インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
エピローグ 後日譚:白銀の誓いと、騒がしき家族のワルツ
(中略:アリーナでの騒動、一夏と鈴の敗北感、千冬と真耶の葛藤を経て――)
6. 白銀の起源と、男が資格(ステータス)を貪る理由
アリーナでの「甘い断罪」がひとまずの落ち着きを見せ、夕闇が本格的に降り立ち始めた頃。零士の特製スマートフォンから流れるリボーンの笑い声も切れ、アリーナには心地よい夜風が吹き抜けていた。
依然として零士の左右の腕をがっちりとホールドしたままのシャルロットとラウラ、そして一歩前に佇む箒とセシリア。彼女たちの熱い視線を受け止めながら、零士はふと、自身の右手に灯した「雪の炎」をじっと見つめた。その揺らめきは、周囲の熱気を吸い込んでなお、冷徹な美しさを放っている。
「……ところで、お前たち」
零士は少しだけトーンを落とし、教え子であり、これからは「家族」となる彼女たちを見渡した。
「なぜ俺が、ISの絶対防御すら貫通するような『雪・氷』の能力……この特異な炎を使えるのか、その理由を知りたいか?」
4人は一瞬だけ顔を見合わせ、それから弾かれたように力強く頷いた。特にISの技術者でもある姉を持つ箒と、超常の力を「VIS」として間近で見たセシリアは、身を乗り出すようにして次の言葉を待つ。
「実はな……これは後天的な技術でも、ボンゴレの特殊な実験の成果でもない。――完全な天性(生まれつき)のものなんだよ」
「天性……。生まれながらにして、その凍てつく炎を?」
ラウラがオッズ・アイを細め、不思議そうに呟く。
「そうだ。だがな、天性と言えば聞こえはいいが、制御の効かない強大すぎる力は、ただの呪いでしかない。幼少期の俺は、自分の感情の揺らぎ一つで、周囲の人間や空間を無差別に凍りつかせかねない“歩く危険物”だった。この雪の炎は、あまりにも俺の『精神の安定度』に直結しすぎていたんだ」
零士は苦笑しながら、ポケットから何枚かのカードを取り出した。それは、超難関国家資格の合格証書や、国際的なライセンスの数々。
「だから俺は、精神を極限まで鍛錬し、常に冷静沈着な『絶対の檻』を心の中に築く必要があった。……そのための精神トレーニングとして選んだのが、ありとあらゆる『難関資格の取得』と『学問の修め』だ」
「えぇっ!? し、資格の勉強が、精神トレーニングですの……!?」
セシリアが素っ頓狂な声を上げる。シャルロットも目を丸くしていた。
「ああ。雑念を一切排し、膨大な知識を脳内に叩き込み、一分のミスも許されない国家試験の緊張感に身を置く。脳と心を限界までロジカルに稼働させている間だけは、暴走しがちな雪の炎を完全に抑え込むことができた。弁護士、公認会計士、超難関のサバイバル技術、果ては世界の特殊言語のマスター……。俺が数々のステータス(資格)を貪ってきたのは、マフィアとしての箔をつけるためじゃない。自分という怪物を飼い慣らすための、必死の『枷(かせ)』だったんだよ」
その告白を聞いた少女たちは、言葉を失った。
目の前にいる最強の男が、どれほどの孤独と戦い、どれほどの超人的な努力によって、そのクールな微笑みを維持してきたのか。その生き様の壮絶さに、胸を打たれたのだ。
「零士……。お前は、たった一人でそれだけの重圧を……」
箒が切なげに瞳を潤ませ、そっと零士の胸元に手を添える。
「でも、もう大丈夫だよ」
シャルロットが、零士の右腕をさらにきゅっと抱きしめ、満面の笑みを向けた。
「これからは、あなたが心を乱しそうになったら、私たちが全力でその炎を温めてあげる。資格の勉強なんてしなくても、私たちがあなたの『檻』に……ううん、帰る場所になってあげるから」
「ふん。私の主が暴走しかければ、私がこの身を賭して組み伏せるまでだ。それに……」
ラウラは顔を真っ赤にしながら、零士の左腕に頬を寄せた。
「お前が手に入れた数々の資格(ステータス)は、これからは『最高の夫』としての証明書になるな」
「まぁ! それなら私は、アルコット家の全財産を以て、あなただけの新しい研究室と書斎をご用意いたしますわ! 勉強なら、いくらでもお付き合いします!」
セシリアが華やかに胸を張る。
「……はぁ。お前たちときたら、俺の過去の苦労話すら、そうやって都合よく解釈するのか」
零士はあきれ顔で、しかしその実、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
かつては自分を縛るための檻だった『雪の炎』。しかし今、目の前で騒がしく笑う彼女たちの前では、不思議と暴走する気配すら起きない。
「ま、そういうことだ。お前たちという、資格試験よりも遥かに難解な『難問』を抱え込んじまったからな。これからの俺の精神トレーニングは、こっち(お前たちの相手)になりそうだ」
「ふふ、不合格にされないように、覚悟しておいてね? 零士」
夕闇が完全に夜へと変わり、学園に美しい星空が広がる。
天性の氷をその身に宿した男は、世界で最も熱く、最も愛おしい四つの炎に包まれながら、新調したスーツのポケットに手を入れ、静かに歩き出すのだった。
(白崎零士・IS学園裏マフィア譚 ―― 大団円・完)