インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』   作:suzuki00

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エクストラ・エピソード:『白銀のファミリー、あるいは修羅場の技術革新』

エクストラ・エピソード:『白銀のファミリー、あるいは修羅場の技術革新』

1. 嵐の前の技術室、あるいは天才たちのマリアージュ

「――おい、入江。この設計図の記述はどういうことだ。私の理解を超えている」

IS学園・地下特設開発室。新調した黒のスーツの上に白衣を羽織った零士が、ホログラムディスプレイを指差して眉間を揉んでいた。通信画面の向こうでは、お馴染みの白いツナギを着た入江正一が、栄養ドリンクの空き缶を片手に、激しく胃を押さえながら苦笑している。

『いや、僕に言われても困るよ零士くん! リボーンさんから「彼女たちのISをボンゴレ仕様に最適化しろ。あ、正一、納期は来週な」って無茶振りされて、僕とスパナで不眠不休で組んだんだから!』

ディスプレイに表示されていたのは、セシリアの『ブルー・ティアーズ』、シャルロットの『ラファール・リヴァイヴ・カスタム』、ラウラの『シュヴァルツェア・レーゲン』、そして箒の『紅椿』の改修プランだった。

ただの改修ではない。ISの動力源であるハイパー・センサーとコアのバイパスに、「死ぬ気の炎」の出力変換システムが強引に組み込まれていたのだ。

『箒さんの「紅椿」はもともと展開型ISだけど、ここに零士くんの「雪の炎」の微細同調(シンクロ)プラグを仕込んだ。これで彼女が雪の炎の「能力(おすそわけ)」を受け取れば、攻撃に「冷却と停止」の追加効果が付与される。……名付けて【紅椿・雪化粧(ゆきげしょう)】さ』

「……戦闘力が上がるとかそういう次元じゃない。これでは彼女たちが完全に『裏の人間』の戦闘能力を持つことになるぞ」

『いいじゃない。リボーンさんも言ってたでしょ? 「ファミリーの拡充は絶対だ」って。あ、セシリアさんのビットには雨の炎の「鎮静」を混ぜて弾道を不可視にする機能、シャルロットさんの機体には霧の炎の「構築」によるホログラム分身、ラウラさんのシールドには雲の炎の「増殖」を……』

「正一、お前リボーンさんに脅されて脳のネジが外れたか?」

『外れてなきゃこんなの作れるかよぉ! 沢田(ツナ)くんだって「ひえええ零士くんの奥さん候補たちがどんどん戦闘民族になっていくよー!」って泣いてるんだからね!?』

バツン、と胃痛に耐えかねた正一が通信を切る。零士は開発室の冷たい空気に、本日最初の一息をついた。背後から、パタパタと小走りで近づく複数の足音が聞こえてくるまでは。

 

 

2. 嫁たちの宣戦布告、あるいは終わらない主導権争い

「零士! 聞いたぞ、正一という男から連絡があった! 私たちのISが、お前の『雪の炎』と番(つがい)になるための調整に入ったとな!」

開発室の自動ドアが勢いよく開き、ラウラが鼻を荒くして飛び込んできた。その後ろからは、お盆に載せた紅茶セットを器用に持ちながら、優雅に、しかし目が全く笑っていないセシリアが続く。

「まぁラウラさん、はしたないですわ。零士、英国伝統のスコーンを焼いてまいりましたの。これから裏の社会でアルコット家の名を轟かせるためにも、まずはこの私の『ブルー・ティアーズ』とお貴方の『VIS』の戦術コンビネーションをですね――」

「ちょっと二人とも、零士を困らせちゃダメだよ」

苦笑しながら二人の間に割って入ったのはシャルロットだった。彼女は自然な動作で零士の白衣の裾を掴むと、上目遣いで微笑む。

「私のラファール、霧の炎の特性がつくんだって? 零士の幻影(ホログラム)を私が作って、二人で敵を翻弄する……ふふ、なんだか共同作業みたいで素敵だね」

「……待て。抜け駆けは斬る」

最後に現れた箒は、木刀ではなく、すでにボンゴレから支給された「雪の炎」を通すための特製リングを指に嵌めていた。彼女は真っ直ぐ零士の前に立つと、顔を林檎のように赤くしながらも、凛とした声で言い放つ。

「私は『雪の部隊』の筆頭候補生だ。ISの調整が終わり次第、お前に実戦形式での指導を請う。……手加減は無用だ、零士」

四者四様の、しかし逃げ場のない熱烈な視線。零士は新調した黒のジャケットの襟元を緩め、内心でイタリアのボス(ツナ)に「俺の有給はどこに消えましたか」と電波を送った。

「……お前たち、勘違いするな。ISの改修はあくまで防衛のためだ。それに、俺はまだお前たちの『夫』になったわけじゃない。リボーンさんが勝手に言っているだけで――」

「「「「却下(ですわ)!!」」」」

綺麗に揃った四重奏が、地下開発室に響き渡った。

「お前はあの夕暮れのアリーナで、一生守り抜くと確かに言った! 軍人に二言はないが、マフィアのボス(予定)にも二言は許さん!」 「そうですわ! 私、すでに英国の父(弁護士)に『ボンゴレという由緒正しい(?)組織と縁組を結びます』と手紙を送ってしまいましたもの!」

零士は天を仰いだ。世界最強のヒットマンが認めた瞬間から、彼女たちの外堀を埋めるスピードは光速を超えていた。

 

 

3. 特等席の住人と、胃壁を削る鉄の女

一方、学園の購買部裏。 かつて主役であるはずだった織斑一夏は、篁鈴から回ってきた焼きそばパンを齧りながら、どこか遠い目をしていた。

「……なぁ、鈴」

「何よ、一夏。まだあの『白銀の修羅場』引きずってんの?」

「いや……引きずってるっていうか。今日さ、クラスの女子たちが『白崎先生って、裏社会の超大物なんだって……』『四人を一斉に娶る覚悟がある大人の男、最高じゃない?』ってキャーキャー言っててさ。俺、なんだかIS学園の『唯一の男子生徒』っていうアドバンテージが、完全に消滅した気がするんだ」

「いいじゃない、命が助かったんだから」 鈴は炭酸飲料を喉に流し込みながら、呆れたように笑う。 「あんたがあの四人の相手をしてごらんなさいよ。セシリアのビームで焼かれ、ラウラに拘束され、シャルに翻弄されて、箒に一刀両断されてたわよ。白崎先生みたいな『規格外の怪物』だからこそ、あの猛獣たちを四頭同時に飼い慣らせるのよ」

「飼い慣らすって……先生、今朝も四人に囲まれて、朝食のローテーション(フランス式かドイツ式か和食か英国式か)で本気で悩んで、死ぬ気弾打たれたみたいな顔してたぞ……」

一夏が同情混じりの苦笑いを浮かべたその時、購買部の裏口から「ズシン」と重苦しい足音が響いた。

「――光も闇も分かち合う、か。全くだな」

現れたのは、織斑千冬だった。その手には、いつも以上に使い込まれた木刀が握られており、額には青筋が浮かんでいる。

「ち、千冬姉!? どうしたんだよ、そんな怖い顔して」

「一夏、お前は呑気でいいな。……あの非常勤講師のせいで、私のデスクの上は今、日本政府からの『ボンゴレ・ファミリーとの外交および技術提携に関する秘密親書』と、更識家からの『うちの楯無も雪の部隊に混ぜてほしい』という狂った推薦状で埋まっている」

「更識先輩まで!?」 一夏が飛び起きる。千冬ははぁ、と重いため息をつくと、木刀の柄を地面に叩きつけた。

「ISという世界のバランスを揺るがす兵器が、マフィアの『家族の絆(ファミリー)』という理不尽な力で再定義されようとしている。……だが、不思議と不快ではないのが忌々しいな」

千冬の脳裏に浮かぶのは、数日前、職員室で零士と二人きりになった時の会話だ。

『織斑先生。一夏くんの周囲を脅かす脅威は、俺の命に代えてもすべて裏で処理します。あなたが彼を「表の英雄」として育てたいなら、俺はその影になりましょう』

大人の男としての、あまりにも完成された、そして揺るぎない覚悟。

「……白崎零士。お前がもし、あの四人の誰か一人でも泣かせてみろ。リボーンとやらが死ぬ気弾を撃ち込む前に、この私が貴様の五体をIS(クラスティ・ハマー)で粉砕してやるからな」

千冬は誰もいない空に向かって、そう鋭く呟いた。しかし、その声には「生徒たちを最高の男に託した」という、教師としての奇妙な信頼が混ざり合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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