ちょっ、ッッま...自分まで巻き込まれる必要なくないかぁ!!?? 作:大塩tune八郎
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この作品にはオリジナル要素を含みます。
アパートから自宅へ戻り、靴を適当に脱ぎ捨て、冷房を25℃に設定、そのままリビングのふかふかソファに飛び込んだ。
他と違って綺麗な状態が維持されているリビングは、どこか騒がしさのない真っ白なキャンバスのよう。
「彩葉、ちゃんと使ってくれるかな....」
憂いているのは彩葉があの物を受け取ってくれるかどうか。
置いてきた袋の中には行く時に買ったベビー食品とオムツ、それと哺乳瓶に必須の消毒液と肌に優しいタオル、それとは別に日持ちする食べ物と小型調味料、さらにお金の入った茶封筒。流石にベビー服や何か抱っこ紐?みたいなのは売って無かったので明日あたりに自分で買ってきてもらおう。茶封筒に入れた分でそこそこ良いものが買えるはずだし。
茶封筒に関してはなんか言われそうな気もするけど....。
「ま、ケセラセラか」
さてはてさてさて。
今日のメインイベントをやらなければ。
リビングのTV台の上、エアポッツの入れ物のようなものから中身を取り出す。
慣れた手つきで目の角膜、黒目部分に乗せ、コントローラーを握りツクヨミへ、
潜った。
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ふぅ....きたァ...!!
常に深夜のこの世界、煌びやかな街の光が天高く上にあるミラーボールで反射され、夜を忘れさせるほどに楽しげな空気を作り上げていた。
「こんばんわ、
「ありがとう、FUSHIィ」
「今日も楽しんで行ってね!」
入って早々出てきたのは海虫の見た目をしたNPCこと『FUSHI』。
可愛い見た目と声とは裏腹になかなか厳つい性格をしていると巷では噂になっていたりなってなかったり。
それよりも早く行こう。睡眠時間削ってまで今日はやるって決めたんだ。
メニューを開き、まるで機械のように的確に素早くボタンを押していく。
もちろん選んだのは、
今日もソロランク、やっていくぜぇぇえ!!
昂る気持ちを抑えず、本能をコントローラーに乗せて、
いざ、尋常に勝負!!
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朝4時すぎ、
スマコンの充電が切れそうになってるので現実世界に戻ってくる。
あぁ...なんて素敵な時間だったんだろう....ヘ、ヘヘ///
ヨダレを垂らしながら気持ち悪くゲヘゲヘ言っている姿はまるでしんちゃんの煩悩シーンのよう。
そんな気持ちの悪い顔をしているが実績は一騎当千。
格別された実力を持ちながらのこれだ。
まだ日の出の時間ではなく、目からスマコンを外すと真っ暗闇に立たされた。
目を休めるためにそのままソファに横になる。
確実に身体を壊す生活だが、今の自分にはこれが一番のストレス発散方法だった。
昼頃起きよ....。
そう思いながら、気絶するように意識を、手放し、た......。
《彩葉side》
・・・寝れたな、6時間。
いつの間にか寝落ちしていたらしい。昨日の出来事はなんだったんだろう。
「幻覚....じゃ、ないよね」
その証拠に電柱から産まれた小さなプリンセスはスヤスヤと寝息を立てながら熟睡中だ。
夜泣きもなく無事朝を迎えられたことに感謝?だ。
そんなキラキラと朝日に光る産毛の赤子を見ているとついつい撫でてしまいたくなる。
というかこんなデカかったっけ?おかしいな。
昨日までは片手で軽々持てるぐらい小さかったのに。
「あ、濡れてる!マジかー!」
大きさを図ろうとして布団に手を突くと、掌に不快な湿り気が染みる。
赤ちゃんだし、しょうがないか。
周りにオムツ代わりになりそうなものを探すが当然あるわけもなく...。
すると視界の端に見覚えの無い袋があることに気付く。
「うそ、これって...!」
神はいる(確信)
メモ帳の切れ端と共に置いてあったのは赤ちゃん用品等などが入ったしっかりめの袋。
クリスマスの朝、起きるとツリーの下にプレゼントが置いてあった時の子供たちの気持ちはこういう気持ちなんだろう。
切れ端には
『前一緒にKASSENやってくれたお返しということで』と、まず一言。
....まじで出来る男ムーブじゃん。
おそらく昨日寝落ちしていた時にこっそりと置きに来てくれたのだろう。しかも中には赤ちゃん用品だけでなく、缶詰めや調味料まで入っているという出来っぷりだ。
....これはあくまで"お返し"、"お返し"だから。
心にこびり付いた母の言葉に無理やり理由を通すために繰り返す。
貰ったもの無駄にするのはダメだよね。うんうん。
…良し。有難く使わせて頂きます。
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切れ端の続きに書かれていた通りにベビー服と抱っこ紐を買いに、開店時間と同時に入ったのは、『子育ての味方』のキャッチコピーでお馴染みの子供用品専門店、西竹屋。
ネットで調べたところ、このお店が周辺で一番大きな店舗らしい。
「あがっ....!?」
通路を歩いていると思わず恐怖にも似た驚きの声が出てしまった。
オムツ高っ!しかも何か種類多いし。
ていうかくすりが置いてくれてたのって....、!!!???
『モンブランズパンツ:¥6 4 4 0 』
うっっっっっそん....。私の2ヶ月分の食費とだいたい同じぃ....。
値段を見て背筋が凍る。
後からわかった事だが、くすりが買ってきてくれてたあの袋に入っていたベビー用品関係は全て逸品だった。
値段ではなく信頼で選んでるって、くすりって育児やったことあるのか...?
いつもの堕落したあの感じからは想像したくても出来ないけど、でも知識人だし....意外と出来るのか?
「うあっ」
「ぁ..。べろべろばぁー!」
だが今の私にそんな事を考察している暇はなく、
「うえっ」
ぐずり出したら変顔をしたり、時間を確認してミルクを与えたり、
「ううっ」
それでもぐずるようなら子守唄を歌ってやった。
「ふひひひ」
赤ちゃんはよく泣いたけれど、それ以上によく笑った。
1度笑顔を見るともう一度見たくなってしまう。
子供が生まれると子供中心の生活になるとはよく聞くけれど、まさに子供を笑わせる為だけに三連休が過ぎていった。
1秒も勉強をしないまま。
《楠峲side》
ピピピッピピピッ
「んぁ....おぉ....」
朝6時前、本当に珍しく目覚ましの音で起床した。
三連休明け最初の朝日はいつもよりもより一層輝いているように見える。
まぁ朝早く起きたからと言ってなにかする訳でも無いんだが。
「あ、いやあるわ」
連休前に職員室で立花先生から言われたことを思い出す。
ざっくり言えば、『来ないと単位足りなくて進級無理』というもの。
流石に黒歴史爆誕おめでとうは嫌すぎる。
「なら、回避すれば良いじゃない」
ということで、行動あるのみだ。不登校生徒のイメージを完全に消し去ってやるぜぇ.....!
テキパキと制服に着替え、そのままの勢いで朝食を済ませ、トイレにも行き、玄関で靴を履いて気付く。
「あれ、早くね」
ロック画面に表示された時計を見るとまだ6時30分すぎ。
出るには確実に早すぎる時間だ。
「.....たまには、彩葉のことお迎えに行こうかな」
連絡来ないし。赤ちゃんのことも気になるし。
心配している訳じゃないんだけど。何故だか気になるのだ、何故だか。
スマートフォンの地図アプリを開いてアパートまでの道のりを再検索すると徒歩最短の道が表示される。
彩葉の家行って学校戻ると.......フム、悪くない時間だな。行くか。
玄関の段差から腰を上げ、靴先をトントンと床に叩きつけながら踵を入れ込み、背負ったリュックの重みをしっかり肌に感じながら赤ちゃんの元へと向かった。
─
7時半前、
彩葉inアパートに到着。周囲からは学校や会社に向かって急いで家を出る人達の影が濃く見えた。
それでは、酒寄彩葉さんはどうなんでしょうか。行ってみましょー。
古い二階建てアパートの脇に張り付くように付けられた、錆だらけの階段を駆け上る。
ガンガンと響く音を……これ2回目だな。
ピンポ-ン
ガチャ「おっはー」
玄関の戸を内側から開けられる前にさっさと開けてしまう。
ヘッヘッヘ迎えに来たことにたんと驚くと言いだわさぁ~
「なんか男の人来たァ〜!」
....Who are you?
え、ほんとに誰だ?こんな金髪の少女。彩葉の知り合いに.....ん?金髪?。
「....もしかして、赤ちゃんが..?」
「誰だよこんな朝から...え、くすり!?」
「あ、おはようございます」「あはい、おはよ」
謎の金髪少女は雑に優しくどかされて、キッチンから顔を出した彩葉は朝から既に疲れた顔をしていた。
片手には...!?!?ウゲェ...。
世界一マズい料理。酒寄彩葉特性、粉と水のパンケーキが積み重なったお皿が置かれていた。
まさかこれを食べさせようとしてるの...?
「え...!?もしかして彩葉のボ〜イフレンド??」
「そんな訳ないでしょ」
「えっと...彩葉、もしかしてあの赤ちゃん?」
「うん、あの赤ちゃん」
まじかよ...。デカくなるのは見たから知ってたけど、こんな早く成長するもんなの、宇宙人って。
まじまじと少女を観察していると、
「ねーねー、名前なにー?」
見つめられた視線の元。少女の目はキラキラと輝いて、新鮮な物を見るような、まるで初めて色を見たような、このままほっておいたら一人でどこかに行ってしまいそうなほどに興奮しきった目で自分を見つめてきていた。
その眼力に魅了されたのか口が勝手に動く。
「市川 楠峲って名前。よろしくね」
は?
え、なんで自己紹介した?
自分、今するつもり無かったよな。
疑問を浮かべた目の前で少女は目線を真っ直ぐ合わせ、
「エヘッよろしく!」
と、破壊力抜群の可愛さで親指を立てつつ言い放った。
~~~ッ....極上ぅ.....!
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「じゃあ、行ってきます」
と、彩葉が言い残すと、
「えー!やだやだやだー!」
少女は迷いなく猛スピードで突っ込んできた。てか、さっきよりも大きくなった?彩葉と同じぐらいの背丈な気が....。
「一緒いて〜!」
切実そうに彩葉の手を握る少女。その姿はまるで幼いお姫様のよう。
「無理。学校休めない。家から出ないで。ご飯はそこね。パンケーキ」
彩葉はぶつ切りに言い切ると、コンロ脇に置かれた皿を指さす。
あれを食えとは、同情の余地しかない。
少女は何を勘違いしたのか目を輝かせて嬉しそうにパンケーキを口いっぱいに頬張る。が、
「クソまじぃ.....」
と顔をぐにゃぁっと歪ませて納得の感想を放った。
彩葉、そんな顔しないの。
「じゃあ、行ってきます」
「待って、やだやだ!」
心は子供のままで成長したのは身体だけか。無理やり身体の成長を早めているのだろうか。それともそもそも人間と違い、成長や適応能力が桁違いに格上なのだろうか.....うーん、わからん。
というか体温あるんだな。彩葉あつそ。
「おかしいよ。宇宙人だよ?*1こんな不審者部屋に置いて出かける、普通?そんなに学校って大事なわけ?」
「命より大事!」「行かなくても大丈夫だぞ」
「ほらぁ!くすりは大丈夫って言ってんじゃん!」
やべっ、余計なこと言ったかも。
彩葉は苛立ちピクピクと目元に出しながら横目で睨みつけてくる。ヒッ..
「とにかく、あんたと関わったのは私のせいだけど、もう全部元に戻すから」
彩葉は淡々と無慈悲にもそう言い放つ。
「だから、あんたも月へ帰って」
「…でも帰り方わかんないし。なんかここおもしろそーだし」
「とにかく早く思い出して!今日一日で。わかった?」
彩葉はSF映画のライトセーバーよろしく人差し指を突き出した。
少女はなにか言いたげそうだったけれど、彩葉の気迫に押されたのか口をググッと口を噤んで後ずさりする。
「行ってきます」*2
「またね~」
その機を逃さず、彩葉は3度もそう言って扉を閉めた。
朝から災難な彩葉を見ているとこちらまで何だか気疲れしそうな感じがする。労わってやらなければ...!(使命感)
閉じた扉の向こう側から聞こえた、少女が現実を受け入れられない声は自分の耳に入ることは無かった。
週1投稿頑張ります