第三陣営みたいなナニカ   作:よろぴくみん

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ぼくのかんがえたさいきょーのたましい!

主人公系の魂を入れてしまうと主人公の座が奪われてしまうので入れてません。てか入れたらストーリーRTAが始まるので入れません。


十個の魂

 

──あなたは今、十個の空白の魂を所持しています。

どこかも分からない、果てのない真っ白な空間で、実体のない声が厳かに響いていた。

 

──それらは魂を封じ込めることのできる器のようなものであり、魂が内包されていれば、その魂を様々なことに活用できることでしょう。

召喚するもよし、自身へと憑依させ、その身に力を宿すもよし……まぁ、使い勝手は本当に多種多様です。

 

さて、本題に入りましょうか。

 

『あなたは今、十個の空白の魂を所持しています。あなたは、その空白を、誰で埋めますか?』

 

意識が朦朧とする中で、俺は前世で狂おしいほどに憧れ、貪るように読んだ物語の怪物たちの顔を思い浮かべていた。

もしも最強の力を手に入れられるなら、あの世界の、あの絶対者たちの力が欲しい。

そんな、死に際の妄想。

だが、意識の底から溢れ出たのは、紛れもない十の概念だった。

 

──〇■▷◆

 

『……はい。了解しました。あなたの選択が、悔いの残らないモノになりますよう、願っていますよ』

 

案内人の口調は穏やかながら、どこか引きつったような、世界の終わりを察してしまったかのような声音が聞こえた気がした。

だが、俺の意識はそこで完全に途絶えた。

 

単刀直入に言わせてもらおう。

現在の俺の中には、俺以外の十個の魂が綺麗に収まっている。

これには理由があって……まぁ、分かりやすく言えば、転生特典とやらだ。

 

前世での俺は、ただひたすらに理不尽を押し付けられ、他人のために身を粉にして働き、何一つ報われないまま死んだ。

だからこそ、『今世ではこのチートを使って、誰にも縛られずに自由に生きてね』という、あの案内人からの精一杯の配慮なのだろう。

おかげで俺は、この新しい異世界で、今度こそ好きに生きるつもりだ。

 

ただし、その好きに生きるの方向性が、あの案内人の想定とは少し、いや致命的にズレているかもしれない。

俺の目標は──平凡に、平穏に生きること。

せっかく授かったこの最凶のチートを、彼らの圧倒的な力を、一度も使わなくたっていいように。

 

『……ツマラナイ』

 

脳裏に、酷く退屈そうな声が、直接ノイズのように響く。

その一言だけで、俺の魂の表面がチリチリと焼けるような錯覚に陥る。

……使わなくたっていいようになんて、少し格好をつけた言い方をしてしまったが、正確にはこうだ。

 

『使ったら世界がどうなるか分からないから、絶対に、何があっても使いたくないんだ』

 

超高校級の希望、才能の集合体、ある世界の崩壊を招いた黒幕……カムクライズル。

 

それが、俺の持つ十個の魂のうちの一つ。

本来なら、一秒でも触れれば俺の自我など消し飛ばすはずの怪物。だが、あの器のシステム──魂の同化とやらによって、彼らは俺に逆らえない。

王と騎士のような関係性にあるのだ。

そして最悪なことに、俺の中には、この退屈した天才にも劣らない世界の特異点たちが、あと9つも居座っているのだ。

 

 

あらゆる分野において卓越した才能を持ち、予測できぬ未知などとうになくなってしまった、髪の長く赤い目をした虚無の体現者。

 

『……ツマラナイ』

 

世界に存在するあらゆる宝の原点を所持している、原初であり頂点。黄金の髪と、何もかもを見通す紅蓮の眼を持つ苛烈なる英雄王。

 

『慢心せずして、何が王か!』

 

人類の呪いを詰め込んだその姿は、鋭い複数の瞳を持つ異形でありながらも、洗練された武の頂点が垣間見える、最悪の呪いの王。

 

『……頭が高いな』

 

その者は純粋であり天真爛漫。鮮やかな桃色の髪を持ち、その小柄で愛らしい姿からは想像できないような、星を砕く力を秘めた原初の天災。

 

『私は、魔王なのだ』

 

あらゆる生命の優れた形質を統合し、生存競争の果てに生まれた究極の個体。まさしく、種の頂点と言っても過言ではない蟻の王。

 

『余はこの瞬間のために生まれて来たのだ……』

 

神聖さを感じるその者は、純白の髪に慈愛を備えた瞳でこちらを見通す。ただ言葉を紡ぐだけで、現実そのものを歪曲させてしまう虚飾の魔女。

 

『あなたを、理解したいのです』

 

気品に満ちた金髪の淑女。指先を少し動かすだけで空間に歪みを作り、ここではないどこか、果てしない〝もしも〟の世界へと繋がる道を作る大妖怪。

 

『全ては、私が決めます』

 

全生物にとっての根源的な恐怖である、白銀の髪を持つ男。魔術と武の頂点に君臨し、正面から抗いようのない絶望を突きつける龍神。

 

『伝えるがいい。必ずお前を殺す、とな』

 

永遠を生きる少女。これまで歴史の中で生み出されてきた魔法を余すことなく習得し、それを完全に発揮することのできる、冷徹なるエルフ。

 

『これだから魔法使いはやめられん』

 

その神々しさは誰もを魅了し、その姿は世界に君臨する女神である。誰でもない自分自身のために、不老不死を手に入れ、世界を停滞させる最高司祭。

 

『なぜそうやって、愚かにも運命に抗うのだ…?』

 

 

今の俺は、これら十人のうち、誰か一人を憑依または召喚するだけで、この異世界を文字通り破壊することができてしまうのだろう。

歩く天災。動く終末。そのスイッチを、俺は十個も握らされている。

だからこそ、この力を解放するわけにはいかない。

 

前世で散々苦しんで、ようやく手に入れた、笑顔で暮らせるはずの毎日。

温かい食事、静かな夜、穏やかな人間関係。

それを、なぜ自ら手放さなければいけない?

 

「いやだ。だめだ。そんなの、到底許せない」

 

俺の平穏のために。

俺の幸せのために。

俺が、ルナリスという一人の人間として生きていくために、この力は墓場まで持っていく。

 

……だが、もしも。

もしも、この異世界の理不尽が、魔物や、悪辣な貴族や、理不尽な運命が、俺のささやかな幸せをどうしても邪魔しようと踏みにじってくるならば。

 

そのときは、全力を持って応えよう。

 

俺の中に入っている、魂たちが。

 

その瞬間、脳内の精神世界から、これまで聞いたこともないほど愉悦に満ちた、傲岸不遜な笑い声が響き渡った。

それは黄金の光となって、俺の魂の檻を激しく揺らす。

 

『愚かだ。実に愚かだ。だが、面白い。普段の我ならば、このような矮小な器に甘んじる我慢など到底できなかったが……どうやら、魂の同化とやらにより、我は永劫、絶対に、お前の味方らしいな。……フン、縛りを振り切ることなど我にとっては造作もないこと。なに、死にたくないのなら、精々我を楽しませてみろ、ルナリスよ』

 

……彼を表に出す必要がないことを、願うばかりである。

 

 

 

 

 

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