第三陣営みたいなナニカ   作:よろぴくみん

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キャラクターの口調がよく分からない…

キャラ崩壊注意です。このキャラはこんなこと言わないっ!!みたいなことを感じたら、ブラウザバックしてください。
ここ間違ってるって時は優しく教えてくれるとありがたいです。



底辺魔法使い

 

「お母さん! ちょっと遊びに行ってくる!」

 

「はいはい、気をつけて行くのよ。最近、物騒な噂も多いんだから、あんまり森の近くには近づかないでね」

 

「はーい!」

 

元気よく返事をして、俺は家の扉を蹴り出すようにして飛び出した。

 

おっと、自己紹介が遅れたな。吾輩はルナリスである。ちなみに、異世界に転生して数年が経つが、未だに友達はいない。

……悲しいから、そこには深く触れないでほしい。俺の心が死ぬ。

 

それにしても、この世界は本当にファンタジーの塊だ。

当たり前のように魔法が存在し、個人の技術は〝技能(スキル)〟として数値化や概念化されている。

前世でフィクションを貪っていた身としては、これ以上ないほど血が湧き肉躍る世界なのだが……現実というやつは、そう甘くはない。

 

この世界の魔法や技能は、一定の血の滲むような〝才能〟と、そこから積み上げられる膨大な〝努力〟によってのみ会得できるものなのだ。決して、一朝一夕に習得できるようなものではない。

 

……まぁ、俺の中にいる彼らにとっては、その世界の理すら鼻で笑うレベルの代物らしいが。

 

『……この世界の魔法に関する最適解を、現在の僕は持ち合わせていません。ですが、適性の植え付けなら可能です。時間をかければ、この世界のあらゆる才能を完璧に再現できるでしょう』

 

脳裏で、髪の長い赤い瞳の天才が、相変わらず抑揚のない声でとんでもないことをのたまう。

 

『……魔法、とな? 世界が違うというのは、ここまで滑稽で腹面白いものか。根源の理すら知らぬ有象無象が、魔の頂点だと名乗っている。その程度の児戯、我が蔵の端に転がるガラクタ一つで消し飛ぶわ』

 

続いて、黄金の王が傲然と笑う。

 

うん、知ってた。あんたたちの基準で世界を見たら、この異世界の法律も常識も全部ひっくり返るよね。

……よし、例外は置いておこう。そうしよう。

 

何が言いたいかというと、この世界の一般的な測定方法において──俺には、ひとかけらの魔法の才能もないらしい、ということだ。

 

『……う〜ん。こりゃあ駄目だな。ひたむきさだけは認めてあげるが……おぬし、致命的に魔力の回路が閉じている。どこかで大人しく農家でも営んだ方が、よっぽど世界のため、自分のためってやつだ』

 

老いぼれた神父さんにそう言われた。その後、懇切丁寧におすすめの作物とかクワの持ち方とか教えてもらった。

 

……まぁ、別になくたっていいんだけどさ。

いや、だってさー、憧れるじゃん? 異世界に来たんだから、自分の力で魔法をぶっ放したり、剣を振るったりして無双してみたいじゃん? 憧れたっていいじゃん男の子だもん!

 

もしかしたら、俺のチートに頼らなくたって、ルナリスという自分自身の力だけで、何かを成せるかもしれないって……

いや、前世であれだけ擦り切れたんだから、平穏なスローライフを望んでるんだ。だから、才能なんてなくて、ただの農民として畑でも耕してのんびり暮らせれば、それでいいはずなんだけどさ……

 

あーあ、せめて一緒にバカやれる友達くらいは、そろそろ欲しいなぁ。

 

『私がいるではありませんか。あなたのためならなんだってできますよ?』

 

脳内の最も深い場所から、鈴を転がすような、あまりにも甘く清らかな声が響いた。

純白の髪に、慈愛の瞳。現実の理不尽をすべて言葉だけでなかったことにできる、最悪の魔女。

 

その言葉が本当だから呼びたくないの。

俺には彼女の言葉のどこからどこまでが虚飾()なのか判断する術もない。

でも、魂の同化上、彼女の能力は宿主である俺へ危害を加えられない。物理的に俺を滅ぼすことも、裏切ることもシステムが許さない。

だとしたら、彼女が俺を意のままに操るために残された手段はただ一つ。

その美しい言葉と笑顔で、俺自身の心を騙し、誘導することだけだ。

 

そーゆー負のループの考えが今俺の頭の中で起こってるから、静かにしてくれるとありがたいです。

 

『……つれないですね。それがあなたの望みというのならば、よろこんで』

 

気配が遠のき、俺は小さく息を吐いた。

 

「……はぁ」

 

俺の魂の中で一番マシな人達は……あの桃色の魔王と白髪の龍神くらいだろうな。

 

まぁ最も、あの桃色の魔王は何故か常に睡眠状態だし、白髪の龍神は面倒事を嫌って引きこもってるし、この二人が出てくることはないんだろうけど。

 

そんな事を考えながら、今日もずんずんと森へと足を進める。

 

お母さんの警告? だいじょぶ、だいじょぶ。今までだってだいじょぶだったんだから、今日もだいじょぶ。

なにかあったら、最悪誰かを呼べばいいし。……まぁ、呼んだことないからどうなるか分からないけど。

 

そんな、軽い気持ちだった。

 

「……ん?」

 

ふと、足が止まる。

空気が、異様に重い。よどんている。

まるで夏の湿気みたいに、煩わしく肌へ纏わりつくモノ……なんだ、これは?

 

『それはこの世界で言う〝魔力〟というものだ。本来ならお前みたいな魔法の才のない人間に、いちいち魔法の説明などしたくもないが……仕方がない。割り切ってやろう』

 

突然、脳内に響いたのは高圧的な少女の声。エルフの始祖にして、歴史そのものの魔法使い。

 

「ゼーリエ、言い過ぎ。今ので俺のガラスのメンタルが半分削れたぞ」

 

ゼーリエは俺の言葉を鼻で笑い無視し、話を続けた。

 

『〝魔力〟。簡単に言えば、魔法を使用する上で必要とされるエネルギー、といったところだ。これがあるから魔法を行使できる』

 

「……まぁ、大方予想通りだな。つまり、魔力がないと魔法を使えないってことだ。うん……? じゃあ、魔力がない場所にいたら、魔法使いとかは使えなくなるってことか?」

 

『魔力が存在しない場所などない、と言いたいところだが……底辺の魔法使いならばその通り、無力化されるだろう。だが、熟練の魔法使いは己の身の内に莫大な魔力を封じ込めているものだ。魔力の存在しない場所に居るとしても、多少の不備はあれど、魔法が使えなくなる道理はない』

 

「魔力を封じ込める、か。なぁ、ゼーリエ。それって俺にも──」

 

その瞬間だった。

 

──オオオオオオオオオッ!!!

 

地響きのような咆哮。

あのジメジメした気持ちの悪い魔力の濃度が、一気に跳ね上がった。

凄まじい衝撃波が木々を揺らし、目の前の藪を乱暴に押し分けて、そいつは姿を現した。巨大な影が、こちらをギロリと睨みつける。

 

『……ふぅん。現れたようだな。この気持ちの悪い魔力を垂れ流しにしている魔物が』

 

「ゼーリエ! 悠長に話してる場合じゃない!」

 

『……はぁ? 私が戦うわけでもない。ほら、さっさとこんな矮小な魔物を殺せ』

 

くそ……っ!

そうだった、ゼーリエってこういう奴だった……っ!

もっと好感度を上げておけば親身になってくれたのかもしれないけど……今更そんなこと思ったって仕方がない。

 

〝ドスンッ!〟

 

魔物が重い一歩を踏み出す。幸い、巨体ゆえに動きは遅い。

この距離なら、今すぐ背を向ければ逃げ切れそうだ。冷や汗を拭い、踵を返そうとした──その時。

 

「……てっ!! 助、けてっ……!!」

 

風に乗って、か細い悲鳴が鼓膜を震わせた。

 

『おい、銀髪。悲鳴が聞こえるぞ。これは、女の声だな。助けを求めている……ふむ、三人か。男一人に女二人だ。うち二人は致命傷。こいつにやられたのか。さぁ、どうする?』

 

ゼーリエは、完全に他人事として淡々と状況を伝えてくる。

どうする、って?

 

「どうする?って、何言ってんだ……っ! んなの、自分の命の方が大事に決まってるだろ……っ!」

 

前世では余計なことにまで関わったから死んだのだ。今世は生き延びる。関わらない。逃げるのが大正解だ。

 

『いい加減、嘘をつくのをやめたらどうだ? その姿、口では否定しながら裏で泥をすするような……あの幼子の皮を被った臭い魔女を彷彿とさせて腹が立つ』

 

一瞬、パンドラの顔が脳裏をよぎる。

 

「うるせぇ! どうせ行ったって何もできやしないんだから、だったら、はじめから干渉しない方が……っ!」

 

『干渉、したがっているではないか』

 

「……は、?」

 

『ルナリス。お前がその手に握りしめているモノはなんだ?』

 

指摘され、自身の右手のひらへ視線を移す。

いつの間にか──指が白くなるほどの力で、尖った鋭い石を強く握りしめていた。

 

『……無意識、か。いいぞ。野心のある者は嫌いじゃない。どっかの、指示待ちエルフよりはマシだ』

 

どっかのエルフ……フリーレンのことか。

俺は小さく息を吐き、情けなく握っていた石を手放した。そんなもので戦える相手じゃない。

 

『使え、ルナリス』

 

ゼーリエの声が、脳内で低く響いた。

 

「何を、だよ、?… ぁ?」

 

直後、身体が内側から燃えるように熱くなった。

心臓が激しく脈打ち、全身の血管を何かが猛烈な勢いで駆け巡る。

なんだ、これ。

 

『それは魔力の流れていない身体に、私の魔力を流したことによる副作用のようなモノだ』

 

俺の体に、魔力が流れている?

でも、あり得ない。俺の身体には魔力の回路が閉じていて、魔法なんて使えない。それを昨日、一番思い知らされたはずだ。

適性がなかったというのに、じゃあ、一体、これは何なんだ。

 

『適性がない? ふん。そんなもの、才がない者の言い訳にすぎない。最初から、お前自身が言っていたじゃないか。〝俺とお前たち十個の魂は同化した〟のだと、な?』

 

……同化。そうか……っ!

いや、でも、それならば、昨日検査した時に俺の身体に適性反応が出ていたはずだ。

 

『お前の同化は一方的なモノだ。私たちはその同化を最低限に留めて、お前に心を許してはいない。だから、お前はまだ誰とも完璧な同化をしていない。測定器に引っかかるはずもないさ』

 

……つまり、今、俺の身体に魔力が巡っているということは。

 

「ゼーリエ。いいのか?」

 

『なに、完璧な同化など私もまだしていない。これでようやく半分くらいだ。完璧な同化は、憑依と呼ばれる。私が完全に身を委ねてもよいと思えるくらい、魔法の腕を伸ばせ。それが、私からの特別試練だ』

 

冷たい言い方の奥にある、確かな許可。

 

「……ありがとう」

 

『……フン。厄介なものに捕まった。本当にな』

 

身体を巡る魔力はさっきよりも濃く、熱い。

だが、恐怖で強張っていた気持ちは、不思議と軽くなっていた。

 

茂みをかき分け、声のした開けた場所へと飛び出す。

 

「……誰かっ、誰かいるの……?」

 

「無事か!? ──って、うわぁ……」

 

格好つけて飛び出してきたものの、視界に飛び込んできた光景に息を呑む。

全然それどころじゃない。

血に塗れて地面に倒れ、呼吸の浅い少年少女が二人。そして、涙をボロボロと流しながら、必死に彼らを庇うようにこちらを見つめる女の子。

ゼーリエの言った通りだ。二人は致命傷。一刻の猶予もない。

 

「ゼーリエ、何か今すぐ使える魔法とかないか!?」

 

『ふん。誰に聞いていると思っている。それくらい容易いモノだ』

 

背後から、追ってきた魔物がこちらへ振り向く。

手のような異形の器官をこちらへと向け、口らしき裂け目を大きく開いた。

 

「ァ゙ァ゙、ィ゙ァ゙ァ゙──」

 

何を言ったのかは分からない。ただ、大気が歪む。

その瞬間、魔物の手から巨大な球体の炎が出現し、猛烈な速度でこちらへと飛んできた。

 

『この世界では、魔法を習得したら脳裏に自然と詠唱する言葉が浮かぶらしい。あの魔物が発した言葉も、無意識の詠唱なのだろうな』

 

「……っ! 説明はいいから早く!!」

 

解説してる場合じゃない! 目の前まで炎が迫っている!

 

『これでいいか。今、お前の身体に馴染ませた。──使ってみろ』

 

刹那、脳裏に一筋の術式が強烈に浮かび上がった。

それは、人類が最も研究した、歴史の詰まった魔法。

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)】。

 

「ゼーリエっ!! これって杖がないと使えないとかないっ!?」

 

『この程度の魔物相手なら、必要ないだろう。……杖か。お前専用のものが、いつかは欲しいな。だが、今ではない。……ほら、さっさと唱えてみろ』

 

魔物がすぐ目の前まで迫る。炎の熱気が顔を焼く。

 

『……阿呆だな、こいつ。魔物に知力を期待するだけ無駄か』

 

ゼーリエの呆れ声と同時に、俺は迫る炎に向けて右手を突き出した。

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)……ッ!!!」

 

放たれたのは、漆黒の、あるいは純白の、圧倒的な破壊の光線。

手のひらから爆射されたそれは、迫る火球ごと魔物の顔面を、文字通り跡形もなく吹き飛ばした。

緑色の不気味な液体が飛び散り、巨大な残骸がどさりと地面に倒れ、モゾモゾと不快に痙攣する。だが、再生する気配は……ない。

 

『……フン。まだまだだな。私の魔力を使ってこれでは、こいつみたいな雑魚しか狩れない。だが、まぁ……初めてにしては及第点としておこう』

 

「うるへー……これでも死ぬ気で頑張ったんだよ」

 

反論しつつも、右手がガタガタと震えている。

だが、それどころじゃない。問題は、あの怪我をした子どもたちだ。

 

「おい! 魔物は倒した! すぐ街に運ぶから…な、……?」

 

声をかけようとした瞬間、急激に、視界がぐにゃりと歪んだ。

全身の筋肉が悲鳴を上げ、凄まじい疲労感が押し寄せる。立ち上がっていることすらおぼつかない。

 

『当たり前だろう。初めて魔力を身体に巡らせた上に、行使までしたのだ。身体の回路が壊れなかっただけ、その魂の器を褒めてやる。……これ以上は無理だがな』

 

だめだ。ここで俺が倒れたら、あの子供たちが死んでしまう。

 

『……安心しろ。後は私に任せて、大人しく眠るがいい』

 

脳裏に響く声が、少しだけ柔らかくなった気がした。

ゼーリエ……まじで、あの子たちを頼んだからな……?

 

『任された』

 

その確かな返事を聞くと同時に、俺の意識は深い闇へと落ちていった。

 

 

 





ぜーりえむずい
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