インフィニット・ストラトス×家庭教師REBORN!―雪零の守護者―』 作:suzuki00
1年目の文化祭:【1年1組:多国籍ガチ執事・メイドカフェ】
〜初めての文化祭! 資格とマフィアの流儀が火を吹く〜
激戦から数か月。完璧な『オメルタ』によってあの日がまるで嘘だったかのように、IS学園には穏やかな、そして少し浮足立った空気が流れていた。学園中が色とりどりの装飾に染まる中、1年1組の教室は、異様な重厚感を放つ空間へと変貌を遂げていた。
「いいか、お前たち。これが堅気の世界の『祭(フェス)』だ。だが、たとえ模擬店であろうとも、我がファミリー――いや、我がクラスの看板を背負う以上、一分の妥協も許さない」
新調した最高級の黒のジャケットを腕に掛け、白シャツの袖をスマートに捲り上げた白崎零士の声が、静まり返った教室に響く。 彼が教壇の机に並べたのは、この日のために私物から引っ張り出してきた『食品衛生責任者』『甲種防火管理者』のライセンスカード、そして世界の一流ホテルでも通用する『国際マナーライセンス』の最高位認定書であった。
「白崎先生……ううん、零士。さすがに学園の模擬店でHACCP(ハサップ)基準の動線設計と、ミリ単位の衛生管理を持ち込むのは、ちょっと厳しすぎないかな……?」 エプロン姿の織斑一夏が、完全に圧倒されながら苦笑する。
「黙れ、一夏。客の命を預かる厨房は、マフィアの抗争現場と同じく一歩のミスが命取りになる。……よし、嫁(予定)ども、お前たちの仕上がりを見せるがいい」
零士の視線の先で、4人の少女たちがそれぞれの衣装に身を包み、完璧な姿勢で直立した。 セシリアは英国名門のプライドをかけた本物の令嬢風メイド服。シャルロットはフレンチレースをあしらった気品あるクラシカルメイド。ラウラはドイツ軍服の意匠をどこか残した漆黒のロングメイドドレス。そして箒は、和洋折衷を意識した緋色の袴メイド姿だ。
「アルコット家の名に懸けて、殿方に至高の紅茶(ダージリン)を捧げますわ!」 「零士、フランス式の極上の接客、期待しててね?」 「ふん、軍人として、一寸の狂いもない完璧な給仕(おもてなし)をして見せる!」 「零士……お、お前のために、この日のために和菓子の包み方もマスターしたぞ……!」
零士は国際マナーライセンスの基準に基づき、彼女たちの姿勢、視線、果てはカップを置く際の指先の角度までを完璧に指導。教室はもはや高校の文化祭のレベルを超え、欧州のロイヤルホテルの一室へと昇華していた。
そして、その日の午後。 「1年1組」の入り口に、事前に零士が手配していた「特別なお客様」が姿を現した。
「ひえぇぇぇ! なにこれ、本当に日本の高校の文化祭!? ボンゴレの本部の式典より緊張感があるよー!」 頭を抱えて情けない悲鳴を上げながら入ってきたのは、額の炎を消し、日本の一般的なカジュアルスーツに身を包んだボンゴレ十代目――沢田綱吉(ツナ)だった。
「十代目、情けない声を上げないでください! ほら、零士の奴が直々に厨房で珈琲を淹れています!」 「まあまあ、獄寺くん。ツナも久しぶりの日本で緊張してるんだよ。あ、このお菓子美味そうだなぁ」
ツナの背後には、お目付け役の獄寺隼人、そして相変わらずマイペースな山本武が控えている。さらには「極限に文化祭を楽しむぞぉ!」と叫ぶ笹川了平と、なぜか一般客に紛れてマシュマロを食べている白蘭までが、一般の『招待客』としてテーブルに着いた。
「いらっしゃいませ、十代目。……そして、皆さん」 零士が自らトレイを持ち、直々にブレンドした「幻の珈琲」をツナたちの前に差し出す。その所作の美しさと、背後に控える4人のヒロインたちの放つ「私たちはこの男のファミリー(妻)です」と言わんばかりの圧倒的なオーラに、ツナは珈琲を吹き出しそうになった。
「れ、零士くん……! 君、護衛任務で日本に来たはずだよね!? なんで各国の代表候補生全員を従えて、こんな凄い空間作っちゃってるの!?」 「ボスのツナがイタリアで頭を抱えていた理由がよく分かったぜ。零士、テメェ、十代目の頭痛の種を増やしやがって……!」 獄寺がジロリと零士を睨むが、その隣でセシリアが「あら、英国式のおもてなしに何か不満でも?」とブルー・ティアーズの出力を思わせる笑顔で威圧する。
「まぁいいじゃない、ツナ。零士くんがこんなに可愛いお嬢さんたちに囲まれて幸せそうなんだから♪」 白蘭がヘラヘラと笑いながらジェラートを口に運ぶ。
一夏と鈴は、世界を裏から牛耳るボンゴレ上層部だとは夢にも思わず、「白崎先生のイタリアの友人たち、みんな凄まじい美形だけど、どこか雰囲気がヤバいな……」と、遠巻きに冷や汗を流しながら見守るのだった。