インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』   作:suzuki00

53 / 66
1年目の文化祭:【1年1組:多国籍ガチ執事・メイドカフェ】

1年目の文化祭:【1年1組:多国籍ガチ執事・メイドカフェ】

〜初めての文化祭! 資格とマフィアの流儀が火を吹く〜

 

激戦から数か月。完璧な『オメルタ』によってあの日がまるで嘘だったかのように、IS学園には穏やかな、そして少し浮足立った空気が流れていた。学園中が色とりどりの装飾に染まる中、1年1組の教室は、異様な重厚感を放つ空間へと変貌を遂げていた。

 

「いいか、お前たち。これが堅気の世界の『祭(フェス)』だ。だが、たとえ模擬店であろうとも、我がファミリー――いや、我がクラスの看板を背負う以上、一分の妥協も許さない」

 

新調した最高級の黒のジャケットを腕に掛け、白シャツの袖をスマートに捲り上げた白崎零士の声が、静まり返った教室に響く。

彼が教壇の机に並べたのは、この日のために私物から引っ張り出してきた『食品衛生責任者』『甲種防火管理者』のライセンスカード、そして世界の一流ホテルでも通用する『国際マナーライセンス』の最高位認定書であった。

 

「白崎先生……ううん、零士。さすがに学園の模擬店でHACCP(ハサップ)基準の動線設計と、ミリ単位の衛生管理を持ち込むのは、ちょっと厳しすぎないかな……?」

エプロン姿の織斑一夏が、完全に圧倒されながら苦笑する。

 

「黙れ、一夏。客の命を預かる厨房は、マフィアの抗争現場と同じく一歩のミスが命取りになる。……よし、嫁(予定)ども、お前たちの仕上がりを見せるがいい」

 

零士の視線の先で、4人の少女たちがそれぞれの衣装に身を包み、完璧な姿勢で直立した。

セシリアは英国名門のプライドをかけた本物の令嬢風メイド服。シャルロットはフレンチレースをあしらった気品あるクラシカルメイド。ラウラはドイツ軍服の意匠をどこか残した漆黒のロングメイドドレス。そして箒は、和洋折衷を意識した緋色の袴メイド姿だ。

 

「アルコット家の名に懸けて、殿方に至高の紅茶(ダージリン)を捧げますわ!」

「零士、フランス式の極上の接客、期待しててね?」

「ふん、軍人として、一寸の狂いもない完璧な給仕(おもてなし)をして見せる!」

「零士……お、お前のために、この日のために和菓子の包み方もマスターしたぞ……!」

 

零士は国際マナーライセンスの基準に基づき、彼女たちの姿勢、視線、果てはカップを置く際の指先の角度までを完璧に指導。教室はもはや高校の文化祭のレベルを超え、欧州のロイヤルホテルの一室へと昇華していた。

 

そして、その日の午後。

「1年1組」の入り口に、事前に零士が手配していた「特別なお客様」が姿を現した。

 

「ひえぇぇぇ! なにこれ、本当に日本の高校の文化祭!? ボンゴレの本部の式典より緊張感があるよー!」

頭を抱えて情けない悲鳴を上げながら入ってきたのは、額の炎を消し、日本の一般的なカジュアルスーツに身を包んだボンゴレ十代目――沢田綱吉(ツナ)だった。

 

「十代目、情けない声を上げないでください! ほら、零士の奴が直々に厨房で珈琲を淹れています!」

「まあまあ、獄寺くん。ツナも久しぶりの日本で緊張してるんだよ。あ、このお菓子美味そうだなぁ」

 

ツナの背後には、お目付け役の獄寺隼人、そして相変わらずマイペースな山本武が控えている。さらには「極限に文化祭を楽しむぞぉ!」と叫ぶ笹川了平と、なぜか一般客に紛れてマシュマロを食べている白蘭までが、一般の『招待客』としてテーブルに着いた。

 

「いらっしゃいませ、十代目。……そして、皆さん」

零士が自らトレイを持ち、直々にブレンドした「幻の珈琲」をツナたちの前に差し出す。その所作の美しさと、背後に控える4人のヒロインたちの放つ「私たちはこの男のファミリー(妻)です」と言わんばかりの圧倒的なオーラに、ツナは珈琲を吹き出しそうになった。

 

「れ、零士くん……! 君、護衛任務で日本に来たはずだよね!? なんで各国の代表候補生全員を従えて、こんな凄い空間作っちゃってるの!?」

「ボスのツナがイタリアで頭を抱えていた理由がよく分かったぜ。零士、テメェ、十代目の頭痛の種を増やしやがって……!」

獄寺がジロリと零士を睨むが、その隣でセシリアが「あら、英国式のおもてなしに何か不満でも?」とブルー・ティアーズの出力を思わせる笑顔で威圧する。

 

「まぁいいじゃない、ツナ。零士くんがこんなに可愛いお嬢さんたちに囲まれて幸せそうなんだから♪」

白蘭がヘラヘラと笑いながらジェラートを口に運ぶ。

 

一夏と鈴は、世界を裏から牛耳るボンゴレ上層部だとは夢にも思わず、「白崎先生のイタリアの友人たち、みんな凄まじい美形だけど、どこか雰囲気がヤバいな……」と、遠巻きに冷や汗を流しながら見守るのだった。

 

2年目の文化祭:【模擬店:雪の守護者の極上かき氷・ジェラート店】

〜天性の「雪の炎」を、初めて平和のために使う日〜

 

2年目の文化祭、秋晴れの心地よい日差しの下、学園の中庭には未だかつてない大行列が形成されていた。その行列の先にあるのは、白銀の装飾が施された特設の模擬店。

 

看板には――『降雪庵(こうせつあん) 〜雪の守護者の極上ジェラート〜』。

 

「まさか、ボクの『雪の炎』を、戦闘や暗殺ではなくスイーツのために完全解放(パワード)することになるとはな」

 

調理場の中央で、零士は苦笑しながら両手を掲げていた。その手元から溢れ出すのは、かつて亡国機業の巨大兵器を文字通り沈黙させた、絶対零度の『雪の死ぬ気の炎』。

 

零士は自身の『調理師免許』の知識と、死ぬ気の炎の出力を極限まで繊細にコントロール。熱運動を分子レベルで「静止」させることで、氷の結晶を極限まで細かく、シルクのように滑らかな食感へと変えていく。口に入れた瞬間に体温で淡雪のようにフワリと消える、近代科学の冷凍技術すら置き去りにした「奇跡のジェラート」が、次々と器に盛られていった。

 

「零士! 箒ちゃんの和風抹茶ジェラート、本日分がもうすぐ完売しそうだよ!」

シャルロットが、フリル付きのエプロンを揺らしながら嬉しそうに報告する。

 

「ふん、私の考案した『漆黒のシュバルツバルト風カシス』こそが、零士の氷に最も相応しい。一番に完売させてみせる!」

ラウラが鋭いオッズ・アイを輝かせ、トッピングのベリーを盛り付ける。

 

4人の嫁(予定)たちは、それぞれ自分の国や個性をイメージした特製トッピングの看板娘として、学園中の一般客を呼び込んでいた。箒の抹茶小豆、セシリアの気品溢れるロイヤルミルクティー、シャルロットの甘酸っぱいフランボワーズ、そしてラウラのカシス。

 

そこへ、再び一般客のフリをしてやってきたボンゴレ一同が並ぶ。

 

「うわぁ、本当に零士くんの雪の炎だ……! 懐かしいな、未来の戦いでこの炎に助けられたっけ。でも、まさかかき氷になってるなんて……うん、美味しい!」

ツナが一口食べて、その至福の食感に目を輝かせる。

 

「クハハハ! 零士のくせに美味いものを作るじゃねぇか! ほら、ランボ様にもっと高級なシロップをかけろ!」

大人ランボが、周囲の女子生徒たちに黄色い悲鳴を上げさせながらジェラートを貪る。

 

「おい、アホ牛、十代目の前で騒ぐな! ……しかし、零士。この氷、ただ美味いだけじゃねぇな。雨の炎の『鎮静』にも似た、精神を極限まで落ち着かせる効果がある。……これなら、うちのボスの怒りも静まるかもしれねぇ」

獄寺が感心したように呟く。

 

「……ん? XANXUSさんも来てるのか?」

零士が周囲を見渡すと、中庭の木陰にある特等席の長椅子に、ドカリと座って無言でジェラートの器を握りしめている王の姿があった。

 

「うおぉぉぉい! 零士ィ! ボスが『悪くない』と仰っているぞ! 早くおかわりを持ってきやがれぇい!」

スクアーロの声が響き渡り、一般の生徒たちが「な、何あの人たち……めちゃくちゃ怖いんだけど……」と怯えだす。

 

そんな中、行列の最後に並んでいた私服姿の織斑千冬と山田真耶を見つけ、零士は特製の裏メニュー――「大人のビターリキュールを添えた白銀ジェラート」を差し出した。

 

「織斑先生、山田先生。連日の学園警備、ご苦労様です。これを」

「……ふん。マフィアの氷など、私の胃袋には通用せんぞ」

千冬は不機嫌そうに木刀を抱え直しながらも、一口食べた瞬間、その完璧な温度管理と甘みに目を見開いた。

「……悪くない。いや、悔しいが……美味いな」

「織斑先生、顔が綻んでますぅ! ああ、白崎先生、私にもこれ一つください!」

 

天性の呪いだったはずの冷たい炎が、今、たくさんの人々の笑顔を創り出している。その光景を眩しそうに見つめながら、零士は、隣で自分の袖をぎゅっと握る4人の少女たちを引き寄せ、静かに微笑むのだった。

 

3年目の文化祭:【学園全体イベント:暗殺者(アサシン)からお姫様を守れ!リアル逃走中】

〜卒業前の最終作戦! 嫁たちの戦闘力が限界突破〜

 

そして、様子見の期間の集大成となる3年目の文化祭。更識楯無の悪ノリと、ヒロインたちの「卒業前に、零士に本気で私を奪い合ってほしい!」という熱い要望が融合し、学園の敷地すべてを舞台にした前代未聞の全校イベントが開催された。

 

その名も、『プリンセス・レスキュー・バトルロワイヤル』。

 

ルールは至ってシンプル。学園の四方に配置された「お守り(お姫様)」である箒、セシリア、シャルロット、ラウラの4人を、非常勤講師である白崎零士が制限時間内に全員救出し、アリーナの中央へ送り届けるというもの。ただし、学園のIS部隊や一般生徒、さらには「特別ハンター」が暗殺者(アサシン)役として学園中に配備され、生身の零士を全力で妨害する。

 

「まったく……卒業前だからと言って、こんな作戦(イベント)を立案するとはな。だが――」

 

零士は黒のスーツのネクタイを締め直し、自身の『狩猟免許』『特殊作戦指導員資格』の知識を脳内で展開した。

 

「マフィアの『雪の守護者』からターゲットを奪えると思うなよ。全員、3分以内に無力化(ホールド)してやる」

 

スタートの合図とともに、零士は漆黒の死神のごとく学園内を疾走した。

曲がり角から飛び出してきたIS学園の防衛部隊。零士はISのロックオンのラグを『戦闘心理学』で完全に予期し、生身の体術だけでセンサーの死角へと滑り込む。

 

「な、消えた!? どこに――」

「そこだ。凍りついて眠れ」

 

シュパァァン! と、最小限に出力を絞った雪の炎が敵の駆動部を掠め、ISの全システムを強制停止(フリーズ)させていく。その動きはあまりにもスマートで、冷徹なまでに美しかった。

 

「ひゃははは! 零士、甘いなぁ! 僕たちの防衛線を突破できるかい!?」

中央広場に立ち塞がったのは、特別ハンターとして参戦したミルフィオーレの真・6弔花――桔梗とザクロ、そしてブルーベルだった。

 

「お前たちまで楯無の悪ノリに乗るな。……だが、容赦はしない!」

零士は雪のロザリオを駆動させ、足元に巨大な氷結魔法陣を展開。広範囲の熱運動を一時的に停止させ、真・6弔花たちの足元を瞬時に凍りつかせた。

「うわっ、冷たっ!? 零士のやつ、本当に容赦ないじゃん!」

 

敵の防衛線を完璧に各個撃破した零士は、まず東の塔で待つ箒の元へ到達した。

 

「待たせたな、箒」

「零士……! 信じていたぞ!」

零士は迷うことなく箒を横抱き(お姫様抱っこ)にすると、そのまま西の庭園へと跳び、セシリアの手を力強く引いた。

「まぁ……! 殿方、本当に来てくださるなんて……!」

 

さらに南の校舎でシャルロットを背後に庇い、北の格納庫で待っていたラウラを背負う。

その姿は、もはや一人の男が4人の国宝級の令嬢を同時に救出している、圧倒的な「王(ボス)」の絵面そのものであった。

 

「はぁ、はぁ……おい零士、お前、生身なのに代表候補生4人を抱えたまま、なんでそんな速度で走れるんだよ……!?」

ハンター役としてボロボロになりながら追いかけてきた一夏が、地面に突っ伏しながら絶叫する。

 

4人の少女たちを腕の中に抱いたまま、零士はアリーナの中央へと堂々と着地し、完全勝利のブザーが学園中に鳴り響いた。

救出されたヒロインたちの顔は、羞恥と、それ以上の極上の幸福感で真っ赤に染まっている。

 

「言っただろう。俺が一度『俺のファミリー』だと決めたものは、たとえ世界が相手でも絶対に離さない」

 

零士が静かに告げると、アリーナの大型モニターに、突如として見慣れた暗号化通信の画面が表示された。

 

『ちゃおっす、零士。そしてお嬢さん方、卒業と、ファミリーの結成おめでとう』

 

画面の向こうから響いたのは、ボンゴレの絶対的家庭教師――リボーンの声だった。その背後には、ツナや守護者たちが、温かい拍手と共に笑顔を見せている。

 

『3年間、しっかりとあいつらの覚悟を見極めたようだな。堅気の学校の文化祭を利用して、最高のファミリーの初陣(お披露目)を見せてもらったぞ。ツナ、例のものを』

 

「うん! ……零士くん、4人のみんな。これからボンゴレの『雪の部隊』、そして君たちの新しいファミリーの誕生を、心から祝福するよ。イタリアでの結婚式の準備は、完璧に整えてあるからね!」

 

ツナの優しい笑顔と、リボーンの不敵な笑み。

アリーナ中が歓喜の渦に包まれる中、ラウラが「当然だ!」と零士の首に抱きつき、セシリアが涙を拭い、シャルロットが満面の笑みを浮かべ、箒が「……一生、お前に尽くす」と、その胸に顔を埋めた。

 

かつて孤独の中で資格を貪り、心を縛り付けていた白銀の騎士は、今、かけがえのない4人の絆と、世界最強の家族(ボンゴレ)に見守られながら、失った青春のすべてを塗り替えるような、最高の幸福のワルツを踊り続けるのだった。

 

(白崎零士・IS学園裏マフィア譚 ―― 大団円・完)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。