インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
太陽が水平線の彼方へと沈み、海原が紫から深い藍色へと染まっていく頃。
一同の喧騒の舞台は、砂浜から海岸沿いに佇む和風旅館へと移っていた。
潮風でベタついた体を温泉できれいに洗い流し、夕食までのひととき。
旅館の長い廊下を、浴衣姿の白崎零士が歩いていた。湯上がり特有の熱を帯びた肌に、糊のきいた浴衣の感触が心地いい。
「ふぅ……」
軽く息を吐きながら、自室へ戻ろうと角を曲がったその時。
「あ、零士先生」
声をかけてきたのは、同じく湯上がりで髪を少し濡らしたシャルルだった。
黄色を基調とした可愛らしい浴衣が、彼女の柔らかい雰囲気をいっそう引き立てている。
「デュノアか。湯冷めするぞ」
「うん、今上がったところ。……あのね、さっきは、その……ありがとう」
シャルルは少し俯き、浴衣の裾をいじりながら昼間の言葉――『一番危ないタイプ』と言われたことを思い出しているのか、頬を微かに染めた。
「本当のことを言っただけだ」
零士がいつもの調子で返すと、彼女は小さくクスリと笑う。
「もう、先生はやっぱり調子が狂うな。……あ、そうだ。みんな大広間で集まってるよ? 織斑先生ももういるし、零士先生も来ない?」
「ああ、今行くところだ。お前たちを待たせるわけにはいかないからな」
二人が並んで歩き、大広間の襖を開けると、そこはすでに賑やかな宴の場と化していた。
賑やかな食卓
「遅いですわ、零士先生! シャルルさんも!」
席についたセシリアが、待ちかねたように声を上げる。彼女の浴衣は流石というべきか、上品な刺繍が施された豪奢なものだ。
「悪い。少し湯を堪能しすぎた」
「フン、言い訳はいい。早く座れ、教官。私の隣が空いている」
ラウラが自分の隣の座布団をポンポンと叩く。彼女は浴衣の合わせをきっちりと締め、実直な性格がそのまま服装に表れていた。
「おいラウラ、抜け駆けはずるいぞ!」
すかさずリンが噛みつく。赤を基調とした活動的な浴衣姿の彼女は、すでに目の前の豪華な会席料理に目を輝かせている。
「抜け駆けではない。これは戦略的配置だ」
「どんな戦略よそれ!」
「二人とも、静かにしろ。飯が不味くなる」
上座に座る千冬が、冷えたビールグラスを傾けながら一喝する。黒髪をアップにまとめ、落ち着いた紺色の浴衣を気崩すことなく着こなす姿は、極道の極み……いや、大人の色気が漂っていた。
「……まぁ、座れ。零士」
「失礼します、千冬教諭」
零士は千冬と箒の間の席へと腰を下ろす。
隣に座った箒は、心なしか体が強張っているようだ。紫色の、どこか古風で凛とした浴衣が実によく似合っている。
「……篠ノ之」
「な、なんだ……!?」
声をかけただけで、箒がびくっと肩を揺らす。
「昼間も思ったが、やはり和装が一番馴染むな。よく似合っている」
「っ……~~~!」
箒は顔を真っ赤にし、お茶の入った湯呑みを両手で握りしめたままフリーズしてしまった。
「あらあら、箒さんったら。先生、そうやって女の子を惑わすのは感心しませんわ?」
セシリアがからかうように言うが、その目には「私にも何か言って」という期待が透けて見えている。
「オルコットも、その浴衣は特注か? 着こなすお前も凄いが、仕立てた職人の息吹を感じるな」
「ふふ、お目が高いですわね! 零士先生のために選んだ甲斐がありましたわ!」
「お、おいセシリア! さっきから何個人的なアピールしてんのよ!」
リンが身を乗り出して抗議し、シャルルがそれを苦笑しながら宥める。
交わされる視線
膳に並ぶのは、伊勢海老の刺身に金目鯛の煮付け、地元の新鮮な山の幸。
「いただきます」の声とともに、賑やかな夕食が始まった。
「零士」
宴の喧騒の中、隣から千冬が静かに声をかけてくる。
「何です?」
「お前、生徒の扱いが上手くなったな。IS学園に来た当初は、もう少し表情が死んでいた気がするが」
「……買い被りですよ。死線を潜るより、彼女たちの相手をする方がよっぽどエネルギーを使う。生きるために必死に順応しているだけです」
零士は苦笑しながら、手元のグラスに日本酒を注ぐ。
「そうか? 楽しそうに見えるがな」
千冬はそう言って、自身のグラスを零士のそれに軽く合わせた。
カチン、と小さな音が響く。
「……悪くない時間だとは、思っていますよ」
零士のその言葉に、千冬は満足そうに口元を緩め、酒を煽った。
ふと視線を感じて前を向くと、リンや箒、セシリアたちが、楽しげに笑い合いながらも、時折こちらに熱い視線を送ってきている。シャルルは小さく手を振ってくれ、ラウラは堂々と零士を見つめ返してくる。
外からは、夜の静かな波音が心地よく響いていた。
昼の喧騒とはまた違う、温かさと少しの火照りを孕んだ夜。
白崎零士の臨海学校は、まだ始まったばかりだった。
イタリアに居る時は、仕事、任務、報告書そのルーティンですからね。
膳に並ぶのは、伊勢海老の刺身に金目鯛の煮付け、地元の新鮮な山の幸。
「いただきます」の声とともに、賑やかな夕食が始まった。
「零士」
宴の喧騒の中、隣から千冬が静かに声をかけてくる。
「何です?」
「お前、生徒の扱いが上手くなったな。IS学園に来た当初は、もう少し表情が死んでいた気がするが」
「死線を潜るより、彼女たちの相手をする方がよっぽどエネルギーを使う。生きるために必死に順応しているだけです」
「そうか? 楽しそうに見えるがな」
千冬はそう言って、冷えたビールグラスを軽く揺らす。
零士は苦笑しながら、手元のグラスに日本酒を注ぎ――ふと、思い出したように手を止めた。
「……そうだ、千冬教諭」
「なんだ?」
「酒を少し持ってきているんですが、いかがです? 食事に合うようにジンを用意しています。後ほど、ラフロイグもお持ちします」
「ほう……抜かりないな」
千冬の口元がわずかに緩む。
「悪くない。今夜は付き合おう」
「では、後で部屋から取ってきます」
「そうしろ。……楽しみにしている」
カチン、と小さくグラスが触れ合う。
「……悪くない時間だとは、思っていますよ」
零士のその言葉に、千冬は満足そうに酒を煽った。
ふと視線を感じて前を向くと、リンや箒、セシリアたちが、楽しげに笑い合いながらも、時折こちらに熱い視線を送ってきている。シャルルは小さく手を振ってくれ、ラウラは堂々と零士を見つめ返してくる。
外からは、夜の静かな波音が心地よく響いていた。
昼の喧騒とはまた違う、温かさと少しの火照りを孕んだ夜。
白崎零士の臨海学校は、まだ始まったばかりだった。