インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』   作:suzuki00

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ショッピングモール 2

「ま、待てみんな! 落ち着け! 売り場でIS(インフィニット・ストラトス)を展開しようとするな! 展開すなーーーッ!?」

 

ショッピングモールに響き渡る一夏の悲鳴。

 

非常勤講師としての立場を放棄し、零士は再び柱に背を預け、哀れな一夏が女子たちに揉まれる様子を他人事のように眺めていた。

 

……が、当の一夏は気づいていなかった。

 

女子たちがこれほどまでにムキになり、一夏に「どっちが似合うかハッキリさせろ!」と詰め寄っている真の理由を。

 

「(……もう、一夏ったら全然わかってないんだから)」

 

シャルルは一夏の袖を引きながら、チラリと視線を柱の零士へと向ける。

彼女たちが本当に見てほしい相手、本当に「可愛い」と言ってほしかった相手は――最初から、あの酷く冷徹で、けれどたまらなく魅力的に自分たちをエスコートしてくれる『先生』の方なのだ。

 

一夏に意見を求めているのは、いわばカモフラージュ、あるいは小賢しい嫉妬心の裏返し。

先ほど零士から向けられた、あの心臓が跳ね上がるほど甘い言葉と真摯な瞳。その余熱のせいで、彼女たちの胸の奥は、一夏といる時とは全く違う「熱」で支配されていた。

 

「織斑さん、ちょっとは零士さんの爪の垢を煎じて飲んだらどうですの!?」

セシリアがツンとそっぽを向きながら、真っ赤な顔で一夏に八つ当たりする。

 

「な、なんで俺が怒られるんだよ!?」

理不尽な扱いに頭を抱える一夏。

 

その横で、箒はきゅっと水着を抱きしめたまま、柱にもたれる零士を盗み見ていた。

「(鍛え上げられた身体のライン、か……。あやつ、本当に私のことを見て……っ)」

思い出すだけで、また耳まで熱くなる。一夏という幼馴染がいながら、自分の心が完全にあの年上の男に奪われかけていることに、気恥ずかしさと、奇妙な高揚感を覚えていた。

 

「ふん。一夏、お前はただの観客だ」

まともな水着を選び直してきたラウラが、ふんす、と鼻を鳴らす。

「私は決めたぞ。臨海学校の砂浜で、一番にあの男(零士)の視線を釘付けにするのはこの私だ。それが嫁の、いや、生徒としての最優先任務だからな」

「だから主語がブレブレだってラウラ! 誰の嫁なんだよ!」

 

一夏のツッコミなど、もはや彼女たちの耳には届いていない。

 

「……やれやれ」

 

視線の交差点の終着点にいる零士は、彼女たちの熱い眼差しに気づいているのかいないのか、ただ小さくため息をつき、腕時計に目を落とした。

 

「一夏、遊んでないでさっさと選べ。置いていくぞ」

「遊んでねえよ!? 誰か俺のライフを回復してくれーーっ!」

 

一夏の叫びが再び虚しく響く。

セシリア、シャルル、ラウラ、そして箒。少女たちの胸中で静かに、けれど激しく燃え盛る『非常勤講師への恋心』の嵐は、来週の臨海学校でさらに加速していくことになるのだが――今はまだ、誰もそれを口にすることはなかった。

 

 

「それじゃあ、全員買い出しは終わったな?」

 

両手いっぱいに水着の袋を抱えた女子たちを見渡しながら、零士が声をかける。

 

「はい! とっても素敵なお買い物ができましたわ、零士さん」

「うん、付き合ってくれてありがとう、零士」

「ふん、これで臨海学校の『戦闘準備』は完了だ」

 

満足げに微笑むセシリア、シャルル、ラウラたち。その横では、一夏が魂の抜けたような顔で壁に寄りかかっていた。

 

「あ、そうだ。零士は水着買わなくてよかったのか? 男物の売り場、全然見てなかっただろ」

一夏が思い出したように尋ねてくる。

 

零士はポケットに手を突っ込み、事も無げに返した。

「俺のなら、家にあるラフな海パンで十分だ。わざわざ新調するほど大層なものは必要ない。それに……」

 

零士は少し目を細め、後部座席で自分をじっと見つめてくる少女たちに、釘を刺すように言葉を続けた。

 

「俺はあくまで『非常勤講師』として臨海学校に同行する立場だ。現地に着けば、お前たちの安全管理やISの調整、他の教官との打ち合わせで付きっきりになる。……生徒のようにのんびり遊べるかどうかは分からんぞ」

 

その現実的な一言に、女子たちの間に小さな落胆が広がる。しかし、すぐにその瞳には、違った種類の強い意志が灯った。

 

「(……お仕事が忙しいなら、私から零士のところに行けばいいんだよね)」

「(ふふ、わたくしの水着姿を見れば、零士さんもお仕事を忘れてしまうかもしれませんわ)」

「(仕事の合間の『急速の合図』は、私が送ってやる……)」

 

彼女たちの胸の内で、さらなる作戦会議が始まっていることなど露知らず、零士はエレベーターのボタンを押した。

 

「さあ、買い物が終わったのなら行くぞ。地下駐車場に戻る。一夏、荷物を持ってやれ」

「へいへい、わかってますよ……」

 

一夏が苦笑しながら歩き出す。

再び静まり返った地下駐車場の死角で、零士は誰も見ていない隙に『筺(ボックス)』を展開。一瞬にしてあの漆黒のロールスロイスを顕現させ、全員を車内へと誘う。

 

「……じゃあ、帰るか。乗れ」

 

ふかふかのシートに腰掛け、優雅すぎる帰路につく一行。窓の外を流れる夕焼けを見つめながら、零士は小さくため息をつく。

臨海学校本番――自分の仕事がどれほど忙しくなろうとも、彼女たちの熱い視線から逃れることは容易ではないだろうと、その静かな横顔で確信していた。

 

 

 

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