ちょっ、ッッま...自分まで巻き込まれる必要なくないかぁ!!?? 作:大塩tune八郎
ツクヨミ。
それはVR技術によって産まれた仮想世界。
そこは、
あまるほど楽しくて、あまりにも美しい、
誰も争わないくていい皆んなが笑顔になれる素晴らしい非現実。
これから話す物語は、
そんな世界にのめり込むどころか、埋まってしまうほど好きになってしまった男がとんでもねぇ理不尽に見舞われる話。
──今は昔……。
ガタンガドンガタンガドン
電車が走る音が今日も自室を震わせた。
カーテンの隙間から入ってくる光は角度を鋭くしている。
また、今日が来た。
「....11時38分...ウーバー頼むか....ネム」
───では、なくて。
ラインッ!
「...ッゲ」
目に映る部屋の光景に電子体の手紙が届き、脳みそを震わせる。
そして、初期設定のまま変更していない通知音がスマートフォンも震わせる。
だいたい連絡をよこした相手は予想がつく。
....やっぱり彼女だ。
《今日も学校来ないの?そろそろ来ないと留年するよ!あと進路の……》
「.....はぁ~」
───超未来だったり。
ベットに逸る気持ちを抑え、小机脇に放置されていた冷めたブラックコーヒーを一気に飲み干す。
久しく見ていない高校の教材を探す為に山のように積まれた論文や専門書を倒さないようARの矢印に従いながら勉強机に向かっていく。が、
ツルッ「 !?」
───いやいや、大昔でも超未来でもなくて。
「ッッぃっだァ.....」
積まれたA4サイズの紙を踏んずけ転びぐしゃぐしゃにしてしまい、お尻には結構値の張る参考書を下敷きにしてしまう。
朝からついてねぇ....。
───今とあんまり変わらない、少しだけ未来の話。
「あ」
転んだ箇所のものを整理していると、机の下。目線の先に見覚えのあるカバンが赤いラインで強調表示されていた。
やはりスマコン、スマコンは素晴らしい。
あとの片付けは数時間後の自分に任せ、カバンの肩掛けを掴み引っ張り出す。
───勉学と未来を背負う普通の男子高校生ありけり。
制服に着替え、適当に食事を済ませてから前回貰った今日提出の進学に関する書類を見る。
───彼には才ありて、たいへん優れたる男子高校生ありけり。
───されど怠りて、現実をよく弁へたる、なんとも惜しき男なりけり。
「大学かぁ....もういっかいぃ~? 面倒だけどなぁ〜....」
───男の名は、『市川
───クーちゃんと呼ぶべし!
「涼しぃ〜…」
真夏日の中、誰もいない校門を通って校舎の中にすぐさま入る。
昼休み時間の今、どの教室も冷房をつけているからか廊下には熱々の身体を冷やす空気が漂っていた。
だが涼んでいる暇はない。急いでこの紙を渡して家に帰らねば。
今日は命と同等のイベントが待っているのでな。
....あと"アイツ"に見つかると面倒臭いし
そのためにもまずは担任の先生の机にこっそり置いて....ヘヘ。
とりあえず定石の職員室に向かうと、
「失礼します。2年4組 市川楠峲です。立花先生に用があって...あ」
「あ」
そこには進路相談に来ていた、自分に連絡をくれたその人、
酒寄 彩葉がいた。
そして、目が合ってしまった。
「酒寄さん!」「わかってます!」
クッッソッ!なんでいるんだよッ!しかも2人揃ってッ!!
脳をフル回転させ反射するように速攻その場から逃げる。
階段..?いや、曲がり角を使う!
が、しかし、
運動なんて普段から全くしていない自分が体育成績10の相手に勝てる訳もなく。
「~~~はい、捕まえた」
「...あっ」
呆気なく捕まってしまう。
その後ろから来ている先生のプレッシャーをジワジワと味わいながら。
「ハァハァ...流石です、酒寄さん…そして久しぶりですね市川さん?」
「...ッヒ、ア、ハイ、オヒサシブリデス....」
「職員室で、"お話"しましょうか」
「ハイ..」
彩葉め、邪魔されなければ....!
西部劇のようにお縄にされた自分は彩葉から先生へと引き渡され、職員室に連れてかれる。
彩葉はと言うと、ニッコリと笑っているが確かにその笑顔の内には怒りが籠っていることが分かるくらい強くこぶしが握られていた。
これは...マズイ....。
「私とは"後で"話そうね?♡」
あぁ、助けて芦花真実。自分、今日が命日になっちゃう。
そんな情けない思いは彼女らに届くことなく、連れていかれるのだった。
「......」
「久しぶりに来たかと思えば何があったのよ」
「生きてるか〜?」
放課後、
教室にはガヤガヤと授業の呪縛から開放された生徒たちの談笑声が雑音として聞こえる。
そんな中自分は、午後の授業を何とか受け終わり、自分は意気消沈しながら机に倒れている状態で芦花と真実の暇つぶしお人形に成り下がっていた。*1
「わりぃ...やっぱ、つれェわ....!」
「そりゃ、つれェでしょ....」
「えっと、ちゃんと言えたじゃねぇか....?」
「「いえーい♪」」
でもやっぱり先生は色々と自分の事情を理解してくれているからか滅茶滅茶怒ることはしてこなかったなぁ。
なんて口に出すと災いが寄ってくるので思うままに留めておく。
「なにやってんの....3人とも」
2人に教えたこの流れをやっていると彩葉が戻ってきた。
相も変わらず、さっきもだが完璧を演じ続けている彩葉を見るとなんだかムズ痒く感じる。
もっと...こう、ラフにしても周りからの評価は変わらんと思うんだがなぁ。
「おかー」「帰ろっか」
「うぃ〜」
彩葉が来たので自分達は下校を始める。
このまま説教が無いことを祈って。
─────
──
「じゃ、私たちこっちだから」「またあした〜」
「またね」「さよなら〜」
夕暮れ時前、
傾き始めた日の光が建物の影を伸ばし始めた頃、道中一緒に下校していた2人はこれからバイトなのでここでお別れ。
しかも、彩葉は2人と話せてホクホクしている。
今なら...!
「....じゃ、自分もこれで」
「ちょっと待て」
「ハイ」
はい、知ってた。
流れでそのまま逃げ出そうとしたが彩葉がそれを見逃す訳もなく、腕を捕まれ引き戻されてしまう。
その様は傍から見れば公共で仲良くしているカップルのようだ。
「なんで2週間も学校来なかったの?」
「それは....その、ちょっと家庭の事情で.....」
「......」
「ハイ、スイマセン、ウソデス」
いや、もしかしたらカップルじゃなくて親と子かもしれない。
少しの間も作ることなくしっかりと事実を話す。
「...論文書いてたんです....ホントです....」
「嘘じゃないよね?」
「今度見せるんでもう勘弁して下さい....」
「.....はぁ〜、なら良いよ、許す」「ヤタァ!」
意外とすんなり許しを得れた。
彩葉にしては珍しい、いつもならここからネチネチ何かを言ってくるのに。
許しを与えた本人はなんだか妙に気分が良さそうにしている。今日が華金だからだろうか。
「じゃ、私もこれからバイトだから」
そんな機嫌の良い彼女は目元に隠されたグラジオラス色の化粧でこちらを見る。
誰がどう見ても学生がしていい顔色では無いが自分に止める力はない。せめて出来ることと言えば、
「うん、頑張れ」
こんな小並な言葉だけ。
ていうかまだあのバ先で働いてたんだ.....他にもあるだろうに。
そのまま手を振りながらバイト先に向かっていく彩葉の背中を眺める。
その背中はいつしか見た無邪気さを思い出させ懐かしめるものだった。
あの後、
道草食わず真っ直ぐ家に帰り、グシャグシャにしたままだった部屋を片付けてベランダ。
夜風に当たりながら街の光に負けなかった星を眺めていた。
「....」
マンションの上階、下を眺めれば親子で家に戻っているであろう家族の姿、男女の仲で手を繋ぐ2人、動きずらそうなスーツを身にまとって急ぎ足の男性。
自分には無い、眩しくて輝かしい夜景が煽るように毎秒約30万キロメートルで飛びかかってくる。
そんな光景には嫉妬を燃やしてしまうので上を眺めていたわけ....ん?。
目に映るのは流れ星。しかも虹色の軌跡を残して、そのまま落ちてそうな.....。
え、落ちそう!?
「うわ、可哀想〜…」
あの大きさなら場所によっては家がぶっ壊れるな...。
というか隕石の接近を報告しないってどうなってんのよ。
なぜ国が情報媒体を使って市民に警告を出さないのか疑問を残しながらも流れ星を見ていると....
「ん?なんか瓦解し始めて....まじかよ!!??」
こっちに破片飛んで来てんj...ドゴォン
───そして男は落ちてきた流れ星の破片に当たり死んでしまいました。
「.....あれ?生きて...る..?..よな?」
───なんて事はなくて、
落ちてきたはずの破片はなく自分も部屋も何事もなかったかのように存在していた。
もしかして、下の階か上の階に!?
急いでベランダから乗り出して上下を確認するが、傷1つ付いていない外装。
何が起きたんだよ....。
───結構余裕そうジャンッ?
訳もわから肝を冷やされたわ.....久しぶりに日中外へ出た疲れか?
放心状態を含めて三十数分後、
突っ込んできた隕石の破片が消えた理由を推測する余裕くらいは戻ってきた頃、スマートフォンが震えた。
着信者は〘酒寄 彩葉〙。
そういえば隕石の向かってた方向って....まさかね笑。
3コール目に入ろうとするタイミングで電話に出る。
何があったか聞こうと声をだす『くすり!赤ちゃんの泣き止ませ方知らない!?』...前にヘルプが割り込んできた。
衝撃の言葉と共に。
「おめでとうございます...?」
『違う!!』『おッぎゃぁあぁあぁあ』
oh、ノイキャンされとる。
タクシーを使って彩葉の家へ急いで向かった。
着く頃には時計の針は10時半を回っており、周辺の住宅路には人影ひとつも無いほどだった。
タクシーの運転手にお金を払い、古い二階建てアパートの脇に張り付くように付けられた、錆だらけの階段を駆け上る。ガンガンと響く音を深夜に立てながら。
ノックとチャイムをして、鍵を開け、玄関の敷居をするりと越える。
「..ほんとにいる」
「「──スッ--」」
部屋に入ると2人仲良く寝息を立てながら同じ布団で寝ていた。
彩葉は少し寝ずらそう背を丸めているがそれでも睡眠欲が勝っているのか綺麗な寝顔をしている。
....写真撮ったら怒られるかな。
「はいはい失礼しますよー」
音を無駄に立てないよう慎重に玄関の戸を閉める。
つま先立ちをしながら、この狭い1Kの間取りの玄関寄りにあるちゃぶ台に買ってきた物を置き、メモ帳を1枚切り取って伝言を残す。
「これでよし」
じゃぁお暇させて頂きますかねぇ〜。
そう思った刹那、部屋に白色の光が満ちる。
光源は....、
「光る...赤ちゃんって....まじかよ....」
同じ日に2度も驚愕するとは思わなんだ。
1秒ほど光ったそれは何だか少しでかくなっていた。
もしかして彩葉が電話で言ってた話って本当だったのか...。
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『電柱から赤ちゃんが出てきたの!!』
「まさか〜笑」
『とにかく来て!お願いします!!』
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まさかまさかの宇宙人発見か?
可能性のない話では無いがそれを調べるのはまた今度にして。
どうせなら寝ている2人が起きないよう静かに部屋から出る。
「おやすみなさい~」
一言そう言い残してゆっくりと玄関の鍵を閉めていった。
男はそこそこのスタイルと顔面偏差値であることとする。