ちょっ、ッッま...自分まで巻き込まれる必要なくないかぁ!!?? 作:大塩tune八郎
やっと海までこれたぜ。
ツクヨミからログアウトするなり、自分の目に映ったのは、
「やっぱ、これっしょ☆」
ドヤ顔で黄金色の髪を靡かせているかぐやだった。
え、ん?おかしいなちゃんとログアウトしたはずなんだけど。
「.....理解を範疇超えし宇宙人」
「あ、楠峲おかえり〜」
は、はは…。
「.....ぶっ飛んでんなぁー....」
人智を超えた身体構造にもはや変な笑いまで出てくる。
なんだか生物としての格の違いをうっすら感じた気がした。
よし、見なかったことにしよう。さ、帰ろ帰ろ。
荷物をまとめ、さらりと玄関で靴を履いて、
「んじゃ、また明日。おやすみ~」
「ん、またね。おやすみ」
「え!帰っちゃうの!?待ってヤダヤダまだ遊びt 」<バタンッ
帰ろうとする自分を止めに飛び出してきそうなかぐやを扉前で見送った。
ごめんなかぐや、さすがにこの時間から遊んだら朝起きれんくなる。自分、朝弱いんや...。
あぁ、そにしてもヤチヨのライブ最高だったなぁ...。
.....ヤチヨと話せて握手までできて、神&GODな締めくくりだったぜぇ。
そんなことを思いながらゆっくりと、タクシーを待った。
なんだかんだ、一学期も体育と音楽が逆に目立つ通知表を貰いながらも終わり、夏休みの課題をシバきながら適当に過ごしていると、
ブブッ
スマートフォンが震えた。
『楠峲!ツクヨミきて!』
メール先はかぐやから。
『うぃ、待ってて』
返信をしたらすぐに向かう。
今やかぐやは、ヤチヨカップ内で最も勢いのあるライバーとして活躍している。彩葉も振り回されているようだがなんだかんだ楽しそうだ。......ちょっと羨ましいなんて、思ったり?
兎にも角にも、そんなかぐやに呼ばれたからには行かなければ。
きっとこれは以前話していたアレのことだろう。
▼
「きたぞー」
「お、きたきた」
「んじゃ、先ずはゲームのルールから教えよっか」
ツクヨミに潜り向かった先はKASSEN。*1
既に合流していた芦花とかぐやが迎えてくれる。
メンバーはかぐや、自分、芦花の3人だ。本当は真実も来るはずだったんだけど....
『ごめん!その日デートだから行けない!』
だそうだ。
あ、もちろん彩葉は勉強です。一緒にやりたかったんだけどなぁ。
とりま、かぐやを沼らせるゾ。
ゲームコントローラーを軽く握りながらそう思う。
「んじゃぁまずKASSENというゲームはですねぇ……」
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「てな感じ〜」
「かぐやちゃん筋いいねぇ〜」
「おしゃー!」
だるまの腹を天閣にぶち込んで快勝。喜ぶかぐや、可愛よ。
というか、やりながら説明してたけどかぐやセンス良〜。
所々で初めたてとは思えない動きするの怖〜。
やはり宇宙人、適応能力が高いのか?
「ていうか楠峲めちゃくちゃ上手くない?」
「そりゃぁこのゲーム得意なんで」
ランクのことはなんだか威張ってるみたいなので言わないでおく。
「そんな楠峲から見てどう、かぐや上手かった?」
"にひー"なんて擬音が出てきそうな元気満点の笑顔でそう言う。
そんな表情で言われたらさ......、
「世界一上手い。可愛い。最強」
「ふふーん♪」
「チョロ助だ...」
誰がチョロ助じゃい。
「まだまだやるぞー!」
「付き合うぞー」
「おー」
そのあとも数時間、日が暮れ始める頃まで試合をしまくった。
かぐやはまだまだやれそうな感じだったけど、芦花が疲れてそうだったので切り上げることにした。芦花、ありがとう。
あとから聞いた話だが、あの後一人で潜ったら思ったよりもボコられたらしい。...プゥ。
彩葉宅in楠峲な今日。なぜなら....、
「みんな、今日は特別なゲストが来てるよ!ほら、早く早く!」
「ど、どうも~.....ホキナリでーす......」
「いつもの元気どしたの?」「久しぶりだくぁら緊張すんだよ...!」
今日はかぐやと一緒に配信をしているからだ。
あぁもう、噛んだんだが、恥ず!
はぁ、なんでこうなった....。おかしい、自分はこのチャンネルのメンバーじゃ無いはずなのに....!
かぐやの配信画面にいるのは目隠れ緑髪のアバター。通称ホキナリ。かぐやのアバターデザインとは真逆なテーマをしている。
コメント欄は突然のコラボに驚愕の反応をする人たちばかりだ。
中には『早く復帰しろ』『生きてたんかワレェ!!』『え?現実?』なんて失礼極まりないコメントもある。悪かったな、サボってて。
「挨拶はこれくらにして、今日はクーと協力ゲーやってくよ〜」
なぜこうなったのかには少し前に遡る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
やることも無いのでかぐやと一緒に遊んでいると、
「ねぇくすり、これって"くすり"だよね?」
あ.....あが.....。
「....な、え、どこで見つけてきたの.....それ....」
「彩葉のノートPC!」
彩葉ぁ〜....おま知ってたんかい....。
かぐやが見せつけてきたのは一時期活動していた自分のチャンネル。今はもうやっていないからちょっとした黒歴史になってたんだけど、くぅ〜このやろ〜!
「まぁ、うん、自分だよ」
「じゃぁさ、今度コラボ配信しよっ!絶対楽しいもん!」
「え、いやもう活動やめてr「よっしゃ準備するぞー!!」...解せぬ」
参ったなぁ、絶対アイツらが反応しそうなんだよなぁ…。
ていうか活動してたの日本いなかった頃だけどまだ視聴者いんのか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんな疑問は晴れることなく結局当日になってしまったわけで。
でもまぁ、
「あ!かぐやそれ取ってそれ」
「え?どれ、これ?」
「ww違うそれだって!」
「えw?これでしょ?」
「いやwだから~~~あははハッハッハw」
「どれ?これ?」
楽しいからなんでもいっか。
この時の配信は神回とされて、自然体にほぐされた自分と太陽のようなかぐやの会話は、中身が無さすぎる会話としてめちゃくちゃバズった。あと自分もトレンド入った、なんでぇ?
そんな配信の時、彩葉は、
「.....」
隣の勉強机で何も言わず、静かに見守っていた。
なんだか、すっごい視線感じるけど、まぁ気にしないでおこう。うるさくてごめんね。
「彩葉もやる?」なんて聞いたけど「勉強するからいい」って言われプイッと振り向いてしまった。焦る気持ちも分かるがもう少し彩葉も休んで欲しい。このままじゃ身体を壊してしまいそうだし。
だけど、その想いを口に出すことは無かった。
「まだまだ足りない!どうすればいいのだー!!」
晴天、潮風を感じる絶好の海水浴日和だ。そんなことは全く気にせず、ライバーとしての欲を滲み出しているお姫様はゴロゴロとレジャーシートの上で転げ回っている。
「ゆ゛う゛し゛ょ゛う゛し゛た゛い゛〜〜〜!!!」
「かぐや、暴れない」
今日は彩葉、かぐや、自分、芦花、真実の5人で海に来た。
男女の対比が1:4なせいで周りからの視線が怖い。別になにかするって訳じゃないけど、気にしてしまう。
というか自分もしかしてかぐやより肉付き悪い...??嘘、泣きそう。
「こないだのコラボ配信めっちゃ面白かったよね〜」
「ね、かぐやちゃんゲームも歌も上手いよね」
「まぁね。天ッ才、歌姫ですから」
かぐやの鼻が伸びる伸びる。ピノキオもびっくりだ。
「楠峲も活動また始めたんだね。見たよ、動画」
「やっぱ上手いね〜」
「直接言われるとなんだか気恥しいな」
ん?また?
恐る恐る口を開きながら黒いグラサンが情けなくズレた。
「もしかして前から知ってた...?」
「うん。ここにいる3人は初期から知ってるよ*2」
なんてこったパンナコッタ。知り合う前から認知されていた...!?嬉しいような、少し複雑なような。
「いいでしょ別に、減るもんじゃないんだし」
腕を組みながらどこか自慢げな彩葉はチューっと手に持っていたレモンソーダをストローで吸った。
スパーツサングラスに隠された目がにやけている気がする。
「ねぇねぇクー。今度は歌配信しよ〜」
「歌かぁ....あんまり得意じゃなんだよねぇ」
「オリジナル曲一緒に歌お!」
そういえばあれ彩葉が作ったんだけっか。
「あれ彩葉が作ったやつなの?」
「彩葉、可愛い上に天才すぎ〜」
賞賛があちらこちらに飛び交い彩葉に向かれ始める。
「あ、あれは昔に作ったやつだから」
あぁ、だからなんか聴き覚えがあったんか。なんだか良いな、こういうの。ニヤニヤと3人で彩葉を眺めていると目を恥ずかしそうに逸らした。ははっw。
波の音、潮の香り、そして、眩しい日差しの中で交わす、普段通りの何気ないくだらない会話。夏の海ってのは耳にも鼻にも目にも楽しい。誘ってくれたみんなに感謝だ。
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───くすり君、なにかみつけたの?』
『あ、いえ、俺、海、久しぶりで...感動してただけです』
『おい、くすり!早よ行くで!!』
『ボーっとしてると置いていくで、くすり!』
『あんま奥行ったらアカンよ〜!』
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もう、二度と見ることはない景色と温かみが一瞬、脳裏に色を取り戻す。
「ぐわぁあー。でも、やっぱり優勝したい!こんなんじゃまだ足りないよー」
.....自分もまだまだ足りてないな、続けなきゃ。
「芦花〜どうすればいい〜?」
「うーん、もう結構色々やってるみたいだしなー」
かぐやと頬を引っ付けるようにして、スマートフォンを覗き込む芦花。かぐやは甘える人間を選ぶのが上手だ。
「はいはーい!私あるよ、ナイスアイディア。いろP初登場配信は?これまでは正体を隠していた彩葉がベールを脱ぐことによって新たな需要を───」
「はい、却下」
真実が言い終わらないうちに、彩葉はピンと伸びた腕を引っ張り下ろした。
「えー、なんでー」
「なんでじゃないの、私は絶対に配信には出ないから」
「え、出てるじゃん。このキツネの着ぐるみって彩葉だよね」
「......ぐっ」
案の定バレてるし。
貝殻のパーツが散りばめられる芦花のビーチネイルがスマートフォンのサムネをコンコンと叩いていた。
「でてあげなよ、彩葉。顔出しする訳でもないんだし」
「と、とにかく、私は出ないから!」
あら強気♡ だが関係ない、行け。
どこぞの吸血鬼風の画風でかぐやに指示を出す。
「そんなのヤダー!一緒出てー!新曲も作ってー!伴奏もしてー!」
ぷいっ。
ふ、彩葉よ。顔を背けたって関係ないぞ。それで終わりじゃないのがかぐやだからな。
「.........ねぇ、彩葉」
「このままじゃ、優勝できない......」
「かぐやのこと、助けて.........」
「彩葉に、伴奏してほしい.........」
さぁ、どうなる....!!!
三、二、一、はい!
「ま、まぁ、時間が空いてたら......ね」
「ヨシャー!もっともっっと配信するぞーー!」
「.....ふ、見なよ.....うちのかぐやを.....」
「なぜに自慢げ」
「ちょろはー」
天に拳を突き上げるかぐやと白い砂を握る彩葉、綺麗な対比構造を眺めながら笑顔を咲かせた。
「彩葉、明るくなったねー」
「突然ふって、いなくなっちゃいそうだったもね」
「笑顔も自然になったよなぁ」
真実、芦花、自分と順番に今の彩葉の変化へ感想を放つ。
明るい笑顔と常に和かな表情筋はもう以前の跡を感じさせない。
けれど疲れてはいそうなんで休んでくれ。まじで。
そして、少し驚いたような顔をした。
「かぐやちゃん、どんな魔法使ったんだろ。ちょっと悔しいけど、本気で応援したくなっちゃったかも」
波打ち際でカニと遊ぶかぐやに複雑な視線を送りながら、芦花が髪の毛をかき上げた。
お、これは...!
「コラボ、しちゃおうよ」
「いいね〜」
美容系インフルエンサー『ROKA(ファン数十万人)』と、グルメインフルエンサーの『まみまみ(ファン数二十万人)』がコラボ....、面白くなってきたじゃない。
「見てみて、クー!蟹!軍隊作った!」
「おぉ〜すごっ」
2人と自分もライバーとしてコラボするんだろうか。出来たらいいなぁ。
当の本人は目の前のことに夢中だった。
かぐや、いつの間にか楠峲のことあだ名で呼ぶようになりましたね。仲が良くて、いいね。
あ、ホキナリのファン数はだいたい数十万人です。