転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ 作:水色の山葵
「一枚、二枚、三枚…………八枚、九枚、十枚……やっぱり揃ってるな」
六畳一間のアパートのちゃぶ台の上に広げられたのは計十二枚のモンスターカードだ。
一枚は極美、もう一枚は爺ちゃん。
そして残り十枚は『ゾンビ』のモンスターカードである。
モンスターカードは表面はそのモンスターの絵柄が書かれているが、裏面には魔法陣のような模様が描かれていてその中心には数字が書かれている。
ネットで検索すると、この数字というのはそのモンスターの『ランク』を示したものらしい。
ランク、つまりはその種族の強さだ。
極美や爺ちゃんのモンスターカードの数字は『1』。
対して、ゾンビのモンスターカードの数字は『2』だ。
俺が【
そのスキルの名称は【
モンスターカードを合成することで召喚獣の
合成には同じランクのカード百枚を素材にする必要があるが、対象よりランクの高いカードは1ティア上がるごとに十倍の
ちなみに【
だから購入するという手段もなくはなかったが、普通に金がないので却下だった。
けど、【ドロップ率増加】や極美が【
これなら極美か爺ちゃんのどっちかなら
「ってことなんだけど、どっちを進化させればいいと思う?」
ちゃぶ台を挟んで座る二人に説明を終え、俺はそう問いかける。
二人はそれを聞いて手元のホワイトボードに文字を書き始めた。
なんか、クイズの答えを待ってる出題者の気分だ。
『好きにすればいい。が、儂は動きにくい種族は嫌じゃ』
『主様のお爺様である十蔵様を差し置いて私などが受け取るのは差し出がましいかと思います』
爺ちゃんは余生みたいなモンだし、基本的に判断は全部俺に任せてくれる。
極美は性格が消極的で指示を聞く能力は高い気がするけど、自分で判断してるところは見たことない。
まぁ、俺も人のことをどうと言えるような人間じゃないし、二人がそうしたいのならそうしよう。
「じゃあ一先ず爺ちゃんに使ってみるよ」
『ふむ』
『はい』
侍スケルトンのモンスターカード一枚とゾンビのモンスターカード十枚を机の上に置き、スキルを発動させる。
「【
――スキル【
――以下より進化先の種族を選択してください。
二次進化先『ゾンビ』『スパルトイ』『レイス』『ダンピール』
ゾンビはわかる。実際戦ったし何回も殺されたから。
部屋が蛆まみれになりそうだし臭いからこれは絶対に却下だ。
ネットで調べた感じスパルトイは正当進化っぽい。人骨で造られたのがスケルトンなら、スパルトイは『竜骨』で造られたアンデッドのようだ。
レイスは半透明のモンスターで、物理攻撃が効かない代わりに物理攻撃ができない。
魔術系のスキルがないと敵に攻撃できないらしいから、爺ちゃんとは相性が悪そうだ。
ダンピールは『吸血鬼』の素養を持つ種族らしい。
ネットで調べると、生き物の血を取り込むことで一時的にパワーアップする性質を持っているらしい。
写真もあったけど、肌が灰色なことと耳と八重歯が尖ってることくらいしか人外的要素はない。
「二択か、けどダンピールなら喋れそうだしこっちにする? それに、筋肉もある方がいいっしょ?」
『そうじゃな。それで構わんよ』
――個体名『斑鳩十蔵』は『スケルトン』から『ダンピール』へ進化しました。
そんなアナウンスが流れた瞬間、目の前にいた爺ちゃんの姿がカードに吸い込まれるように消えていく。
さらに十枚のゾンビのモンスターカードの消失と共に侍スケルトンの絵柄が変化を始めた。
後ろで縛った黒髪と眉間に皺を寄せた男が和服と共に刀を持っている。
その耳と少し空いた口から見える牙が鋭利で、肌は血色が悪そうな灰色。
見た感じの年齢は二十代後半から三十代前半ってところだ。
俺が知っている爺ちゃんとは似ても似つかないけれど、大昔の写真で見たことある。
描かれていたのは若い姿の爺ちゃんだった。
カードの文字も『侍ダンピール』に変化し、裏面の数字も『2』になってた。
そういや今の爺ちゃんのクラスは【
極美もいろんなクラスを獲得してるのにずっと『スケルトンウィザード』のままだし、一番育ってるクラスに関連した名前が頭に付く法則なんだろうか。
もう一度【
「ほう、かなり人間の動きに近いな。これならもう少し戦闘速度を上げることができそうだ」
「お、やっぱり喋れてるじゃん」
そんな会話をする俺たちを見ながら極美は「パチパチ」と手を叩いていた。
「極美の分のモンスターカードも集めないとな」
「それがよいじゃろうな」
「カカカ!」
種族のランクが上がれば基本的な身体能力も上がる。
それに生き血を飲むことで身体能力が上昇するという特性も強力だ。
爺ちゃんの強さを確認してみよう。
――固有スキル【危機察知】【八艘跳び】
――クラススキル【
うん、絶対俺より強いじゃん……
いや、俺は爺ちゃんと違って魔術系スキルもある。
近接戦闘じゃ負けるかもしれないが、総合力なら俺の方がちょっと上……のはず……
「つーか爺ちゃん、剣は?」
「ふむ……なくなったようだ」
カードから召喚された爺ちゃんはいつも持っていた白い骨の刀を携帯していなかった。
あの刀にはカードに戻している召喚獣が勝手に回復するように、『自動的に修繕される』という効果があったんだけど……
「どうやらあれは『侍スケルトン』だったから保持していた武器らしい。種族が変わったことで刀も消えたようだ」
「なるほど、金もちょっと貯まったし刀の一本くらいなら買えそうだけどどんなのがいい?」
「いや、せっかく【
「了解」
極美の杖も買いたいけど、近接武器より魔術系の武器の方が高いんだよな……
極美の武器も【
「それと、久しぶりにアジの刺身が食いたいのう」
あぁ、ダンピールになったことで食事ができるようになったのか……
夕食はスーパーに刺身を買いに行った。
◆
今まで探索で稼いだ金は全部で六十万くらい貯まっていたから、武器の素材として有名な『
この『
ただし、マナを持つ素材は通常の加工方法だけでは真価を発揮できず、スキルやスキルで造った道具を使って加工するのがマストみたいだ。
俺と爺ちゃんが持つ【
このスキルがあれば炉や金槌、金床などの道具を使わずに素材と想像力だけで武器を造れる。
ただし、生産系の二次職や三次職はまず【
もちろん、俺にはそんな道具を揃えられるような金はないので今回は【
簡易的な品ではあるが、爺ちゃんが元々持ってた『骨の刀』よりはきっと大分マシになるだろう。
ただ【
そのはずなのに……
「ふむ、初めてにしては上出来か……」
爺ちゃんが作った刀はかなりちゃんとしていた。
鍛冶の経験でもあるんだろうか?
俺くらいの目利きじゃ美術館にあるような日本刀と比べても価値の差がわからないレベルの出来だ。
「なぁ爺ちゃん、俺にも造ってくれよ」
「嫌じゃ。お主にはまだ竹刀すら似合わん」
「ケチ」
まぁ、刀なんか振り回しても一瞬で折る未来しか想像できないから仕方ないか。
あと普通に銃刀法違反だ。
まぁでも、それはスキルでどうにかなるか?
爺ちゃんは出来上がった刀を【
てか、地味に驚きなんだけど、召喚獣もダンジョンの外でスキル使えるんだ……
マジで絶対に誰にも言わないようにしよ。
「じゃがそうじゃのう、お主にはこれくらいが丁度よいじゃろう……」
そう言って爺ちゃんが造ってくれたのは『籠手』だった。
それも『魔装鉄』で造られているからマナが宿っていて、【
「おぉ、ありがと!」
死ぬ時はちゃんと【
ていうか、絶対勝ちたい時しか使わないようにしよ。
「それと極美嬢、お主にもだ」
「カカカカカカカ」
極美は珍しく長く口元を動かしながら深々と礼をして、爺ちゃんから『魔樹の杖』を受け取っていた。
ちなみにこれらのダンジョン素材で造られた武器は、マナを宿しているということ以外は普通の武器と変わらないからモンスター以外への使用には普通の威力しか発揮しない。
上位職のスキルで武器や防具に特殊効果を付与するようなモノもあるらしいが、武装のスキルに関しても基本的にダンジョン内でなければ使えない。
その後、俺も自分で【