転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
「【
天城がそう呟けば、その身体に炎のような揺らめく暖色のオーラが纏われる。
オーラ自体に熱は感じない、おそらくは身体強化系のスキル……
天城の力はそのほとんどを固有スキルである【天凛銃アルソーヴァ】が担っているが、だからこそ俺はあいつのクラススキルはほとんど見たことがない。
今使用された【
俺は天城に【
亜人系のモンスターに使用した場合は敵のランクを見抜くスキルだが、人間に使った場合はその『レベル』を見抜く。
天城の顔に浮かび上がった数値は『55』。
一次職がレベル10、二次職が20、んで三次職が25ってことだろう。
一次職二種、二次職三種、三次職はまだ極めてないから三種。
合計で、天城の持つクラススキルの数は八つ。
これまでの戦闘で使用していたスキルを見るに
炎属性だから爺ちゃんと同じ【
今の【
逆に俺のスキルは天城の前で使いまくってるからほぼバレてる。
「【
さらに天城がスキルを使う。
天城が増えていく……数は全部で十……いや十一か。
けど、
「余裕そうな顔だね。配信でもほとんど見せてないスキルのはずなんだけど」
「あぁ、自分でも驚いてるよ」
俺のスイッチは入ってる。メンタル的にも身体的にもしっかりバトルモードのはずだ。
なのに、今までの激情に流されながらの戦いとは違う。
本能でモンスターを千切り捨ててきたこれまでと比べ、明らかに平静を保てている。
相手の能力を分析し、可能性を予見する。
その上で勝利に必要な工程を逆算していく。
そういう思考をほぼ無意識で実行出来ている。
「……そう。準備は整ったから攻撃に移るね」
「そういうこと言ってる時点で俺を甞めてるんだよお前」
天城は返答しなかったが幻影全員の目が細まり、一斉に動き始める。
陣形は俺を囲むような形に落ち着き、天城の幻影たちは一定の速度で俺の周りを回っている。
その隙間から差し込まれるように、アルソーヴァの弾丸が飛来した。
ヤバ、分身に隠れられて予備動作を読めなかった。【
「【
スキルを使ったバックステップによって、アルソーヴァの弾丸は俺の鼻先数ミリのところを通過していく。
一瞬でも反応が遅れてたら今の一発で顔面が爆散してたな。
あいつ、一発で決めに来やがった。
なんて思っている間にさらに弾丸が飛んでくる。
アルソーヴァは発射時に銃口が一瞬光る。
その光を見て射角を把握、そこからズレるように「【
詰めないと話にならないが、どれに詰めればいいかわからん。
想定してたよりずっと強いな……
「つってもまぁ……【
弾丸を弾く。
「なんで……?」
「【
天城の『本体』の進行方向目掛けてイカズチを放つ。
天城はその場で急停止することで雷撃を避ける。
「私の場所まで……」
幻影にはなくて本体にだけあるものがある。
それは【
「俺ほど誰に対してもカウンターとなるスキルを持ってるヤツはいないと思うぞ」
「ムカつくニヤケ面ね。でもお生憎さま、もう準備は終わったよ」
「準備?」
「【
走り回る幻影の後ろ、俺を囲うように三十個近い魔法陣が現れる。
「【
その魔法陣すべてからバランスボールくらいのサイズの火球が一斉に出現。俺に向かって剛速球が飛来する。
「なるほどな、これがお前の戦略か……」
たしかに想定以上だ。
だが、それでも……
【
「【
地面を蹴って真上に飛び上がる。全方位を囲まれているとはいえ、空は別だ。
「かかった……これで終わりよ!」
アルソーヴァの銃弾が空中に出た俺を向く。
ここには蹴れる物がない。【
だがそれでも――
「【
興奮状態時に集中力を増す【
しかしアルソーヴァの銃弾を弾き飛ばせど、天城の勝ち誇った笑みは変わらない。
真下を見れば、大量の【
あれだけの【
「そんなことわかってんだよ最初から」
「え?」
お前の全力はちゃんと受ける。受け切った上でお前に勝つ!
「【
俺の身体が硬質化し切るのと、三十個の【
ドッッッッカァァァァァァァァァァァァァァァァンンンンンン!!!!!
豪炎と煙が視界を埋め尽くす。
自分の身体から出る焦げた肉の臭いは極めて不快で、黒炭のような俺の身体は、――それでも未だ鼓動を止めてはいなかった。
「【
合わせて【
ただこの二つのスキルじゃ部位の欠損までは完治しない。
右足の腰から下、左足首の下、それと顔を庇った右手首から先が消滅してる。
熱ィ……痛ェ……喉乾いたなァ……けどいいや、どうでもいいや……
「ヒュ……」
声を出そうとしても笛の音のような音が出るだけ。
それでも、まだ俺は動ける。
「嘘でしょ……殺す気で撃ったのに……!」
足首から先がなくなった左足を起点に【
当然だが、【
天城の顔を掴み、床に叩きつける。
「がっ!」
その拍子に
そのまま馬乗りになり、首に手を添える。
「オェ、ド(俺の)……ギャヂ(勝ち)……ジャ(だ)……」
「どこがよ、バカ……」
「……?」
首をかしげる俺の頬に、天城は手を添える。
「ここはダンジョンなんだよ? 生き返るの。そんな黒焦げのボロボロになって激痛に耐えるくらいなら、普通の人だったら絶対に死を選ぶ。あの時の私みたいに、その方が楽だから。なのに回復スキルまで使って……焼き切れた神経が再生してもっと痛いでしょ?」
俺の喉が【
「痛いとかどうでもいい」
「もっと楽に勝てたでしょ? 転移スキルもあるんだから……」
転移スキル……【
あらかじめ設定した対象の目の前に転移することができる二十四時間に一回限定のスキル。
今は極美を設定してあるから、使えばたしかに爆炎から逃げられただろう。
「もしかしてそういう形でも極美を使うのは卑怯だとでも考えてたの?」
「いや……お前が俺のためを想って使ってくれた一撃だ。避ける選択肢はなかったよ。それにあの爆炎に耐えたことで【
「気持ちワル……」
「うっせ、勝ちゃいいんだよ」
「……ふん」
そう言って天城はそっぽを向く。
俺の勝ちは決まったし首から左手を放そうとすると、天城が俺の手を掴んだ。
「痛くないってわけじゃないんだよね……?」
「あぁ、【痛覚遮断】のスキルはあるけど感覚が狂うから使ってない」
「バカなの? まぁいいや、たしかにあなたの言う通り、勝てばいいよね」
俺の頬に添えられた天城の手が、俺の首をなぞり、そのまま胸……心臓がある場所まで落ちていく。
アルソーヴァを再召喚できたとしても撃ち抜くより俺が天城の首を圧し折る方が早い。心臓に向かって添えられた人差し指でなにができる?
「私の三次職は【
「は?」
「【
指先が光ったと思った時には、すでに俺の胸には指先ほどの穴が空いていた。
「クソ……アルソーヴァのせいでそれより速い攻撃手段はないと思ってた……」
「まぁ、あなたが最初から私を殺す気でやってたらこんな勝ち方は無理だったけどね」
「それでもお前の勝ちだ」
「うん、おやすみ。これで【
なるほど、勝負を吹っ掛けてきたのは
心臓を撃ち抜かれたことによる心肺停止。
俺は死んだ。