大人になりたくて   作:モンスト学園・管理人

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大人になりたくて

大人になりたくて

 

「ん...ふぁあ...」

寝惚け眼をこすり、欠伸をしながら、白のネグリジェを着た伊達政宗は起き上がる。時刻は朝の2時。この学園に設けられている起床時刻の5時間も前である。

「また変な時間に起きちゃったなぁ...」

同室では、3人のルームメイトがすやすやと寝息を立てている。その内1人は、時たま「...んごっ」や「...んがっ」などといった謎のいびきを発しつつ、剥き出しの腹をぼりぼりと掻いていた。

もう、夏風邪こじらすよ...そう心の中で呟きながら、そのいびきの主の身体に夏特有の薄い掛け布団をかけてやる。

そしてその時、彼女の肢体を見た伊達政宗は軽い嘆息を一つ吐く。

まるで熟れた果物のように大きく整ったその双丘、くびれたウエスト、そしてしっかりと張った腰下の肉。伊達政宗は、俗に言うパーフェクトボディだなぁ、と感嘆した。下着姿で寝ているので、その凹凸もまた一層と際立つ。試しにその果実をつついてみると、マシュマロのように柔らかく、弾力があり、指を離した後はたゆん、と揺れた。もしこれで、目の前の少女が数秒おきに間抜けないびきをかいていなかったのであれば、いくら同性といえども変な気を起こしてしまうかもしれない。

と、あらぬ方向へ飛びそうになる思考を止め、自分の寝床へと潜り込む。早く寝ないとまた寝坊してみんなに迷惑をかけてしまう...そう頭で分かってはいても、どうしても先程の光景が、まるで恋をしたかのように頭をよぎり眠りにつくことがなかなかできない。

結局の話、伊達政宗が寝たのは、布団に入ってから2時間も後の話だった。

 

4人の内、最初に起きたのはいつもぐるぐるに巻いている紫色の髪をだらりと下ろした、この髪型の方が可愛いんじゃないのかと常日頃言われている織田信長だった。起床時間丁度に起き、寝惚け眼で辺りを見回し、伊達政宗のベッドで目が止まった。

「またか...全く、最近どうしたんだろうな」

いつもならば、起床時間だよ〜と言いながらいつも寝坊気味の他のルームメイト達を起こす伊達政宗の姿がそこにあるはずだったが、ここ数日見ていない。寧ろ、伊達政宗が寝坊する側になる程だった。

こうまで続くと、流石に豪放磊落な織田信長といえども心配になってくる。朝食の時にでも聞いておこう、と心の中で思い、他の連中を起こす。

ゆさゆさとルームメイト3人の身体を揺らす。そのうち2人は、目を擦りながらもなんとか身体を起こした。

「...今日も信長さんですか...」

最初に口を開いたのは緑のロングヘアーをぼさぼさにした小柄な少女、徳川慶喜。

「今日も、とは言い草だな」

信長が返答した所で、慶喜に続いき、その明るい性格を体現させたかのような橙の髪をこれまた見事に観葉植物かの如く爆発させたもう1人のルームメイト、真田幸村が呟く。

「あたしはどうせ起こされるなら政宗ちゃんがいいなぁ...」

「四の五の言ってないで早く起きろよ、政宗の奴も起こさなきゃだしな」

シャア!と、気持ちいい音と共に部屋のカーテンが信長により開けられ、眩しい朝日が閉じた瞼を通り抜け、伊達政宗の眼へと突き刺さる。

「わ!ふにゃあ...もう朝...?」

「そうだ、早くしないと遅れるぞ」

「ご、ごめん...また寝坊しちゃった...」

「構わねえよ。布団片しとくから髪整えてきな」

「了解しました隊長!」

「おい幸村、お前は手伝え」

「えー...」

「つべこべ言うな。慶喜も生徒会で早いんだからそのボサボサの髪どうにかしてきな」

「うー...恩に着ます」

 

手早く布団を片し、信長も自らの髪を洗面室で整え、いつものカールヘアーに戻す。

「...いつも思うんですが、信長さん絶対髪下ろした方が可愛いと思うんですけど...」

「うっせえな、これは私のこだわりなんだよ。何人たりとも侵害することは許されない」

「さいですか」

「そんな事よりお腹空いたー!早く食堂行こうよ!」

「右に同じです」

「そうだな、じゃあ早く準備しなきゃな。ほら政宗も早く...おぉ...ふ」

「.......私、歯磨きしながら寝てる人初めて見ました...」

「あたしも見たことないわぁ...」

「これは重症ね...本当、どうしたのかしら。ほら政宗、起きなさい」

そういい、口の端から泡を零している伊達政宗の頬をぺちぺちと叩く。

「ふにゃっ...い、今私、寝てた?」

「がっつり寝てましたよ」

「なぁマサちゃん、最近どうしたん?なんかいっつも眠そうみたいだよ?」

「それは私も感じていた。こう続くと、心配してしまうな」

「デレ長さんに続く訳じゃあないですが、私も心配です」

三者三様の憂い顔を向けられた伊達政宗。一瞬、話してしまおうか、と言った風に口が開き、そしてその滑らかな唇が、躊躇うかのように止まり、閉じられる。

「な、なんでもないよ、あ、は...早く朝ご飯食べないと、遅刻しちゃうよ!じゃあ私先いっとくね!」

部屋のドアを開け、廊下へと躍り出る政宗。ガッ、あうっ、という音が聞こえたので恐らくドア止めにでも躓いたのであろう。

洗面室に取り残された3人。慶喜と幸村は不思議そうに顔を見合わせ、信長は訝しげに、政宗が出て行った所を、じっと見つめていた。

あ、と慶喜が呟く。

「そういえば、政宗さん、まだネグリジェじゃないですか」

 

着替えもしないで出てしまったが故にネグリジェ姿のままの伊達政宗は色々な事に恥ずかしがりながら踵を返していた。

勢い余って男女共同スペースまで走り抜けてしまわなくて本当に良かった。この時間だと、早起きの男子生徒は既に朝食を食べていたりソファーで読書に勤しんでいたり、各々朝の娯楽を楽しんでいる。無論、それはごく少数の生徒であり、男子生徒の大半は朝に読書などするわけもない。

どっちにせよ、元来恥ずかしがり屋寄りの政宗である。人の多い所でこんな格好で居ること自体、赤面はおろか、その場にいるだけで耐えられないようなものである。

「やっぱり...やっぱり無理だよ」

呟く伊達政宗。しかし、彼女が感じているその劣等感は、先程述べた恥ずかしがり屋気質の事ではなかった。

「言えるわけ...ないよ」

俯き、心の中で思う。

 

友の身体に...憧れてるなんて。

 

 

部屋に帰ると、適当な言い訳をし、身支度を整え朝食の場へと向かった。既に時間的に遅刻気味であったので朝食は手早く済ませ、生徒会の仕事があるので早めに学校へと向かった慶喜を除く3人で登校する事となった。

政宗はというと、午前中の授業は、全くといっていいほど頭に入らなかった。睡眠不足だという事もあるが、考えの大半を占めるのは自身の悩みについてである。オトナの身体に憧れている、と言えば聞こえはいいが、政宗が憧れているのは、言ってしまえば、自分の親友であり、ルームメイトの真田幸村の肉体である。確かに周りにも豊満な身体をした女性は多いが、政宗が常日頃見ている幸村の肢体には、たとえどんな美しい身体であろうと政宗の目のフィルター越しでは敵わない。

織田信長も、見る度にどうも、乳房の位置がおかしいというか、ズレているというか。そういう気がしてならないのだが、どちらかというと豊満な部類に入るのだろう。

徳川慶喜も、着痩せするタイプなので服の上からでは分かりにくいが、実は結構な胸を持っているのだ。あの学年と身長から見ればまさに驚愕の胸。ロリ巨乳という属性を、見事に身体に宿している。

しかし自分は、俗に言うぺったん、まな板と揶揄される存在である。細い手足、膨らんでいない胸に尻。見る度にため息をつきそうになる。

更に、政宗のコンプレックスを助長しているのは、その年齢である。

彼女ら4人の学年は、慶喜、幸村、信長と3、4、5年である。そして、政宗もまた5年生に属している。4人の中では一応、最高学年という事になるのだ。だのに、この貧相な身体ときたら。

言動においてもそうだ。自分などより、2学年下の慶喜の方が全然オトナっぽい口調をしている。まぁ、幸村よりかは丁寧である自信はあるが。

 

そして4時間目が終わり、チャイムと共に時刻は昼休みとなる。今日は一人で食べようかと思い、自分の席で弁当を広げようとした。が、その前に肩をぽん、と叩かれた。

「マサちゃーん、一緒に食べよ?」

振り返ると、そこには満面の笑顔の真田幸村の姿があった。

「ゆ、幸村ちゃん!他のみんなは...いないの?」

「ん、みんな用事があるって!ところでマサちゃん、なんでそんなにあわあわしてんの?」

実際問題、政宗は戸惑っていた。それもその筈、ここ数年、幸村と2人で時間を共にする事など全くと言っていい程なかったのだ。最後に2人で語らいあったのは、それこそ小学生くらいだろうか。

「な、なんでいきなり?」

「友達と一緒にごはん食べんのに理由なんかいる?」

「い、いらないけど...」

「なら決定!今日のマサちゃんのお昼は何かな〜??」

「何の躊躇も無く私のお昼をっ!?」

箸を構え、鋭い眼光と共にカチカチと鳴らしながら迫る幸村。自分のおかずの貞操を守る為に弁当を懐に隠す政宗。

「ぐっふっふ、今日の獲物はそのエビフライかな?それとも可愛らしいタコさんウインナーかなぁ?」

「やーめーてーよー!私のおかずは私のおかずだもん!」

「先人は言った。お前のおかずは俺のおかず、俺のおかずも俺のおかず、と!」

「言ってないから!あとそれ、正しくはおかずじゃなくてものだから!」

「マサちゃんにとっては違くても、私にとってはそうなのだ...って、うわぁ!」

身を乗り出して虎視眈々とおかずを狙っていた幸村は、ついにその自重に耐えきれず、前のめりに倒れた。1つの机を2人で共有していたので、自然と政宗が信長の下敷きとなる形になった。当然、政宗は受け止めようとしたが、その手は虚しくも空を切る。そして、政宗の目には、迫り来る2つの高峰が映る。

ぱふっ!と、政宗の顔が、深く柔らかい谷底に埋もれる。男子高校生ならば鼻血を吹いていたかもしれない。しかし、伊達政宗は女子高校なので、ぐっと吹き出そうになる鼻血を堪えた。

いや、もしかすると、堪える必要など無かったのかもしれない。

「?マサちゃん...どうしたの?」

文字通り、押し付けられた劣等感。今までなんとか作れてきた脆い笑みは儚く崩れ、その後ろに隠されていた感情が露わになった。

「いいよね...幸村ちゃんは」

「あたしが?」

「うん、羨ましいよ...あはは」

「んーそう?マサちゃんがあたしをうらやむ事なんてあんまないと思うけどなー」

「あるんだよ、それが...例えば」

「だってあたしも、マサちゃん羨ましいって思うこと沢山あるよ?」

「...え?」

「うん、例えば...」

いつもあたし達の事を見守ってくれる事。厳しく優しくしてくれる事。実は最後までやりきる根性がある事。あたしが先生に怒られる時は一緒に怒られてくれる事。ごはんの好き嫌いが無い事。料理が本当に上手な事。あたし達が間違ってる時は、怒らないで諭すように教えてくれる事。実は見えない所で色々、あたし達のために頑張ってくれてる事。だから...

「だからあたしは、そんなマサちゃんが大好きなんだ」

「幸村ちゃん...でも私、幸村ちゃんみたいな胸とか身長とかも無いし、幸村ちゃんみたいな度胸も勇気も無いし...」

「でもあたしだって、今言った事のほとんど無いよ」

「あ...」

「カンペキな人間なんていないんじゃないかなー、ってあたし思うんだよね」

指でこめかみを掻きながら、少し赤面し、幸村は照れ臭そうに言う。

「だからさ、あたしにはあたしのいいとこ、ユキちゃんにはユキちゃんのいいとこがあるんだよ。ユキちゃん、自分に自信が無いこと多い気がするけど、ユキちゃんのこと好きな人はたっくさんいるんだからさ。例えばあたしとか」

ぎゅっ、と抱き締める。

「自分を、嫌いにならないで」

透明な雫が、頬を伝い、顎に集約し、地面へと落ちる。軽い嗚咽が喉から漏れ、そしてそれは溢れ出す洪水と化す。

「うわぁぁぁぁぁん...ひっ、く...幸村ちゃぁぁん...ぐすっ...」

「ちょっ、あ、マサちゃん実は力凄く強いんだからちょっ!やめて!死ぬ死ぬ死ぬ潰れる!こんな感動的な場面で圧殺されたくない!」

「ふぇ...?」

「ふぅ、緩まった...まぁ、兎にも角にもあたしが言いたいのはさっきので全部だよ。照れくさいからもう言わないからね」

はにかみながら言う幸村。

政宗もその幸村を見、涙ながらに笑う。

「うん、わかってるよ!幸村ちゃん、大好き!」

満面の笑みで言い、力一杯、ぎゅっと抱き締める。

そう、力一杯。

「あだだあああだだだ!!やめでええええあああ!!じぬ!じぬがらああああ!!!」

「えへへ、そんな幸村ちゃんも大好きだよ!」

政宗の悪意無し締め付け地獄は、かれこれ10分間も続いたそうである。

 

 

 

 

 

 




どうも管理人です。「大人になりたくて」どうでしたか?引っ込み思案な少女、伊達政宗が今回の主人公となっております。彼女は少しレズっ気もあり、実は色々と危険な子なんです。あとは元気発剌な真田幸村とぶっきらぼうなお姉さん織田信長、そして過去作より徳川慶喜の再登場でした。ご意見、ご感想等あれば、次回作の参考に致しますので、どしどし送ってくれたら嬉しいです。Twitter→(@mnst_gakuen)
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