インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
■ IS学園・1年1組教室
クラス対抗戦でのラウラのIS暴走騒ぎから数日後。アリーナを震撼させたあの規格外の騒動が嘘のように、学園には平穏な日常が戻っていた。
朝のホームルーム。教壇に立つ担任の織斑千冬は、いつもと変わらぬ毅然とした態度で出席簿を叩き、騒がしい女子生徒たちを静める。
「静かにしろ。……よし、今日の連絡事項だ。来週から臨海学校を行う。場所は第二、第三アリーナではなく、本物の海だ。水着等の準備を怠るなよ」
「臨海学校……! ということは、海ですわね!」
「織斑先生の水着姿が見られるかも……!」
千冬の言葉に、教室の女子生徒たちが一気に色めき立つ。
そんな喧騒の中、教壇のすぐ脇、窓際の特等席に置かれたパイプ椅子に、一人の男が相変わらず気怠げに腰掛けていた。特別非常勤講師、白崎零士である。
彼はいつも通りの隙のないブラックスーツ姿で、千冬の事務連絡を退屈そうに聞き流しながら、手元で静かに文庫本をめくっていた。数日前、アリーナで世界を滅ぼしかねない白銀の騎士【氷零の終焉騎士(フロスト・エンドワルツ)】へと変貌し、暴走ISを文字通り一刀両断にしてみせた男とはとても思えない、あまりにも自然で、あまりにも日常に溶け込んだ佇まいだった。
「おい、白崎。お前も臨海学校には同行してもらうからな。これは学園長からの直々の要請だ」
千冬が書類から目を離さずに釘を刺すと、零士は本から視線を上げ、ふっと皮肉げな笑みを浮かべた。
「やれやれ、手厳しいな織斑先生。……まあ、いい。生徒たちの『護衛』も兼ねて、バカンスに付き合ってやるとしよう」
その言葉に、真っ先に過剰な反応を示したのがラウラだった。
保健室での熱烈な告白を経て、胸の奥の好感度が完全に上限を突破(MAX)している彼女は、零士が「同行する」と聞いた瞬間、カッと頬を赤く染め、布団の代わりに制服の襟元を握りしめて零士を凝視する。
(せ、先生も海へ……!? ということは、私の水着姿を、あの男に、零士に見られるということか……っ!?)
軍人としての冷徹さはどこへやら、眼帯のない片目を潤ませて完全に乙女の表情で行く末を案じている。
一方、その隣の席では、セシリアが自慢の縦ロールを上品に揺らしながら、零士に向かって熱烈な視線を送っていた。あの日、アリーナのモニターで目撃した『白崎零士のVIS_2.png』の圧倒的な美学と、ツインバスターライフルをはじめとする完璧な武装一覧が、未だに彼女の脳裏から離れないのだ。
(白崎先生のあの白銀の鎧……思い出すだけでも胸が高鳴りますわ。海というオープンなロケーションなら、もしやブルー・ティアーズと先生のVISで、美しく華麗な共同戦線を張る機会もあるかもしれませんわね……!)
セシリアは青い瞳を輝かせ、早くも臨海学校でのドラマチックなシチュエーションを妄想して、小さく息をついている。
「……たく、お前がいると女子どもの集中力がさらに散るな」
千冬が呆れたように小さくため息をつくが、零士はどこ吹く風で、再び文庫本に目を落とした。
一夏とシャルの秘密、ラウラの過去の救済、そしてセシリアの憧憬――。
少女たちの様々な思惑と、最高潮の熱を孕んだ視線が集中する中心で、白崎零士はただ一人、いつもと変わらない圧倒的な余裕を纏ったまま、迫りくる臨海学校の足音を静かに聞き届けていた。