インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
■ ラウラ編:凍りついた地獄の終わり
(過去:すべての始まり)
ドイツ軍の暗部が管理する、とある非合法研究施設。そこは、遺伝子操作によって生み出された試験管ベビーたちを、ISを動かすためのただの「部品」として製造し、さらには裏の新興マフィアへ兵器として横流ししようとしていた、歪んだ欲望の巣窟だった。 ドイツの特殊部隊隊長であるラウラ・ボーデヴィッヒもまた、かつてはその地獄で「失敗作」の烙印を押され、狂った実験を繰り返されてきた過去を持つ。
自分の出生の秘密であり、消したくても消せなかった呪いのような場所。だが、ある夜。その忌まわしい施設は、あまりにも静かに、緊張感すらなく終焉を迎えた。
施設に警報が鳴る暇すら、誰一人として与えられなかった。突然、施設の全システムが、電子回路もろとも「絶対的な霧と冷気」によって完全にジャミングされ、機能を静止させられたのだ。
「な、なんだ!? システムが凍結している!? 動かん!」 「侵入者だ!迎撃しろ!」
慌てふためく研究員や警備兵たち。だが、彼らが武器を構えた瞬間、背後の闇から冷酷な笑い声が響き渡る。
「クフフ……哀れな科学者たちですね。あなた方が見ている現実が、本当に現実だとでも思っているのですか?」
霧の炎を纏った六道骸の幻術。その圧倒的な精神支配により、警備兵たちは引き金に指をかけたまま、互いに銃を向け合って自滅していった。幻影の恐怖に狂い、叫び声を上げる研究首謀者たち。 彼らを無力化したボンゴレの部隊は、淡々とデータサーバーや非道な実験器具のすべてを物理的に破壊・消去し、首謀者たちを拘束していった。
後に残されたのは、怯える実験体の子供たちだけだった。
「救出完了です。これよりボンゴレの医療部隊へ引き継ぎ、安全な施設へ保護します」
無線連絡の向こう側、イタリア本部から冷徹な声が響く。
『了解した。すべて痕跡を残さず、影に沈めろ』
こうして、ラウラを縛り付けていた過去の地獄は、白崎零士が指一本動かすこともなく、彼の率いるボンゴレの圧倒的な闇の力によって、一夜にして地上から完全に消滅したのだった。
■ IS学園・ラウラの自室
(過去:真相のハッキングと恋心の芽生え)
夜、ラウラは自室のベッドの上で、軍の機密ルートから不正にハッキングして入手した「当該施設壊滅」の報告書を、携帯端末で睨みつけていた。
ドイツ軍の防衛網を完璧にすり抜けた『謎の巨大マフィア組織』によって、わずか数分で壊滅させられたという事実。 添付されていた、辛うじて復元された音声データや、押収された首謀者たちの供述書の断片を、ラウラは何度も解析する。
軍のハッキング技術を駆使し、何重にもカモフラージュされた情報規制の糸を執念深く手繰り寄せていく。フランスのデュノア社の株価急騰の裏にあった不審な資金源、そして今回の壊滅作戦の決済シグナル――。 そのすべての元凶であり、この巨大な闇の部隊を動かしている最高意思決定者の「暗号化された個人認証コード」を復元した瞬間、ラウラは息を呑んだ。
『認証者:S. REISHI』
「……っ!」
ラウラは携帯端末を握りしり、片目を見開いた。
(間違いない……。あの朝のホームルームで、私の手首を掴み、生身で私のIS(シュヴァルツェ・ハーゼ)の威圧すら沈黙させた男……!)
白崎零士。 ドイツ軍の最高機密であるはずの場所を、自らは一切手を汚さず、影の軍勢をチェスの駒のように動かして一瞬で粉砕してみせたその器量。 それは、ラウラがこれまで軍の中で教え込まれてきた、どんなISの出力をも遥かに凌駕する、絶対的な『支配者としての強さ』だった。
「私を……、あの地獄から、救い出したというのか。自らは表に出ず、私の過去ごと、すべてを……」
軍人として育てられ、勝つことと、強くなることだけを求められてきたラウラ。千冬への執着も、元を正せば「強さへの渇望」に過ぎなかった。 だが今、目の前にあるのは、自分の手の届かない次元から世界を揺るがす圧倒的な強者であり、同時に、自分の忌まわしい過去を容赦なく踏みつぶして救ってくれた、あまりにも深い優しさ。
「私(わたくし)は、負けたのだな……。あの男に、身も心も……」
ぽつりと呟いたラウラの胸の奥で、生まれて初めて「敗北感」以外の感情が激しく芽吹いていた。それは、冷徹な軍人としての仮面を強制的に剥ぎ取るような、狂おしいほどの激しい恋心だった。
翌朝、教壇に立つ零士の姿を見たラウラは、いつもなら鋭く睨みつけるはずの視線を、どうしようもなく彷徨わせ、頬を微かに朱に染める。
「白崎……零士……」
その名を小さく唇の中で転がすだけで、胸の奥の凍りついていた地獄が、甘い熱によって完全に溶かされていくのを、彼女は自覚せずにはいられなかった。
■ 保健室
(現在:クラス対抗戦での暴走救出、そして告白へ)
――そして、今日。あのクラス対抗戦のフィールドで、再びラウラは彼に救われた。
しばらくして、保健室のベッドで目を覚ましたラウラは、自分の隣に座り、静かにコーヒーをすする零士の姿を見つけた。
(……ああ。また、この方に救われたのだな)
ラウラは、自らのすべてを完璧に救い出してくれた男の横顔を、じっと見つめる。たった今、あの美しい白銀の鎧(VIS)を纏って、暴走するVTシステムから自分を切り離してくれた鮮やかな長刀の一閃。
あらかじめ影から自分を救ってくれていた絶対的な支配者が、今度は目の前で自分を暴走の闇から救い出してくれた。その事実が、彼女にとって何よりの決定打となった。
自分のすべてを、過去の忌まわしい闇からも、たった今の機体の暴走からも、完璧に救い出してくれた男。
「目覚めたか、ラウラ。気分はどうだ」
零士が静かにコーヒーカップを置き、ラウラへと視線を向けた。
「……あ、あの、先生……私は……」
いつもなら軍人のように毅然としているラウラだったが、零士の顔を見上げた瞬間、カッと顔が破裂しそうなほどに赤くなった。胸の奥で、VTシステムの暴走など比較にならないほどの、甘く、激しく、暴力的なまでの恋心がトクトクと脈打っている。
「私(わたくし)は……お前の、ものだ……。お前以外の男など、一生、認めない……ッ!」
布団を鼻まで引き上げ、真っ赤な顔を必死に隠しながらも、ラウラは眼帯のない片目で零士を強く見つめる。 その瞳には、世界のすべてを敵に回しても「白崎零士」だけを愛し抜くという、狂おしいほどの独占欲と、限界値へと達した最高潮(MAX)の好感度が、熱く深く刻まれていたのだった。