インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』   作:suzuki00

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【臨海学校:夕暮れの宿と、引き寄せられる視線】

【臨海学校:夕暮れの宿と、引き寄せられる視線】

昼間の喧騒が嘘のように、海は夕焼けの茜色に染まり始めていた。

 

IS学園が貸し切っている温泉宿。その一角にある臨時のIS整備室(兼・機材倉庫)で、零士は一人、ノートPCの画面に向き合っていた。キーボードを叩く規則的な音だけが、静かな部屋に響いている。

 

「……よし、これで明日の訓練用ISの同調レートの設定は完了だな」

 

画面を閉じ、小さく首を回して息を吐く。

非常勤講師としての仕事を完璧にこなした零士は、椅子から立ち上がり、冷えたミネラルウォーターを口にした。窓の外を見れば、ちょうど砂浜でのレクリエーションを終えた生徒たちが、賑やかに宿へと戻ってくるところだった。

 

「――あ、零士さん!」

 

真っ先に整備室の開いたドアから顔を覗かせたのは、タオルを首にかけたセシリアだった。続いて、シャルル、ラウラ、箒も、まるで吸い寄せられるようにして部屋へと入ってくる。

 

昼間、一夏と遊んでいる間も、彼女たちの意識の数割は常に「先に宿にいるはずの零士」に向いていたのだ。

 

「みんな、お疲れ様。一夏の相手は大変だったろ」

零士がいつものように大人の余裕を崩さず、ふっと微笑みながら労うと、少女たちの顔が一気に華やいだ。

 

「もう、本当に大変でしたのよ! 織斑さんたら、わたくしの水着のフリルのこだわりを全く理解してくれませんの!」

セシリアがここぞとばかりに距離を詰め、零士の腕に自身の柔らかい肌を寄せるようにして不満をこぼす。

 

「ボクも、せっかく日焼け止めを塗ってほしかったのに、一夏ったら『自分で塗れよ』って……。ねえ零士、ボク、まだ背中が上手に塗れてない気がするんだ」

シャルルが少し潤んだ瞳で上目遣いに見つめてくる。昼間、一夏に見せたものよりも、明らかに計算高く、そして本気の甘え方だった。

 

「ふん。一夏は戦術的な配慮が足りん。やはり、私の隣に立つべきなのは……」

ラウラが零士の前に立ち、その鋭い眼差しを真っ直ぐにぶつけてくる。その頬は、夕焼けのせいだけではなく、かすかに赤らんでいた。

 

「あ、あのな、お前たち……! 零士は仕事中だぞ、あまり邪魔をするな!」

箒が慌てて制止に入ろうとするが、彼女自身も、零士のラフなシャツの隙間から覗く、一夏とは違う引き締まった胸元に視線を奪われ、顔を真っ赤にしている。

 

「構わないさ。ちょうど今、明日の分の仕事が終わったところだ」

 

零士はそう言うと、彼女たちの熱い視線を真っ向から受け止めながら、フッと悪戯っぽく微笑んだ。

 

「それにしても……遠目から見ていたが、全員、昼間の水着姿は本当に素晴らしかった。売り場で見た時以上の破壊力だったよ。一夏が羨ましいくらいだ」

 

「……っ!」

 

その一言で、整備室の温度が跳ね上がる。

一夏にいくら「似合ってる」と言われてもビクともしなかった彼女たちの心臓が、零士のその一言だけで激しく鐘を鳴らす。

 

「れ、零士さん……本当に、そう思ってくださるの?」

シャルルが耳まで真っ赤にして呟く。

「当然ですわ! わたくし、零士さんに見られることを意識して……あ、動きやすさを重視しましたの!」

セシリアが激しく狼狽しながら取り繕う。

 

少女たちの胸の中で、一夏への「幼馴染としての親しみ」とは全く違う、『一人の魅力的な男性への恋心』が完全にトドメを刺された瞬間だった。

 

「さて、そろそろ夕食の時間だな。俺は千冬先生に報告へ行く。お前たちも早く汗を流してくるといい」

 

一線を引くような、けれどどこか名残惜しさを感じさせる絶妙な距離感で、零士は彼女たちの間をすり抜け、廊下へと歩き出す。

 

「(……もう、あんな風に褒めるなんて、本当にずるい人……)」

シャルルが胸元を押さえて小さく吐息を漏らす。

 

「(臨海学校の期間中に、絶対に零士さんを振り向かせてみせますわ……!)」

セシリアの瞳に、本気の炎が灯る。

 

非常勤講師としての「分別」を守ろうとする零士の防衛線が、この臨海学校の夜、彼女たちの猛烈なアプローチによっていよいよ崩壊の危機を迎えることを、本人はまだ予感しつつも、あえて気づかない振りを続けるのだった。

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