転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ   作:水色の山葵

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7「絶望の昇華」

 

 

【デスペナルティ総合スレPart.224】

 

 

1:無名の探索者

ここでは「デスペナルティ」についてわかったことを纏めていくよ。

特に新情報がない時はデスした愚痴もある程度は吐き出してオッケー。

みんな、メンタルには気を付けましょう。

 

 

 ~~

 

 

33:無名の探索者

今月三回も死んじゃった。

結構メンタル来てる。

私って生きてる意味あるのかな?

 

34:無名の探索者

時間が解決してくれる時もあるから安静にした方がいいよ。

日光浴びるために散歩するのが俺的にはオススメ。

 

35:無名の探索者

乙。月に三回は結構やばい。トッププロの頻度じゃん。

 

36:無名の探索者

トッププロは人外か精神異常者。

比べるもんじゃない。

 

37:無名の探索者

週の半分ダンジョン入ってて週一で死んでるとか、マジ尊敬しかないわ。

 

38:無名の探索者

絶対真似しない方がいいぞ。

味わったことあるヤツならわかってると思うが、死亡時の喪失感はハンパない。

 

39:無名の探索者

それな。俺最初に死んだ時一カ月くらい寝込んだわ。

 

40:無名の探索者

いつになってもあの『自分って無価値なんだな』って思い知らされるような感覚は忘れられん。

 

41:無名の探索者

死ぬほどの怪我負ってる時点で、単純にクソ痛いしな。

 

42:無名の探索者

死に戻りできるとは言ってもあれは肉体と精神の両方に激痛を与えてくるわけだから、多くても月に一回くらいにしとかないと常人は精神持たないぞ。

トッププロ、五次職のヤツらだって死んだ日から最低三日は療養に充てるんだから。

 

43:無名の探索者

死に戻っても平気な顔してられんのは、元々頭のおかしいヤツだけ。

三日で治るトッププロも元々頭がおかしい。

 

44:無名の探索者

まぁ、インタビュー記事とか映像とか見てるとそうなんだろうなって思うわ。

 

45:無名の探索者

一次職のビギナー学生です。デスペナルティって『装備やアイテムのランダムロスト』と『再挑戦待機時間(ペナルティタイム):24時間』の二つで合ってますか?

 

46:無名の探索者

いらっしゃい。合ってるよ。

 

47:無名の探索者

ただアイテムロストは基本的にマナの宿ってる物質に限られる。

だからダンジョン内で拾った物とか、スキルで製造された武装以外はロストの対象にならない。

一般的に肌着は残るっていうのはそういう理屈。

 

48:無名の探索者

でも『モンスターカード』は別枠なんじゃなかった?

 

49:無名の探索者

それはよくわかってない。

鑑定士(アナライザー)】の友達が、モンスターカードは【召喚士(サモナー)】の魂と繋がってるからダンジョンが所有権を主張できないとか言ってたけど……まぁ、本人もよくわかってなさそうだった。

 

50:無名の探索者

それと一部の宝物(アイテム)にはロストから守ってくれる加護が付いてる奴もあるよな。

 

51:無名の探索者

初心者なんだったらちゃんと調べて安全マージンキッチリ取りなよ。

死ぬと病むから。

オススメは一日一時間くらいの探索に収めて、できるだけ【女神像(セーブポイント)】の近くで戦うこと。

 

52:無名の探索者

俺も初心者の時【女神像(セーブポイント)】ファームやってたわ。

今も新しいダンジョンとか階層に行った時はやってるけど。

 

53:無名の探索者

色々教えていただきありがとうございます!

 

54:無名の探索者

興味本位なんだけどさ、死亡回数って一番多い人どれくらいなのかな?

 

55:無名の探索者

探索者が引退する平均年齢って32とかでしょ?

18とかで探索者になったとして引退まで14年。

トッププロが週一で死ぬなら700回くらい?

 

56:無名の探索者

いや、トッププロだって必ず週一で死んでるわけじゃないよ。

多い時がそれくらいの頻度ってだけ。

誰だって死なないように気を付けて探索してるんだから、死なない月だって沢山あるっていうかそっちの方が多い。アイテムロストが怖いのは下位層も上位層も一緒。

 

57:無名の探索者

大体300回とかじゃね?

 

58:無名の探索者

俺、四次職で7年目だけど、まだ100回くらいしか死んでない。

現役はみんなそんなものだと思う。

レベリングやアイテム目当ての時は基本的に勝てるってわかってるとこに行くから、新層に行く時以外は基本死なないし。

 

59:無名の探索者

四次職ってことはかなりのトップ層だな。

百回って俺の十倍死んでるじゃん……すげぇ……

 

60:無名の探索者

ガチプロって病まないんですか?

 

61:無名の探索者

病むよ。だからこういうトコ見てる。

同じ境遇の人の話聞いてるとちょっと楽になるし。

 

62:無名の探索者

わかるわ~

 

63:無名の探索者

メンタル回復のコツ教えてください。

 

64:無名の探索者

酒飲んで忘れる、友達や恋人と目いっぱい遊ぶ、誰かに話を聞いてもらう、とかかな。

死ぬほどの痛み、恐怖、悲しみ、喪失を感じて病まない人なんていない。誰でも絶望で頭を埋め尽くされる。

もしそうならない人がいるとしたら、それは最初からそういう気持ちで頭が満たされてる人くらいだと思う。

その上でダンジョンを楽しい場所だと思っていれば、もしかしたら毎日ダンジョンに潜っても平気なのかもね。

まぁ、そんなのはもう人間じゃなくて『怪物』だけど。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「あークソ、また死んだ!」

 

 生き返った瞬間に、俺は魔法陣の描かれた地面に拳を叩き付ける。

 

 今狩場にしているのは『死霊の楽園:第四階層』。

 あの橋の向こうにいたのは『スケルトン』じゃなかった。

 このダンジョンで初めてのスケルトン系以外のモンスター。

 

 それはいわゆる『ゾンビ』だ。

 

 速度はスケルトンより多少速い程度。

 けど、パワーが段違いで、スケルトンより耐久力が高い。

 

 爺ちゃんは固有スキルの【危機察知】と今までの経験で相手の動きを読んで戦ってるから負ける余地がなさそうだし、極美はそもそも遠距離攻撃だし俺が【敵視(タウント)】を使ってるから倒される余地はない。

 

 問題は俺だ。

 接近戦しかできない俺は何度もゾンビに殺されてる。

 トロいクセにインパクトの瞬間だけに急に加速しやがるし、人間離れした腕力だから掠るだけで肉が削げる。

 

 それと単純に第二階層よりも敵の数が多い。

 最終的にゾンビ映画みたいな大群になってもみくちゃにされて、全身噛み殺されることも多々ある。

 絵面も感触もかなり気持ち悪い。

 

 よし、肉でも食って忘れよう。

 

 

 

 翌日も俺は第四階層に転移する。

 

「じゃあいつも通り、爺ちゃんは好きにしていいよ。極美は俺が【敵視(タウント)】で引きつけたヤツを狙ってくれ」

「「カカカ」」

 

 二体(?)は小さく頷き、俺の指示通りの行動を始める。

 爺ちゃんは元々そんなに口数の多いタイプじゃないし、極美も恥ずかしがり屋な性格らしく会話することはあまりない。

 俺も無言の時間が気まずいとか、そういうことはまったく感じないタチだから、俺が方針を言って、問題がなにもなければ二人は黙ってそれに従う。

 

 それがいつもの流れになりつつある。

 

 ゾンビの魔石の売却価格は一個で千五百円。

 爺ちゃんだけでも最低十体くらいは倒してくれるから、稼ぎはかなり増えた。

 

 もう極美に内職させなくても済みそうだ。

 とはいえ、例によって毎日死んでロストするから結局持ち帰れる魔石の数はいつも十個にも満たない。

 

 俺の生存時間が伸びればいいんだけど、爺ちゃんは単独でゾンビを半分以上受け持ってくれてるし、極美も【氷華障壁(アイスシールド)】っていう氷の壁を造り出すスキルでカバーしてくれるのに大体二時間弱で俺がやられる。

 数がどんどん増えていくから魔石を回収している暇もない。

 

 剣聖骸骨(サムライレヴナント)との戦いで多少は動きもよくなってきたと思ってたけど、爺ちゃんを見る限り思い上がりだったらしい。

 俺が上げた【八艘跳び】もほとんど使ってるとこ見ないし、まだまだ全然本気は出してないってことなんだろう。

 

 俺と違ってクラスを二つしか持ってないのにこれだけ差があるってことは、やっぱりスキル頼りはよくないってことだ。

 

 ただ良いこともある。

 スケルトンの上位種に比べてゾンビは一体辺りの経験値量が多い。

 爺ちゃんが倒したゾンビの経験値が俺にも入ってるからレベルアップのスピードは第二階層とは段違いだ。

 

 三人パーティーを始めて一月ほどで【死霊術士(ネクロマンサー)】【侍】【氷魔導士(アイスマギ)】のレベルが20になった。

 

 俺の【転職(クラスチェンジ)】の弱点というほどじゃないけど、このスキルは一つのクラスを極めた時、つまり最大レベルに到達した時にしか発動できない。

 だからクラスは慎重に選ぶ必要がある。

 あと、レベル上限が存在しないと言われている『ユニーククラス』は選択肢に上がっても絶対にならない。

 

 

 

 ――個体名『斑鳩彩人』転職可能クラス一覧

 

 一次職【魔士(マギ)】【盗賊(シーフ)】【狂戦士(バーサーカー)】【職人(クラフター)】【失恋者(ルーザー)】【剣士(ソードマン)】【運び屋(ランナー)】【冒険者(アドベンチャー)

 二次職【軍師(タクティシャン)】【精霊術士(エレメンタラー)】【殴打士(ナックラー)】【高位神官(ハイプリースト)】【斥候(スカウト)

 三次職【陰陽師】

 

 

 ――個体名『極美』転職可能クラス一覧

 

 一次職【盗賊(シーフ)】【遊撃(ゲリラ)】【戦士(ウォリアー)】【神官(プリースト)】【召喚士(サモナー)

 二次職【斥候(スカウト)】【隠者(ハーミット)

 三次職【氷精魔女(スノーウィッチ)

 

 

 ――個体名『斑鳩十蔵』転職可能クラス一覧

 

 一次職【戦士(ウォリアー)】【盗賊(シーフ)】【魔士(マギ)】【狂戦士(バーサーカー)】【探検家(エクスプローラー)】【職人(クラフター)】【弓術士(アーチャー)】【槍術士(ランサー)

 二次職【炎魔剣士(フレイムブレイダー)】【剣闘士(グラディエーター)

 三次職【剣豪】

 

 

 

 さすがにあれだけ敵が湧いてくるようになるとダンジョン内でじっくり【転職(クラスチェンジ)】の内容を吟味するわけにもいかず、家でゆっくりと転職先を眺める。

 俺の転職先も結構増えていた。

 

 その中で特に気になるクラスが一つある。

 それはかなりレアなクラスでありながら、かなり有名でもあるクラス。

 

 すなわち、需要の高いクラスだ。

 

 それは【運び屋(ランナー)】。

 亜空間に物を収納することができ、収納されているものは死に戻り時のロストの対象じゃなくなるらしい。

 

 今の俺とはかなり相性がいい。

 すぐに俺はそれにクラスチェンジした。

 

 

 ――【運び屋(ランナー)】が選択されました。

 ――クラススキル【亜空倉庫(インベントリ)】を獲得しました。

 ――【亜空倉庫(インベントリ)】は5kgまでの物質を亜空間に収納し、スキルが使える環境下であればいつでも取り出すことができます。また内部の物品はアイテムロストが発生しません。

 

 

 例によってダンジョン外でも普通に使えた。

 普通にめちゃくちゃ便利だ。

 

「爺ちゃんと極美はどれがいい?」

 

 選択肢を紙に書いて、ちゃぶ台を中心に座る二人に問いかける。

 爺ちゃんにはすでに俺の固有スキルについては話している。

 

『儂はこの剣が気に入らん。武器を買う金がないのなら【職人(クラフター)】になろうかと思う』

 

 百円均一で買ってきた手持ちサイズのホワイトボードに爺ちゃんはそう書き込む。

 爺ちゃんが今使っているのはスケルトンソルジャーが持っていた骨の剣の刀ヴァージョンだ。俺も一回使ったことあるけど脆い上に切れ味もそんなにない。

 

 爺ちゃんの不満もわからなくはないな。

 

『私は今まで通り主様のご決定に従います』

「おっけ。じゃあ爺ちゃんは【職人(クラフター)】で、極美は【神官(プリースト)】にしておくか。回復系のスキル持ちは何人いても助かるし、今のところ極美の攻撃力はゾンビ相手でも過剰気味だから」

 

 我ながらアンデッドを神官にすることにしてしまったがいいのだろうか。

 転職した瞬間にエネルギーがぶつかり合って対消滅したりしないだろうな。

 

『うむ』

『かしこまりました』

 

 そんな心配は無意味だったようで、【転職(クラスチェンジ)】は滞りなく完了した。

 

 よし、一次職はレベルアップも速いから明日からはガンガンレベリングしていこう。

 

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