インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
全学年IS実戦レース:『キャノンボール・ファスト』
〜一番の嫁の座を賭けて! 硝煙と氷結の限界突破バトル〜
3年の様子見期間中、学園が最も熱狂に包まれたのは、全学年のIS操縦者がエリア全域を舞台に超高速戦を繰り広げる伝統のバトルレース『キャノンボール・ファスト』だった。
いつもなら優勝賞品や名誉のために戦う候補生たちだが、今年のモチベーションはただ一つ。
――「優勝して、零士に一番の嫁(ファースト・レディ)として認められること」。
観測室の特等席。白崎零士は、生徒会長の更識楯無、そして特別ゲストとして招待されたボンゴレ十代目ファミリーの面々と共に、モニターを見下ろしていた。
「ひえぇぇ、みんなの目が完全に『死ぬ気モード』だよ! 零士くん、本当にあれレースなの!? ただの潰し合いに見えるんだけど!」
ツナがモニターに映る少女たちの凄まじい気迫に怯え、頭を抱える。
「十代目、あれはレースではありません、愛の銃撃戦です」
獄寺が真面目な顔で頷き、山本が「はは、みんな気合い入ってんなぁ!」と呑気に笑う。
「ふん、俺のために命を懸けて走る女たちだ。特等席で見届けるさ」
零士は不敵に苦笑しながら、手元のコーヒーを口に運んだ。画面の向こうでは、カウントダウンの終了とともに、4つの白銀の閃光が爆音を上げて飛び出していた。
1. 蒼き追撃:セシリア・オルコット(ブルー・ティアーズ)
レース序盤、直線の超高速エリアで先陣を切ったのは、セシリア・オルコットの『ブルー・ティアーズ』だった。
「これまでの私は、ただ殿方に守られるだけのお姫様でしたわ。ですが、今の私は『雪の守護者』の伴侶となる女……! 誰にもこの先頭は譲りませんわ!」
セシリアの瞳は、これまでにないほど冷徹で、そして熱い意志に満ちていた。背後から迫る他学年のIS部隊に対し、彼女は一切の迷いなくビットを展開する。
通常なら牽制として使われるレーザーが、精密機械のような正確さで敵の駆動部だけを撃ち抜き、戦闘不能(フリーズ)に追い込んでいく。零士の『戦闘心理学』の講義を完璧にトレースした無駄のない戦術。
「見ていてください、零士! 英国名門の、そしてあなたの妻としての誇り、今ここで証明してみせますわ!」
特大のパッケージ高出力レーザーがコースを白銀に染め上げ、後続を力ずくで引き離した。
2. 漆黒の強襲:ラウラ・ボーデヴィッヒ(シュヴァルツェア・レーゲン)
中盤の障害物だらけの廃都市エリア。セシリアの背後に獰猛な一撃を叩き込んだのは、ラウラ・ボーデヴィッヒの『シュヴァルツェア・レーゲン』だった。
「甘いぞセシリア! 戦場において、先行逃げ切りなどという生温い戦術がこの私に通用すると思うな!」
ラウラは超重圧エネルギー刃を振るい、コース上のビル群ごと敵の防御障壁を真っ二つに叩き割っていく。その戦闘スタイルは、かつて零士が見せた「世界の汚濁を間引きする裏社会の暴力」を彷彿とさせる、圧倒的な苛烈さだった。
「私は零士の唯一の『主の盾』であり『主の剣』! 誰よりも先にあの男の元へ駆けつけ、その隣を勝ち取るのはこの私だ!」
AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を過負荷寸前まで駆動させ、空間の慣性を完全に無視した超機動でセシリアのインコースを強引に奪い去る。ラウラのオッズ・アイには、勝利への飽くなき執念が灯っていた。
3. 機巧の連撃:シャルロット・デュノア(ラファール・リヴァイヴ・カスタム)
終盤のテクニカルな地下トンネルエリア。先行する2人の隙を見事に突いたのは、シャルロット・デュノアだった。
「二人とも、熱くなりすぎだよ! 零士の隣に立つなら、激しさだけじゃなくて、周囲を包み込む『賢さ』も必要だよ!」
シャルロットは、あらかじめ零士から叩き込まれた『隠密作戦』と『動線設計』の技術をフルに応用していた。トンネルの構造を完璧に把握し、高速移動しながらの目まぐるしい武装換装(ラピッド・スイッチ)を展開。
ガルム、レイン・オブ・サタディ、数々の銃器が一寸の狂いもなく連動し、ラウラとセシリアの四方を完全に包囲する弾幕の檻を作り出す。
「ボクは、不器用で誰より優しい零士んだから好きになったの。だから、ボクが一番にゴールして、零士に思いっきり甘えさせてもらうんだから!」
いつもは優しい彼女が見せた、絶対的な「女の意地」。弾幕の隙間を縫うように、ラファールがトップへと躍り出た。
4. 白銀の覚悟:篠ノ之箒(紅椿)
そして、アリーナへ続く最終ストレート。3人が火花を散らしながら横一線で突入したその瞬間、大気そのものを震わせる凄まじい咆哮とともに、一陣の紅い疾風が全てを置き去りにした。
篠ノ之箒と、その愛機『紅椿』である。
「私は、もうお前の孤独を遠くから見ているだけの女ではない……! お前の背負う『雪の炎』の過酷さ、その全てを共に分かち合うと誓ったのだ!」
箒の全身から、紅蓮の輝きが爆発的に燃え上がる。それは、展開型装甲によるただのエネルギー出力ではない。零士がその生き様で見せてくれた「大切なものを死ぬ気で守り抜く覚悟」が、彼女の限界を突破させていたのだ。
「私の命はお前への誓いとともにアル! ――穿て、紅椿っ!!」
絢爛舞踏の如き圧倒的な加速力。セシリアのレーザーを切り裂き、ラウラの重圧刃を受け流し、シャルロットの弾幕を正面から突き破る。
4人のISが限界を超えて交錯し、アリーナのゴールラインに凄まじい衝撃波とともに滑り込んだ。
【結末:大団円、そしてイタリアへ】
「勝者――同着により、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒの4名!!」
システムのアナウンスが響き渡ると同時に、アリーナ中が割れんばかりの歓声に包まれた。画面の向こうでは、ボロボロになりながらも、お互いを認め合うように不敵に笑う4人の姿があった。
「うおぉぉぉい!! 零士ィ!! 素晴らしい戦いだなぁい! 完全にヴァリアーの幹部戦レベルの気迫だったぞぉ!」
観測室でスクアーロが立ち上がって大はしゃぎし、千冬は「……フン、あれだけ破壊しておいて同着とは。修理費が恐ろしいな」と頭を抱えつつも、どこか誇らしげに口元を緩めていた。
零士は席を立ち、特等席のガラス越しに、アリーナ中央で自分を見上げてくる4人の嫁(予定)たちを見つめた。
「まったく……誰一人として一歩も引かないか。本当に、とんでもないファミリーを創り込んじまったな」
そう呟く零士の口元には、かつてないほど深く、そして愛おしさに満ちた苦笑が浮かんでいた。
3年間の様子見期間は、今ここで最高の形で終わりを迎えた。彼女たちの強さも、覚悟も、そして自分への愛も、もう疑う余地などどこにもない。
「よし、十代目。……イタリアの本部に連絡を入れておいてください」