インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
【当日:黒き鉄馬の顕現】
週末の朝。教職員専用駐車場の最奥は、休日ということもあって静まり返っていた。青空が広がり、絶好の買い物日和だ。
約束の午前九時まで、あと十五分。
白崎零士は誰もいない空間に一人、静かに立っていた。
「……さて、そろそろ出しておくか」
零士が空間に向けて軽く手を振ると、その前に光の粒子が集束し、幾何学的な『筺(ボックス)』のインターフェースが展開される。彼が画面をタップすると、空間がわずかに歪み、重低音のような駆動音とともに、一台の巨大な影が現実世界へと滑り出してきた。
漆黒のボディ。鏡のように周囲の景色を映し出す、洗練された流線型。
最高級の品格と、圧倒的な威容を誇る――ロールスロイス。
IS学園という特殊な環境にあっても、その存在感は異彩を放っていた。零士がドアの解錠を済ませて車体に寄り添うように待っていると、足音が近づいてくる。
「あ、零士! もう来てたんだね」
一番にやってきたのはシャルルだった。その後ろからセシリア、そしてラウラが続く。さらに零士からの連絡を受けていた一夏、箒、鈴の三人合流し、総勢六人が教職員駐車場の奥に揃った。
「お待たせいたしましたわ、零士さん。……って、あら?」
セシリアが言葉を失い、その美しい瞳を見開く。
「うわぁ……すごい。これ、本当に零士の車なの?」
シャルルが感嘆の声を漏らし、鈴や箒もその場に釘付けになっていた。
「おいおい零士、これマジかよ!? デカすぎるし、めちゃくちゃ格好いいじゃん!」
一夏が興奮気味に車体に近づこうとするが、その重厚な雰囲気に気圧されて思わず足を止める。
「……ふん、重装甲仕様の移動本拠地(ベース)か。教官に相応しい、合理的かつ威風堂々とした佇まいだな」
ラウラだけは相変わらず物騒な感心をしていたが、その目もどこか輝いている。
零士は驚く生徒たちを前に、いつもと変わらない淡々とした様子でロールスロイスのドアを開けた。
「時間ぴったりだな。大人数用だ、こういう時のために用意してある。外で騒いでいると他の教官に見つかって面倒になる。全員、さっさと乗れ」
「は、はいっ!」
一夏が緊張した面持ちで最初に乗り込むと、女子たちもそれに続く。
ドアが静かに閉まると、外の雑音は完全に遮断され、まるで高級ホテルのラウンジのような広々とした空間が広がった。
「な、何これ……シートがふかふかすぎるある……」
「さすがはロールスロイスですわね。非常に居心地が良いですわ」
感嘆の声を上げる彼女たちをバックミラーで確認しながら、零士は運転席のスタートボタンを押す。静かに、けれど力強く目覚めるエンジン。
「……それじゃあ、出発する。目的地はショッピングモールだ。各自、忘れ物はないな?」
「応! よろしく頼むぜ、零士先生!」
一夏が助手席側から元気に答える。その背後では、早くも「一夏の隣(後部座席の中央)」を巡る女子たちの静かな視線の火花が散り始めていた。
ロールスロイスは夕暮れならぬ、眩しい朝の光の中を、滑るように走り出した。