インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
■ 臨海学校最終日:帰還の朝
波乱に満ちた臨海学校の日程もすべて終了し、いよいよ学園へと帰る日の朝がやってきた。
青い海を背に、生徒たちがぞろぞろと大型の送迎バスへと乗り込んでいく中、駐車場の一角には異彩を放つ一台のスポーツカー――漆黒の「TOYOTA 86」が静かに佇んでいた。
白崎零士の愛車である。
フロントガラスに反射する朝陽を浴びながら、零士が運転席のドアに手をかけたその時、背後から賑やかな足音が近づいてきた。
「白崎先生! お帰りの際も、ぜひ私の『ブルー・ティアーズ』……ではなく、先生のお車の助手席でお供させていただけませんか!?」
セシリアが美しい金髪を揺らしながら、一番乗りと言わんばかりに詰め寄る。
「ずるいぞセシリア! 行きは私がバスだったんだ、帰りは私が先生の隣に乗る!」
「ちょっと二人とも、あそこはあたしの指定席よ!」
「いや、昨日の戦いでの貢献度を考えれば、私(ラウラ)が隣に座るのが妥当だ」
当然のように始まったヒロインたちによる助手席の争奪戦。挙句の果てには、一夏までが「なあ先生、俺が乗ってもいいか? 昨日のVISの起動について詳しく聞きたくてさ」とのんきに顔を出してくる始末だった。
やれやれ、と零士は盛大にため息をつき、迫り来る嫁(候補)たちの熱視線を冷徹にいなした。
「おい、お前たち。朝から群れて騒ぐな。……行きと同じだ」
零士はキーを回してエンジンを始動させ、重低音の排気音を響かせながら冷淡に言い放つ。
「この車の助手席は、ハナから空席(お前たちの座る場所はない)だ。さっさと全員バスに乗れ。遅れた奴は置いていくぞ」
「そんなぁー!」「冷たいですわ先生!」とブーブー文句を言う少女たちを、千冬が「おい、いつまで油を売っている。さっさとバスに乗らんか!」と一喝し、強引に回収していく。バスの窓際へと押し込められたヒロインたちは、無念そうにこちらを振り返っていた。
バックミラー越しに、千冬と一瞬だけ視線が交錯する。昨夜の濃密な時間を共有した彼女の瞳には、ほんのわずかな熱と、いつも通りの「同僚」としての信頼が宿っていた。
「……フン」
零士はアクセルを軽く踏み込み、86を滑らかに発進させた。
誰もいない静かな助手席。しかし、バックミラーに映るバスの中からは、一夏を小突く箒たちの騒がしい声が早くも漏れ聞こえてくる。
世界を震撼させた激闘の余韻を置き去りにし、白崎零士の駆る86は、再び始まる賑やかで平穏な学園の日常へと向けて、初夏のハイウェイを軽快に駆け抜けていった。