インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』   作:suzuki00

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【前日譚:職員室の密談】

【前日譚:職員室の密談】

ショッピングモールへ向かう数日前。IS学園の職員室。

放課後の喧騒が引き始めた時間帯、白崎零士はデスクで書類を整理している織斑千冬の元へと歩み寄った。

 

「千冬先生、少しいいですか」

 

「ん? 白崎か。どうした、来週の臨海学校の件か?」

千冬はペンを止め、鋭くも信頼の籠もった視線を零士に向ける。

 

「ええ。その件で前もって伝えておきたいことがありまして。現地への移動ですが、俺は自分の車で向かいますので、先に現地入りしています」

 

「車だと? バスでの集団移動ではなくか。まあ、お前は非常勤講師だし、現地でのISの初期調整や機材の搬入もあるから、別行動の方が融通が利くか……。だが、安心しろというのはどういう意味だ?」

 

千冬が怪訝そうに眉をひそめると、零士は小さくため息をつき、苦笑混じりに声を潜めた。

 

「俺一人の単独行動だから、安心してください、という意味です。……もし彼女たち、特にセシリアやシャルルたちに『俺が車で先に行く』なんて情報が漏れてみてください。『助手席に座るのは私ですわ!』だの『僕がナビをするよ』だのと言い出して、出発前に女子寮が文字通りの戦場になりますよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、千冬は一瞬だけ呆気に取られ、それから合点がいったようにフッと口元を緩めた。

 

「くっ……ははは! なるほど、お前の言う通りだな。あのじゃじゃ馬どもめ、一夏だけでなくお前にまでそこまで懐いているとはな。特にあのイギリスのお嬢様やフランスの代表候補生あたりは、間違いなく助手席の権利を賭けてISを展開しかねん」

 

「笑い事じゃないですよ。だから、この件は生徒たちには完全秘匿でお願いします。……言うまでもありませんが、私はここでは非常勤講師という立場です。彼女たちよりかは、そのあたりの分別はしっかり弁えているつもりですから」

 

零士が真面目な顔で、どこか自分に言い聞かせるように付け加えると、千冬は手にしたペンを机に置き、椅子の背もたれに深く身体を預けた。

 

「……フン、分かっているさ。お前がそういう男だからこそ、私もこうして全幅の信頼を置いて、じゃじゃ馬どもの指導やISの調整を任せているんだ」

 

千冬の瞳に、からかうような、けれどどこか温かい光が宿る。

 

「だが、お前がいくら『教師と生徒』として分別を分けて一線を引いていようと、向こうはそんなの関係なしに、その線を全力で踏み越えてくるぞ? 特に水着姿のあいつらは、一夏を放置してお前を骨抜きにする気満々かもしれないからな。……精々、現地でもその『分別』とやらを保ち続けることだ」

 

「……善処します」

 

千冬の容赦のない指摘に、零士は今度こそ苦笑いを浮かべた。

 

「では、先に現地に入って環境を整えておきます。生徒たちの手綱は、バスの中でよろしくお願いしますよ」

 

「ああ、任せておけ。お前も道中気をつけてな」

 

零士は一礼し、職員室を後にした。

背後で千冬が「助手席、か……」と、どこか愉快そうに、そして少しだけ意味深に呟いたのを、零士は聞こえない振りをしてそのまま歩き去るのだった。

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