ちょっ、ッッま...自分まで巻き込まれる必要なくないかぁ!!?? 作:大塩tune八郎
「テストが終わったら何が始まると思う?」
「一体何が始まるんです!」
「第二次テスト大戦だ」
「ハァ???」
「あのさあ....」
満腹になった身体をフローリングにベタっと幸せに満ちながら横のなっている。全身がポカポカだ。
「マジでここでは匿えないよ」
「ただでさえ親に無理言って一人暮らししてるんだし、面倒事はごめんなの」
「何かあったら速攻で実家に強制送還されちゃうからさ.....」
口を開いて始めたのはかぐやのこれからについて。
まぁ、当のかぐやは、
「はい、ここでこう!タカタカタカッ、ッッターン!!」
全く聞いてない様子ですね。知ってた。
彩葉はこれからどうするんだろうか....流石に無理やり追い出すとかはしないと思うけど。
脳内に浮かんでくるのは自分の家にかぐやが引っ越してくる情景。
男子高校生の家に女子と2人きりは流石にマズイ、やめておこう。
「もういっちょ、タカタカタカタカッ、ッッターン♪」
さっきからかぐやが騒がしく打ち込んでいるには何かのプログラミング画面。彩葉のノートPC、勝手に使われてるけど何も言わないところを見るに彩葉も懐柔され始めたか?
「出来たぁ!!」
何が出来たんだ...!
彩葉もガバッと起き上がる
「なに作ったの? 」
「まさかサーバー犯罪とかじゃないですよね?」
「見て、携帯ゲーム見つけたから弄ってみた!」
「あ、それ......」
彩葉、まだ持っててくれてたんだ。
かぐやが見せつけてきたのは昔懐かしい卵型の携帯ゲーム機。昔、まだあっちに住んでいた頃に
久しぶりに見たな。なつ。
「これ『犬DOGE』!」
いぬどーじ、とは?画面を覗き込むと可愛らしい柴犬の
オリジナルで作ったのか、いやすご。
「これでいつでも一緒だって〜!ふっふぅ〜〜♪」
「ご機嫌ですねぇ~」
「いや一生住む気満々かよ」
「だって他にどこ行けばいいの?もし捕まったらかぐやちゃん解剖されちゃうかも〜」
「んな大袈裟だなぁ」
「「.....あ」」
「いや、自分、男、無理」
「ですよね、やっぱ月に帰ればいいでしょうが。頑張って帰り方思い出しなさいよ」
「がんばってるけどむずかしい〜〜〜ぐぬぬ」
思い出す気絶対ないだろ。それ。
すると小さく息を吐いて、
「じゃぁ、迎えが来るまでね」
「おぉ!いいの!?」
....優しいなぁ、あなた譲りだよ。
かぐやを受け入れる決断をした。
「一、目立たない!二、許可なく家から出ない!三、私の邪魔しない!このルールが守れるならここにいてもいいよ」
「......え、じゃぁ、新しいお友達作ったりは?」
「第一項より、ない」
「....カフェに行ったりは?」
「第二項より、ない」
「......一緒に遊んだりは?」
「第三項より、ない。ただし例外として、くすりと遊ぶのは許可する」
「おぉ♪.....って、それ以外、かぐやは外にも出られず、楽しみもなく、ずっとずっと、このまま幽閉されてバットエンドって.....こと?」
みるみる顔が青ざめていくかぐや。
彩葉もなかなか手厳しいねぇ~。
「嫌ならこの話はなかったことに」
「やだやだ、意地悪なしー!」
「ハッピーエンドには自分でするんでしょ。この状況もハッピーに楽しみなよ」
うわぁー...イイ性格するようになったな、彩葉も。感心感心。
「こんな映ないつまんない家で!?」
「W」
わぁーwごめんごめん!悪かったから腕まくって追い出そうとするののやめて、彩葉にゃ力勝負勝てないから!
すると、彩葉のスマートフォンのアラームが午後八時三十分を知らせて震える。
もうそうな時間か、スマコンどこ入れたっけ。...ていうか、ここのネットって2人分のネット接続安定すんのかな...?
「なに?どこ行くの?またかぐやを置いてどこかに行くの?」
すると、自分と彩葉の気配を素早く察したかぐやが縋る様にしがみついてくる。
「離して。どこにも行かないよ。ツクヨミに行くだけだから」
「かぐや、ズボンの襟引っ張んないで....」
「行くじゃん!かぐやも連れてって」
「無理だって、スマコンがないと......あっ」
ハッと苦い顔をする彩葉と察してニヤっとするかぐや。
綺麗な対比だ。
「四、食事は定額制!」
「増えた!」
「あらら」
スマコンを装着して、適当に壁へ背中を預ける。
「行くよ、せーの!」
▼
目を閉じるとモーショングラフィックスへて、薄くはられた水面に見慣れた鳥居が反射している。
「──太陽が沈んで、夜がやってきます」
静かに配信とは違う、淑やかな"月見 ヤチヨ"が顕現する。
何度観ても綺麗なエントリー。あぁ、やっぱりいいなぁ....ツクヨミって....。
すると袖を捲り、手の甲を差し出す。
「──ホキナリ。ログインボーナスを」
え。
ヤチヨがくれる事もあるんだ。いつもFUSHIが渡してくるのに。
...まぁ、貰えるならいいや。そんじゃ、煌びやかな世界へいざ行かん!
固定された笑みを浮かべるヤチヨの横を通り抜ける。
「──いってらっしゃい!」
ライブ当たるとこんなサービスあるんだなぁ、さすヤチ~
いや、彩葉はや。
───────
「ヴェェェ」
盛大にコケながら入ってきたのは、ロングヘアと並んでうさ耳を垂らした金髪のギャルい少女。
ツクヨミの洗礼だね〜、1歩目コケがち。
「ほい、手掴んで」
「あ、もしや、くすり?それに彩葉?」
立ち上がった派手派手なかぐや姫に指を刺される。そしてその周りを1匹の犬が駆け回る。
「!?」
「も、もしや」
「犬DOGE!連れて来れるんだね」
え、うそ、初めて見た。携帯ゲーム機のペットってこんな可愛くデフォルメして持ち込めるんか。
みなよ....俺らのツクヨミを.....。
──
「わー、すごいすごいすごい!!これがツクヨミなのぉ!!」
犬DOGEを抱き上げたかぐやは、そこで初めて気付いたように我らがツクヨミの常夜の街並みに目を輝かせる。
「うおーー!すげー!面白そうなもんが死ぬほどある!」
あんぐりと口を開けながらもウキウキを滲み出して周りを見回している。
この景色に目を奪われてなかなか街に進めない。が、確かに煌びやかな夜景、姿を変化させながら宙を翔るドローンアート、名物の太鼓橋などなど、ファンタジックな平安京を目にしたら誰だってこうなるだろう。
まぁ時間ないから出来れば早く行きたいけど。
「行こ、かぐや」
歩みを進めようとしたその時、
「───初ログインおめでとう!ツクヨミではみんなが表現者!君も何かをして人の心を動かしたら、運営から『ふじゅ〜』が貰えるよ☆」
かぐやの初ログインイベントが発生し、FUSHIがあらわれ説明を始めた。
ふじゅ〜。ツクヨミ内の仮想通貨だけど現実でも使うことができる有能通過。スキンとか色々帰るけど、気になったぐらいでしか消費しないんだよなぁ。
基本無料のものが多すぎる。例えば今食べてるパフェとか
「あむっ......むぐむぐ.....味しーなーいー!」
「そうゆうのはまだ無理みたいよ。いつか天才科学者とかがやってくれるでしょ」
「今すぐがい〜〜い〜〜〜〜」*1
お、そろそろだ。
「始まるから!行くよ、かぐや、くすり」
「始まるって、何が?待って、彩葉!」
「待たない。あんたが追いついて、はやく!」
彩葉テンション爆アゲじゃ〜ん....。
まぁ、そうゆう自分もウキウキが抑えられないんだけどね!!
「んじゃ、かぐや頑張ってついてきてね〜」
「え、ちょ、待ってー!」
───
『キタキタキター!!これがないとツクヨミの夜は始まらない。本日もヤチヨミニライブの開演だぁあああ────っっ!!!!』
忠犬オタ公の熱狂的な掛け声と共にボルテージがマックスまで高まった会場、観客達の歓声はその場を轟かすように渦を巻いている。
電子世界なのに揺れを感じるほどの"熱"に鳥肌が止まらない。
そんなことは露知らず、かぐやは1人キョロキョロと周りを見回して熱に当てられている。
巨大モニターにカウントダウンが表示された。
ついに、く、くる。
「ねぇ、彩葉何が始まるの?」
「見てればわかるから!」
「瞬き厳禁だよかぐや!」
「5....4.....3...」、会場の声と生中継を見守る声がシンクロする。そして、ツクヨミ中の全員が同時に「0」を叫ぶと、
「ヤオヨロー!神々のみんな、今日も最高だったー?」
現れた月見 ヤチヨが、一言で会場を爆発させた。
「よーし、今宵も皆を誘っちゃうよ~☆ Let's go on a trip !!」
こうして、圧巻のライブが幕を開け、
『幾千の時を巡って今、僕ら出会えたの───♪♪』
会場は熱狂と感動で満ちていった。
───
─
「2人とも!ねぇ、2人ってば!!」
「「.......え?」」
耳元の大声で我に返った。振り返ると、驚いた表情のかぐやがこちらを見ていた。もしかして、見てる間ずっと名前を呼んでいたんだろうか。持っていかれた意識をゆっくりと元に集める。指先はまだ震えていた。
冷めない興奮と感動から、少しずつ少しずつ拍手と歓声が立ち篭める。その中心にいるヤチヨは大きく手を振ってファンに応えた。
「イェーイ、感謝感激雨アラモード!ヤチヨは果報者なのですぅ..。あ、ここでお知らせ!ヤチヨカップっていうイベントを開催しま〜〜す☆ FUSHI、詳細よろしくぅ~」
「はーい!参加資格があるのはツクヨミの全ライバー!1ヶ月の期間の中だけで最も多くの新規ファンを獲得した人が優勝だよ。優勝者にはなんと、ヤチヨとのコラボライブの権利を贈呈!世界一盛り上がる夢のコラボライブステージを一緒に作れるよ!」
「うっそ!?コラボライブ!?ヤチヨが?」
「!??!?!!????!!!!??」
うっっそだろ....マジかよ。
ココ最近で1番驚いたわ。まじか〜、ヤチヨもついにコラボライブかぁ.....。
感動から一気に頭を醒まされる。自然と空いた口を閉じ忘れるほどのショックと衝撃が顔面に喰らわされた。
「コラボライブ?何それ、すごいの?」
「当たり前じゃん!」
周りを気にもせず彩葉はかぐやに如何に凄いことかを力説し始める。
「すごいもなにも、配信のコラボはあったけど、ライブはいつも一人で歌ってたんだよ!?何?誰と?これは歴史的なライブになるよ!」
「へー、じゃあ彩葉、一緒にやろ」
何言ってるんだこの子は。正に猪突猛進。止まることを知らない、まるでマグロだ。
「かぐや、残念だけどこういうのは大体誰になるか決まってるのがお約束で。例えば───」
すると背後からまるでタイミングを合わせたように爆音が轟く。
音につられて観客全員の注目がヤチヨから後ろの彼らに集まった。
そう今まさに言おうとした"彼ら"の正体は、
「黒鬼じゃん!」「帝様ー!!」
ファンの熱烈な歓声に応えるように屋形が割れる。
数歩、前に進み注目を集めたのが、
「よう、子ウサギども。お前らの帝様が来たぜ」
割れんばかりの歓声の中、リーダーの帝アキラは不敵な笑みを浮かべながら漆黒の角を光らせた。
彼がパチンと指を鳴らすと会場のモニターがジャックされ、趣味の悪いPVが流れる。正直言って、ウザい。なんだこのbgm。もっとあったろ、こう、なんか。
「また、祭りが始まるな」
大胆さが足りない男、雷がフードの下から口を開く。
「俺って、今日も作画良すぎ♡でしょ♡」
地雷系モチーフのおt...少年、乃依が可愛くファンサを繰り出す。
ツインテールにミニスカ、一見可愛らしい女の子だが男性アバターだ。無論、ボイチェン無しで、声も男。声優向いてると思う。
「俺たちに優勝して欲しいよな?底なしの夢を見せてやるぜ!!」
最後に帝が決めポーズでファンの心を撃ち抜いた。なんと破裂音に紙吹雪が舞う演出付きだ。
3度の歓声、その場にいる全員が確信する。ヤチヨカップの優勝者は彼らだ。
「ということで、俺たち優勝するから。ヤチヨちゃんコラボよろしくね」
もちろん、ブラックオニキスの面々も。
「そういう運命なら、もちろんヤチヨは従うよー」
なんか、含みあるな。まさかヤチヨも?
「すげー、ヤチヨと黒鬼の夢のコラボだ!」
「こりゃあ、伝説になるぞ」
さらに、詰めかけた観客も、ライブを見ているリスナーも、
まぁ、正直こういう流れになりそうだとは思ったけど、これはなんだかなぁ......ツマンナイヨッ。
自分自身も。
「──ッッスゥゥ…」
たった一人の月姫を除いては、
「ヤぁぁぁぁぁ────チぃぃぃぃぃ────ヨぉぉぉぉぉぉ────!!!!!!」
"遠からむ者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ。"
まさに、そのまま。
「かぐやがヤチヨカップ優勝する!そんで絶対コラボライブする!いろh……ムグッ」
慌てて口を彩葉が塞ぎ、自分が暴れないよう止めたが、もう遅かった。
マジでか、かぐや。無謀にも程があるぞ。というか彩葉との約束思っきし踏み抜いていくのね。
周りの人間全員が今度は自分たちに視線をよこす。面白い奴がいる、おかしな奴がいる、そんな目で。
観客たちも黒鬼も忠犬オタ公も、
「.......いとかわゆし」
あまつさえ、ステージの上のヤチヨまで。
「あんたは、いっつも勝手に!」
彩葉が呆れたように声を張る。自分だけでも今すぐ逃げ出したいけど、でも、この後にあるのは.....、
「ほいでわ、ライブはいったんここでクローズ♪ みんなとちょこっとお話させてね。さらば〜い」
握手会があるのだ。個人個人で話せるとか神すぎる....!
終演をつげたヤチヨはクルクルと回転しながら分身し、会場の観客一人一人に向かって話しかけに向かっていく。
ここからは配信もない、チケットを手にした者だけが味わえる夢の時間だ。
って思ったけど、こういう時って.....なに、話せばいいんだ.......。
くそう、自分のコミュ障を恨むぅ......。
スッ─っと真っ白になっていく脳内、
「ヤオヨロ~♪」
「!?!?」
が、天使の声でパッ晴らされる。
え、まっ、っじか。目の前にいる、ヤチヨがぁぁ...!!! しかもロリバージョンじゃん!!
やっば、可愛すぎんだろ....。まじで、可愛すぎんだろ。*2
いや、待て、話すこと考えろ。
日頃の感謝?ライブの感想?それとも普通にお話?
......ぁあ、どうすればいいんだぁ.....。
「今日は楽しめた?」
「!? は、はいッ!」
やばっ、裏返ったかも。
口籠っていると、ヤチヨから話しかけてきてくれた。何度も聴いた優しい声だ。.....臆したら駄目だ。うん、楽しんでいこう。
ヤチヨの活動で楽しんでるって伝えるのが、ヤチヨにとっても嬉しいことのはず。
息を整えて、正面を向く。ヤチヨの目に目線を合わせて。
「自分、一人暮らしで、心寂しい時とか、辛い時とか、いっつもヤチヨに支えられてて......こんな世界でも楽しんで生きれるんだなって感じれて......その、すごく、感謝してて........」
まずい、まずい!まずい!!
何言ってんだこいつ!!めっちゃ小並感な感想じゃんこれじゃぁ!
もっとちゃんとしたイケてること言うつもりだったのに~~。
「.....♪もっとイケてること言いたかったのに〜って、思ってる?」
「あ、え!?」
見透かされてるんだが。AIライバーってこんなことも出来んの?
すごいけど.....その、ちょっと、恥ずいかも....? いや、嬉しかったり...?
「えへへ、ヤチヨは凄腕エスパーなのです♪」
ッッッッッッグァッ.....カワッ。ァァアッッ...!!!
「ヤチヨもそうなる時。あるんだ」
穏やかな声でそう言って、ヤチヨは小さな手の平で自分の手を包み込んだ。一瞬、『!?』が脳内にでっかく現れたが、思い出す。そういえば握手会だったわ。
「ヤチヨはそういう時、どうしてるの?」
いや、まっt...った失礼なこと聞いたかも。
ふと口からこぼれ落ちた失言だった。
「.....ヤチヨはそんとき、昔の友人を思い出すんだ。楽しかったこと、面白かったこと、悲しかったこと、辛かったこと。その度に戻りたいなぁ、また会いたいなぁって何度も思う」
「だから、今度は、私がみんなにとってそんな存在になれたらって思いながら配信してるんだ」
....ヤチヨは、きっとリアルでも素敵な人なんだろうな。
....なんだか、泣きそうになっちゃう.....。
「.....ヤチヨぉ.....」
成れてるよ、ヤチヨは忘れられない思い出になってるよ。
「じゃーん☆ということで、ヤチヨの裏話でした〜!みんなには他言無用だぞ♪」
そんな話、今まで配信でも動画でも言ってなかったから初出し情報だろう。楽しくヤチヨと話していたのに、やっぱり、涙が込み上げてくる。
「陰ながらの頑張り屋さんだもんね、よしよ〜し」
な、はっ、っくぁ、あたまっ、なでられっ、
「ღ✉✆☾♯!?」
あばばばばばああばbbbbbvbvbvv…。
「いつも来てくれてありがとうね」
認知されてるぅぅ............ってヤチヨはツクヨミの管理者じゃん。ログ見ればわかるじゃん。それでも、嬉じいぃ~。
「あの、ま、また、絶対来ます!今日はありがとうございました!」
これ以上話していてもヤチヨに迷惑だろう。それにこのままだと色々と危ない。まじで。本気に。
ヤチヨに深く頭を下げて、ログアウトする。
初めてきたけど本当に凄かった....。絶対次も応募しよ。
.......顔、火照ってんなぁ...。
全身に、感謝、羞恥、感動、歓喜、安堵が混ざった感情で爆発しそうだった。
「......ごめんね」
後ろから、ヤチヨの声が聞こえた気がした。
リズ天が、やりたい。