ちょっ、ッッま...自分まで巻き込まれる必要なくないかぁ!!??   作:大塩tune八郎

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復刻上映アツすぎる



少女、名を得る

 

それから学校登校時間に間に合うようふたりで登校し、必死に寝ないよう授業を受け、いつの間にか日は位置を変化させ放課後の時間になっていた。

 

「楠峲さーん!今日から教室の清掃当番だよー」

「あ、まじー?」

 

清掃ってめんどくさいよね。でもやり始めると綺麗にしたくなるんだよな、不思議。

モップを握り正方形の板が規則的に貼り付けられた床の埃を丁寧に集めていく。

 

そういえばライブって今日か。

 

特に考えることも無いので今日の振り返りと後の予定を脳内で整理していると重大なことを思い出した。

最近はKASSENに集中しすぎててあまり推し活の方も出来てなかったな。そろそろ溜まった配信を見直さなければ...。

 

「はい、じゃ終わった人から解散していいよ〜」

「「「「うぃ-っす」」」」

 

自分もこれ集めたらさっさと帰ろ。

先生の適当な解散命令にいつも集団でいる男子たちが適当に返事をするのを聞き流す。

 

「いちさん!」

「ん?」

 

すると、ちりとりで集めた埃をゴミ箱に捨てているとこに集団の1人が話しかけてくる。

 

「これから〇ック行くんだけど一緒に来ない?期末のお返しってことで」

 

あーそういえば期末の対策ノートを貸してあげたんだっけか。

わざわざ誘ってくれるなんて有り難いことなんだが....。

 

「ごめん、今日は先約あるから行けないわ。今度奢りで」

「そっかー、うん今度なんか奢るよ....残念

 

今日は彩葉っちの方でウマウマパンケーキを奢ってもらうのだ。

すまない、背にパンケーキは代えられないのだよ....。

 

「ありがとな!じゃまた明日~」

「「「「うぃー」」」」

 

息ぴったりすぎだろ笑

 

 

────────

 

────

 

 

「いやーお待たせー」

「あ、楠峲来たー」

「ちゃんと掃除したの?」

「抜かりなく〜」

 

急いで向かったけれど、彩葉はまだ来ておらず玄関の靴箱で芦花と真実が待っていた。

彩葉は何用で遅れてるん?

 

「進路について相談しに行くって言ってたよ」

「なるへそ〜」

 

それから待つこと数分。スマホ画面に目を奪われていると、

 

「あ、彩葉来たー」

「やっと終わった?」

「お、意外と早い」

「え、芦花?真実?くすり?」

 

やっとこさ彩葉は少し驚いた表情を浮かべながら肩紐をかけてやって来た。

何だか少し安堵の笑み的な雰囲気出してるけど、なにか言われたのか?

 

「連休どーでした?」

「忙しかった〜?」

 

自分は全てをKASSENに注いでいたから、全く連絡を取っていなかった。一応深夜に2人がやっているのは気付いていたけど、あの連休は一人でやると決めていたからね。

それと彩葉に関しては...まぁ、うん。ドンマイ。

 

「ごめん!もーとにかく嵐に揉まれてて.....」

 

上手く誤魔化したな~。また余計なこと言ったら睨まれそうだし知らんぷりしとこ。

そう1人静かに心に誓いながら靴を履き替えていると、

 

「ま、とにかく帰ろ!」

「かーえろー」

 

2人は何かを察したかのように切り替えて、自分の手も取って陽光の降り注ぐ帰り道へと導いてくれた。

 

 

───

 

「彩葉と楠峲って進路どうするの?」

「彩葉は音楽系でしょー? もしくはeスポーツとか?楠峲は大学だね、絶対」

 

自分と彩葉を間に挟み込み、代わる代わる聞いてくる芦花真実。

というか断定なんだ、自分。

 

「そんな才能ないよ〜。それに最低限東大にはいかないと親が認めてくれなさそうなんだよね」

 

彩葉は音楽の才能がある。昔聞いたあのメロディは今でもしっかり覚えている。それぐらい人を感動させる才能があるのに本人にはその気は無いらしい。少し、残念だな。

 

「最低ラインがそこ?厳しー」

「私なんかでろでろに甘やかされてるなー」

 

おどけたように返した彩葉に共鳴するよう2人も同じノリで笑っている。

この2人はガチで聖人だと思う。なにか聞きたいことがあっても示しを合わせたようにいつものペースと空気を貫いてくれる。

 

「んじゃお次。くす〜りはどうなの?」

「ん?大学ね〜何処いけばがいいのかサッパリって感じ」

「強い」

「圧倒的強者の発言すぎる」

 

ふふん♪あからさまなヨイショも悪くなかろうぞ。

自分は2年前に1度大学を卒業している身だ。だから無理にいく必要もないんだけど、

 

「ふーん」

 

彩葉がなんだか"それは認めないから"と言いたげな表情をするもんだから現在悩み中なのだ。

やっぱりあの母親に........やめだ。今はそんなこと考えんでもいい。

 

「だったらくすりも東大にしたら?彩葉と一緒にいっちゃいなよ」

「身の丈に合ってるって感じー」

「そう簡単に言ってくれるー」

 

そんなこんな普段どうりの帰り道を歩いていると、

 

「こっちだよねー?」

「うん、そこの階段上ったとこ。彩葉おいでー」

「ここ、前に言ってたとこじゃん」

 

向かっている先にあるのは見慣れぬビル。そして引っ張られていく彩葉。

 

「え、待って。今日なんかあったっけ」

 

やはりあの少女のことが気になるのだろうか。わかる、自分も気になる。

 

「新しいカフェ行くって約束したでしょ」

「いや、今日は.....」

「約束したじゃん!」

 

あの状態になった2人を止めるすべは彩葉にはないだろう。

まぁ都合が良いから加勢するけど。

 

「彩葉と一緒にパンケーキ。食べたいな~」

「っ!」

 

よし。チョロ押しヨワヨワクソザコナメクジいろっはの表情になった。勝ったなガハハ。

 

「楠峲もそう言ってることだし、はい、れっちごー!」

「後生ですから〜〜」

 

 

 

───────

───

 

 

 

貧乏女子高校生ことチョロ押しヨワヨワクソザコナメクジいろっはの願いも空しく連行されたのはなんか良い感じの複合施設。の、中にあるオシャレマシマシなカフェの一角。

 

「彩葉&楠峲ノートで赤点回避記念〜〜」

「お礼の品でーす。ご査収くださーい」

「あ、ありがとう!」

「やっっば....めちゃ美味そう..」

 

目の前に運ばれてきたのは正にしゃれおつカフェの主人公ともいうべき、イチゴジャムの上にイチゴが置かれたふわふわ3段重ねパンケーキ。

しかもこれジャムの中にアイスクリーム入ってるやん!

 

こんなに美味しそう..というか確実に美味しいパンケーキを奢ってもらえるなんて....! ガチ嬉しすぎるんだが。

冷めたら()いけないしもうさっさと食べちゃおー。

 

「「いただきますー……」」

 

「───シャッ!」

 

手を伸ばした先の激うま確定パンケーキ に、無慈悲にも素早く銀色のフォークが突き刺されて、

 

「「.......え?」」

 

「いただきまーす!あむ、もぐもぐ......うんんまあああ!」

 

一口で2つのパンケーキを食べてしまった。

ていうか、は?え?は? 自分のパンケーキなんですけど!?

 

彩葉と自分のパンケーキを2段に変えてしまった犯人は、眼をキラキラと輝かせながら、

 

「よっ、2人とも!」

 

爽やかな顔してウィンクを決めてみせるのだった。

こ、こいつはぁーーー!?

 

「えー、可愛い。誰この子」

「彩葉の服きてる。彩葉の友達?」

「ああああああ、そう!そうなの!いや、友達っていうか、その...楠峲あれだよね!」

 

え!?自分にフるの!?いや、ここここれなんて説明すればばばばば!?

 

「え!?あー、えっーと、その~....」

「パンケーキ好き?はい、これもど〜ぞ」

 

マズイ、思いつかない。てか、芦花そいつを甘やかすな!

 

「パンケーキ?これがぁ?彩葉の全然違〜う」

 

草。言ってやらんで差し上げろ。

普段通りの可愛い少女は芦花から貰ったパンケーキも一呑みした。

 

「紹介してよ、2人とも。こんな可愛い友達独り占めはズルいって」

「まぁあれだよ、あれ!ねぇ彩葉」

「いや、友達っていうか....あぁうん、あれだよね!」

 

何とか時間を稼ぎながらふたりで「はよ帰れ」という視線を渡すと、

 

「月から来たの!」

 

.... ᐛ)パァ

嘘だろ。月に生命体がいた??

衝撃の事実に停止していると、

 

「......え?」

「ツキ......?」

「ジ!築地だよね!築地から来たの、楠峲のイトコ!」

 

ちょっ、何言ってんの彩葉さん??

苦渋の策にしては無理があるって!

恐る恐る芦花真実の顔に目を向けると、

 

「わー、美味しいお寿司屋さん教えて〜〜〜?」

「可愛いね、お名前は?」

 

これで通せることあるんだ。でも一旦助かった。

 

「名前?名前は、えーーーっと.....」

 

ふと、宇宙から来たということを思い出す。

ならこれがいいんじゃなかろうか。月の民だし。可愛いし。

 

「かぐや!」

 

かぐや姫。

 

「かぐや〜〜、かわよー!」

「え〜ぴったりだね」

「ありがとう、くすり!!」

 

これでいいよな、かぐや!盛り上がる芦花と真実を尻目に暫定かぐや姫にフルパワーで照射すると、

 

「かぐや? かぐや......かぐや.....そっかぁ。かぐやかぁ〜!」

 

よかったァ...存外嬉しそうだ。ん?ていうかこれ自分が名付けの親って事...?

 

「ごめん、帰る!ありがとうね、ごちそうさま!後で埋め合わせするから。くすりも行くよ!」

「えぇ!?」

 

やっとの思いで切り抜けたのにそんなこんちきしょうめ!

 

「ごめん、2人とも。また明日!」

 

急いで口の中に残りのパンケーキを放り込み、風のように抜け出していくかぐやと彩葉を追いかけるのだった。

 

 

───────────

───────

 

 

「いやー、さっきの建物の中涼しかったねー。あれ彩葉の家で出来ないの?」

 

カフェを抜け出してからも上機嫌で話し続けるかぐや。

そんなかぐやを彩葉は人気(ひとけ)のない一角まで連れていくと、

 

「正気!?なんでここにいんの!?何で家から出てくんの!?部屋に居てって言ったでしょ!月から来たって何!?正体バレたらどうすんの!?何で私の服着てんの!何で私の居場所がわかったの!」

「まぁまぁ」

 

oh......言いたいこと全部言ったな。どれこれも彩葉からしたら至極真っ当なクエスチョンとクレームだったけれども、

 

「だって...つまんないんだもん」

 

かぐやは一言で返してみせた。レスバ最強か?

まるで5〜6歳児が玩具を取り上げられたように拗ねている感じだ。

彩葉が眉間をピクピクと震わせながらかぐやを見ると、

 

「えへへへ」

 

なんだから急にヘラヘラとし始めた。...いやこれ誤魔化そうとしてるだけじゃね?

それを感じ取ったのは当然彩葉もで、嫌な人を思い出させるように語り始める。

 

「あのね、そんな風に生きてると自滅するよ。時には我慢ってもんが必要で─────」

 

順調に出走したものの二の句が継げなくなる。

それもそうだろう。これはおそらくあの親の言葉だろうから。

 

「ねー、くすりー、これどうやって使うの?」

 

彩葉の隙を見てすかさず自分に差し出されたのは、コンタクトレンズ型のPCデバイス、みんな大好きスマコンだ。

 

「スマコンだよ。彩葉の持ってきたの?」

「ううん、彩葉のノートPCで買えた」

 

.........ん?

 

「................は?」

 

「イェイ♪」

 

いや、イェイじゃないでしょ。彩葉は半狂乱になりながらスマートフォンを取り出し通販の履歴を見て、

 

『ウォレット残高 ¥8452 前日比 ¥-124000』

 

絶句しとる....。お労しや、幼馴染....。

 

「.....し」

 

あ、まずい。

 

「死ぬ気で貯めたんですけど.....。ご飯も、涼しさも温かさも、遊びも断って、推しへの課金も我慢して、死ぬ気で....死ぬ気で!!貯めたんですけどっっ!!」

 

おーよしよし、可哀想な彩葉。我が慰めてしんぜよう。

今にも泣き出して駆け出しそうな感じだったが、それをする気力も無くなってしまったのか絶叫という形でしか抗議しなかった。

 

「あ、大丈夫!なんかギンコウ?のデータ書き換えればウォレットの数字増やせるっぽかったよ!かぐやならお茶の子さいさいだけど、やるっ?」

 

彩葉の尋常ならざる様子を見て慌ててるっぽいけど倫理観がない!

 

「それh「ダメに決まってんでしょ!絶〜〜〜〜対っ!しないでよ!!」..言われちゃったぁ」

 

 

 


 

 

 

その後。

彩葉とかぐやをアパートの扉まで送って帰ろうとすると、

 

「待って!ちょっと先行かせて!」

「痛ッ、なに?」

「じゃーん!くすりの分も作ったから一緒に食べよ!」

 

鍵の閉まっていない扉を開けた先には、強烈な食欲をそそらせるいい匂いと、彩葉を無理やり弾いて先回りしたかぐやのドヤ顔が待ち構えていた。

そこに並ぶのは見た目も華やかな絢爛豪華な料理の皿たち。思わずゴクリと喉を鳴らした。

 

「まーずは、生のトウモロコシから作ったポタージュ。こっちは新ごぼうとアスパラのカリカリサラダ温卵付き。メインはトマト煮込みハンバーグ、ズッキーニのソテーをそ・え・て♪」

 

そう言って、かぐやは自分の笑顔も添えてみせた。

こころなしか棚の奥底にしまわれ使われていなかった食器たちも誇らしげだ。

 

「何.....これ?もしかして作ったの?」

「そだよ〜〜」

「すっご....」

 

本当にすごいな。こんな本格的料理みるの久しぶりだわ。

 

「でも、これも彩葉のウォレットで?」

「そだよ〜〜」

 

あ、彩葉の顔色がまた死んだ。

 

「はい、食べて」

 

強引にポタージュのスプーンを口に突っ込まれると、

OH~MY GOD......美味飯ランキング更新不可避なんだが.....。

 

「なんなのよ....旨いじゃないのよ.....なんなのよ、あんた.....久しぶりの美味しいご飯で.....身体が喜びに満ちていくじゃないのよ.....」

 

右に同じく同感だ.....。自分で作るご飯とか外食とは違う、温かみのある手料理を食べたのいつぶりだろうか。

独りで食事をすることが多い自分にはくるものがある。

 

「......悪魔」

「......天使」

 

「悪魔でも天使でもないよ、かぐやだよ〜♪」

 

可愛すぎる。今にも両手を伸ばして抱きついてしまいたい。これがキュートアグレッションか......。

どこまでも楽しげで可愛い月の天使による神的な料理は、最後に飲んだ水道水まで美味しくなっている気がした。

 

ちなみに、食後に彩葉のスマートフォンを確認すると、

 

 

『¥1090(スーパーみその)¥540(スーパーみその)¥1239(肉の近藤)¥2680(魚のさかもと)¥465(スーパーみその)¥780(ぱんのひろし)¥350(果実のあおき)¥1560(雑貨こばやし)¥2000(ビストロマツオ)¥3720(青果のあおき)………』

 

 

やっぱり、悪魔かも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだライブ行けてないまじか
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