お兄様にお願いしてそう呼ばせていただいております」
「……へぇ、深くは聞かないけどよかったね。こいつ意外と面倒見いいし」
「はい。とてもよかったです」
「え、ちなみにさー」
と、天城が極美の方に歩いていき、それにつれて声が小さくなっていく。
「あいつって家だとごにょごにょって感じなの?」
「いえ、お兄様は普段はごにょごにょですが、ごにょごにょな時も、ごにょごにょです」
「うっわ、そうなんだ。じゃあごにょごにょは? ごにょごにょとかどうしてるの?」
「ごにょです。でも意外とごにょごにょな時も」
「ていうか極美ちゃんってさ、あいつとごにょごにょだし、ごにょごにょってことだよね。ごにょごにょみたいなさ……」
なんかすごい怖い会話がされてる気がする……
怖いから聞くのやめよ。
「ふっ」
と、爺ちゃんが隣で失笑した。
「え、爺ちゃん聞こえてんの?」
「儂は唇が読める」
「マジか……」
「なにを話しとるか聞きたいか?」
「……うっ、遠慮しとく」
「うむ、それがよかろう」
マジでなんの話してんんだよあいつら……!
「なるほどねー、良いこと聞いたわー」
なんてニヤニヤしながら戻って来た天城は、絶対に余計なことを聞いたんだろうなと俺でも察することができた。
「なんだよ?」
「んー、べっつにー? あんたってかわいいところもあるんだね」
「おい、極美なに言った!?」
「い、いえ……あの……」
「女の子どうしの会話に男が興味持つもんじゃないの」
興味持たせるようなこと言ってきたのお前じゃん!
けど、さすがにそう言われるとこれ以上踏み込むわけにもいかない気がしてくる。
それに、もし反りが合わなかったらとか一応考えてたけどそんな心配は必要なかったらしい。
「まぁいいけど。けど天城、お前なんか丸くなったって言うか、気さくになったな?」
「そう? そんなつもりないけど、でもいいところを見せようとか無理しようって気持ちは今は一切ないから、そういうのが関係あるのかも」
「へー、大人になったんだな」
「まぁ、だってそんなこと思わなくても私はすごいからね」
「なんだ、なんも変わってねぇじゃん。安心した」
「おい、子供扱いしたでしょ今」
「してねぇって」
「うそ、絶対した!」
ッチ、ピーピーうっせぇガキだな相変わらず……
「で、案内してくれるんだろ? 頼りにしてるぞ」
「任せなささい」
「あ、配信者なのに噛んだ」
「うるさい。任せなさい! 人型相手の修行がしたいんでしょ?」
「それに多対一だともっと都合がいいな。後、相手の手札が多いと尚いい」
「要望多いわね。でもそれならピッタリの階層があるわ」
「マジ?」
「えぇ、亜人の