インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
前振りエピソード:白崎零士の自室にて】
IS学園の男子寮、白崎零士の自室。
無駄な装飾がなく、洗練された調度品だけが並ぶその部屋のチャイムが鳴ったのは、休日の午前中のことだった。
零士がドアを開けると、そこには予想外の三人組が立っていた。
「ごきげんよう、零士さん。突撃隣の晩御飯……ではなく、少々お話がありましてよ?」
縦ロールを上品に揺らしながら、微笑むセシリア。
「やあ、零士。急に押しかけちゃってごめんね」
申し訳なさそうに、けれどどこか楽しげに手を振るシャルル。
「……白崎零士。貴様の時間を少しもらう」
いつも通り腕を組み、鋭い眼光を向けてくるラウラ。
「……お前たちか。何の用だ」
零士は特に驚く風でもなく、三人を通すと、ソファに座るよう促した。セシリアは我が物顔で、シャルルは少し恐縮しながら、ラウラは背筋を伸ばして腰を下ろす。
お茶を淹れて差し出すと、シャルルが代表して本題を切り出した。
「実はね、来週の臨海学校に向けて、今週末から近くのショッピングモールで『新作水着特設フェア』が始まるんだ。それで……もしよかったら、零士も一緒に水着を買いに行かないかと思って」
「水着か」
零士は顎に手を当て、少し考える。
「そうですわ! わたくしもイギリスから取り寄せたものはありますが、せっかくですから日本の流行も見ておきたくて。それに、零士さんの審美眼なら、わたくしに最高の水着を選んでいただけると思いまして」
「ふん、私は水難訓練用の戦闘服(水着)の選定だ。お前の合理的な視点による意見を求む」
二人の言葉を聞き、零士はふっと息を吐いた。
「買い出しに行くのは構わないが……それなら、箒や鈴、それに一夏も誘うか?」
その名前が出た瞬間、三人の表情が目に見えて強張った。
「えっ……一夏も、ですか?」
シャルルが目を丸くする。
「な、なぜあのだらしない男を……!」
セシリアが扇子を取り出して顔を覆う。
「一夏か。……悪くない。私の戦闘服姿を一夏に見せる、良い予行演習になる」
ラウラだけは別の方向で納得しているようだが、セシリアとシャルルは気が気ではない。一夏を誘えば、間違いなく大騒ぎになる上に、自分たちの水着姿を意識してしまうからだ。
さらに、シャルルが現実的な問題を口にする。
「でも、それだけの人数で行くとなると、移動が大変じゃないかな? 電車で行くの?」
大人数での移動となると、周囲の目もある。特にIS候補生である彼女たちは目立ちやすい。
だが、零士は事も無げに、デスクの上から一本の鍵を指先で弄んだ。
「それなら気にするな。皆を乗せられる車なら、ロールスロイスがある」
「ロ、ロールスロイス、ですの!?」
さすがのセシリアも、その高級車の名に驚きを隠せない。
「……ほう。大人数を一度に運べる重装甲車か。合理的だな」
「ラウラ、装甲車じゃなくて高級車だよ……。でも、零士がそこまで言うなら、みんなで行ったほうが賑やかで楽しそうだね」
シャルルが苦笑しながらも賛同し、セシリアも「わたくしに相応しいお迎えですわね」と満足げに頷いた。
「決まりだな。一夏たちには俺から連絡を入れておく。今週末、エントランスに集合だ」
零士が淡々と告げると、三人――特にセシリアとシャルルは、一夏も来るという緊張感と、どんな水着を選ぼうかという期待で、頬を微かに赤らめるのだった。
「それなら、待ち合わせ場所は教職員専用駐車場の奥にするか」
零士が鍵をポケットに収めながら言うと、セシリアが少し意外そうに小首を傾げた。
「学園の正門や寮ではなく、教職員用の駐車場、ですの?」
「ああ。生徒用や一般の駐車場にあの車を停めておくと、目立ちすぎるからな。一応、俺はこれでも非常勤講師の身だ。教職員スペースの、それも端の区画なら学園側の特別な駐車許可も通しやすい。お前たち候補生を一括で引率して学園外へ出るという意味でも、教官の車としてそこから出発するのが一番書類上の手続きがスムーズなんだよ」
「なるほどね。零士が『先生』としての立場を使ってくれた方が、確かに私たちも大手を振って出かけやすいかも」
シャルルが納得したようにポンと手を打つ。
「ふん、教官による野外演習の引率、という名目か。さすがは零士、状況判断が合理的だな」
ラウラも、どこかズレた解釈をしながらも満足げに頷いた。
「決まりだな。一夏たち生徒側には『週末の朝九時、教職員駐車場の奥に集合』と俺から伝えておく。奴のことだ、非常勤講師の俺から急に呼び出されて、何かまたやらかしたんじゃないかと今頃部屋で震えているかもしれないがな」
零士の少し意地悪な言葉に、シャルルとセシリアは思わず顔を見合わせて、くすくすと笑い声を上げた。